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美ら海のまちで育つ
子どもたちへ

エメラルドグリーンの海に、亜熱帯の豊かな森林。沖縄県のなかでもとりわけ美しい景色が広がるのが、北部地域です。

今回の舞台である沖縄県本部町(もとぶちょう)も北部の町。

人口1万3千人の小さな自治体ながら、沖縄美ら海水族館や離島など、この町を目がけて毎年多くの人が訪れます。

この町の子どもたちに、本部町でしか体験できない学びを届けたい。そんな想いで、幼稚園から高校まで地続きの地域学習をおこなうプロジェクトが始まっています。

サンゴやウミガメについて、遊ぶように学ぶ小学生時代、地域の課題を取り上げて自分なりの解決方法を考える高校時代。勉強したいすべての子どもが通える学習塾。

今回は地域おこし協力隊として、小学生向け・中高生向けそれぞれの学習塾スタッフと、魅力化コーディネーターを募集します。

 

羽田空港を発って2時間半。飛行機の外に、沖縄の青い海が見えてきた。

空港を出ると虫が元気に鳴いている。4月末の沖縄は日差しも強く、本州の初夏のよう。

目的地の本部町に向けてバスに乗る。海の色が、どんどん鮮やかなエメラルドグリーンに変わっていく。

空港を出ておよそ2時間で、本部町に到着。にぎやかな那覇に比べて、ゆったりした雰囲気の町だ。

白い砂浜にハイビスカス。ゆったり歩く水牛、フクギ並木、海の向こうに見える島。

どこを見渡しても沖縄らしい景色が広がっていて、思わず気持ちも浮き立ってしまう。

「コロナ前は年間1000万人が沖縄を訪れていて、その半数が本部町に来ていました。沖縄美ら海水族館もありますし、ビーチも楽しめる。沖縄でも有数の観光の町です」

役場でお会いしたのは、本部町教育委員会の小路(しょうじ)さん。

本職は数学の先生で、昨年から教育委員会に出向するまでは、町内の中学校で7年間教えていたそう。

「県内の学校を回ってきたんですが、都会の子と比べてこの町の子たちは素直です。いや、素直すぎる、と言ったほうが正しいかな」

素直すぎる、というと?

「都会では、授業が分からなくても分かっているように振る舞う子が多かったんです。それがこっちでは、分からなかったらとても不機嫌な顔になるんですよ(笑)」

「でも、僕ら教師が面白い授業ができると、クラスがわっと盛り上がって、宿題ないの?補習はある?と求めてきてくれて。自分の気持ちを全力で表現して、興味をもったものは全力で頑張る。そんな素直さが、僕はめちゃくちゃいいなと思っています」

豊かな自然のなかで成長する沖縄の子どもたち。

一方で、彼らをとりまく環境には見過ごせない課題もある。

世帯貧困率が高い沖縄では学力格差が大きく、学力を理由に進路の選択肢が狭まる子どもも少なくない。事実、沖縄の子どもの大学進学率は全国最下位だ。

なかでも本部町は、その傾向が顕著だという。

「塾をつくってテストの点数を上げればいい、という単純な話ではないんです。勉強ができたほうがいいという理屈は子どもたちもよく分かっています。でも、肝心の自分が何のために頑張るのかが見えていない子どもが多いと思っていて。一番の課題は、目標をもって頑張る習慣があまりないことだと考えています」

「大人に強制されるのではなく、自分はこれをやってみたい!とやる気スイッチがオンになるような経験と、自分の頭で考えて、小さな成功体験を積める環境。このふたつが必要なんです」

そこで町が立ち上げたのが、本部町の教育魅力化プロジェクト。

軸は、幼稚園から高校まで一貫した地域学習。本部町をフィールドに、独自の教育プログラムをつくっていく。

「町内には、すでにいい取り組みがいっぱいあるんですよ。たとえば瀬底島(せぞこじま)の小学校では、サンゴの授業をしていて」

瀬底島は、島全体がサンゴの石灰岩でできた小さな島。この島の小学校では、5、6年生を対象に、年間25時間の海洋教育をおこなっている。

地域の船主さんの協力のもと、海にもぐってサンゴを観察したり、県内外の研究者と一緒にサンゴの化石を探したり。

サンゴ礁の汚染といった課題も取り上げながら、自分たちの島について学んでいる。

「瀬底島の子は、瀬底ってすごい!と先生に言うそうです。理科や社会の知識があると海をもっと理解できるんだと気づいた子もいるはず。その循環がとてもいいなと思っているんです」

現在は、各校がそれぞれ「総合的な学習の時間」内で地域学習をおこなっている。

ただ、単発のイベントで終わってしまうケースや、小中学校でのプログラム重複など、改善していきたい点もある。

そこで教育委員会が主体となり、各校の先生と連携して、幼稚園から高校までの一貫した地域学習プログラムをつくろうとしている。

幼稚園は、海辺の遠足やフルーツの農園見学など、楽しい思い出になるような体験を。学校に上がってからは、学習の要素をより取り込む。

「地域学習のなかで自分の興味が湧くものを見つける生徒もいるでしょうし、もっと勉強したいという子も出てくると思います。やる気をもった子どもたちがお金の心配なく勉強できるように、小中高の全員が通える公営塾もあわせて立ち上げます」

その先で、県立本部高校と協力して、高校の魅力化にも取り組んでいきたい。

「本部高校は、町で唯一の公立高校です。ただ、私が中学校で教えているときから、目標を持って本部高校に行きたい!という子は、あまりいなくて」

「目標がないまま進学しても、なんとなく過ごすうちに3年間が終わり、社会に出ていくことになります。そうじゃなくて、本部高校でこんなことが学べるんだ、将来のことを考えられる環境があるんだと町の子どもたちに思ってもらえる学校にしたいんです」

高校では公営塾を舞台に、地域と連動したキャリア教育や、地域の課題をテーマにした授業もおこないたい。

たとえば、本部町の基幹産業である観光業。

観光業で得たお金の循環や、コロナ禍の影響。町の人がもっと豊かになるためには何をしたらいい?

大人たちの話を聞きながら、答えのない問いに向き合っていく。

「子どもたちには本部町でしかできない体験や授業を提供して、本部愛を育んでほしい。自分の未来を自分の力で切りひらける人に育ってほしいです」

「想定外の出来事もたくさんあるでしょうが、せっかくなら子どもも先生も全員がワクワクできて、本部町の学校で良かったと思ってもらえるプロジェクトにできたら最高ですよね」

 

取材から8ヶ月後の12月。小路さんが今の様子を聞かせてくれるということで、Zoomをつなぐ。

「あのあと7人のメンバーが来てくれました。10月に中学生の塾がオープンして、来年度から地域学習の授業も始まります。まだまだ課題もありますが、想像の何倍も良いものができそうな予感にワクワクしていて」

集まったメンバーは、台湾出身の方、元経営者、研究者など十人十色。

総合の授業を担当するコーディネーターとして3名、塾スタッフとして4名が活動している。

皆さん、どんなことに取り組んでいるんでしょう。

「コーディネーターの皆さんは積極的に地域や学校に出かけて、地域学習の授業プランを一緒に検討してくれています。先日、校長会で小中学校の授業案を提案したんですが、これが好評で。さっそく来年から、各学年で20時間の授業をできることになったんです」

順調に進んでいるんですね。塾はどうですか?

「中学生60人が登録しています。ここで勉強を頑張るぞという子から、親に言われてしぶしぶ(笑)、という子までさまざまです。来年度は小学生と高校生も対象になるので、町中の子どもが通いはじめます」

「ゼロから塾を立ち上げたぶん、スタッフは戸惑うことも多かったと思います。手探りのなかで、生徒が集中できるように学年で開講日を分けようとか、英語のアクティビティもやってみようとか、何度も話し合いながら工夫を重ねてくれていて」

これまで塾が向き合ってきたことの一つが、学習支援と探究学習のバランス。

公営塾は、勉強が苦手な子どもも安心して学べるよう、まず教科学習支援を優先する方針をかかげている。来年度からはここに、漢検や英検などの勉強ができる小学生向けの塾と、大学受験も支援する高校生向けの塾が加わる予定だ。

一方で、プロジェクトの柱である探究学習や独自の授業に、塾ももっと取り組んでいくべきではないかという意見もあり、とくに初期はジレンマがあったそう。

本部町が目指すのは、地域学習を通して子どもたちに「気になる」「もっと知りたい」という気持ちを持ってもらうこと。そして、その興味や関心をモチベーションに、日々の学習に積極的に取り組める環境を用意すること。

「今は、本部の塾はハイブリッド式でいこうと話しています」

ハイブリッド式。

「軸は学習支援であることはブレません。そのうえで、たとえば検定や試験のない時期は、スタッフのカラーを出した授業もやりたいと思っていて。高校生向けの地域学習も塾でおこなう予定なので、具体的なプランは塾スタッフやコーディネーターと一緒にまとめていきます。面白い、やってみたいと感じてくれる方に、ぜひ仲間に加わってほしいですね」

 

今回募集するのは、塾スタッフと魅力化コーディネーター。型がないことに取り組む面白さとむずかしさ、どちらも色濃く感じる3年間になりそうだ。

そんなプロジェクトを進めている一人が、コーディネーターの田辺さん。

中学校教員として働いたのち、ご実家の鉄工所を経営。コロナ禍で会社を畳み、将来を考えていたタイミングでこの募集を知り、家族で移住した。

「教育でまちおこしという考えと、きれいな海の写真に惹かれました。来てみたら本部は気候が本当にいいし、なにより人があたたかい。小学生には、本部に来てから表情が変わったと言われました」

学校の先生方や子どもたちは、最初は恐る恐る、といった雰囲気だったそう。会話を重ねるなかで、今は小学生に「けんとにーにー」と呼ばれ、先生方も少しずつ心をひらいてくれている。

「自分たちで考えて行動することが求められる一方で、教育はこうあるべき、自分が町や子どもを変えるというスタンスでは、きっとうまくいきません。色々なことを素直に、前向きに捉えられる方がいいと思います」

「それにせっかく沖縄で第二、第三の人生を始めるのなら、明るく取り組みたいですよね。眉間にしわが寄っているスタッフを見ると、ほら、海行ってこい!って思います(笑)」

協力隊の任期は3年間。最終年には、自身のお子さんも小学校に入学する。

「自分がつくったプログラムを受けて、娘は何を思ってどう活動するのか。実験でもあり、自分への評価でもあるんです」

「本部の豊かなサンゴ礁が漁を支えて、そのサンゴ礁を削った石灰が藍染文化につながる。そして魚は肥料になって、フルーツや野菜を育てている。この町の循環と面白さを、子どもたちにも伝えたいです」

美ら海の町の、これからの教育。

まだ芽を出し始めたばかりの取り組みを、一緒に育てていく方を待っています。

(2022/4/25 取材、2022/12/8 更新 遠藤真利奈)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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