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持続可能な産地のモデル
あのRENEWの鯖江が
次に考えていること

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

福井県・越前鯖江地域。

漆器、和紙、打刃物、箪笥、焼物、メガネ、繊維の7つの産業が半径10km圏内に密集する、日本屈指のものづくりのまちです。

毎年3日間、このまちの70以上の工房が一斉に開かれ、3万人以上の人が訪れる産業観光イベント「RENEW」が開催されています。

訪れた人は、工房見学やワークショップなどを通じて、つくり手や届け手の顔、つくられている場所、技術、そして想い。体験を通して購入することもできるイベントです。

2015年にはじまった参加21社の小さなイベントは、回を重ねるごとに参加事業社も訪れる人も増え、現在では80を超える企業が参加する産地全体のイベントになりました。

参加事業社が自社ブランドやオープンファクトリーをつくったり、訪れた人が越前鯖江に移住してきたり。ほかにも、新しいお店や宿ができるなど、RENEWからいろいろな流れが生まれています。

「持続可能な産地をつくる」

RENEWのビジョンが、少しずつ目に見える形で現れてきているところです。

そんななかで、年に1度のイベントを企画運営するRENEW実行委員会が、昨年の7月、一般社団法人SOEとして新たなスタートを切りました。

ものづくりのまち、越前鯖江を楽しめる観光コンテンツの開発や宿の運営、起業や地域で活躍するデザイナーのためのスクール開設など、新たな事業に取り組んでいきます。

今回募集するのは、宿とスクールの立ち上げと、そのほか行政からの委託案件に携わるスタッフ。合わせて、事業の推進やRENEWの運営をサポートする事務スタッフも募集します。

2024年4月に開業予定のスクールを開催するスペースを併設した宿の立ち上げを担いつつ、ふるさと納税など地域からの委託事業を進めていく予定。新しく入る人の意欲や適性を考慮して、宿とスクール事業を横断的に進めていくことも、宿かスクール事業のどちらかに専念することもできます。

今いるSOEのメンバーや、地域の多様なプレイヤーたちと関係性を築きながら、持続可能な産地を一緒に描き、つくっていく仕事です。

宿泊業やスクール事業の経験は問いません。地域への関心やゼロから1を生み出すことに熱量高く挑める人なら、ひとまわりもふたまわりも成長できる環境だと思います。

 

東京駅から新幹線と特急を乗り継ぐこと3時間で、鯖江駅に到着する。

冬に訪れたときは雪がしんしんと降っていたことを思い出す。

この日は雲ひとつない秋晴れ。駅を出ると、大きな赤縁メガネが変わらずに、出迎えてくれる。

駅前の通りを抜け、ひらけた田んぼ道を車で15分ほど走ると、これからSOEのオフィスがつくられる予定の場所に到着。

「もともとはメガネ工場とその社員寮だったんですよ」

そう教えてくれたのは、SOEの代表理事の内田さん。越前漆器の製造と販売する「漆琳堂(しつりんどう)」の8代目であり、RENEWには1回目から参加していた。

「越前鯖江地域は、家族で営んでいるような小規模の事業者が多くて、分業でものづくりをしています」

「ここでつくられる越前漆器は、レストランや旅館で使われる業務用の漆器の国内シェアの8割を占めていて、多分みなさん一度は手にしたことがあると思いますよ」

日常からハレの日に使うものまで広く手がけているのが、この産地の特徴。その技術の高さから誰もが知る国内外のブランドのOEMなどものづくりを担うも、つくり手や産地が表にでることは少なかった。

「2009年から自社ブランドを始めて、RENEWにも参加して。1回目のRENEWのことは今でもよく覚えています。『会社に人がきた!』って、みんなで喜びました」

「来てくれた方たちは、『すごい!』とか『こういうの素敵』とか、いろいろな声をくれて。下請けでつくっていたときには見えなかった、使う人のことを知れたのは、すごくよかったです。それからは、訪れた人たちのことを想像しながら商品づくりを考えて、お店もつくりました」

売上も上がり、県外から入社するスタッフも現れる。これは漆琳堂に限った話ではないという。

「自社ブランドの立ち上げとか、新商品のつくり方とか、その発表の仕方とか。そういったノウハウって、産地の同業者にとってはすごく価値がある。でも、以前は会社の利益を考えて共有できなかったんです。けれどもRENEWに関わっているうちに考えが変わってきて。今は僕の経験とか知識をほかの事業者の方にも伝えたいと思っています」

「自分の会社1つだけが残っても、産地にはならないんですよね。産地全体で切磋琢磨して、盛り上げていくのが『持続可能な産地』の姿だと思うんです」

RENEW、そしてSOEの根底には「持続可能な産地をつくる」という思いがある。

そのためには、各事業者にちゃんとお金が入り、技術の担い手がいて、人や情報の流動性を高めていきたい。

そのためには、RENEWという単発的なイベントだけではなく、常に課題に取り組む組織が必要。SOEはその役割を担うために生まれた。

 

実際にSOEはどんなことをしていくのか。RENEWの立ち上げを主導し、SOEでは副理事を務める新山さんに話を聞く。

新山さんは、福井県鯖江市を拠点に活動する地域に特化したクリエイティブカンパニー「TSUGI」の代表として、これまでも鯖江でさまざまな取り組みを仕掛けている方。

「昨年の7月7日にSOEを設立して、10月のRENEWの開催に向けて活動をして、一旦一区切りがつきました。今は、通年で産業観光が楽しめるように、体験コンテンツの企画と情報発信のためのメディアの制作、そして宿づくり、スクール事業に向けて動いている感じです」

「SOEが本格的に動き出せたら、『ものづくり産業の新しい稼ぎ口』がつくれるんじゃないかと思っていて」

新しい稼ぎ口、というと?

「工芸品の分野に入る漆器や打刃物は、気軽にネットでポチッと買うものじゃない。一番いい売り方って何だろうって考えたときに、産地に来てつくり手や工房を見て感じて、ものづくりを体験して。その上で買ってもらうのがベストじゃないかって考えたんです」

取材でものづくりの仕事に接すると、技術や想いに感動し、そのものを手元にお迎えすることが多々ある。心地いい買い物体験から、つくり手や産地のファンが増えることもありそう。

たとえば、メガネの会社ならお客さんにヒアリングをし、そこから得たインスピレーションからセミオーダーのメガネをつくったり、漆を塗る職人ならいろいろな形や素材の木地(きじ)に漆を一緒に塗ったり。

ものづくりに関わる、さまざまな体験コンテンツを準備しているところ。今後もどんどん増えていく予定だそう。

地域への呼び水になるよう、体験コンテンツや産地のディープな情報が入った産業観光メディアも今後制作予定。発信や、予約の仕組みもつくっていく。

今回募集する宿とスクール事業は、どんなものになるんでしょうか。

「地域の担い手をつくりたいって思いがこの2つの事業にあって。職人志望の人も、地域にために何かしてみたいって人も、よくわからないけど来ました!って人も。多様な人が地域には必要で」

「宿があれば地域への入り口になるし、より長い時間滞在できる。スクール事業では、僕みたいに地域で何かやりたいデザイナーに向けたスクールをしたり、地域で開業したい人のサポートをしたり。あとは高い目標とかやりたいことがないっていう人でも生きていけるスキル、たとえばライティングとかマーケティングとかね。そういったものを学べるようなスクールもやりたいと思っています」

スクールも開催できるパブリックスペースを備えた宿、この構想を実現できる物件を現在は探しているところ。地域の空気を感じられる物件をリノベーションする予定です。

「漆器をつくる河和田地区なら、『学びながら泊まれる』をコンセプトにしようと思っていて。それぞれの土地をプレゼンテーションするのに最適なものをつくりたいと思っています」

打刃物の地域では、その技術が感じられる料理をメインにした施設など。地域にアンテナをはり続けている新山さんのアイディアは尽きない。

宿のオペレーションや実務面は、宿を専門にしている外部パートナーがサポートに入るので、未経験者でも大丈夫。

「僕らは地域のカルチャーを大事にしています。そこを面白がって、大事にできる人に来てほしいな」

地域のカルチャー、ですか。

「受け入れてくれている感じがするとか、一言で言ってしまえば越前鯖江って心理的安全性が高い地域だと思うんです」

心理的安全性。

「そう。地域の外から来た人の『やってみたい』に対しても、『いいじゃん、やってみなよ』と応援してくれる大人がいっぱいいる。一方で、フリーランスでまだ何も始められてないっていう人にも、『いいじゃん』って応援してくれる。何かに熱中している人にも、何もしていない人にも居心地がいい場所なんです」

ゆるやかな雰囲気と、挑戦を面白がる空気。鯖江には、そんな環境があるように感じる。

 

続いて話を聞いたのが、この地域に移住し、SOEの専務理事を務める村上さん。

鯖江のシェアハウス「森ハウス」に住む友だちを訪ねて遊びに来ているうちに、RENEWの前事務局長に抜擢され、2020年に移住。法人化の後は専務理事としてSOEの事業を推し進めている。

「大学卒業後は、フリーランスでいろいろな地域で働いていました。場所によっては、地元の方と移住者がぱっくり分かれているところが多くて。けれどこのまちは、移住者でも関係なく地域の人が積極的に関わってくれる。それがすごく魅力的だなって思いました」

村上さんは、SOE以外の活動として『鯖江いやしフェス』というイベントも企画。地域の人にイベントの相談をすると前のめりで協力してくれて、焼き芋で出店してくれた人もいたそう。

スクール事業の「生きていけるスキルを身につけられるような学校」は、村上さんの経験がもとになっている。

新しく入る人は村上さんと分担しながら、宿やスクールの事業を進めていくことになる。

村上さん以外には20代の若いスタッフが5人。彼らの成長に気を配るマネジメント力も求められる環境だと思う。

「今は就業規則とかも準備中で。働くみんなが心地よく過ごせる環境づくりも社労士さんとかプロに聞きながら進めています。」

「最初は知らないことが多くてすごく大変でした。RENEWひとつとっても80以上の事業者さんの名前と、扱っている商品、そして担当者の名前も覚えないといけない。めっちゃ大変でした。はじめて経験するようなこともたくさんあるので、自分のなかで噛み砕きながら仕事をしています」

 

鯖江には、日本全国の地域が抱える悩みと、それを解決してきた成功体験が蓄積されています。しかも、外からやってきた人にも開かれている場所。

いろいろな経験を積んで成長したい人。いつか地域で自分の仕事をつくりたい人。ぜひ鯖江を訪ねてください。

(2022/10/19 取材 荻谷有花)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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