求人 NEW

ふにゃふにゃでぎゅうぎゅう
日々をあたためる
遠州織物の手触り

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

丁寧につくられたものは、理屈じゃなくて、直感的にわかる。

遠州織物(えんしゅうおりもの)に触れたとき、なんとも言えずうれしい気持ちになりました。肌にすっと馴染むやわらかさからは、その向こうにいる人たちのやさしさがうかがえます。

そんな遠州織物を使って服をつくり、販売しているのが静岡・浜松のHUIS(ハウス)という会社です。

シャトル織機でゆっくりと織り上げる遠州織物は、軽くて柔らかく、耐久性も高い。海外の名だたるハイブランドでもよく使われているそうです。

そんなHUISの服をお客さんに届けるパートナースタッフを募集します。いわゆる販売職ですが、働き方は少し特殊です。

HUISには常設の店舗がありません。主な接客・販売の機会は、年間およそ100回を数える百貨店などでのイベント出展。HUISのパートナースタッフは全国に30名ほどいて、その都度シフトを組んで売り場をつくっていきます。

今回は関東エリアや名古屋を中心に、遠方への出張も楽しめるような人を求めています。イベントは不定期なので、複業のひとつとして柔軟に関われるとよさそう。

また、遠州織物の産地のことをより広く伝えていく、映像の撮影・編集で携わるパートナーも募集中です。

服や、とりわけ生地が好きな人に似合う仕事だと思います。

 

向かったのは、静岡・浜松。

遠州織物の産地であるこのまちに、HUISの本社がある。浜松駅からは車で20分ほどと少し離れているので、代表の松下さんが迎えにきてくれた。

どんな角度から話を聞いても、聞きたかったことの倍以上の情報量で答えてくれる。

「このあたりも昔は機屋さんだらけだったんですよ」

そう言われて前を見ても、地方都市のまちなみが広がるばかり。

「トヨタの生みの親・豊田佐吉は遠州生まれ。スズキもこのあたりで創業していて。どこも最初は織機をつくっていたんです。その技術をもとにして、自動車製造の技術が発展していきました」

つまり、自動車メーカーのルーツを辿ると遠州織物に行き着くんですね。

「そうです。HUISの生地は、旧式のシャトル織機という機械を使って、ゆっくりゆっくり時間をかけて織っていきます。アパレル生地を織るシャトル織機自体、世界でもほとんど残っていないし、扱える職人さんもいない。それが奇跡的に残っているのが浜松なんです」

会社に着いて、HUISの生地に使われている糸を触らせてもらう。

糸の太さを表す「番手」は、数が大きいほど細い。100番手の糸は、指先に乗っている感触がほとんどないような細さだ。

「平織り・細番手・高密度の規格が一番むずかしいんですよ。ほんとに綱渡りみたいな生地で、すぐに織り傷ができてしまう。よっぽど技術がないとつくれないんです」

丁寧に、やさしく織り上げられた生地は、すっと肌に馴染むやわらかさが印象的。

「ゆっくりと織ることで、ふにゃふにゃでぎゅうぎゅうに糸が詰まっているから、やわらかくて丈夫。肌あたりも軽いし、洗ってもへたりにくいんです。軽く脱水をかけて伸ばせば、シワにならずにいい感じの風合いが出るので、いつもアイロンをかけずに着ています」

最高でしょ? とうれしそうに紹介してくれる松下さん。たしかに、魔法のような生地だと思う。

ではなぜ、シャトル織機は現代でほとんど使われなくなってしまったのだろう?

「ひとつは効率です。近代織機の20〜30倍の時間がかかるんですよ。単純に考えると、生地も20〜30倍の値段をつけて売らないと経営が成り立ちません」

遠州織物は高価なため、ハイブランドでないとなかなか扱うことが難しい生地。

そこでHUISでは、生地を機屋さんから直接仕入れることで、中間マージンをなくし、日常着として手にとりやすい価格で遠州織物の服を販売している。

「ファッションって、色や形だけでこんなに楽しめるのに、その背景にこんな素晴らしい技術があるんだと知ったら、もっともっと楽しくなる。そこがぼくらの根本ですね」

浜松出身の松下さん。以前は市役所に勤めていて、農林水産業の発信に携わるなかで、地元にすぐれた産物がたくさんあることを知る。

遠州織物もそのひとつ。夫婦揃って洋服が大好きだったこともあり、8年前に妻のあゆみさんと一緒にHUISを立ち上げた。

当初はオンラインストアでの販売に加えて、クラフトイベントによく出展していたそう。ただ、1枚2万円のシャツはそう簡単には売れない。

松下さんはブランディングの会社に転職して2年勤め、写真撮影やグラフィックデザインなどを自前で手がけるように。その後は福岡・八女に拠点を置く地域文化商社「うなぎの寝床」や愛知・一宮の尾州織物「blanket」など、他産地のブランドとともにイベントを企画。百貨店などで出展を広げていく。

東京や横浜、福岡ではショールームもオープン。イベントの出展は、いつしか年間100回を数えるまでに増えた。

そうしたなかで、パートナースタッフ制度もはじまった。パートナースタッフとは、それぞれの地域でのイベントやショールームなどでHUISの接客・販売に関わる人たちのこと。

「副業の方や、自分でブランドをやってる子もいます。いろんな働き方をしている人たちに、空いた時間で手伝ってもらうような仕組みです」

今は全国で約30名のパートナースタッフが在籍している。これまで募集をかけたことはなく、知り合いや紹介でつながった人ばかりだそう。

「みんな仲がいいんですよ。仕事でありながら、半分友だちに会いに行っているような感じがある。その雰囲気はこれからも維持したいですね」

今回は関東エリアのほか、今春オープン予定の名古屋ショールームで働くパートナースタッフも募集する。北海道や福岡など、遠方への出張も楽しめる人だとなおうれしいとのこと。

ショールームは、パートナースタッフが入れる日をWeb上に掲載して、直接話して買いたいお客さんはその日を選んで来店するというスタイル。働く人にとっては、自分のライフスタイルに応じていろんな関わり方ができると思う。

「ありがたいことに、売上はコロナ禍も含めて毎年倍々で推移していて、イベントも年間100ヶ所で開催しています。会社としてこれ以上規模を広げていくつもりはなくて。今の規模を維持するためにも、もう少しパートナーを増やしたいなと思っています」

また、今回新たに募集したいのが、映像の撮影・編集ができるパートナー。

完成品としての服だけでなく、工程やつくり手の姿など、一歩踏み込んで遠州織物を伝える映像シリーズをつくっていきたいそう。

「リアルな売り場かWeb上かの違いがあるだけで、根っこは共通しているんですよね。熱意を持って、遠州織物のことを伝えてくれる人と出会いたいです」

 

自信を持って接客できる仕事につきたい。

そんな想いで入社したのが、スタッフの池田さん。もともとは松下さんの奥さんの友人で、「ちょっと手伝ってほしい」と声をかけられたのがきっかけだった。

「HUISでの仕事は、一般的なアパレルブランドさんと少し違うかもしれません」

どういうことでしょう?

「ふつうはコーディネートとかお客さんの好みから話していくと思うんですけど、ここでは生地について詳しく聞かれることが多いんです。タイプライタークロスが好きだとか、糸は何番手?とか」

今年の1月には、HUISの専用アプリをリリース。商品名だけでなく、生地名や型、品番で検索する機能が設けられている。

アプリ画面に並ぶのは、「001」「U104」などの数字。かなりマニアックですね…!

「お客さんのほうが詳しいこともあるので、最初は大変かもしれないです。でも、専門知識も興味があれば覚えていけると思います。遠州織物を伝えたいという想いがあるので、生地からファンになっていただけるのはうれしいことですよね」

出張を大変と感じる人もいるけれど、池田さんにとっては家事育児の合間のいい気分転換になっているんだとか。

「去年は北海道や博多にも販売に行きました。最近はYouTubeを松下さんとあゆみさんと3人でやっているんですけど、配信を観ているお客さんも多くて、北海道に行ったときも声をかけてくださった方がいて。出張もわたしは楽しいですね」

 

パートナースタッフとして関わりはじめて、社員になった飯田さんにも話を聞いてみる。

学生時代の専攻を活かして海外に関わる仕事をしていたものの、ファッションへの関心もあり、働きながら夜間の専門学校に通うように。

代表の松下さんと出会ったのは、「産地の学校」を受講したときのこと。産地の学校は、繊維産業の課題や資源を明らかにしていくプログラムで、遠州織物の今後を考えるなかで、松下さんも同じく受講生として参加していたのだそう。

「自分で服づくりをするうちに、デザインも大事だけど、生地もすごく大事だなと思うようになって。当時住んでいた横浜にショールームができるタイミングだったので、土日で手伝いはじめたんです」

日中はフルタイムで別の仕事をして、夜は専門学校に通い、土日はHUISのパートナースタッフとして販売に携わる。

それでも服のこと、生地のことについて知りたかった。ものすごい熱意だ。

「それまで、生地で服を見ていなかったので。HUISの商品に一通り触れてみて、服を見る観点がひとつ増えたなという感覚はあります」

自分で服をデザインすることは、今もありますか?

「今はちょっとできてなくて。したい気持ちは、まあそうですね。半分ぐらいあります」

「イベントに出ていると、お客さんから『こういう服がほしい』とか、『こうだったらいいのに』っていう声を聞くことも多いです。それをデザインに反映できたらいいなとは思いますね」

スタッフのなかには、美大のテキスタイル学科出身で、実際に生地のデザインに携わっている人もいる。

パートナースタッフも含めた研修として、機屋さんの見学に行ったことも。

同じような関わり方ができるとは限らないけれど、やっぱり生地が好きな人にとっては恵まれた環境なんだろうな。今アパレル業界で働いていて、より深く生地のことを知りたい、伝えたいと思っている人にもぴったりだと思う。

どんな人に合う仕事だと思いますか?

最後にそう聞くと、3人とも「積極的に声かけできる人」「話すのが好きな人」「躊躇なくコミュニケーションをとれる人」と近しい言葉で答えてくれた。

代表の松下さんが続ける。

「見て見て見て!って、素でそういう感じの人が向いていると思います。HUISの服って、見ただけだと魅力が伝わりにくい。手に取った人がいたら、肌触りが気持ちいいでしょ?って、共感し合える言葉とともに近づいていく。一歩目をちゃんと踏み出せる人がいいですね」

 

触れて、話しかけたら、伝えられる魅力は山ほどある。

遠州織物をひとつのきっかけにして、ほかの産地にまで目を向けてほしい、という想いもあるそうです。

パートナースタッフは一人ひとりが、生地の奥深い世界への扉をひらく、案内人のような役割なのかもしれません。

(2023/2/6 取材 中川晃輔)

※撮影時はマスクを外していただきました。

この企業の再募集通知を受ける

おすすめの記事