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羽ばたけ鮎河
外の視点から地域をつなぐ

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

子どもたちは進学や就職で都会へ。その親世代も、だんだんと歳をとってきた。昔のような活気はなくなり、学校も閉校に。

このような地域は、とくに日本の中山間地域ではめずらしくなくなってきました。

一方で、その地で暮らす人々の努力や自治体の施策など、地域ごとに灯る火は着実に地域に活気をもたらしつつあるとも思います。

その火を絶やさぬよう、大きくしていきたい。最前線に立って、地域課題の解決に取り組んでみたい人には、今回の求人は合っていると思います。

滋賀・甲賀市。

甲賀市の東の端に位置する鮎河(あゆかわ)地域は、桜並木や蛍で有名な場所。

ただ、ここにも少子高齢化と過疎の波が押し寄せています。

今回募集するのは、この地域で昨年度から始まった「農村RMO」の一員として、地域にあるさまざまな事務仕事を請け負う人。

農村RMOとは、住民、法人、自治会などが一体となって「地域経営」に取り組む組織のことを言います。RMOは「Region Management Organization」の略。

田舎が抱える課題の解決に興味がある人。もしくは、単純に田舎暮らしを試してみたい、という人でも。

この村で、自分だったらどう暮らすだろう。そんなふうに考えながら読み進めてみてほしいです。

 

甲賀市の東部に位置する鮎河地域へは、草津市から車で1時間ほど。県境が近いため、三重県方面からも行くことができる。

取材に向かった日は、あいにく雪の日。鈴鹿峠に入る前はちらほらと降っているだけだったが、目的地である鮎河に近づくにつれ、周囲が真っ白になってきた。

鮎河地域市民センターに車を止め、まわりを少し散策する。あたりはすっかり雪景色だ。

川沿いには桜並木があり、春には多くの人が訪れる人気のスポット。また水質がいいため蛍が生息しており、桜と蛍の時期には地域外から多くの人が訪れるそう。

時間になったので、センターの中へ。

「鮎河は冬寒いんですよ。ここで生まれ育って今も住んでいますが、寒いのが苦手で」

そう話しながら迎えてくれたのが、甲賀市役所農業振興課の久保さん。

農業の担い手育成のための事業や、中山間地域の活性化に携わっている。

まずは、鮎河地域のことについて聞いてみる。

「鮎河は昔からいろいろな取り組みをしている地域で。“組”や“区”という単位での住民組織があって、月に一回は組の常会という集まりがある。ほかにも、集落営農の団体や、羽ばたけ鮎河自治振興会など、住民がかかわる組織がいくつもあるんです」

「たとえば、鮎河地域は、耕作放棄地がないんですよ。それは集落営農の団体が、田んぼができなくなった人の土地の面倒を見ているからで。これは景観維持にもつながっています」

春になると「咲くや鮎河さくらまつり」を開催したり、農家民泊やグリーンツーリズムをはじめる人がいたり、伝統野菜の鮎河菜(あいがな)も育てている農家さんもいる。

「新しいチャレンジには積極的だし、地域の人の団結力みたいなものも強いんですが、なかなか継続・定着につながらないことが多くて」

以前、鮎河で採れたお米を使った日本酒づくりに取り組んでいたけれど、販売が厳しく今は休止状態になっているという。

「10年前は比較的若い40代くらいの人たちが活動の中心になっていたんですが、その人たちもだんだん歳をとってきているし、後の世代がいない。やめるものはやめて、残せるものを残していく段階に入っていると感じています」

そこで久保さんが着目したのが、農村RMOという仕組み。

地域でバラバラに活動しているそれぞれの組織をまとめ、互いに協力しながら地域課題に取り組んでいくことで、持続可能な地域づくりを目指していくというもの。

たとえば、鮎河では集落営農は機能しているので、それをいかに維持していくかを組織の枠を超えて考えたり。お酒づくりを復活させて、行政と連携して新しい販路を開拓したり。

ただ、そのためには組織間や人と人をつなぎ、事務局的な役割を担う人が必要になる。今回は、農村RMOの中心となっている「羽ばたけ鮎河自治振興会」に所属しつつ、その役割をしてくれる人を募集したい。

「農地の保全は、いま集落営農の団体が取り組んでくれているし、廃校になってしまった小学校はドローンの会社が利活用してくれたりと、地域にはいろんなプレイヤーがいます」

「前線で活躍してくれている人はいるので、まずはその人たちとつながって、顔を知ってもらうことからはじめてもらったらいいかなと。その上で、それぞれの団体をつないで新しいことを企画したり、事務作業を引き受けたりしてもらえたらと思っています」

すでに地域にいる人のほうが動きやすいような気もしますが、どうして外から人を募集するんでしょう?

「地域内の人が担当すると、地域のしがらみで動きづらい面があると思っていて。なんていうんでしょう… このあたりの人って、ぼくも含めてですけど、同じ地域内なのに特別扱いされている人がいると、すごく羨ましがるというか」

「よくもわるくも、『なんであの人、事務作業請け負ってお金もらってんのやろ』みたいなことになりがちなんですよね。団結力とか仲間意識が強いぶん、それがよくない面として出てくることもあって」

地域内の人が担当すると角がたつかもしれないことも、専任者として外から人を雇う形にすれば、地域の人も納得してくれる、と久保さんは考えている。通えるのであれば、必ずしも鮎河に住む必要もないとのこと。

「まずは地域のことを知る。そしてゆくゆくは、農地を借りて自分で農業をしてみるとかね。空き家もたくさんあるので、住みたいっていう希望があれば探すのも協力できます」

事務作業と一言で言っても、経理的なことや会議の調整、議事録の作成など、内容はさまざま。それと同時に、鮎河の活動をホームページやSNSを活用して外部に発信する役割も担ってほしい。

 

「地域に早く溶け込んでもらうためにも、こういう人が外から来てくれたんですよって、ぼくらが地域の人たちにしっかり伝えることが大事やなと思ってます」

そう話に加わってくれたのが、鮎河に住む辻さん。もともと教員をしていて、いまはすでに退職しているそう。

「鮎河はわりと先進的なことをしてきたけど、久保くんが言ったように収束してしまったものもあって。だから、今回事務局を担当してくれる人には期待しているんです」

辻さんは教員生活をしながら、長年鮎河に住み続けてきた方。在職中は地域の行事や集まりにもなかなか参加できなかったけれど、退職後は積極的に参加するようにしている。

「ここは桜が有名なんですけど、先週は「鮎河の桜を守る会」の活動で枝を剪定する作業があって。私も参加したんですが、人も減ってきているし、どんどん高齢化してるんですよね。だって63歳の私が一番若かったんですよ(笑)」

「あと10年経ったらどうなるんだろうって話してね。桜の木も歳を重ねているけど、植え替えとかできるのかなって」

着実に進んでいる地域の人たちの高齢化。

そのなかでも、農業用ドローンの会社が鮎河に入ってきたのをきっかけに、田んぼの消毒作業などをドローンで行うなど、少しずつでも持続的に農業を続けられる形を探っているところだ。

「鮎河で起こっていることって、おそらく日本全国いろんな農山村で起こっていることやと思うんです。人口も減っていくなかで、どうやって今の生活様式を維持していくか。ちょっとずつでも考えていかんと思って話してます」

辻さんは地域のことにも詳しいので、新しく来る人にとっては心強い存在になると思う。

任期は、基本的に2年間。それ以降は給与としての賃金は出ないため、2年のなかで別の仕事を探したり、各団体から事務仕事を引き受けて、そのぶんの報酬を得る形を自分でつくったりしてもいい。

地域のリアルに最前線で関わるなかで、自分がこれからどんな働き方していきたいのか、仕事のなかでどう地域と関わっていきたいのか、考えられる期間になると思う。

鮎河のいいところってどんなところでしょう。

「やっぱり自然やね。孫が夏休みに来たときに、川に連れていったことがあって。今日は水着ないから入ったらあかんでって娘に言われたけど、行ったらわしゃーって入ってすぐ濡れてしまって」

「3日間、毎日川遊びに行って、ひたすら手づかみで魚をとってました。子どもたちにとっては、それだけでいいんよ。だから自然っていうのは楽しいし必要なんやと思うね」

山あいにあり、自然豊かな鮎河。

蛍の生息地としても有名で、時期になると多くの人が蛍を見に訪れるという。辻さんいわく、「蛍より人のほうが多いくらいやで」とのこと。

「2年間でどこまでやってもらえるかやけど、一緒に鮎河の将来を考えて動いてくれたらうれしいよね。仕事がやりやすくなるように、ぼくらもサポートしたいと思ってるから」

「年齢も関係ないんじゃないかな。それよりも気持ちやと思う。鮎河をよくしていきたいっていうぼくらの気持ちに共感してくれる人やったらいいなと思ってます」

 

最後に話を聞いたのは、2年ほど前に移住してきた増田さん。

もともと名古屋に住んでいたけれど、旦那さんが田舎に住みたいという希望を持っていたこともあり、鮎河へ。

「たまたまいい物件があって、結構あっさり決めちゃったんですけど(笑)。名古屋まで1時間だし、東京に行くなら名古屋から、西のほうに行くなら京都まで1時間くらいで、車があれば意外と便利な場所で」

「あとは、村がとてもきれいだったのが印象的だったんですよね」

きれい、というと?

「ちゃんと草も刈ってあるし、空き家っぽいところはあるけどきれいに管理されている感じで。あとはみなさんご近所づきあいがしっかりしているのが、安心できるなと思ったんです」

「逆に受け入れられるのかっていうのが心配だったんですけど、売り主さんが顔合わせに連れて行ってくれて。気にかけてくれる感じが田舎らしいし、その度合いがちょうどよかったんですよね」

市役所の久保さんも話していたように、鮎河は人と人の付き合いがよくもわるくも濃いほうだと思う。都会出身の人にとっては新鮮かもしれないけれど、それは暮らす上での安心感にもつながる。

「住んでみれば、思っている以上に安心して暮らしていけると思います。地域のみんなが、お互いを支えてあげようっていう気持ちが強い地域だと思うので」

「小さい子どもがいたりしたら、この環境はすごく楽しいんじゃないかな。私もここで子育てできたらよかったなって思いますから。田舎暮らしを知るには、2年っていうのはちょうどいい長さなんじゃないかな」

 

農村RMOでの仕事は、地域おこし協力隊とも違う、めずらしい地域との関わり方だと思います。

移住の足掛かりとして試してみるのもよし、純粋に鮎河への興味から働いてみるのもよし。

それぞれの興味関心から、地域に関わってみませんか。

(2022/2/21 取材 稲本琢仙)

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