※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
「小柄だったり、身長が高かったり。人に個性があるように、花にも個性がある。それぞれが持つ可愛さを感じてもらえるようになれば、回りまわって、人のちがいをもっと認め合えるようになると思うんです」
「お花を通して伝えたいことがたくさんある。だから、この仕事をしているのがずっとずっと楽しいのかもって感じてます」
そう話すのは株式会社RINの代表、河島さん。
花屋や式場では、売れ残りやもう使えないと判断された花が日々やむを得ず廃棄されています。ほかにも、出荷される前に規格外だからと処分される花も数多くある。
そんな廃棄予定だった花たちを「ロスフラワー」と呼び、新たな命を吹き込んでいるのが、RINのみなさんです。
店舗やブース、ディスプレイの装飾など。百貨店やアパレルブランドといったクライアントとともに、ロスフラワーを使ったブランディングを手掛けてきました。
今回は、3つの職種で新たなメンバーを募集します。
とくに求めているのはインサイドセールス。ロスフラワーに対して企業の関心が高まりつつある今、一緒に仕事をしたいと思うクライアントに向けてみずから営業していく役割です。
花のある生活を、文化にするために。仕事自体、これから立ち上げていく段階です。明確にこれ、と決まっていることはほぼなく、新しく加わる人の強みや経験を活かして、仕事をつくっていきます。
あわせてアートディレクターと、事務も募集します。
花に関する知識はなくても大丈夫。自分ならどんなことができるだろう。想像しながら読んでみてください。
東京・明治神宮前。
観光客でにぎわう駅周辺から10分ほど歩くと、住宅が広がり、落ち着いた雰囲気がただよう。
RINのアトリエがあるのは、白い外壁が印象的なマンションの一室。インターホンを押して中に入ると、ちょうど制作中だというパーツが目に入った。
「博多の百貨店に送る予定のもので。『Spring is Blind』というテーマで、春を楽しんでもらえるような装飾をつくっています」
制作していたスタッフさんがそう教えてくれる。ぼうっと見ているだけでも、春の息吹を感じる。
使われる花の多くは、ロスフラワーと呼ばれる、廃棄される予定だったものたち。
アトリエで丁寧に乾燥された花は色鮮やかで、どれも可愛らしい。部屋いっぱいにドライフラワーがストックされていて、見たことのない花の量に驚く。
「空間装飾で使い終わった花は商品のノベルティにするとか、余すところなく使えるよう、工夫もしているんですよ」
アトリエを眺めていると、打ち合わせを終えた河島さんが声をかけてくれた。
柔らかな雰囲気を持つ方で、メンバーからは下の名前で「春佳さん」と呼ばれている。
RINは、河島さんが2019年に立ち上げた会社。
子育てと仕事、どちらも大切にしたい。新卒からいくつかの職場を経験するなかで、自分の好きなことで独立すれば実現できるのでは、と考えた。
過去を振り返るなかで見つけた「好き」が、花。
「花を飾るのが好きで、捨てるのさえもったいなくて、ドライにしてとっていたんです。友人を招いてリースをつくるワークショップを開いたこともありました。自分にとっては自然なことだったから意識していなかったけれど、すごく楽しいなって」
ただ、世の中に花屋はたくさんあるし、有名なフローリストも多い。仕事にするなら、コンセプトをつくろう。そんな思考からたどり着いたのが、ロスフラワー。
「以前、花屋で短期アルバイトをしていたときに、売れ残ったバラが何百本と捨てられそうになってたんですね。私には、もうそれが宝の山に見えて。当時の上司に許可をとって、ドライにして別のところで販売したことがあったんです」
「捨てられそうになっていた花だったんです、と説明して販売すると、3人に2人は買ってくれて。意外と共感してもらえるんだなって。ビジネスチャンスじゃないけど、やってみたら面白そうだと思いました」
パリへ留学しフローリストとして経験を積んだ後、個人事業主としてロスフラワーを活かしたブランディングの仕事を始め、RINを立ち上げる。
個人事業のときから、百貨店や大手企業からの依頼を受けるなど、反響は大きく、営業は1回もしたことがないのだそう。
「時代にあった売り方なのかなと。ロスの現状を伝えることで、花に興味を持つ人が増えれば、花業界にも新しい風を吹かせられるんじゃないかと思うんです」
RINには、花屋さんには必ずあると言ってもいい、店舗や車がない。また、生花でなくドライを扱うことで計画的に仕事ができるため、土日も休める働き方が実現できている。
華やかな一方、大変なイメージも持たれやすい花屋の仕事。花農家も年々減っていくなかで、需要を伸ばすことができれば、花にかかわる仕事をする人にも希望をもってもらえるかもしれない。
「どんな国でも、お花を持っていると褒められるんです。そのくらい、万国共通で愛されるもの。日本でも、心を満たしたいときはお花を買おう! ってなるくらい、身近なものにしたいですね」
現在、RINではブランディング事業のほか、「フラワーサイクリスト」と呼ばれるメンバーとともに、花のある生活の魅力発信や、フラワーサイクリストを育てるスクール事業にも取り組んでいる。
花のある生活を、文化にするために。今回新しく加わる人の力も借りながら、RINを成長させていきたい。
河島さんの右腕としてRINを取り仕切っているのが、アートディレクターの中丸さん。新卒で入社して2年目の方で、新しく加わる人にとって一番身近な先輩になる。
その場にいるだけでパッと空気が華やぐ、明るくて気持ちのいい方。
学生時代は、花ともクリエイティブとも縁はなかった。
「みんなと同じように就職活動もしていたんですけど、同じ髪型と服装なのに、面接では自分らしさを語る感じとか、とにかく違和感があって。そうじゃなくて、自分が心からいいと思える仕事で、自分らしく働きたいと思っていました」
けれど、すぐに働きたいと思える企業とはなかなか出会えなかった。「もういいか」と考えていたときにたまたま見かけたのが、河島さんが出演していた5分ほどのTV番組。
「花に個性があるように、人も個性があっていいんだよということを話していて。ここだ!と思いました」
当時はRINが立ち上がって間もないころ。新卒募集はなかったけれど、勢いのままに連絡を取って、面接にこぎつけた。
「スーツでアトリエに行ったんですけど、みんなに『本当にスーツで来た!』って驚かれて(笑)。緊張もあったけれど、質問にも飾らずに答えられて。本当の自分でやりとりできるのが、すごくうれしかったです」
無事入社が決まり、最初はインターンとして働くことに。右も左もわからないところからスタートする。
「わからないことがあっても、春佳さんがいそがしくて、二度は聞けない(笑)。なんとか1回で覚えようと、その場で調べたり、本を読んだりして地道に引き出しを増やしていきましたね」
RINのブランディングの仕事は、クライアントから依頼を受けて、デザインを提案するところからはじまる。デザインと見積もりが固まれば、施工スケジュールを立て、必要な花や資材の手配、制作メンバーの調整をして、納品するところまで管理する。
たとえば、東京・有楽町にある百貨店では、年間を通してロスフラワーを楽しめる展示を設置。夏・秋・冬の3回に分けて季節の移り変わりを体験してもらえるようにした。
お店を訪れるのが楽しくなりそうですね。
「ただ、デザインに起こすのはやっぱりむずかしいですね。制作のメンバーは服飾やデザインを学んだ人が多いので、もう頼りきっていて。これってどう思う? とよく聞いています」
どちらかといえば、手を動かすほうが性に合っていると中丸さん。最近は、デザインまわりを河島さんが、中丸さんが資料づくりや進行管理を担当している。
「1から100まで全部できちゃうので、何をどういう手順で進めればいいんだろう? と悩むこともありました。でも、全部決めさせてもらえることってすごいんだなと思って。今はすごく楽しいです」
キラキラした目で仕事のことを話してくれる。依頼に対してマンパワーが足りていない、もどかしい状況もあるそうだけど、目の前の仕事を楽しみながら、しっかり向き合っていることが伝わってくる。
そんな中丸さんのことを「RINにとっての宝物だと思ってます」と話すのが、山形さん。
空間デザインを本職としていて、RINでは業務委託として、クリエイティブやブランディングにかかわっている。
「春佳さんが、天真爛漫に自分のやりたいことに向かって疑いなく進んでいけるのは、中丸さんがRINを自分ごとにしながら、一緒に土台をつくってくれているからだと思っていて。代表って孤立しやすいけれど、そういう人がいてくれるだけで、ブランドとして本当に強くなると思うんです」
「あと、とても素敵だなって思うのは、春佳さんはなにかをあんまりアンチテーゼしないところだと思っていて」
アンチテーゼしない?
「一緒にいると、これいいよね、こういう世界がいいよねっていう表現が多い。春佳さんといると、ロスフラワーだけではなく、すべての花を愛しく思っていることが伝わってくるんです。そういうポジティブさがRINの魅力にもつながっているのかなって」
山形さんは、新しくRINに加わるならどんな人がいいと思いますか?
「RINらしいセンスがあるような気がしていて。たとえば、服や音楽、ライフスタイルでもなんでもいいんですけど、どんなものを自分は好きで、どれほど着こなせているのか。それを自分で理解している人が合っているのかなと思うんです」
好きなものに憧れるだけではなく、自分のものにしているかどうか。たとえそれが花じゃなくても、好きなものを自分のなかに落とし込む行動力や表現する熱は、おのずと仕事にも滲み出るはず。
「RINに憧れる人って結構いると思うんです。でも、厳しい言い方かもしれないけれど、ここに入ったから何かが身につくというのは、期待しすぎというか。ブランドとしても、想いがあって、どんどん行動していける人を必要としていると思います」
表現を選びながらも、正直な言葉で話してくれる山形さん。
「間違いなく、これから第二章、第三章が始まっていくので、絶対におもしろいと思います。和やかな場所だから怖がる必要は何一つないんですけど、せっかくなら覚悟を持って来るほうが、より楽しく働けると思いますね」
花を通して、生活の豊かさを広げていく。
誰かの心を動かす仕事だからこそ、働く人自身の想いや行動力が大切なのかもしれないと感じました。
RINのみなさんが生み出すものに、心が動いたら。ワクワクするものを感じたら。ここで力を発揮してほしいです。
(2023/3/9 取材 阿部夏海)