求人 NEW

大地に宿る力
自然に身をゆだねた
ものづくり

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

宮城県丸森町にある標高300メートルの里山・大蔵山。

この場所でしか採れない「伊達冠石(だてかんむりいし)」を使って、プロダクトの設計や石の加工、施工を行っているのが、大蔵山スタジオです。

製作しているのは、墓石やモニュメントのほか、アーティストやデザイナー、建築家と協業した美術品や家具など。それらのプロダクトは国内だけでなく、海外のギャラリーやホテルなどでも使われています。

今回募集するのは、新たなプロダクトの設計を行うデザイナーと、工場内での加工や現場での設置工事などを担う職人。

石の造形やアート、建築に興味のある人や、自然にかかわるものづくりをしてみたい人にぜひ知ってほしい仕事です。

 

東北新幹線で仙台駅まで移動し、そこから車で1時間。

宮城県白石市の市街地から、東に山あいを進んだ先に、事務所や工場、採掘場、そして加工が進められている墓石やプロダクトが並ぶ景色が広がっている。

約50ヘクタールの広大な里山全体が大蔵山スタジオの拠点だ。

これまでも何度か日本仕事百貨で募集をしてきたけれど、取材はオンラインだったため、現地に訪れるのは今回がはじめて。

迎えてくれたのは、代表の山田さん。あいさつを交わしたあと、あらためて会社の歴史を教えてくれた。

創業は1887年。石の採掘、加工を行い小売店に製品を卸す石材店として、事業をスタートした。

2015年に、社名を山田石材計画から大蔵山スタジオに変更。2017年から先代の父の跡を継ぎ、山田さんが代表を務めている。

「私が会社を継ぐまでは、石材業界としてはメジャーな墓石の製作・設置をする仕事が主な事業でした。しかし、今は建築やアートにかかわる依頼が多くなり、全体の8割以上を占めています」

会社の事業内容が変化したのは、山田さんがアートやデザインに興味を持っていたことがきっかけ。

「イギリスの美術大学に通ったり、いろんなまちを旅したり。海外を訪れる機会がよくあったんです。そんななかで、2015年にイタリアで開催された家具の展示会に視察に行きました。そこで、その後の運命を変えるデザイナーとアーティストに出会って。そのふたりそれぞれと親交を深めるうちに、一緒に作品づくりをしようということになり、すぐにパリのギャラリーで展示会をひらきました」

それから、ドアノブや洗面台、テーブルなどの製品を、中国やシンガポール、アメリカ、サウジアラビア、フランスのホテルやギャラリーへ販売するように。その実績をもとに、ほかのお店や施設からも声をかけられることが多くなっていった。

「今は、供養のあり方が多様化し、お墓の需要が減っている時代。石材業界のなかでも存続が危ぶまれる企業が多くあります。そんななかで、供養にかかわる製品を見つめ直しながら、建築やアートなどのものづくりにも取り組むようになりました」

その変化には、社員のサポートも大きかったという。

「もちろん最初は抵抗があったと思います。生活がかかっているなかで、会社が大きく方向転換するのはリスクがありますから。それでもチャレンジングなことを続けていくにつれ、変化を前向きに捉えてくれる人が多くなったように感じています」

「今では『社長がいうトップレベルを一緒に目指したい』と声をかけてくれる社員もいます。みんな本気でやってくれているので、たとえば、納品した先の海外のホテルへ社員も一緒に行って、宿泊してみるとか。私ができることをかえしていきたいと思っています」

大蔵山スタジオは、製造するプロダクトの素材になる伊達冠石の採掘も自社で行っている。

きれいな丸い形をしたものや角張ったもの、青黒く光るものから釉薬を塗った焼きもののようなものまで。それぞれの石によって形や表情はさまざま。

それらの中からオーダーされたプロダクトに合うものを選別し、設計図をつくり、加工を行う。

「石は、地球の成長のかけらであり、人類の記憶のかけらでもあると思うんです。これまで進んできた時間のすべてが石に集約されている。だからこそ何か力を宿しているように感じるんだと思うんです」

「やっぱりうちの石はおもしろいですよ。色合いも表情も豊かで、自然のテクスチャが残っている。これが美術品や家具になることで、人と自然との接点になるんです。伊達冠石の個性と私たちの技術があるからこそ、ロゴを入れなくても、大蔵山スタジオの独自性を伝えるものづくりができていると思っています」

また、里山にはプロダクトを展示しているアトリエやモニュメントが置かれている広場、イベントなどを行うギャラリーが併設されている。

石を採り、加工する場所の近くに、石に触れ、その魅力を体感できる場所があるのが特徴のひとつ。

「私たちがどんなものをつくっているかを伝えるには、この里山に来てもらうのが一番だと思っています。みなさんの手に届くまでの物語を含めて、プロダクトのよさと石が持つ力を感じてもらえるとうれしいです」

さらに、今後は東京に直営店を開くことも検討している山田さん。これまでお店や施設向けに販売することが多かった製品を、今後は消費者に直接届けられるようにすることで、暮らしの中心に石がある生活を提案していきたいのだそう。

「石を単に素材として捉えるのではなく、長い歴史のなかで培われてきた石と人との関係性や石に込められた力を、大蔵山スタジオの製品を通して日常のなかで感じてもらえるようにしたいと思っています」

今回募集するのは、デザイナーと職人の2職種。

デザイナーを募集するのは、会社として今回がはじめて。担当する主な仕事は、アートや建築にかかわる製品や墓石などのプロダクト設計、ウェブサイトやSNSを利用した情報発信など。

現在は山田さんが書いた図面をもとに、外部のデザイナーに細かい仕様などを作成してもらっているけれど、その工程を社内で行う体制づくりを目指しているという。

「今後はプロダクトの設計、デザインにより注力していきたいと思っています。プロの視点でどんどん『こんなものをつくれるといいんじゃないか』と提案してもらえるとうれしいです」

「それ以外にも、完成した商品の写真撮影やSNSの運用なども担当してもらう予定です。社員が十数人と少ない会社なので、設計に限らず、さまざまな役割を担ってもらうことになると思います」

図面を書いたり、加工に必要な石以外の材料を調達したり。建築分野に携わっていたことがある人や商品開発の経験がある人だったら、その経験を活かせると思う。

石に関する知識は持っていなくても大丈夫。はじめの3ヶ月の試用期間で、現場のすべての作業を担当するため、働きながら身につけていくことになる。

「石でどういうものがつくれるかがわかっていないと、図面上の設計やデザインになって、人為的なプロダクトになってしまう。そうではなく、ちゃんと石に向き合いながら、自然に身をゆだねたものづくりを続けていきたいと思っています」

 

続けてお話を聞いたのは、職人が集まる工場のリーダーを務めている我妻さん。入社して14年になる。

社名の変更や事業内容の転換など、大きな会社の変化を、現場にいるほかの社員とともに経験してきた。

「伊達冠石はほかの石とは違う特徴があるので、加工の仕方も難しい。そんななかで、美術品や家具をつくりはじめた当初は『何をつくっているんだろう』と社員のなかでも戸惑いがありました」

「でも、次第に『いいものをどうつくっていくか』を話し合う空気ができてきて、今はみんなでコミュニケーションを取りながら、加工を行っています」

石の切断、穴あけや形状づくり、研磨など、それぞれの職人が一人ひとつの工程を担当。作業を分担して行っているため、製品をつくるために、社員同士のコミュニケーションが欠かせない。

そこで、我妻さんが意識しているのは、みんなで楽しく働くこと。繊細で、高度な技術を求められる緊張感のある仕事だからこそ、社内の雰囲気が大切だという。

「みんなで楽しく仕事をしたい。行動する時間だけでいうと、平日は家族といるより社員といる時間のほうが多いですからね。たくさんの時間をともにするなら、みんないい雰囲気のなかで働けるようにしたいなと思っています」

今回募集するデザイナーは、クライアントや社内の営業担当などと連携して仕事を進める必要がある。そのなかでも、とくに作成した図面をもとに石を加工してくれる職人とのコミュニケーションが重要。

石の特性をよく知る職人と連携しながらプロダクトを開発していく。

「難しいデザインのものをつくるとなると、もちろん心配なこともありますが、どんなものにも対応できる力を職人全員が持っている。僕たちにはつくれないものはないと思っています。これからもはじめて挑戦することが増えてくると思うので、しっかり対応し続けていきたいですね」

最後に、もういちど山田さん。どんな人がこの仕事に向いていると思いますか。

「変化することを許容できる人だといいなと思います。これからは石だけでなく、里山全体の自然に焦点を当てて、土や植物を活かしたものづくりやプロジェクトも考えています。そうした取り組みを一緒に楽しみながらできる人に来てもらえるとうれしいです」

自然から生まれた無造作な形や表情を尊重し、プロダクトをつくる。

決して簡単ではない仕事を続けてきたからこそ、製品への誇りと自信が山田さんや職人さんたちから伝わってきました。

大蔵山スタジオのみなさんと一緒に、石や里山の魅力を活かしたものづくりをしたい。そう感じた人は、ぜひ応募してみてください。

(2023/2/8 取材 宮本拓海)

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