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壁に絵や写真を飾りたい。本や植物を置くためのちょっとした棚があれば、もっと空間がおしゃれになるかも。
小さなものから、少し大掛かりなところまで。自分の暮らす空間を好きなようにつくれたら、暮らしの満足度も上がるような気がする。
今回紹介するのは、暮らしに“つくる”という選択肢を増やそうとしている人たちです。
株式会社PAXは、不動産プロデュースを手掛けている会社。
改装可能な物件を紹介する賃貸検索サイト「DIYP」や、コンセプトを持ったいくつかの不動産サイトの運営、建物や空間、お店の企画・プロデュースなどを行なっています。
今回募集するのは、主にDIYPに掲載する物件を探し、取材からお客さんとの契約まで一貫して関わる営業スタッフ。
DIYに馴染みがなくても、暮らしや住まいに興味がある人にとっては、面白い仕事だと思います。
取材に向かったのは、渋谷駅から恵比寿方面に10分ほど歩いた場所にある、古民家レンタルスペース「並木橋OLDHAUS」。
中に入ると、和洋の雰囲気が混ざり合ったモダンな空間が広がっている。
ここはPAXの運営するスペースで、普段は撮影や展示会用に貸し出している。今日は週一回のミーティングの日ということで、スタッフのみなさんが集まっていた。ミーティング以外、普段はリモートワークが中心だそう。
ミーティングがわいわいと進み、ひと段落したところで代表の村井さんに話を聞かせてもらうことに。
「PAXを立ち上げる前に、改装可能な物件だけを紹介するDIYPっていうサイトを立ち上げました。あれがいつだったかな… PAXを立ち上げたのが2016年で、その6年前くらいからやっていましたね」
当時、DIY可能な賃貸物件は珍しく、オーナーや不動産屋も、需要はないと考えていた。
「日本って、ある意味すごくちゃんとしてるんですよ。部屋をきれいに施工して、完成したものを貸し出すことが当たり前になっている。でも一方で、同じ素材を使った、同じような雰囲気の部屋が多くなっている気がしたんです」
「たとえばアメリカとかだと、引っ越してすぐ壁を好きな色に塗ったりする。そんな自由度があるっていいなと思ったし、求めている人もいるだろうなと。それでDIYPを始めたんです」
当初は村井さんひとりで事業をスタート。まずは改装可能な物件を探すところから始めたものの、物件サイトに情報はなく、不動産屋に行っても「そんな物件はない」と言われる日々が続いた。
あるとき、メディアに取り上げられたことをきっかけに、物件のオーナーから直接掲載の依頼が来るようになったという。
「『穴開けちゃだめですよ』っていうのは、間に入る不動産屋の言葉であることが多いんですよ。オーナーのなかには、ボロボロだけど好きに手を入れていいとか、面白く使ってくれる人に貸したいって言ってくれる、楽しい人もいて。みんながみんな、釘一本打ったらダメなんてことはないんですよね」
DIYPのサイトを見ると、住居だけでなくテナントや事務所向けの物件、スタジオや倉庫など、さまざまな物件が紹介されている。
普通の物件紹介サイトと異なるのは、「躯体に影響のない範囲なら自由にDIY可能」といった改装可能範囲と、原状回復はどこまで必要か、が明記されている点。
取材したスタッフが感じた部屋の雰囲気や、まわりの環境、オーナーさんの人柄。さらには、具体的にどんなDIYをしたら面白そうかといった視点も添えられていて、眺めているだけで暮らしのイメージが膨らんでくる。
内装は自分で好きに手を加えられるぶん、それ以外の決め手となるようなポイントを、少し広い視点から伝えることが大切なのだろうな。
「どの物件も直接足を運んで、まわりの環境も含めて感じたことを伝える。一個一個の掲載に対して、丁寧に向き合います。掲載や契約に至るまでの接点が多いぶん、オーナーと住む人の両方に寄り添うことができていると思っています」
今後はDIYPの世界観やオーナーと築いてきた関係性を活かし、戸建ての賃貸に特化したサイトや、独自にセレクトした物件の売買を仲介するサービスをつくっていきたいと話す村井さん。
新しく入る人も、DIYPの物件情報の伝え方を学んだ上で、新しい事業にも関わってほしいそう。
「DIYPの物件って、改装可能っていうフィルターだけで選んでるわけじゃなくて。自分が住みたいと思えるところをセレクトして掲載しているんです。なので、まずは僕らが紹介する物件を魅力的に感じてくれる人がいいですね」
物件が持つ魅力や雰囲気。どんなことを意識しながら紹介しているのだろう。
続いて話を聞いたのは、不動産営業担当の馬渕さん。
馬渕さんはもともと、別の不動産会社でマンションの企画や営業などをしていたそう。6年ほど前に、知り合いの紹介でPAXに入社した。
「大学で勉強してたのは建築だったんです。けれど、建物をつくるよりは、あるものを活かして人とつながることに興味があったんですよ。それは今の仕事とつながっている気がしますね」
仕事の流れは、まず物件を探すところから。オーナーさんからの掲載依頼に対応することもあるし、不動産屋専用の物件情報サイトから探すこともある。
いい物件を見つけたら、実際に足を運んで取材。撮影も記事作成も、自分で行う。
基本はリモートワークで、ひとりが掲載する情報は週に7〜10件ほど。自分でしっかりとスケジュールを管理して動くことが必要になる。
掲載後はお客さんからの問い合わせに対し、内見や契約に伴う事務処理も行うそう。
「物件探しがむずかしいですね。いっぱい見ても、いいなって思うのは1割とか2割くらいの感覚です」
村井さんも言っていた、「いいな」という感覚。物件を探す上でも大切だと思う。
それってどんな感覚なんでしょう。
「うーん、言葉にするのがむずかしいんですが…。量産された雰囲気の物件じゃない、っていうのはわかりやすいところかもしれません。あとは、クリエイターとかアーティストの方が好んで見てくださっているので、そういった方の心に引っかかるもの、っていうのかな」
たとえば、と馬渕さんが話してくれたのが、「床がない物件」の話。
戸建ての賃貸で、オーナーさんから掲載依頼が来た段階では、床を剥がした状態のままだった。
DIYPでは、完成していない状態で入居者を募り、オーナーが決めた予算内であれば、オーナーの費用負担で入居者の好きに施工できるという物件も掲載している。床がない物件も、そのひとつ。
「好きな床をはれるのもいいし、築90年くらいの古い平屋で、時間を積み重ねてきた雰囲気もすごく良かった。あとは、オーナーさんの自由度が高かったっていうのもあります」
自由度。
「『こういう暮らしをしたい』っていう、住む人が持っている感覚をちゃんと受け入れて、融通を利かせてくれる、みたいな。オーナーさんのなかには、入居者さんと一緒にDIYする人もいて。自分も面白いことをしたいって人が多いんです」
「物件っていう箱の自由度だけじゃなくて、人の自由度もあるというか…。そういう懐の深さみたいなものも、『いいな』のキーワードのひとつかもしれません」
DIYPでは、掲載物件から選んでもらうだけではなく、「こういう雰囲気がいいです」という連絡を受けて、希望に合う物件を探すこともある。
床がない物件も、ある若いカップルのお客さんの「暮らしを開きたい」という問い合わせから、ご縁につながったそう。
「完全にプライベートな空間ではなく、イベントをしたり、あるときはお店を開いたり。半パブリックな空間にできる物件を探されていました」
「いわゆる普通のアパートも案内したんですけど、なんかイメージと一致してない感覚があって。そのタイミングでちょうど、床がない物件のオーナーさんから掲載の相談があって、これだ!って」
床がなかった物件も、DIY後は洋服や靴の販売会をしたり、イベントやカフェをしたりなど、まさに開いた暮らしの場として活用されているそう。
暮らし方や趣味嗜好は、千差万別。ぴったり当てはまる物件は、なかなか見つからない。
けれど、ないものはつくればいいし、そんな価値観を面白がってくれるオーナーさんもいる。DIYPは、その間をうまくつなぐ存在になっている。
お客さんとオーナー、双方とのコミュニケーションも、自然と濃くなるそう。
どこまで手を加えていいのか、水道や電気の配置はどうなっているのか。オーナー側に確認するだけでなく、入居者側へのヒアリングも欠かせない。どんなDIYをしたいのか、しっかりと聞くことで、ギャップが生まれるのを防いでいる。
「コミュニケーションの手間はかかるんですけど、そのぶんオーナーさんとの信頼関係もできるし、入居者さんとも仲良くなることが多くて。お互いに不安がないように、安心して契約できる環境をつくることも大切だと思います」
最後に話を聞いたのは、新しいプロジェクトの企画などを担当している藤田さん。
以前は、建物再生を軸に不動産活用の企画・運営事業を主に行うRバンクという会社の代表をしていた。並木橋OLDHAUSの企画などの取り組みを通じて、PAXの不動産業を変えたいという想いに共感し、参画したそう。
「社内のお悩み相談担当です(笑)。物件売買のサービスを始める準備とか、オーナーさん向けの資産コンサルティングを主に担当してます」
「不動産活用のプロデュースとか、いろいろ新しいことにチャレンジしたいと思っているので、そういうことに興味のある人が来てくれてもいいですね」
スタッフは全部で7名。少人数のチームのため、DIYPだけでなく新しいサービスの構築や運営に関わることもある。
変化を恐れず、面白がってチャレンジする姿勢も大切なのだろうな。
「どんな暮らしが理想で、どんな趣味を持っているんだろう。そんなふうに、人のこだわりに反応できる感性を持っている人だったら、ここでの仕事はハマると思いますよ」
隣で聞いていた代表の村井さんもこう付け加える。
「こだわりの物件を探してる人は、みんなうちに来たらいいじゃんって、そういう気持ちでやっているんです。自分たちの紹介した物件が、住む人の手で面白い場所になる。それってすごくやりがいのあることだと思うんですよ。そういうことを楽しめる人がいいですね」
ないものをつくるって面白い。それは住む人、オーナーさん、ここで働く人、みんなが共有している感覚です。
気になる人は、ぜひDIYPをのぞいてみてください。「なんかこの物件面白そう」という感覚が、そのまま活きてくる仕事だと思います。
(2021/1/12 取材、2023/04/28 更新 稲本琢仙)
※撮影時はマスクを外していただきました。