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株式会社リコムは、住宅や店舗のリフォームやリノベーションを手がける会社。
リコムには、提案から施工管理まで、工事以外のすべてを担うプランナーと、施工にまつわる幅広い職人仕事を担う多能工大工の2つの仕事があります。
6人という社員数ながら、一人ひとりが幅広く手がけることで自社だけで施工が完結でき、工期が短いことも特徴です。
取材で感じたのは、リコムのみなさんがお客さんだけでなく、ともに施工を担う人を大切に想う気持ちでした。
今回は、プランナーと多能工大工を募集します。
建築業界の経験者はもちろん、ものづくりが好きで、自ら積極的に学んでいきたいという強い意志があれば、未経験の人にもぜひ挑戦してみてほしい仕事です。
横浜から地下鉄ブルーラインに乗って20分。
センター北駅から5分ほど歩く。歴博通りという大きな通り沿いのマンションに、QRコードの看板が見えた。
読み取って出てきたのは、リコムのインスタグラム。その看板の奥がリコムの事務所だ。
「先月ここに引っ越してきたばかりなんです。床をつくって壁を塗って、電気の配線もして。トイレの設置以外は、全部自分たちでやりました」
そう話すのは、代表の片山さん。
前職は、賃貸向けのリノベーション会社で大工をしていた。
「賃貸物件だと、似通ったリノベーションを手がけることが多くて。大工としてもっと成長したかったし、生活する人の顔が見えるものづくりをしたいという思いが大きくなっていったんです」
それまで、解体工事などに携わってきた経験や、自身で電気工事やガス工事に関わる資格を取得していたことから、独立して2020年にリコムを立ち上げた。
リコムでは解体や電気工事、左官にクリーニングと、施工に関わる作業を自社で一貫して手がけることができる。
幅広い作業を担うことから、リコムでは大工を「多能工大工」と呼んでいる。
片山さん以外の4人の多能工大工も、それぞれが電気やガスの工事、建築士などの資格を持っているそう。
「いろんな業者さんを介さなくて済むことが多いので、無駄なく工事が進みます。不動産屋さんからは、『工期が短くて助かる』ってよく言われますね」
戸建て住宅やマンション、店舗のリノベーションなどを手がけるリコムでは、すでに設計されたものを施工する案件と、設計から関わる案件の2パターンがある。
「すでにつくられた設計図と現場を照らし合わせてみると、もっとスペースを広くできるところが見つかることが多いんです」
たとえば、と見せてくれたのは、あるマンションの一室の変更前と変更後の設計図。もとは廊下の壁だったところに、新たに収納スペースができている。
「壁を壊してみると、現状の寸法でわからなかった部分が出てきて、余分なスペースがよく隠れているんです。空間が広がると喜ばれるお客さまも多いので、設計書の内容変更を提案することも多いですね」
廊下やトイレの空間が広くなったり、天井が高くなったり。
住んでいる空間が広がるなんて、自分ならとてもうれしい。
「ただ、扉だったら寸法が5ミリ違えば開かないことも当たり前。1ミリのミスも絶対許されないので、とくに未経験の人は慣れるまで大変だと思います」
「お客さまが住むんだから、だめなら完成後でもやり直し。『せっかくつくったのに』とショックを受けることも、はじめは何度もあると思います」
お客さんが生活しているそばで、施工を手がけていくこともある。
顔が見えることで、より丁寧に、大切につくり上げたいという気持ちが生まれてくるのかもしれない。
「現場は毎回違うので、スキルを身につけながら自ら学ぶ姿勢がすごく大切です。あとは気づかい。次の作業に入る職人さんに、どんな状態で引き継いだら作業がやりやすくなるか、考えられる人と一緒に働きたいですね」
お客さんや、一緒に工事を担う職人さん。みんなが気持ちよく関わるために、自分はどう動けばいいのか。
その気持ちがお客さんに寄り添った提案や、工期の短さにつながっているんだと思う。
「『それ、お客さま的にどうかな』っていうのが私の口癖らしくて」
そう話すのは、プランナーの山田さん。
リコムの立ち上げから、前職で同僚だった片山さんとともにリコムを支えてきた。
プランナーの仕事は、お客さんの希望を聞くことからはじまる。
リノベーションのなかでも、工期と費用を大きく左右するのが、トイレやお風呂、ガスコンロといった設備。
現状のもので使っていない機能がないか、生活に適した設備のグレードを確認しつつ、希望の予算と現場のサイズを掛け合わせて、見積もりや図面を作成していく。
ときにはメーカーのショールームに同行して、一緒にイメージを固めることも。
建具や床材、壁紙なども決まったら、建材の受発注や工事に関わる大工への説明、そして現場の施工管理から引き渡しまでを一貫して担っていく。
「一人で担当するのは大変な部分もありますし、責任も重大。でも、全体を把握しているから、たとえば現場でお客さまから質問受けたときも、すぐにお答えできるんですよ」
すべてをわかっている人がいたらお客さんは安心できる。だけど、それだけの仕事を一人でできるようになるには、時間もかかるし、知識も必要だ。
「まずは一緒に現場に出て、私の説明でわからない言葉は聞いて覚えてもらうことからスタートですね。これは繰り返すしかないです」
「あとは、寸法も難しいかもしれません」
たとえば室内ドアの横幅だと、735mm、755mm、780mmなど、メーカーごとに数ミリの違いはあるものの、どの設備にも基本となる寸法がある。
現場で測ったときに、ここに入る設備は既製品なのか特注なのか、すぐに判断することが大切だという。
「お客さまが気に入った商品でも、寸法上、入らないこともある。その場で無理だとわかったら、違うメーカーをご提案していきます」
とはいえ、内装に使われる設備の種類は幅広い。一つひとつ、基本の寸法を覚えるのは大変そう…。
「このカタログの何ページに書いてある、というぐらいまで、何度も何度も読み返して覚えました。商社の人よりカタログに詳しいくらい(笑)」
「最初はわからないことがあって当然ですし、ちょっとでも気になることがあれば、自分からどんどん聞いてほしい。問題ないよ、って返事するような内容でもまったく構わないです」
「半年ぐらいもがき続けたら、やっと点と点がつながってくる瞬間があると思います」
その瞬間が増えていくと、仕事の面白さも生まれてくるのかもしれない。
山田さんは、どんなときにやりがいを感じますか?
「やっぱり、施工前後で雰囲気がガラッと変わったのを見たときですね」
たとえば、と話してくれたのは、お客さんから「こんなタイルをトイレに貼りたい」と相談をもらったときのこと。
「そのとき、イメージに合うタイルがすぐに思い浮かばなくて。しばらくの間、探す時間をもらうことになったんです」
最近は、SNSなどから海外のものを参考にする人も増え、メーカーカタログの知識だけでは対応できないこともある。そのため、お客さんの要望に応じたものを一から探すことも多いのだとか。
「偶然寄ったショッピングモールのトイレで、これかなって思うタイルを見つけたんです。お客さまに、こんな感じですか?ってタイルの写真を送ったら、『そうそうそう!』ってうれしそうで。完成したときはお互いに『…できたね!』って喜び合いました」
「でも本当は引っ越した後が一番気になるんです。置こうとしていたソファー、あの場所にフィットしたかな?とか、コンセントの高さは大丈夫だったかな?とか」
常にお客さんのことを考え続ける、山田さんらしい話だ。
最後に話を聞いたのは、多能工大工の南さん。
「建築業界って厳しいイメージがあると思うんですけど、違う業界からでも挑戦できることを知ってほしいですね」
大工になるまでは、アパレルショップやインテリアショップで販売員などをしていた南さん。
あるとき出会ったのが、リノベーションしたという現代アーティストのアトリエ。
「昔、サンドイッチをつくっていた工場をリノベーションしたそうで。当時の機械がそのまま置かれていたりして、すごく素敵だったんです」
リノベーションに興味の湧いた南さんは、自分も学びたいと、30歳から大工の世界へ飛び込むことに。
最初に入った会社で出会ったのが、片山さんだった。
「未経験でわからないことだらけだったんですけど、聞くとすぐになんでも教えてくれて」
その後リコムに転職。今年で入社3年目を迎えた。
「去年、第2種電気工事士に無事合格して。部屋の配線ができるようになったので、今はそれが一番楽しいですね」
「店舗も手がけるので、使ったことがない建材を初めて使うときや、新しい工法に挑戦するときは、緊張するけど勉強になります」
最近手がけたのが、曲線が特徴のR(アール)壁。
「大きい間口もあれば、小さい間口もあって。ちゃんと計算をしてどういう曲線を出せばいいのかとか、最初は難しかったんですけど、今は余裕でできるようになったので、成長したなって思います」
最近では店舗のみならず、住宅でも取り入れられるようになったR壁。
工法にもトレンドがある。いつか手がけるときのために、南さんはふだんからSNSや建築の本をチェックしているという。
日々の仕事には面白いことだけではなく、難しいことも当然ある。
「先日伺ったお宅で、実際に壁を壊してみたら思っていた以上に中が腐っていて。今は木材が高いんでなるべく使う量を減らしたいんですけど、追加で必要な木材が出てきたんです」
追加の費用が発生するとなれば、プランナーへの相談が必要。想定外の工事によって工期が変動すれば、その後に控えていた職人さんの予定を再調整することも求められる。
「どうしてもこの工期じゃ厳しいってなったら、みんなで残業して頑張るときもあります。重い荷物を運んだり、お風呂やトイレを壊したりする作業は日常的にあるので、体力も必要ですね」
「作業マニュアルは一応あるんですけど、本当に基本でしかなくて。スイッチを入れるとか収納をつくるとか。案件によって求められることや方法がさまざまなので、常に自分から学ぼうという姿勢が大切だと思います」
南さんには、これからやってみたいことがあるという。
「オーダーで家具をつくることも多いんですけど、ビスを一切使わずに家具をつくる大工がうちにいるんです」
「精密につくらないといけないんで難しいんですけど、穴も開かないから後処理も必要ないし、見た目も綺麗で。家具づくりが好きなので、ゆくゆくは自分もやってみたいですね」
一人でいろんな仕事を任されることは難しさもあるけれど、そのぶんやりがいも大きいのだろうなと感じました。
自分のスキルを高めつつ、お客さんと、そして一緒に働く人たちに優しさと気づかいを持って仕事に取り組んでいく。
気持ちよく働きながら、自分自身も成長していける仕事だと思います。
(2023/3/9 取材 小河彩菜)