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リフォームやリノベーションは、費用も時間もかかるものだから、簡単に手を出せるものではないと思います。
自分のまわりでも、想像通りにならなかったとか、思った以上に業者さんとのコミュニケーションが大変だったとか、苦労した話を聞くこともある。
長く時間を過ごす空間だからこそ、理想の空間になるよう一緒に考えてくれる人がいるとうれしい。今回紹介する株式会社リコムの3人は、きっと心強い存在だと思います。
店舗や住宅のリフォームやリノベーションを手がけてきたリコム。
今回は、リノベーションの提案から施工管理まで担当するプランナーと、現場で施工を担当する大工を募集します。
とくに大工は、電気工事や設備工事など、通常は職人さんに任せるような仕事も引き受けられるような「多能工大工」として働きます。
建築が好き、ものづくりが好きな気持ちがあれば、経験はなくても大丈夫。好きだと思ったことには何時間でも没頭できる。そんな人は、きっと居心地よく感じる会社だと思います。
横浜からブルーラインで20分。センター南駅で降り、明るいマンション街を通り抜ける。
5分ほど歩き、角を曲がると真っ青な建物が目に飛び込んできた。株式会社リコムの事務所はこの2階にある。
扉を開けると、ワンルームの部屋に3人の姿が見えた。
「さっきまで健康診断に行っていて。こうやって3人集まるのも久しぶりなんですよ。うーん、お腹が空きましたね…(笑)」
まず声をかけてくれたのは、代表の片山さん。
1年前、前職のリノベーション会社から独立し、株式会社リコムを立ち上げた。
リコムの強みは、施工の作業を最初から最後まで一貫して引き受けられること。
リフォーム、解体工事、リノベーションなど、建築にかかわる仕事に幅広く携わってきた経験を活かして、リコムでは大工のほかに、解体、電気・設備工事、左官やクリーニングなど、一通りの作業を自分たちで行っている。
通常、建設業は作業ごとに業者が分かれていることがほとんどで、それぞれの業者を手配し、順番に作業がまわるようスケジューリングする必要がある。
「住宅、店舗のリノベーションって、マンションやビルの建設と比較すると規模が小さいので、工期が短いんです。建物を引き渡すまでの数週間で、解体屋さん、設備屋さん、電気屋さんと、次々呼ぶのが大変で。これを自分たちでできたら、効率よく仕事ができるなって」
前職の賃貸リノベーションの会社のときからコツコツ勉強を重ね、電気やガスの工事資格を取得したそう。
そこから、どうして独立という道を選んだんだろう。
「賃貸住宅のリノベって、パターン化されているんですね。ワンルームタイプの部屋には無垢材の床を張って、キッチンとお風呂は特定のメーカーのものを入れて。現場は毎回違うけれど、結局同じことを繰り返すだけ。それが物足りなくなってしまって」
「自分自身がスキルアップして、もっといろいろなものをつくってみたい、世界を広げてみたいという気持ちがありました。じゃあ独立だなと思って、リコムを立ち上げたんです」
電気や左官など、ひとりでさまざまな作業を担うことができる「多能工大工」として、片山さん一人ではじめたリコム。その後、前職で出会った2人の仲間が加わって3名の会社になった。
前職の賃貸住宅のリノベーションでは、100点の仕上がりでなくても、より高い家賃で借り手がつけば良しとされることが多かったそう。一方、今はお客さんから直接依頼をもらうことも多く、求められるレベルが高くなった感覚があるという。
「壁や床の仕上がりを見て、施工管理をしている社内のプランナーに『これもう少し綺麗にできるよね?もう一度やってください』って言われることもあって。よりクオリティーを上げる努力をしていかないといけないなと、日々思っています」
「大工の仕事は表に見えない、地味な仕事も多いんです。解体や配線の作業は、すぐに見た目が格好良くなるわけじゃない。コツコツと頑張らないといけない場面も多くて、大変ではあるけれど、仕上がった現場を見るとやっぱりうれしい。やってよかったって思います」
会社を設立して1年。口コミから依頼をもらうことも増えているけれど、人手が足りず、すぐに取りかかれない案件が増えてきた。そこで、今回新しくリノベーションのプランナーと多能工大工を募集することになったそう。
片山さんが「ボス」と呼ぶ山田さんは、プランナーとして片山さんの仕事を支えている人だ。
「プランナーは、プランのご提案、施工管理、メーカーへの発注までを一貫して担当します。すでにこんな空間にしたいっていうイメージが固まっているお客さんもいれば、ぼんやりとイメージしているお客さんもいる。そんなときは、コンセプトづくりからお手伝いします」
お客さんの家族構成や理想の暮らしなど。さまざまな要素をヒアリングしながら、色や設備の種類など、細かいプランをつくっていく。
「白を基調にした空間がいいとか、西海岸のイメージが好みとか。テーマはなんでもいいんですが、全体として統一感のある空間にできるよう心がけています。そのイメージに合う資材を選んでプランをつくるので、あとは予算と相談して細部を詰めます。予算内におさめるのが一番むずかしいですね」
キッチンにこだわりがあるお客さんであれば、予算内で収まるよう、キッチン以外の設備で調整する。無数にある商品を組み合わせてプランをつくるためには、つねに新しい情報をインプットすることも大切だ。
山田さんはどうやって勉強しているんですか?
「もう、カタログを見て覚えて、の繰り返しです。新商品が出ると商社の人が説明してくれるんですけど、それだけを鵜呑みにしちゃいけないと思っていて。メーカーの人ではないから、細かいところは自分で確かめないと正確な情報を得られないことがあるんです」
「自分がちゃんと商品の仕様や特性を理解していないと、お客さんにも、施工する職人さんにも納得のいく説明ができない。施工中は、職人からもアドバイスをもらうので、知識のいいところ取りをしています」
同じ商品でも、現場ごとに使われ方が変わる。配線の向きや納まりなど、施工してみてわかることもあり、毎回発見があるそう。
「図面ではおしゃれだと思っていても、完成した部屋を見ると『コンセントの位置がいまいちだな』と思うこともある。反省点は学びにして、次の提案に活かします。現場ごとに正解がある。終わりがないから楽しい仕事ですよね」
工事中の施工管理もプランナーの仕事。職人さんとやりとりをしつつ、工期中は何度か現場に足を運んで、完成イメージと現場にずれがないか、確認するようにしている。
「職人さんにこうしてほしいって伝えるのも、1回ですべてを伝えられたらいいですけど、なかなかむずかしくて。伝えたつもりになっていることもあって、何度もやりとりすることはあります。これは経験というより、細かい気づかいができるかどうかですね」
新しくプランナーの仕事をはじめる人も、まずは実際にお客さんや職人さんとやりとりを重ねながら学んでいくことになる。わからないことがあれば隣に山田さんがいてくれるので、なんでも質問してほしい。
「わからないことを素直に聞けるかどうかは、この仕事を好きになるための重要なポイントだと思っていて。お客さんにも職人さんにも気を配る仕事なので、人間観察や人と話すのが好きな人なら、きっと楽しくやれるんじゃないかな」
最後に話を聞いたのは、大工の南さん。30歳から未経験で大工の世界へ飛び込んだ方で、これから大工をはじめる人にとっては心強い存在になると思う。
「写真とか取材とか苦手で…。緊張しています」
ぽつりぽつり、ゆっくり話してくれる。
もともとファッションが好きで、いろいろな店舗の内装を見るうちに、建築に興味を持つようになったそう。
「お気に入りのブランドが、リノベーションした倉庫に新店を出したんです。見た目はただの一軒家なのに、一歩入ると倉庫らしい広い空間で、そのブランドの世界観があらわされているのに感動して。僕もこんな空間をつくりたいと思って建築の世界に飛び込みました」
大工と聞いて想像するのは、師弟関係の厳しい職人の世界。未経験で働いてみて、どうでしたか?
「最初に入った会社は、未経験からはじめた人が多かったんです。アパレルから転職した女の子もいました。片山とはそのときからの付き合いで、わからないことがあれば気軽に聞けるし、的確なアドバイスをくれる。『見て覚えろ』という雰囲気ではなかったので、やりやすかったです」
「ただ、やっぱり最初は体がついていかなくて。片道2時間かかるような遠方の現場もあって、早起きしないといけない日もあるし、重いものを持ち上げる作業がずっと続いて、体がおかしくなりそうと思ったこともありました(笑)」
天井に貼り付けるボードは、薄いものでも10キロほどあるそう。慣れないうちは2人で持ち上げていたけれど、経験を積み筋力もついたおかげか、今はひとりで作業できるようになったのだとか。
「知識がつくと、その度に新しいことができるようになる。それがすごくうれしいんです。それに、SNSを通じて完成した部屋を人に褒めてもらえることもあって。ものづくりが好きだからこそ、続けてこられたんだと思います」
「セルフリノベーションに憧れて大工をはじめた人も多いです。DIYをできるようになりたい、くらいの気持ちからでもいいと思います。自分の夢とか好きなことって、頑張るモチベーションになりますよね」
南さんの目標は、工場をセルフリノベーションして家をつくること。
「工場って格好いいじゃないですか。古さを活かしつつ、自分の味を出せるのはリノベーションのいいところだと思うんです。どんな空間にしようか、想像するだけでワクワクします」
ここで、隣で聞いていた片山さん。
「新しく大工をはじめるとき、大切なのは『測る・切る・留める』の3つなんです。これがちゃんとできるようになれば、一通りの仕事はすぐ覚えられるようになりますよ」
大工の場合、片山さんと一緒に現場に入り、正しい寸法を測って切って、ビスで留めるところからはじまる。現場で手を動かしながら基本の動作を身につけていくなかで、おのずとほかの技術もついてくるのだと思う。
「ゆくゆくは電気工事も一緒にできるようになるとうれしいですね。ひとりで作業するより、ふたりでやる方が楽なので」
「資格取って、早く助けてください(笑)」と、横を向く片山さん。笑いながら、「頑張ります」と返す南さん。
ふたりを見ていると、師弟というより、ものづくりが好きな仲間と呼ぶほうがしっくりくる。
自分が好きなものを、形にしたい。
その思いを共有しているからこそ、リコムの人たちはお客さん一人ひとりの暮らしに寄り添った提案ができるのだと思います。
(2021/10/8取材、2022/7/8再募集 阿部夏海)
※撮影時はマスクを外していただきました。