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「多様性」という言葉をよく目にするようになりました。
さまざまな人種や価値観、文化、思想を受け入れる。お互いが違うということを認識し協働することで、新しいパワーが生まれる。そんな取り組みが世界レベルで実施されています。
そして今、まちの小さな工場で、そのチャレンジを実際にかたちにしている人たちがいます。
有限会社コスモテックは、工場や研究現場での作業を自動化する機械の設計・製造・販売を手掛けている会社。
つくっているのは、いわゆるロボット。「こんな作業を自動化したい」という相談を受けて、どうしたら機械で自動化できるか考えて設計し、形にする。その一連の流れをワンストップで担っています。
今回募集するのは、設計や加工、組み立てなどに携わる人。正社員だけでなく、パートやアルバイトのスタッフも募集しています。
年齢や性別、そして国籍も。コスモテックで働く人は、立場に関係なく、のびのびと働いているように感じました。
埼玉・入間市(いるまし)。
コスモテックがあるのは、最寄りの入間市駅から車で10分ほどの場所。
この辺りは狭山茶が有名で、大きな道を少し逸れるとたくさんの茶畑が広がっている。
「おひさしぶりです!元気でしたか!」と大きな声で迎えてくれたのが、代表の大橋さん。
2年前の取材から変わらず、パワフルで快活なのが魅力的な方だ。
コスモテックは、1983年に創業した会社。大橋さんは3代目になる。
主につくっているのは、「アクチュエーター」と呼ばれる機械。モーターをつなぐと可動部分が直線的に行ったり来たりする仕組みで、センサーなどの部品をつけることで、さまざまな作業を自動化することができる。
お客さんから自動化したい作業を細かくヒアリングし、それ叶えるロボットをつくって納品する。すべて自社内で一貫して対応できるのがコスモテックの強みだ。
この2年間で、何か変化はありましたか?
「そうですね… たとえば、主婦の方だけじゃなく、外国の人の雇用も多くなりました。今はフィリピン人が3人、パートで働いていますね。日本語を話せる人もいれば、ほとんどわからない人もいます」
日本語がわからないスタッフにも、流れ作業のような単純なものではなく、組み立てや機械の準備作業など、複雑な作業も任せているそう。
簡単な作業だけなのかと思っていたので、意外でした。
「うちで大事にしている考え方の一つが『バリアをつくらない』ってことなんです。年齢や性別、国籍なんかも関係ない。そんなバイアスを持つ必要はないと思っていて」
「日本語が得意じゃなくても、マニュアルを英語でつくるとか、英語で説明するとか。お互いが歩み寄ることでうまくいく。それがスタッフのためになるし、会社の底力を上げていると思うんですよ」
一人ひとりをリスペクトする姿勢が、コスモテックにはある。
「ちゃんと成立しているのが面白いでしょう? 経験がなくても、やる気や思いがあればできちゃうんですよ」
「だから将来がすごく楽しみなんです。ゆくゆくは外国の人もリーダーになってもらえたらいいなと思っていて。国籍関係ない環境になってきたのが、この2年くらいで変わったことかな」
大橋さん自身は海外の大学に行っていたのもあり、英語は得意。必要な情報は直接伝えることができている。
未経験でもいいし、日本語が不得意でもOK。また最近では、学生向けのインターンシップも募集している。
中小企業でこういった雇用をしているのは珍しいと思います。
「製造業のなかでは少ないと思います。ただ、言語的な問題とかなんてなんともないと思ってるから。努力すればいいじゃんお互い。人柄がわるいのは良くないけどね(笑)」
「誰しも最初は素人なので。だからやってみることが大事ですよね。やらないとできるかどうかわからないから」
経験者も未経験者も一人の人間としてリスペクトされる。そしてその人自身も、周りの人をリスペクトする。
それができているからこそ、コスモテックにはいい循環が生まれているのだろうな。
さらに伸ばしていきたいと考えているのが、ラボオートメーション。大学や研究所の研究室での作業の自動化だ。
たとえば、「分注」という一定量の液体をいくつもの試験管に入れる作業。基本は人の手でおこなわれているけれど、これを自動化できたらその時間を別の作業に充てることができる。
「ラボの自動化を進めることによって、頭脳のリソースをほかに活かすことができる。それってまわりまわって社会貢献になるし、結果ぼくたちにとって大きなモチベーションになると思うんです」
自分の手がけた仕事が、画期的な研究成果につながっているかもしれない。そう考えると、自然とやる気も生まれそうだ。
「これからは女性のライフステージに合わせた働き方もつくっていきたいと思っています。産休とか育休とか。今までなかったのよ」
「なんでかっていうと、それくらいの年齢の女性に働いてもらうことがなかったから。若い女性も歓迎だし、男性もそう。制度を整えていくためにも、さまざまな世代と一緒に会社をつくっていきたいですね」
加えて、今はコスモテックのホームページやSNSなどがない状況だそう。自分たちの取り組みを発信していく上でも、そういったことが得意な人が来てくれてもうれしい、とのこと。
大橋さんの話を聞いていると、考え方が柔軟だなと感じます。
「もともとは偏見だらけの人間だったんです(笑)。それがぶち壊れるきっかけが18歳のころにあって。日本にいたとき、予備校で一緒だった男の子が、同性が好きだって人で。それに対して『なんだお前』みたいな反応をしてしまったんですよね」
「その子は『その反応は普通だと思うし、そう思う人たちに対してどうも思わない。マジョリティとマイノリティの話なだけだよ』って。そのときに、パッカーンと殴られた気になって。器のデカさの違いを感じたんです」
原体験が価値観をつくる。大橋さんにとっては、18歳のときの出来事が今の会社の運営や生き方にもつながっているのだろうな。
続いて話を聞いたのが、2年前、日本仕事百貨の記事をきっかけに入社した阿部さん。
「見てください。机に阿部ワールドが広がっているでしょう(笑)」と大橋さんが紹介してくれたその席には、光り輝くキーボードが二つも。
「好きなんですよね。自分の好みのものを使うことで、気分を上げています」
阿部さんは、以前は大手機械メーカーの仙台営業所で機械販売の営業職をしていたそう。
「設計は経験したことがなかったんですが、記事にあった『まず挑戦してみよう』っていうのがいいなって。じゃあ俺も頑張ってみようと思って応募しました」
実際に働いてみてどうですか?
「パートも社員も関係なく、みんなガッツがあるというか。仕事に対してポジティブに取り組んでいるように感じました」
「あとは、自分から積極的に仕事を取りにいく人が多いですね。参加費がいる外部の研修とかも、行きたいですって意思表示をすれば、いいよって言ってくれる。パートさんに対してもそんな対応をしているのはすごいなと思いました」
応募するときに悩んだのは、コスモテックの情報がインターネット上に少なかったこと。日本仕事百貨の記事くらいしか、まとまったものがなかった。
「正直、社長がバリバリのワンマン経営なのかなって思いました。ガテン系みたいな(笑)。初めて面接で会ったときもパワフルな方だなっていう印象で。けれど、すごく気を配ってくれる人だっていうのは感じました」
働き始めてから、社長の印象はどうでしょう?
「いろんな人をちゃんと見ているし、いい意味で兄貴肌で。入社してすぐ、新型コロナウィルスで体調を崩して、2週間くらい家から出られなかったんです。そのときも、車で1時間かけて食べ物とかを運んできてくださって。いい人すぎるって思って(笑)」
配属されたのは、特注品をつくる部署。3DCADの使い方を実務を通して勉強しつつ、ドリルなどの機械の動かし方も学んでいった。
仕事内容としては、まずお客さんからヒアリングをおこない、どんな作業を自動化したいのかを明らかにする。
それが実現可能なのかを判断したのち、可能であれば詳細な内容を聞いて、機械を設計。完成した構想図をお客さんに見てもらい、実際に制作し納品する。納品後の微調整も仕事のうちだ。
「機械で実現可能かどうかは、最初は同席する社長が判断してくれます。経験を積めば、自分でも判断できるようになるのかなと」
最近阿部さんがつくったというのが、有機化学の実験に使うための機械。
機密情報があるため、写真や詳細な情報は書けないけれど、これがあることで研究者はかなり楽になる。
「3DCADのソフトを、ようやくそれなりに操作できるようになってきたときに、やってみる?って言われたのがこれで。苦しみましたね(笑)。いろんな方から教えてもらいました」
簡単にいうと、溶液を特殊な紙につけ、ブラックライトで照らして溶液の染み込み方を見る機械だそう。
「経験はなくてもいいと思っています。わたし自身未経験なので。なにが必要かというと、素直さを持ちつつ、自分の考えをちゃんと持っている人でしょうか」
「相手の考えを尊重しつつ、前向きに取り組める人だといいですね」
社長の大橋さんがよく口にするという、「真摯なものづくり」。
クライアントも一緒に働く仲間へも、その姿勢をまず大切にしてほしい。
最後に聞いたのは、「この人もぜひ」と社長の大橋さんに推してもらった、フィリピン人のマリアさん。
日本語はかなり話せるほうで、取材にも問題なく答えてくれる。
機械の仕事はコスモテックが初めて。以前はお弁当工場での製造作業に長く従事していた。友人からの紹介でコスモテックへ。
「来たときはね、不安だった。こんな仕事初めて見たから。ドリルを交換するとか、部品を入れ替えるとか」
「でもみんが優しく教えてくれて、できるようになった。まだ完璧じゃないけど、なんとかできる。みんな優しいからね」
英語でマニュアルをつくってくれた人もいたんですよね。
「そうなの。英語と日本語をお互い学ぼうって言って。日本語わからないとき彼に聞いたりするの。そう、阿部さんね(笑)。彼は一生懸命、英語を勉強してるからね。阿部さんもほかのスタッフもみんないい人」
印象に残っていることを聞いてみると、ミスでドリルの機械を壊してしまったときのことを話してくれた。
「ドリル壊しちゃったの。絶対怒られると思って。でもみんな、大丈夫?怪我してない?って言ってくれて。あなたは初めてなんだから間違いするのは当たり前だよって。すごい泣いた。本当にうれしかった」
「あのことは忘れられないよ。だって高いもの壊しちゃったんだもん。…ごめんね、涙出た。思い出して」
涙ながらに話してくれたマリアさん。
異国の地で働き、やさしい声をかけてくれる環境があることはありがたいことなんだろうな。
茶畑に囲まれたロボット工場。
技術の進歩と同時に、組織として、そして人としての成長も取材を通して感じました。
さまざまな事情から、働く一歩をなかなか踏み出せない人も。
ここだったら、自分の個性を活かしながら、自分らしい働き方をともにつくっていくことができるかもしれません。
(2024/2/19 取材 稲本琢仙)