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茶畑に囲まれたロボット工場

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さまざまなものがつくられている今の世の中。その製作過程には、人の手だけでなく、機械の力で行う作業も数多くあります。

それらは、ファクトリーオートメーションやラボオートメーションと呼ばれているそう。今回紹介するのは、その領域を人知れず支えている人たちです。

有限会社コスモテックは、工場や研究の現場で行われる作業を自動化する機械の設計・製造・販売を手掛けている会社。

つくっているのは、いわゆるロボット。こういう作業を自動化したい、という相談を受けて、どうしたら機械で自動化できるか考えて設計し、形にする。その一連の流れをワンストップで担っています。

今回募集するのは、設計や加工、組み立てなどに携わる人。正社員だけでなく、パートやアルバイトのスタッフも募集します。

 

コスモテックがあるのは、埼玉県入間(いるま)市。

入間市駅から車で15分ほど走ると、見渡す限り広大な茶畑が。入間はお茶の栽培が盛んで、ここで収穫されたお茶は「狭山茶」として販売されている。

コスモテックの工場があるのは、茶畑を下って道を一本挟んだ場所。

手をしっかり消毒して中に入ると、大きな機械がたくさん並んでいる。ガーっと音を鳴らしながら作業している人の姿も。よく見ると、操作しているのは女性が多い。

「うちで働いている人は、パートとして働いてくれている主婦が多いんです。会社の仕組みや機械の操作方法を整理して、誰でも作業ができるように整えてきたんですよ」

そう話してくれたのは、代表の大橋さん。

ハキハキと大きな声で話す方で、話しているとつられて声のボリュームが大きくなる。

コスモテックは、1983年に創業した会社。大橋さんは3代目で、代々血縁関係のない人が会社を継いできた。

「元々はコスモテックの外注先に勤めていたんです。そのつながりから、先代から跡を継いでくれないかと相談があって」

「ほとんど迷わず『やります』って決めました。会社の体制とか人員とか、いろいろと手を加えないといけないところはありましたが、事業自体は将来性があるなと思っていたので。不安よりもワクワクした気持ちでしたね」

よくよく聞くと、大橋さんは学生時代アメリカの大学へ進学。経営を学び、卒業後も様々な業界でプロジェクトマネージャーとして働いていたそう。

その経験と知識を活かし、中小企業の事業再構築にも携わってきた。

「コスモテックがずっと軸にしてきたのは、工場や研究所の作業を自動化する、アクチュエーターという機械をつくることです。モーターのエネルギーを直進運動や回転運動にする、いわゆるロボットですね」

「モーターをつなぐと、可動部分が直線的に行ったり来たりする。その動作制御装置も含めて製作している、というのが簡単に言ったうちの仕事になります」

もちろん、これだけでは作業の自動化はできない。センサーをつけて動きに規則性を持たせたり、細かいアームをつけたり。自動化したい作業に合わせた機械をワンストップで製作できるのが、コスモテックの強みだ。

「お客さんの困りごとをヒアリングして、どうしたら製品化・自動化できるかを一から考えていく。それを私は、コラボレーションエンジニアリングと呼んでます。そうして開発したものを、今度は量産できるようにする。その一連の流れが会社の軸になっているんです」

コスモテックでは、一課・二課・三課というふうに部署が分かれている。

一課は既製品を量産する役割。二課がセミオーダー製品を扱っていて、三課はフルオーダーの特注品。三課で開発したものが、二課、一課に流れていくこともある。

お客さんは、主に企業の工場や大学の研究室など。自動化する機械はそれぞれの現場の企業秘密や研究内容に直結しているため、対外的に製品をアピールするのがむずかしいのだとか。

「すごく簡単なもので言うと、試験管がたくさん並んでいて、それに一定の量を入れる分注機とか。」

「自動化もラボだけじゃなく、大きな食品工場でパック詰めするのだって自動化だし、携帯電話の外観検査や組み立ても自動化されている。ニーズはすごく広いんです」

機械ができることは機械に。それによって、人がよりクリエイティブな作業に集中することができる。

製品でそれを実現するのはもちろん、社内の働き方でも同じことが言える、と大橋さん。会社を引き継いでから、さまざまなことを変えてきた。

「ひとつは、属人性を排することでした。この人しかできない、をできるだけなくして、誰にでもできるように作業を標準化する」

「たとえばネジひとつでも、『キャップボルト持ってこい』って言われてもわからないじゃないですか。でも写真があって文字が書いてあれば、誰でもイメージできる。そういう細かいところから変えていきました」

誰でもできて、かつ効率的に。その過程では、コスモテックを支えるパートタイムのお母さんたちの経験が活かされている。

「主婦って炊事・洗濯・料理、いろんな家事をしていて、そこには必ず作業の効率化や最適化が含まれているんですよね」

「洗濯物を干しながら、冷蔵庫にあるこの材料であの料理をつくろうって考える。これってすごいことだと思っていて。うちで進めてきた作業の標準化には、まさにその力が活きているんです」

スタッフは27名いて、うち9名がパートの女性。性別関係なく大きな機械も動かすし、加工や検査、製品の組み立てなど、さまざまな仕事を任されている。

「私がいつもみんなに言っているのが、真摯なものづくりをしようっていうことで」

真摯なものづくり。

「我々がつくるものによって、たとえば毎日あった残業をなくすことができたり、新しい学術的発見につながったり。人の人生を豊かにすることができる」

「だからこそ、納期や約束を守るのはもちろん、外注さん含め関わる人への態度とか、仕事場を整理整頓するとか。一つひとつに真摯に取り組む。これが大事だと思うんです」

なるほど… 働く人のモチベーションも、社会に貢献できる、という部分が大きいんでしょうか。

「もちろんそうだけど、それだけじゃないですね。やっぱりお金。そこはバランスだと思っていて。世の中に貢献しているんだっていう満足感があっても、それに対する報酬が十分じゃないと満足できないと思うんです」

「仕事に対して力を注げば、ちゃんと報酬が与えられる仕組みにしてます。だから年功序列とか関係ない。うちはパートさんでも関係なくボーナスがあります。会社が成長して、みんなの給料を上げることができるのが、経営者としては一番うれしいことですよね。まあこれって普通のことなんだけど」

大橋さんは何度か「普通」と話してくれるけど、普通のことを続けることは、案外むずかしい。

「そうなんだよ、大変(笑)。人ってさ、余裕がなくなると『みんながハッピーに』っていうことに目を向けられなくなる。だから、たまたま今そういうことを言えてるだけかもしれない。でも言えるタイミングのときに言えてたら、会社としてはうまくいくんじゃないかなって。そんなふうに考えてます」

 

「うちはスタッフがすごいから! 未経験からがんばってる人が多いんだよ」と、大橋さんが紹介してくれたのが、伊藤さん。

三課に所属していて、主に特注品の設計・製造を担当している。

「趣味で椅子をつくるくらいものづくりが好きで、たまたま見つけたのがコスモテックでした。ものづくりが楽しくて続けていますね」

働き始めて6年目になる伊藤さん。若手ながら、作業の標準化や第二工場設立で成果を出し、三課の課長を務めている。

三課では、どんなものをつくっているんでしょう?

「言えるものだと、ある新しい物質の研究をしている研究室があって。その物質を抽出するための装置をつくってほしいっていう依頼がありました」

「言葉であらわすのがむずかしいんですけど… やることだけ言うと、物質の塊を特殊なシートに着け、引きはがす。これを繰り返すことによって、特定の形状の物質を得られるようになる。それを自動化するための機械です」

詳しく聞こうとしたけれど、研究内容の機密もあり、物質名や機械の写真も公開することができない。

想像するしかないけれど、テープを何度もくっつけて剥がす、みたいなイメージでしょうか?

「そうです。人がやってたらそのコストもかかるし、研究者がそんな作業に時間をとられていたらもったいないじゃないですか。単純な作業を機械に任せることで、研究者も時間をより有効に使えると思うんです」

最初にどういう作業を自動化したいのか、要望を詳しくヒアリングする。その上で、どんな部品を使えばそれが実現できるのか、チームで考えて設計・製作していく。

「うちの会社は、この機械がほしいっていう具体的な依頼がないんですよね。抽象的なイメージから想像して、お客さんの希望を形にする。自分の頭のなかで考えていたものが段々と形になって、お客さんに喜んでもらえるのは、すごくうれしいですよ」

 

最後に話を聞いたのが、最近一課から三課に異動した五十嵐さん。週5日、パートタイムで働いている。

「最初は、設計書通りに製品を組み立てる作業からでした。プラモデルみたいにどんどん形になるのが面白くて。あとはパートとか関係なく、意見を取り入れてくれる風通しの良さもいいなと思います」

たとえば、さっき大橋さんが話してくれたネジの保管方法も、パートの女性が考えたもの。

ほかにも、作業の標準化を任せられたり、やりたい人は設計にも携われたり。希望次第で、仕事と裁量が与えられる環境がある。

五十嵐さんも、最近は3DCADを勉強しているところなのだとか。

「まだまだ勉強中で、設計も伊藤さんとかの力を借りながらです。以前、試験管がブレないように固定するホルダーをつくったんですが、見た目は単純でも設計するのはむずかしいんですよね」

「大変ではあるけど、仕事を任せてもらえるのは面白いです」

聞いていると、とくに三課の仕事はクリエイティブで、面白そうですね。

そう口にしたところ、すかさず大橋さんからツッコミが入る。

「三課だけじゃないよ。一課の仕事も、一つの機械を何百っていう部品を組み合わせてつくるんだけど、部品が今いくつあって、どのタイミングで発注するのか。その仕組みもゼロからつくるんだから」

「その人が優秀かどうかじゃなく、真面目で向上心を持っているかどうかが大事で。あとは成果を出して報酬をもらうっていう野心。そこに面白みを感じてる人が、今がんばってくれているんだと思うね」

 

与えられた仕事をやるだけでなく、自分の頭で考えて仕事をつくっていく。

茶畑に囲まれた工場では、そんな工夫の積み重ねで、日々新しいものがつくられています。

(2022/3/18 取材 稲本琢仙)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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