求人 NEW

黙々と、着実に
成長を重ねていく
黒子の家具づくり

ものづくりの世界では、さまざまな思いを持つ人が働いています。

黙々と目の前の作業に集中することが好きな人。自分の手で完成させたものを見て満足する人。自分の技術が向上したことに喜びを感じる人…。

何がやりがいになるかは人それぞれ。具体的なモノをつくっている人たちの仕事は、モチベーションを高める要素を見つけやすいように感じます。

空間に合わせた特注家具やキッチンの設計・製造・施工、アンティーク家具や文化財の修復などを手がけているのが、ニシザキ工芸株式会社。

とくに塗装は、自社で専門の塗装工場を持ち、職人の高い技術で仕上げるこだわりの工程。一つひとつの家具に合わせて、手作業で塗りを施しています。

今回募集するのは、家具塗装職人とプロダクトマネージャー。どちらも未経験でも構いません。

ものづくりに興味がある。黒子として働くことが面白い。黙々と目の前の作業に集中したい。

そんな人にはぴったりの仕事だと思います。

 

東京・清澄白河。

日本仕事百貨のオフィスがある「リトルトーキョー」もこの場所にある。最近は下町の雰囲気が残りつつ、カフェや雑貨屋、居酒屋など、新しいお店が増えてきた。

ニシザキ工芸のオフィスは、駅から歩いて5分ほどの場所にある。

入口の暖簾をくぐり中に入ると、代表の西崎さんが迎えてくれる。

「ご無沙汰しております。おかげさまで以前の募集で来てくれた人が活躍してくれていて」

「今回は単純に人手が足りていないのもあるし、将来を見据えて次の世代を育てていきたい。両方の意味合いがありますね」

昔から材木屋が多かったこの地域。

ニシザキ工芸は西崎さんのおじいさんが創業した会社で、当時は江戸指物(さしもの)という和家具をつくっていた。

和家具づくりの技術を活かし、2代目からは箪笥などの婚礼家具をつくる会社に。しかし、婚礼家具の需要も次第に減少。西崎さんが会社を引き継いだときに、婚礼家具から特注家具の製造へと事業を変える決断をした。

「うちの強みは婚礼家具で力を入れていた“塗り”なんです。それを活かすには、と考えて特注家具の世界に足を踏み入れました」

家具の仕上がりを左右する塗りの工程。

その高い技術でつくられる美しい塗装は、ニシザキ工芸の大きな強みになっている。

強みである技術を脈々と引き継いでいきたい。そのために西崎さんが考えたのは、職人の世界の当たり前を変えること。

「昔の職人は、『見て盗め』とか言って、丁寧に言葉で説明することが少なかったんですよ。でも僕が理想としている職人の在り方っていうのは、『この仕事はこういう意味があってやっている』って、論理的に作業を説明できることで」

「説明できる=作業を言語化できるほど理解している、ということになるし、そのほうが後輩にとってもわかりやすい。これってすごく重要なことだと思うんです」

自分の技術を言葉にして説明する。

言うのは簡単だけれど、実際におこなうのは難しいもの。

最近は近くの中学校の職場体験を受け入れて、子どもたちに仕事を教える機会をつくっているそう。

ほかにも、インテリアの専門家たち向けたものづくりの実習を実施。職人たちが素人に技術を伝える場を意図的に用意している。

“塗り”が大きな売りになっているニシザキ工芸。その技術は、木工塗装技能士会の技能コンクールでも発揮されている。

昨年は、無地のけん玉を塗る自由課題での優勝、今年は見本板を再現する規程課題で、ニシザキ工芸の女性スタッフが一級技能士と二級技能士の両部門で優勝した。

「技術の世界でうちのスタッフが優勝してくれて。錚々たる先輩たちにも引けをとらないわけだから。本当にうれしいんですよ」

黙々と、淡々と。“塗り”の過程では、ひたすら研磨と塗装を繰り返す。

同じことの繰り返しに見えるけれど、特注家具なので同じものは一つもない。それぞれの家具の特徴をつかんで作業するのは、頭を使う作業だと思う。

「縁の下の力持ち的な仕事なんですけど、結果的に自分が手がけたものが完成することが喜びにつながる」

「そういう意味では、プロダクトマネージャーも職人で。裏方として、クライアントのつくりたいものを形にする仕事なので」

建築家がつくる住宅・高級マンションで使われる家具の製作や、アンティークの修復を依頼されることも。高単価なものを扱うぶん、むずかしい依頼も多い。

「ヒリヒリと痺れるような場面があります。そのぶんできあがったときの評価はありがたい。プレッシャーもあるけれど、お客さまの評価と、自分でつくり上げた満足感。それをやりがいにしてくれたらいいなと思いますね」

 

塗装職人と同じく、日々ヒリヒリとした現場を体感しているのが、営業設計の日暮さん。設計をしながら、プロダクトマネージャーも担当している。

日暮さんは14年目を迎えるベテラン。以前はドイツから輸入しているキッチンのオプション部分を販売する会社に勤めていたそう。

仕事をするなかで特注家具に興味を持ち、ニシザキ工芸にやってきた。

「図面を見て見積もりを出して。必要なものをピックアップして、どういう形になるのか想像する。毎日がすごく新鮮で楽しくて、気づいたら14年も経っていました(笑)。毎日が勉強ですね」

お客さんの多くは、建築設計事務所やデザイナー。「こんな空間にしたい」「こういう家具がほしい」といったオーダーを受けて、それを実際の空間に落とし込んでいくのがプロダクトマネージャーの仕事。

要望に沿ったものを設計し、協力会社や職人さんへ細かな指示を伝える。完成した家具をトラックに積み込んだり、現場で階段を使って運んだりなど、力仕事もあるそう。大きい家具だと、現場で組み立てることもある。

「やっぱり納まったところを見られるのが、家具屋の醍醐味なんですよね。つくるだけじゃなく、設置するまでがわたしたちの仕事なので」

ここで、ある案件で洗面ボウルを納めたときの話をしてくれた。

「いま携わっている物件では、海外のガラスの洗面ボウルを輸入して取り付けていて」

「洗面ボウルには排水金具っていう部品があるんですが、蛇口の色と揃えるのがセオリー。けれど、ボウルと蛇口のメーカーが違ったので、色が合っていなかったんです」

似た色の排水金具を輸入しようとしたけれど、実物は見られないので写真で判断するしかないということに。しかも特注色のため、排水金具一個で20万円。緊張感のある選択を迫られた。

「失敗できないですよね(笑)。決断するのに迷いに迷って。結果、無事取り付けて色も同じような感じになったので、すごく安心しました。現場ではいろんなドキドキがありますよ」

日暮さんはどんな人と働きたいですか。

「積極的に関わろうという姿勢がある人かな。その上で、勉強させてもらうっていう謙虚な姿勢であってほしいなと思います」

「ただ、うちは休みの日も仕事になったりとか、納期の関係で遅くまで仕事をしなきゃいけなかったりとか。たまにそういうこともあるのは理解してもらえたらと思います。けれど、大変だったことを上書きしてくれるくらい、大きな達成感のある仕事ですよ」

 

ここで場所を移動して、本社から歩いて2分ほどの塗装工場へ。

中に入ると、職人さんたちが黙々と手を動かしている。

挨拶をして上の階へ。大きな机のある休憩スペースで、塗装職人の山﨑さんに話を聞く。

ものづくりが好きだったという山﨑さん。家具づくりを学べる専門学校にも通っていて、ニシザキ工芸でインターンシップを体験したのをきっかけに、入社したいと思ったそう。

「インターン中も入社してからも、一つひとつ丁寧に教えていただいて。細かいところまでしっかり指摘してくれる。そして塗装もすごくきれい」

「これだけ丁寧に教えてくれるならやっていけるなと。あと一人で作業することが多くて。黙々と作業するのが好きなので、それもよかったです」

間違ったまま覚えていかないように、細かいところまで指摘してもらえるのは、日々学びになるだろうな。

「塗り込みが一番成長したなと自分は感じますね。昔はよく塗料を塗りすぎて垂らしてしまっていたんですけど、最近は垂らさずにできるようになりました。たまに褒めてもらえるので、成長しているのかなって(笑)」

 

最後に話を聞いた吉良さんも、日々成長する機会があると感じているそう。

山﨑さんの先輩で、入社して6年目。日本仕事百貨の記事を読んで入社を決めた。

「もともと絵を描くことが好きで。親とか祖父母が工場で働いたり、お米をつくったりしていたので、自分もつくる仕事をするんだろうなと思っていたんです」

学校でも絵の勉強をしていた吉良さん。そのなかでプロダクトデザインの面白さに気づき、デザイナーを目指したものの、なかなかうまくいかず断念することに。

「原点に戻って、ものをつくる仕事に携わろうと思ったんです。ちょうどそのときに、ニシザキ工芸の募集が出ているのを見つけて、働きたいと思いました」

働いてみてどうですか?

「想像していたより作業工程が多いなと。きれいな塗装をするには下地が大事なので、研磨をして塗ってもう一度研磨して、みたいな」

「『きれいな塗膜は、きれいな下地から』なので。研磨の時間を大事にしないといけないって、最初に教えてもらいましたね」

最近は、仕上げの工程を任せてもらうことも多い。仕上げの塗りはとくにきれいに塗らないといけないため、塗料の粘度や量を絶妙に調整する必要がある。

「そのバランスがうまくできたときはうれしいですね。きれいに塗れると、水を張ったように美しい表面になるんです」

研磨の作業も、時間内に終わらせるためには段取りを考えた上で、素早く作業しなければならない。

立ち作業かつ、研磨は手を早く動かさないといけないため、体力や筋力も必要。女性でもできるけれど、最初は大変に感じるかもしれない。

「体力があって、想像力が豊かな人だといいと思います。図面から空間の完成図を頭で考えて、この扉はどういう位置につくかとか、想像力が必要な仕事なので」

「あとは次に使う人のために道具の手入れもしっかりする。チームで働くために、気を遣うことができる人だとうれしいですね」

 

職人として、誇りと自信を持って、イメージを形にする。

職人集団でありながらも、時代に合わせたやり方を取り入れて、働き方や雰囲気を改善する。そんな姿勢が素敵だと思いました。

最後に、塗装職人の吉良さんの言葉を紹介します。

「私みたいに未経験の人間でもここまで続けられているので。自分でもやれるかなとか、不安に思っている人も、ちゃんと仕事にしていける環境だと思います」

「ちょっとでもいいなって思ったら、ぜひ見学しに来てほしい。社長とも話してもらいたいです」

(2024/03/13 取材 稲本琢仙)

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