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ものづくりの世界の多くは、先人と呼ばれる先駆者がいます。
優れたものづくりをしていった先人がいるなかで、今を生きる自分たちはなにをどうつくるべきか。
MAKE AND SEEは「敬意を払う」ということを重要な軸にした上で、彼らのデザインや考え方も一つの要素として、オリジナルの家具をつくっています。
MAKE AND SEE は特注家具を設計・販売している会社。主にBtoBで、高級ホテルやレストランなど、ラグジュアリーな空間に合う家具を設計し、職人さんに製造を依頼。その後の納品までおこなっています。
今回募集するのは、6月に新しく立ち上げたブランド「EDITORA(エディトラ)」の営業を担う人。
長い間、自分たちの家具ブランドをつくりたかったけれど、特注案件の依頼を多くもらうなかで、手をつけられていなかった。先人たちのデザインを数多く見てきたぶん、その蓄積を活かして自分たちがつくりたい家具を生み出したい。そんな想いが込められた新事業です。
商業施設向けのインテリア業界や建築業界にいた人だと歓迎。ただ何より大事なのはEDITORAの家具を好きになれるかどうか。
好きなものを広く届けていきたい。そんな人を探しています。
あわせて、プロジェクトマネジメントスタッフ、家具設計デザイナー、BtoC向けの家具ブランド「KIBIROI」の責任者も募集します。
MAKE AND SEE のオフィス兼ショールームは、東京・茅場町にある。
茅場町駅からは歩いて2分ほどで、東京駅にも近い。交通の便がいい場所だ。
オフィスがあるビルに向かうと、提灯がつられているのが見える。近々このあたりのお祭りがあるみたい。
「さっき提灯をつけたところなんですよ。この辺りの人たちは、みんなおもてに提灯を飾るならわしがあるみたいです」
迎えてくれたのが、MAKE AND SEE 代表の松尾さん。
2年前に取材したときと変わらず、柔らかい雰囲気で話してくれる。
「前回はBtoC向けの商品にかかわる人を募集していました。今回は、新しく出す自社ブランド『EDITORA』の営業担当に入ってもらいたいと思っていて」
お客さんにブランドの説明をして、販路を広げていくのが主な仕事。ゆくゆくは、その人が中心となって、EDITORAブランドのチームもつくってほしいそう。
「ぼくたちは高級ホテルなどから依頼を受けて、特注家具をつくってきました。つまりは、ある程度決まった枠の中で家具デザインをしてきたわけです」
「創業から10年が過ぎ、そろそろ自分たちのブランドを持ち、自分たちがつくりたい家具をつくる。ようやくそのフェーズが来たんじゃないかと思っています」
もともと別の家具会社で働いていた松尾さん。2013年に独立し、MAKE AND SEEを立ち上げた。
基本的にBtoBの商売をしており、特注家具や建築系の業界ではよく名前が知られているそう。
EDITORAを販売していくことで、国内だけでなく、世界に向けてブランドを知ってもらうチャンスが広がる。製作に高度な技術が必要なものが多いから、日本の職人の技術の高さをアピールすることにもつながる。
「EDITORAはコンセプトとして、元となる家具デザインがある家具なんです」
元となる家具デザイン、ですか。
「たとえば、過去のデザイナーたちがつくったアンティーク家具を参考に、いまの日本の職人さんの技術を活かして新しい家具をつくる。先人たちのデザインと、ぼくらのアイデアを組み合わせるようなイメージですね」
家具として魅力あるものをピックアップして、リスペクトをもって観察する。そのなかで、こうしたらもっと美しくなるんじゃないか、こうしたらもっと今のトレンドに合うのではないか、といったアイデアを出し、価値を大きくしていく。
「いま座っている椅子なんかも、ダン・ジョンソンのデザインからインスピレーションを受けていて」
「ぼくらは、オリジナルの作者に対する敬意を持って、その人について学び、こだわりや考え方を理解する。理解したことを一つのエレメントとして、トレンドや現代の職人技と掛け合わせる『編集』をするわけです。これを徹底することで、単なる模倣品ではなくなる」
「家具を編集する」のがEDITORAのテーマ。EDITORAの由来も『出版社』からきているそう。
「編集するときには『敬意と偏愛』も忘れないようにする。これも大事で」
敬意と偏愛、ですか。
「国内外問わず、すばらしいブランドってたくさんある。そこと差をつけるには、ぼくたちがいかに先人たちへの敬意と偏愛をもってものづくりできるか。そこにかかっていると思っていて」
「もしかしたら、天国から文句を言っている人もいるかもしれないですけどね(笑)。『おれはそんなのつくらねぇよ』みたいな」
EDITORAは現状20種類ほどの商品がある。6月にサイトがオープンし、お披露目のレセプションも開催された。
最初のターゲットとして考えているのは、これまでの関係性があるBtoBのお客さんやインテリアデザイナー。
EDITORAの存在を知ってもらい、「いろいろなシーンでEDITORAのこの家具をつかいたい」と言ってもらえるブランドにしていきたい。
新しく入る営業担当は、松尾さんたちと一緒に認知度の向上や販路の拡大に取り組んでいく。そのためにも、まずはEDITORA自体をよく知り、興味を持ってほしい、と松尾さん。
EDITORAのデザインは、基本的に松尾さんとデザイナーの井上さんを含んだチームで進めている。営業に慣れてきたら、そこに加わって新しい企画を出してくれるのも歓迎とのこと。
「企画はできればみんなでやっていきたいと思っていて。この家具の持っている要素はうまく活かせるんじゃないかとか、積極的に案を出してほしい」
「ほかにもEDITORAと家具が大好きな建築家やインテリアデザイナー、アンティークディーラーに家具マニアでも。編集したい要素を持つ第三者が絡むことで、新しい家具をつくることができるかもしれない。そんなことが起こったら面白いですよね」
目標としては、5年ほどで3億ほどの売り上げを目指している。いまは会社全体で10億ほどまで伸びてきているなかで、そのうちの3億ほどをEDITORAでまかなっていきたい。
生まれたばかりのブランド。今後どのように成長していくのかは、新しく入る営業担当の人と松尾さんたち次第。サポートしてくれる人は社内にいるので、相談しながらよりブランドをより良いものにしていってほしい。
「ぼくらも一緒に走っていくんですけど、新しく入る人にはとにかく先頭を走ってもらいたい。これをやろうってなったら、まずバーっと走り出す。そんな人だったらいいですよね」
「理想を言うと、家具業界にいた人や、アパレルや照明メーカーとか。家具や建築にかかわっていた人だったらいいなと。あとは海外も視野に入れているので、SNSでの発信もできる人だといいなと思っています」
来年はコペンハーゲンで開催されるインテリアのイベントにも出展したいと考えている。日本で土台をつくりつつ、海外にも足がかりをつくっていきたい。ブランドを1から成長させる経験は、貴重なものになると思う。
続いて話を聞いたのが、設計を担当している井上さん。
特注家具の設計をしながら、EDITORAの家具の設計も担っている。
「コンセプト的には、万人に好まれるようなブランドを目指しているわけではなくて。本当にマニアックな家具好きに刺さればいい、くらいのイメージでいます」
「たとえば、ジャン・ロワイエっていう人がいるんです。その人の作品にインスピレーションを受けて、刺さる人には刺さるだろうっていうものをつくりました。こいつらロワイエのこと好きなんだなって気づいてもらえると、僕らのことも好きになってくれそうな気がするんですよ」
EDITORAは、EDITORAのメンバーで企画したものを、井上さんが形にしたもの。
デザインするにあたってむずかしいと感じたことはありますか?
「めちゃくちゃむずかしかったですね。製品から受ける印象で、どこかのジャンルに自動的にカテゴライズされることがないような立ち位置を意識して進めたので。世の中にはさまざまな姿をしたものが流通しているので、これ以上新しいデザインは生まれてこないのではないかという観念もありますが、それを否定したい自分がいて」
「だからこそ『編集』というとらえ方でブランドを展開することで、無限に新しい形を生み出せるのではないかと。単純に何かと何かを掛け合わせているんじゃなく、その形を成り立たせるためのアイディアや、家具製品としての納まり、バランスを試行錯誤して突き詰める地道な作業も伴います。過去のものからインスピレーションを受けながら、過去の創作物の延長線上にある形とは異なる表現をする。これはときに難しくもありますね」
思い入れのある家具はありますか。
「そうですね… 図面に落とし込んだけれど、工場の人がつくれないっていう壁にぶち当たったことがあって。そのスチールの椅子なんですけどね」
「日本全国の金物屋さんに聞いたけど、むずかしいと。つまり、この曲線は金型では表現できない。だから、ハンドメイドに近くなる。これは、曲げた鉄の棒を一個一個を溶接でつないでいるんですよ。つなぎ目をシームレスに見せながら」
近くで見てみても、とてもハンドメイドでつなげたとはわからない出来栄え。曲線にそれだけこだわるのもすごいし、それに応えてくれる職人さんとのつながりがあるのも、MAKE AND SEEの強みなのだろうな。
「かなりめんどくさいことをやっているので。いまの時代のつくり方と相反する、職人の腕が試されるものづくりです。ただ、むずかしいぶんチャレンジする意味はあると思っていて。機械生産とは違う雰囲気が出るんですよね」
井上さんはどんな人と一緒に働きたいですか。
「EDITORAの家具を好きになってくれる人がいいですよね。好きじゃないと熱意にも関わってくる。あとはアンティーク好きな人でもいいかな」
ここで、話を聞いていた代表の松尾さんも加わる。
「売り先は明確で、建築家やインテリアデザイナーのところを訪れてアピールしてほしい。そこがまずやりたいことです」
「最初はもちろん一緒にやりたいと思ってます。いきなり放り投げる感じではないので、そこは安心してもらえたら。入ってくる人を中心に、EDITORAの体制を整えていきたいなと思っています」
昔から脈々と続いてきた、家具のDNAとも言える要素。それらを編集し、新たな家具を生み出す。
家具が好きな人も、自分が好きだと思うものを売りたいという人も。ブランドと共に、自分自身も成長できる場所だと思います。
(2024/6/5 取材 稲本琢仙)