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未来の医療を開拓する
在宅医療の道を極める

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

数十年後、人口の多くを占める高齢者が死亡し、人口が減少していく多死社会を迎えると言われている日本。

現状、死亡する人の8割が病院だと言われているなかで、本人や家族の希望から、自宅で亡くなるという選択肢を選ぶ人も出てきました。

今回紹介するのは、その選択肢を安心して選べるよう、必死に、そして誠実に取り組んでいる人たちです。

医療社団法人 焔(ほむら)は、在宅医療サービスを行う「やまと診療所」を軸に、歯科、看護、リハビリ、病院施設の事業を手がけている団体。これからの新しい医療の形をつくり続ける医療グループ「TEAM BLUE」として活動しています。

今回は、やまと診療所の在宅医療PA®(Physician Assistant)として働く人を募集します。

医師とチームを組み、患者の家を訪問して、診療のサポートや患者とのコミュニケーションを深める。そのスキルとスタイルをとことん追求しているのが在宅医療PAです。

経験は問いません。入ってから、在宅医療PAとしての力をつけていくプログラムが確立されているので、それに応じて成長していけたら大丈夫。

生と死の現場で、自分にできることをひたすら誠実に続けていく。生半可な気持ちではできないぶん、やりがいも大きい仕事だと思います。

 

東京・板橋区。

本蓮沼駅から歩いて10分ほどの場所に、焔が運営する病院「おうちにかえろう。病院」がある。

ここは2021年につくられた病院で、基本的には自宅へ帰るためのリハビリや治療が行われている。

インタビューの前に、まずは訪問診療の現場に同行させてもらうことに。

訪問診療にいくメンバーは、医師1人、在宅医療PA2人で構成されていて、それぞれが担当エリアを1日かけて10件ほどまわっている。

はじめに向かったのは、腰椎の圧迫骨折で動けず、通院が難しいという理由で訪問診療を受けている女性。

玄関で「やまと診療所ですー!」と、明るく挨拶をして家の中へ。

女性はベッドで寝ていて、すでに面識のあるスタッフに明るく話しかけている。

在宅医療PAのひとりは、「最近どうですか」と声をかけながら検温を。もう一人はキーボード付きのiPadで素早くカルテを書いているみたい。

医師も問診をしながら、患者さんの体調を探っていく。

食事のことや、お通じの話など。意外にも医師ではなく、在宅医療PAのほうがたくさん話してコミュニケーションをとっている。

次またね、と話しながら、女性に挨拶をして家を後に。時間にして30分くらいだろうか。

訪問が終わると、車で次の場所へ移動。その間も、先ほどの患者さんについて、それぞれが感じたことを共有しあい、医師がカルテに記入していく。

このチームの医師である平良(たいら)さんに少し話を聞いてみる。

「けっこう繊細な人なんで、落ち込むと体調に影響が出るんです。動けない状態だから、少し家族の人に気を遣っているのかなと」

「入院よりも外来、外来よりも訪問診療のほうが、情報量が多いんですよね。普段の生活がよく見えるので」

平良さんは普段別の病院に常勤していて、ここでは非常勤として訪問診療をしているそう。

訪問診療と通常の診察は、やっぱりちがいますか。

「そうですね、実際の生活空間を見ると、細かい薬の処方だけでは解決できないことがいっぱいあるんだなぁと」

「在宅医療PAさんが聞いてくれた情報とか、部屋に置いてあるものとか。いろんなものを総合して診断をつけるので、在宅医療PAさんなしではわからないこともたくさんあるんですよ」

 

この日はもう一軒訪問して終了。在宅医療PAの拠点であるやまと診療所に戻り、その後再び病院へ。

代表の安井さんが迎えてくれた。

「おつかれさまでした。診療アシスタントって、一般的な訪問診療だと運転手をするだけとか、検温だけして患者とは話さないとか。そういうのが当たり前なんだけど、うちはそうじゃない。医師ともフラットな関係だったでしょう?」

たしかに、患者さんとも話すし、薬の説明とかもしていて、そこまでするんだなと。医師の平良さんとも、気を遣わず話している感じでした。

「そうなんです。ピラミッド型じゃなくて、フラットな関係というのが大事で。3人が役割分担しつつ、ひとつのチームになっていることを僕らはすごく大事にしています。だから在宅医療PAは単なるアシスタントじゃない。そこは強調したい点ですね」

安井さんが訪問診療をはじめたのは、10年ほど前のこと。

当時は病院で亡くなる、というのが当たり前で、自宅で最期を迎えるという選択肢を選ぶ人は少なかった。

「うちの患者さんの半分はがんです。その環境のなかで医者は医療行為を提供するんだけど、その目的って何かと言われたら、患者さんと家族が残された時間を自分らしく生きること。さらに言うと、家族に残されるものが温かい時間であること」

「だからうちの訪問診療では、『温かい死』というのを目的にしています」

温かい死。

「医療行為を提供するだけじゃなく、ソーシャルワークを組み合わせないと、温かい死を迎えてもらうことってできないよね、というのが僕らの考えていることで」

「ソーシャルワークっていうのは、患者さんを介護や福祉の領域へ適切につなげるということだけじゃなくて。患者さんとコミュニケーションをしっかりとって、本当の想いは何か、家族は何を思っているのか、それを引き出すこと。だから、在宅医療PAはソーシャルワークをする人として医師とチームを組むんです」

自宅で自分らしく最期を迎えたいという人は徐々に増えてきている。そういった人の希望を叶えるためにも、在宅医療PAを定義化して育成していこうと取り組んできた。

そうして形にしたのが、「PA道」(医療法人社団 焔における在宅医療PA®育成プログラム)と呼ばれている研修の課程。安井さんいわく「修行の道」なのだそう。

「だいたい3年くらいで『一人前』になれるような修行の過程を用意してます。最初は安全な運転方法とか、保険や介護の制度について学んでいきます」

「後半には、そもそも自分はなぜ患者さん家族を支えたいと思っているのか。自分自身の仕事に向かうエンジンはなんだろうっていうのを探しにいく研修をして、それを先輩に話して、さらにみんなの前で発表をします。つまり、とことん己と向き合うことを求める」

加えて、人の話を聴き、適切な問いを立て、相手に伝える。一連のコミュニケーション技術についても学んでいく。

「在宅医療PAはとくに、医師みたいに専門的な資格があるわけではないので、これが一番の武器になるんです。逆にこれができないと、存在意義がなくなってしまう」

「だからこそ、本気で人と向き合って、その人の豊かな時間を一緒につくりたいって思えるかどうかが一番大事で。新しく入る人にも、そこは理解してほしいと思っています」

 

その思いは、今働いている40名ほどの在宅医療PAの人たちにも伝わっている。

続いて話を聞いたのは、今日同行させてもらった在宅医療PAの石原さん。4年前に入職した。

もともとは大工などの仕事をしていたそう。20代後半に体調を崩したのをきっかけに転職を決意。やまと診療所で働くことに。

最初は、訪問に向かうチームのために、物品を準備したりカルテを書いたりなど補助的な業務から。そのうち、「PA道」の課程に沿って学んでいく。

「基本的に在宅医療PAはステージングで分かれていて、ここまでできたら次にこれをやろうねっていうのが決まっているので、それに則って進んでいく感じですね」

石原さんはどこまで進んでいるんでしょう。

「ぼくは『認定』の一個前くらいですね。在宅医療PAの先に『一人前』というのがあって、さらに先に『認定』がある。三段階になっていて。『認定』は40人中2人しかいないかな」

「振り返りと目標設定は、とくに大事にしています。どんなふうにやってきたの?とか、どうやって目標達成できたの?っていうのを丁寧に振り返る。人としての成長って抽象度が高いので、測るのがむずかしいじゃないですか。それを面談での問いかけで振り返っていくんです」

なんというか… それだけ自分の内面を問い続けるのって、すごくしんどいことのように感じます。

「つらいと思います正直。考えなくても生きていけるようなことを追求されるわけですから。こうやって動きました、なんで?こうしました、なんで?って、どんどん掘られていく」

「でも、それを乗り越えていくことで成長できる面は必ずあると思うんです」

今は後輩の面談をする立場になっている石原さん。どんな人と一緒に働きたいですか。

「人に興味がある人かな。興味がないと、ただつらいだけの仕事になると思います。『PA道』は厳しい面もあるけれど、確実に患者さんのためになる。それを糧にして力に変えられる人じゃないと、続けられないんじゃないかな」

 

最後に話を聞いたのは、今日石原さんとタッグを組んでまわっていた藤林さん。

大学では福祉を学んでいて、新卒で入職した。

「もともとわたしが父を病院で亡くしていて。これからって在宅医療が重要になる時代なんだなっていうのを大学で学んだのと、わたしも病院で死ぬより、自宅で死ぬほうがいいんじゃないかっていう思いがあって入職しました」

藤林さんは、現在「一人前」の手前くらいにいるそう。

「難しいなって感じることが多いですね。日々これは合ってるのかな、間違ってるのかなってぐるぐる考えてしまうし。これは患者さんのためになっているかって、責任感をめちゃめちゃ感じるなって思います」

印象に残っていることを聞いてみると、初めて主担当になった患者さんのことを話してくれた。

「独居で、認知症と心不全を抱えている方がいて。自宅で死にたいっていう希望を持っていたので、私たちも最後まで自宅で看取りますと。ただ、初めてだったのもあって、自宅で死にたいっていう人に対してなにができるだろうっていうのがわからなくて」

いろんなことを考えるなかで、藤林さんはその患者さんが身だしなみをよく気にしていたことを思い出した。

「もしかしたらこの人はきれいな状態で死にたいのかなって。それで、ケアマネジャーさんやや看護士さんに相談して『きれいになろう計画』を立てたんです」

「訪問美容師さんや訪問入浴の人に入ってもらったり、看護師さんも二人がかりで部屋に入って、きれいに身だしなみを整えてくれて」

結果、患者さんはきれいな状態で最期のときを迎えることができた。

「遠方のご親戚には、なんで入院させてくれないのって言われたこともありましたが、最期は親戚の方も、『ありがとうございました、本当に幸せな最期でした』って言ってくれて。なんか、わたしたちができることってこういうことなのかなって感じたんですよね」

「最期の段階って、医療ができることも限られている。だからこそ、私たちにできることがある。それを患者さんから教えてもらった気がしていて。その体験はすごく印象に残ってます」

 

生と死が交錯する現場で、みずからの道を歩んでいく。

みなさんの話を聞いて、そして現場を体感して感じたのは、間違いなく在宅医療PAも医療のプロだということ。

特別な資格がなくとも。これからの医療や個人の尊厳を支えていくのは、人知れず活躍する在宅医療PAのような人たちなのだと感じました。

(2023/2/23 取材 稲本琢仙)

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