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自分の目線で
理想のまちを描く
人をつなぐまちづくり

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まちづくり、という言葉も、だんだんと聞き慣れてくるようになりました。

簡単に言うと「まちを活性化する」ということだけれど、具体的に何をしていて、何を目指しているのか。言葉が普及した一方で、外から見ている人にはわからないことが多いようにも感じます。

全国各地でさまざまな活動がおこなわれているなかでも、大阪・泉佐野でまちづくりをしている「一般社団法人バリュー・リノベーションズ・さの(VRS)」のみなさんの考えは単純明快。

「こんなまちにしたい。そのためにはこんなお店があって、こんなお客さんに来てほしい。まちづくりは、まちに暮らす一人ひとりが持つ想像からはじまると思っています」

どこか他人ごとに聞こえてしまうまちづくりも、シンプルに考えれば、自分がどんなまちにしたいかに尽きる。今回紹介するのは、その想いを形にするための伴走者のような仕事です。

興味はあるけれど、「まちづくり」という言葉に漠然としたイメージを描いている人がいたら、ぜひVRSのみなさんのことを知ってほしいです。

 

大阪・泉佐野へは、大阪駅から電車で約1時間。関西空港からだと、電車で10分ほど。

泉佐野駅は、海側と山側に出口があり、山側にはホテルなどの高い建物やロータリーがあって、都会っぽい雰囲気。一方海側のほうは、細い路地やこじんまりとした商店街があって、静かな感じがする。

VRSの事務所は、この海側の方の出口から歩いて3分ほどの場所にある。

事務所を訪ねて、2階にあるレンタルスペースへ。迎えてくれたのが、VRSのディレクターを務める西納(にしのう)さん。

「来る途中にあった『つむぎや』、見てもらいましたか。今日はレゲエの神様のボブマーリーを崇拝している人がお店を出していて。カフェみたいなお店を出店してもらっています」

そういえば、ジャマイカの国旗が出ていたのが目に止まりました。

「『つむぎや』は半年の期間、出店者のみなさんに固定曜日で契約してもらっていて。なので、曜日によって誰がお店を出すのか決まっています。今は昼間の枠が全部埋まっている状態なんですよ」

泉佐野は、駅を出て感じた通り、駅の海側エリアと山側エリアで雰囲気が大きく変わっている。

とくに海側エリアは、商店街がほぼ閉まっていて、古き良き面影を残しつつも、活気がない状態が続いていた。昼にあいているお店もわずかで、夜になると開いているお店がなく、真っ暗になるほどだという。

まちとしても、どうにかして海側のエリアを活性化したい。そこで市役所に勤めている西納さんが指名され、活性化のための活動をしていくことになった。

「最初はお店を誘致して賑やかさをつくる、ということも考えたんですが、なかなか成功している事例が少なくて。どうしようかと考えていたところ、宮崎県にある油津(あぶらつ)商店街へ視察に行ったときに、新しい方法に気づいたんです」

「油津では、地域の人の『やりたい!』という気持ちから始まって、自主的にゲストハウスやお店ができていた。それが面白いなと思って、泉佐野でもやってみたいと思いました」

まずはじめたのが、主に地域の女性たちを対象にした小商いのワークショップ。飲食や手づくり雑貨など、自分の得意を活かして商売をしてみたい人が参加できるワークショップを開いた。

そこで生まれた女性たちのやってみたいことを形にするために、空き家をリノベーションして2021年に完成したのが、「SHARE BASE つむぎや」。

フリーランスやリモートワークで働く人が使えるシェアオフィスに、セミナーやワークショップなどで利用できるフリースペース。1階のチャレンジショップでは飲食提供もできるようにキッチンの設備が整えられていて、つくったお惣菜やお菓子を販売することもできる。

「テレビとか新聞が新型コロナの話題一色だったじゃないですか。だから、つむぎやはある意味、希望になったというか。地域のなかでも、明るいニュースとして受け取ってくれた人が多かったように思います」

ワークショップで自信をつけた人が、実際につむぎやを借りて商売をはじめる。お店が少なかったエリアに老若男女が集い、活気が出るし、さまざまな人たちが活躍できる場づくりにもつながる。そんないい循環が、つむぎやで生まれている。

つむぎやで出店して自信をつけたことで、独立して自分のお店を持つようになった人もいるそう。

一方で、もう一つまちの拠点として2022年にリノベーションされ、図書館の出張所として生まれ変わった「佐野まちライブラリー」は、苦戦している最中だという。

「泉佐野市から、市民の読書率を上げたいという新たなご依頼を受けまして。それで空き家をリノベーションした図書館運営のお手伝いをすることになったんです」

公立図書館の出張所でありつつ、置いてある本はビジネスやまちづくりに関するものが中心。曜日と時間によってはコワーキングスペースとして開放している。

「佐野まちライブラリーは、もともとブティックだった建物を改修していただきました。ただ、利用者が思うように増えなくて…。イベントを企画するとか、いろいろチャレンジはしているんですが、まだまだ課題が多いなと実感しています」

ライブラリーは、駅前を抜けて大きな道を渡った先にあるアーケード街の一角にある。駅から5分ほどで到着するくらいの場所だ。

ただ、そのアーケード街も閉まっている店が多く、シャッター街のような雰囲気。ゆくゆくは、つむぎやから佐野まちライブラリー、そしてその周辺の商店街までの人の動線をつくっていきたいと考えている。

「つむぎやの周辺では、去年から今年にかけて新たなお店がいくつかオープンしています。インバウンドも戻りつつあるのもあって、夜に営業するお店も増えてきていて」

「なかにはぼくらが関わったお店もあるし、関わってないけどつむぎやに影響を受けてオープンしたお店もあって。そういう意味でも、ぼくたちがチャレンジしてきたことは、だんだんと効果が出てきたのかなと感じています」

地道にコツコツと。必要だと考えたことを形にしてきたからこそ、まちもいい方向に変化しつつある。

今後は、どういったことにチャレンジしていきたいですか。

「まだまだ多くの空き家があるし、リノベーションしたら使えそうな建物もたくさんある。今後はそういった物件を活用してまち並みを残しつつ、つむぎやのように持続的に活動できるような場所を増やしていきたくて」

「VRSの活動を見て、自分も何かやってみようかなって思う人が増えて、それぞれが動き出してくれたらいいなと思うんです。ぼくらがそういう人たちをサポートすることができたらさらにいいなと」

サポートというと、具体的にどういうことでしょう?

「たとえば、それまで商売をしていなかった人がお店をオープンするとなったら、オペレーションをどうするかとか、維持していくためのお金の使い方とか。やってみないとわからないことって結構多いじゃないですか」

「そういう方々を、金融機関さんや、岸和田市にあるビジネスサポートセンターさんなどにつないで、アドバイスをもらう仕組みをつくる。それができたら、まちづくりがさらに進んでいくと思うんですよね」

今回の募集も、泉佐野のまちづくりをさらにもう一歩先に進めていくためのもの。

まちづくりの経験はとくに求めていない。必要なのは、人とのコミュニケーションを丁寧にすることと、自分のスキルや経験を活かして、できることに積極的に取り組むこと。

「まちの人といい関係性を築くことができたら、たとえば、このまちでチャレンジしたいという人と物件のオーナーさんの間に入ってマッチングすることもできる」

「そのためにも、ぼくらの活動をもっと広げて、知ってもらうことが必要だと思っています」

 

西納さんの話を隣で頷きながら聞いていたのが、VRSの石井さん。地域の人とのコミュニケーションを率先してとってきた方。

「最初は小商いをテーマにしたワークショップの企画からはじめました。人が来るか心配だったんですが、意外と興味を持ってくれる女性の方が多くて」

「ワークショップで仲間ができると、自分もできるかもしれないって、がんばれる。それに刺激を受けた人が、わたしも挑戦してみようかなって思う。そんないい循環が生まれているように感じています」

ワークショップの企画運営だけでなく、マルシェイベントの出店者集めなどにも率先して取り組んでいる。

そのなかで、印象に残っていることがあるという。

ワークショップに参加された主婦の方が、つむぎやを使って、過去の経験からお菓子を販売したいと思っていたけれど、気持ちの浮き沈みがあった。

「やりたい!って、気持ちが上がったと思ったら、次の日には落ち込んだり。なんとか励まして、『おいしいから大丈夫。みんなが待ってますよ』って伝えたら、少しずつやる気になってきて」

「実際に販売したらすごく人気で、出店して初めてのクリスマスでは結構な売れ行きだったそうです。ちょっとした感情の変化を見逃さないようにするっていうのは大事だと思いますね」

ひとりでは勇気が出ない人も、ワークショップで同じような志を持った人と出会うことで、お互いに刺激しあって出店する人も多い。

みんなが初めてなので、相談したり、一緒に共感したり、応援したり。そんなコミュニティが生まれているのも、つむぎやの大きな特徴だし、そこからまちに活気が出てくる様子を間近で見られるのは、やりがいになると思う。

「人とひと、思いと想いをつむぐ拠点っていうのがつむぎやのコンセプトなので、その点では思い描いたカタチに近づいているように感じています」

新しく入る人も、まずは石井さんと一緒にワークショップを企画運営したり、定期的に開いているマルシェの出店者を探したりすることからはじまると思う。

その上で、自分の経験やスキルを活かした仕事にも取り組んでほしい。

ここで再び西納さん。

「ぼくが石井さんに声をかけたのも、まちの活性化のために足りていないのは何かって考えたときに、女性の視点だと思ったからなんです」

女性の視点、ですか。

「家庭のなかで女性の意見が占めている割合が結構多いと思うんです。買い物もそうだし、お出かけに行く場所も奥さんが決めることが多いと感じていて」

「そうなると、まちづくりも男性の視点だけじゃだめで。女性の視点から何が必要かを考えないといけない。だから『石井さんが行きたくなるまちを考えてほしい』って伝えていました」

石井さんも続ける。

「最初は不安があったんですけど、わたしの素直な考えから動いてくれたらいいよって言っていただいたので。それだったら私でもできるかもって思って」

「こんなまちにしたいなとか、こんな店があればいいなとか、こういうお客さんに来てもらいたいなとか。自分ごとで考える。他人ごとになったら、まちづくりの仕事はできない。なので、自分だったらどうしたいんだろうって、自分ごとで取り組める人に来ていただきたいし、そういう人と一緒に仕事をしたいなって思います」

 

一つの小さなチャレンジが、ほかの人たちの心をかき立てていく。そんないい循環が、泉佐野ではすでに生まれつつあるように感じました。

その流れをさらに加速させていく。まちづくりや人を応援することに興味がある人だったら、自分の視点を活かしながら活躍できると思います。

(2023/3/17 取材 稲本琢仙)

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