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「一人でも多くの方が地域で働き、暮らすことをお手伝いしたい。ふるさと回帰運動は、その思いからはじまった活動なんです」
2002年、認定NPO法人・ふるさと回帰支援センターを立ち上げたのは、団塊の世代と呼ばれた人たちでした。
700万人以上いる団塊の世代が、2007年から定年退職を迎える直前のタイミング。
定年後の第2の人生として、UIターンという選択肢を選ぶ人が増えたら。地域も受け入れる環境を整えることができたら。そんな想いからスタートしました。
今回は、「移住相談部門の管理職」と「移住相談員」の2つの職種を募集します。
移住相談部門の管理職は、移住相談員が働きやすい環境づくりから自治体との調整業務までを担います。
ふるさと回帰支援センターに欠かすことのできないポジションです。管理業務の経験があり、社会的な活動に取り組みたい人を探しています。
そして、移住を考えている相談者と地域をつなぐのが、移住相談員。東京多摩・島しょ部等の担当を募集します。
ふるさと回帰支援センターは、東京・JR有楽町駅前の東京交通会館ビル8階にある。
オープンは朝10時。通勤ラッシュがひと段落した山手線に乗って向かう。
5分前に入り口へ到着すると、移住相談を予約している方や、移住セミナー開催に向け上京する地域の自治体職員の姿があった。
入場すると、鳥取、山梨、東京、香川、岩手…。日本各地の移住相談ブースが並んでいる。
「44都道府県と静岡市が出展して、60人以上の移住相談員が在籍しています」
そういって迎えてくれたのが、早田(わさだ)さん。
今回募集する移住相談部門で、管理職を務めている方。西日本部長として、滋賀県から沖縄県までの移住相談ブースを統括している。
案内されたのは、ミーティングルーム。
「大きくなりましたねえ。20年前、これくらいの部屋に一人の相談員が座るところからはじまったんですよ」
「大きな転機を迎えたのは、政府が地方創生本部を立ち上げた2014年でした。日本各地の都道府県から『東京に移住の相談窓口を設けたい』と、ブース出展の依頼が急増したんです」
相談事業の急拡大に伴い、組織内のルールづくりなど、管理業務の見直しが急務となった。
ブース数の増加に伴う増床、コロナ禍のオンライン導入と経営環境が年々変わるなか、管理体制も整備を進めている。
「今回は、移住相談部門で管理職となる人を募集したくて。まずは課長からスタートして、業務に慣れたタイミングで東日本の部長に昇格していただけたら。わたしと“東西”で一緒に組んでいく存在になってほしいんです」
「接する時間も一番長くなると思う。なんでも話し合いながら、楽しく仕事をしていけるとうれしいです」
どんな仕事をしていくのでしょう。
「移住相談員が、安心して相談事業に臨める環境をつくること。そして、ふるさと回帰運動を盛り上げていくことが大きな役割です」
移住相談には、さまざまなフェーズがある。
今の暮らしへの違和感から漠然と移住を考えはじめた人から、すでに移住したい地域を決めている人まで。
そこで、相談内容をデータベース化する仕組みを整えた。
「相談者の属性から、相談内容、誰が対応してどんな話をしたのかをまとめていき、日々の相談業務のレベルアップをめざしています」
発注主である都道府県との調整業務も欠かせない。
「各自治体の相談件数が伸びるための取り組みを一緒に考えていきます。たとえば、年間10回まで無料で行える移住セミナーをどのように開催するのか。自社のWebメディアやSNSで、発信のお手伝いもします」
自らの動きを「プレイングマネージャー」と紹介する早田さん。管理職ながら、実務を手がけることもある。
「毎年9月と3月には、次年度の移住相談業務の受託に向けて、各都道府県の担当者とやりとりを進めていきます」
各都道府県の担当者に予算のヒアリングを行いつつ、自ら見積書を作成していく。難しい業務ではないけれど、20地域ほどを担当するぶん、それなりに時間はかかる。
「同僚に言われたことがあるんです、『ふるさと回帰支援センターは、ベンチャーNPOだね』って」
ベンチャーNPO?
「ほんとうに、思いありきではじまった活動です。相談事業がどんどん成長していくなかで、わたしたちはいつも追いかけている。追いついていないところは正直あると思います」
「ゆくゆくは見積作成などの実務を現場の担当者に任せられる環境を整えたい。管理職については、ふるさと回帰支援センターの未来を描く仕事にウェイトをさきたい。今は、もうひと頑張りしたいタイミングなんです」
これから働くのは、どんな方が良いのでしょうか。
「まずは、思いへの共感が大事なのかなと思います」
「ふるさと回帰支援センターは、40代以降から転職する方も多いんですよ。前職は新聞記者、銀行員、製薬会社でMRをやられていた方、と個性豊か。それぞれの仕事を通して日本の課題に触れてきて『これからは社会貢献をしたい』と」
わたし自身もそうかな、と早田さん。
「人口減少社会のなかで、どうしたら持続可能な地域をつくっていけるか。この課題はほんとうに大事なことだと思っていて。少しでもお手伝いができれば。その思いで仕事をしています」
同じ思いを、もう一人の職員さんからもうかがう機会があった。
今年の4月に入職したエリア指導員の高倉さん。エリア指導員として、東海・関東一部・甲信エリアを担当している。
出身は大阪。新卒で入社した資生堂で、約40年間勤めてきた。
現在につながる転機は、編集業務に就いた6年間。47都道府県を自ら取材し、記事制作に臨んだ。
「仕事を通じて、地域の過疎化を目の当たりにし、地域活性化の必要性を痛感しました。社会のお役に立ちたい。その気持ちが年々大きくなってきたんです」
定年退職を経て、ここの求人を見つけた。
「『まさにこれかも』って思ったんです。人がより幸せに生きていくための岐路に関われる仕事だと思いました」
高倉さんは帰宅すると、1日の仕事を振り返る。
「電話で相談を受けた方に正しく情報をお伝えできたかな。センターでお声がけした移住相談者の方は、一歩進めただろうか。わたしとの相談は、お役に立てただろうかと思います」
最後に、高倉さんから先輩移住相談員として紹介された齋藤さんに話を聞いた。
2018年に入職。山梨県の移住相談員を担当している。
「社会問題に取り組む仕事がしたくて。大学では、世界の紛争から貧困問題まで一通り学びました。そこで、自分ごととして腑に落ちたのが、日本の地域社会の活性化でした。自分が東北出身ということもあるかな」
新卒では、山梨県富士吉田市の地域おこし協力隊に着任。情報発信の業務を担当した。
「大学を出たばかりで、これといった強みがなかったんです。『何も力になれないな』と感じる場面の連続で、正直苦労したことも。それでも地域に関わる仕事は楽しかったです」
その後、東京都内に転居し働き方を模索する中で見つけたのが、ふるさと回帰支援センターの求人。
地域おこし協力隊として活動中、移住セミナーにゲストとして登壇した場所だった。
「せっかく山梨にいたんだから。自治体とつながっていろんなことができるかもしれない。自分の経験を活かせるかも、と応募しました」
するとここで、齋藤さんの業務用の電話が鳴った。
電話を切ると、「20分後に移住の相談依頼が入りました」とのこと。急いで、話を聞いていく。
どんな方が相談に訪れますか?
「ここ数年は子育て世代の方が増えていますね」
次のような、仕事に関する相談も多い。
山梨で自分の経験を活かせる仕事はあるのか。IT業界で働いてきたけれど、まったく違うことに挑戦したい。山梨にはどんな仕事があるんだろう。
「移住を機に、起業をする方もいます」
齋藤さんは、2020年に韮崎(にらさき)市にオープンした「PEI COFFEE」さんのInstagramを開いた。
「都内の飲食店で働かれている方でした。山梨県でお店を開きたいという相談で。移住先の第1希望は、北杜(ほくと)市でした」
北杜市の空き家バンクや不動産情報を探したものの、なかなか希望に添う店舗物件が見つからなかった。
「そこで、ご案内したのがお隣の韮崎市です。お試しで滞在したところ、移住をサポートする地域団体との縁が生まれて」
移住の話はとんとん拍子に進んでいく。店舗物件も見つかり、最初の相談から1年足らずで移住を実現した。
移住後もつながりがあるんです、と齋藤さん。
「自治体の移住セミナーや移住体験ツアーに出演してもらったんです」
お店にも2度訪れたそう。
「1度目は出張時に。ちょうど改装中のタイミングでお邪魔すると、『ここに決まったんです』とうれしそうな声で話してくれました。2度目は、山梨を家族旅行したときです」
プライベートで訪ねることもあるんですね。
「もともと地域の場所や人が好きなので。仕事でお世話になった地域の人とのつながりをプライベートでも楽しんでいます」
今回募集する東京多摩・島しょ部についても、一度は訪れたことのある方に応募してほしい。
その上で、伝えておきたいことがある。
「入職当時、富士吉田市以外の山梨はほぼ知らなかったんです。だから、最初はうまく相談に答えられなくて。『ちょっとごめんなさい、わかりません』『聞いて調べて回答します』ってことが多かったんです」
「各市町村の方とつながりながら、自分自身もレベルアップしていきました。今日は甲府市、来週は都留市、その次は北杜市という感じで、自治体職員をはじめとする現地のみなさんが訪れてくれて。わたしも山梨に出張したり、旅行したり」
もう一つ大事なことがあって…と齋藤さん。
「責任を感じることってあると思うんですよね。相談に来る方の人生を左右する時間になるので、移住をおすすめするときは、ほんとうに慎重に」
正解がないなかで、目の前の移住相談者にしっかり応えていく仕事。一人ひとりの移住相談員が熟考することは大切だけれど、悩み抱えてしまうことはよくない。
だからこそ、管理職のサポートと移住相談員の連携が大事になる。
移住相談部門では、入職後の3ヶ月間を研修期間として、移住相談の基礎を学ぶ体制を整えている。
さらに、移住相談のマニュアル作成や、都道府県を超えて成功事例をシェアするランチ会など、移住相談員主導の底上げもはじまった。
21年目にさしかかったふるさと回帰支援センター。
今回の取材中に最も多く聞こえた言葉を数えると、移住に続いて「幸せ」でした。
「相手に寄り添って幸せな暮らしづくりを」「今よりも幸せに」「サポートできることもまた幸せ」
管理職と相談員が連携して、地域と移住相談者をつなぐ。その先にあるのはきっと、幸せです。
(2023/6/11 取材 大越はじめ)