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大人だってブレブレで
だからこそ、試行錯誤の
繰り返し

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

「月が綺麗ですね」

英語教師をしていた夏目漱石は、ストレートに愛を伝えない日本人に合わせて、I love youをこう訳したという逸話があります。

和訳に限らず、世の中には正解がないことってたくさんあると思います。

だからこそ、自分で考え判断して、こうじゃないかと行動する。大人も子どもも関係なく、大切なことだと思います。

高知県嶺北(れいほく)地域は、四国のほぼ真ん中。

大豊町・土佐町・本山町・大川村の4町村からなり、一級河川の吉野川も流れる自然豊かな場所。スーパーやコンビニ、総合病院もあるので生活基盤も整っています。

そんな嶺北地域にある唯一の高校が、創立74年の高知県立嶺北高校です。

生徒が自ら考え、やりたいことにチャレンジできる環境を整えたい。そんな想いから昨年、公設塾と教育寮を兼ねた施設「れいほく教育魅力化・交流支援センター」が新設されました。

今回は、この施設で生徒の寮生活をサポートするハウスマスターを募集します。

日々生徒と過ごし、一緒に笑って、一緒に悩む。教師と生徒でもなく、大人と子どもとしてでもない。1対1で向き合い、人の成長を見守っていきたい方に知ってほしい仕事です。



夜19時。自宅からZoomで嶺北高校魅力化プロジェクトのみなさんとつなぐ。

ルームに入ると、事務局長兼公設塾スタッフの岡田さんが笑顔で挨拶してくれた。「緊張しますね」と言いつつも、ユーモアを混ぜて話してくれるので聞いていて面白い。

まずはプロジェクトの経緯について聞いてみる。

「もともと嶺北高校には農業コースや商業コースがあって、机の上だけにとどまらない学びを大切にしてきました。ただ、地域の人口減少もあり、学校が存続の危機に直面してしまったんです」

そこではじまったのが嶺北高校魅力化プロジェクト。

高校魅力化プロジェクトとは、日本全国の中山間地域や離島など、人口減少によって存続の危機にある高校を維持・発展させるための取り組み。

その地域・学校ならではのカリキュラムの作成と、行政・高校が連携して運営する公設塾の設置。そして、生活のなかでコミュニケーション能力や協働性を養う教育寮の運営という3本の柱を軸に、高校の魅力を高めようというプロジェクトだ。

嶺北高校では、4年前からプロジェクトがスタート。

たとえば、独自カリキュラムの「嶺北探究」は、生徒たちが地域を知り、自身の興味関心と掛け合わせ、課題解決を目指す授業。

外来種のブラックバスを食用に活用してさつま揚げをつくる生徒たちもいれば、地元の杉を広めようと木工品の制作に取り組む生徒、地域の子育て世代に向けて読み聞かせカフェを開いた生徒もいる。

実際に足を運んで地元の人たちに話を聞き、まちへの理解を深めることで、地域にある課題と具体的な解決策を考えていくのだそう。

そうした学びをサポートするのが、れいほく教育魅力化・交流支援センターに設置されている公設塾。

進路も目標も異なる生徒に対して、基礎学習や大学進学のサポートはもちろん、定期的な面談を通して、やりたいことを実現するために何ができるかを考え、取り組んでいる。

そして最後の柱が、公設塾とともに設置された教育寮。地域外からの生徒を受け入れるための寮で、現在は30名ほどの生徒が暮らしている。プロジェクトが進むなかで、一時期は17名までに減ってしまった入学者も、今では毎年30人を超える生徒が入学するように。

「このプロジェクトでは、生徒自身が考えて行動していく姿勢を育むことを大切にしていますが、僕自身もその理念にはとても共感しています」

「僕は詩や文学が好きなんですけど、それについて話したりすると、生徒たちがポカーンとするんですよ。何言ってんだコイツみたいな(笑)。その表情がとても好きで」

ポカーンとした表情が好き。

「小馬鹿にするわけでもなく、言葉自体を理解しようとしているというか。何かを学びとろうとする表情。そこで、『あっ、彼ら彼女たちは勝手に学んでいくんだ』って気づいたんです」

「だからこそ、『これが正解だから覚えてね』では、生徒が受け身のモードになってしまう。そうならないように、正解に余白を持たせるとか。気をつけていますね」

生徒は自分で考え、進んでいくもの。そうした姿勢を、生活のなかでも育んでいこうとしているのが、教育寮だ。

設立当初から、生徒たち自身で掃除や食事の仕方といった寮生活のルールを決めるなど、自分たちで寮を運営することを目指してきた。



今回募集するのは、寮生をサポートするハウスマスターの仕事。

具体的にはどんなことをしていくのだろう。ハウスマスターの島村さんに教えてもらった。

「休み以外はずっと寮生と接していますね。働く時間は自分で調整できるので、朝少しいて、生徒が授業を受けているときは休憩して、夜めっちゃいる、みたいな感じです」

「仕事としては、日常的な雑談や相談ごともそうですけど、週に一度寮生との会議を設けていて。それぞれ悩んでいることや思っていることをシェアして、何か課題があればみんなで話し合って具体的に行動に移していきます」

もともと教育に興味があったという島村さん。より強く思うようになったのは、自身の経験が大きく関わっているのだそう。

「当時は、よさこいを切り口に、大学のある地域を巻き込んだイベントをいろいろ企画する立場だったんです。そのときに、さまざまな大人の方に協力してもらったんですけど、とくにお世話になった人がいて。その人がいなかったらイベントも成り立たなかったぐらい」

どんな方だったんですか。

「私の悩みや相談を聞いてもらっていたときに、その方は直接こうしたほうがいいよって感じじゃなくて。私の意見や考えを聞いて、少し背中を押してくれる。そんなアプローチだったんです。その尊重してくれる感じが、とても自信になって」

自分がしてもらえて嬉しかったように、自分も生徒たちの成長に関わってみたい。

その後、日本仕事百貨で掲載していた記事を見つけて応募。以来2年間、ハウスマスターとして生徒たちと関わってきた。

「生徒も事務局の方も、すごく受け入れてくれているというか。ちゃんと向き合って話してくれるので、働きやすいなと思います。答えがわからないことが日々起こるので、大変なんですけど、事務局スタッフや学校の先生とも相談しながら進めています」

これまでに何か印象に残っていることってありますか?

「印象に残っていることしかないです(笑)」

そう言って話してくれたのは、就寝時の明かりについての話。

「寮はすべて相部屋なんですけど、夜に電気がつけっぱなしだったって話が出てきたんです。真っ暗じゃないと寝れない子と、電気をつけないと寝れない子で、意見が割れてしまって」

「人って寝るときの環境が一人ひとり違うので、どうしようかって。ベッドの横にカーテンを設置したり、豆電球をつけたり、天井に光るステッカー貼ったり…いろいろ試して、3ヶ月ぐらい話し合いましたね。ほんと日々トライアンドエラーの繰り返しです。話し合ってやってみて、また話し合う」

一見すると些細な問題かもしれないけれど、毎日一緒に暮らす当事者にとっては大事な問題。生徒の目線に立って寄り添いつつ、どうすればみんなが納得のいく答えを出せるのか、一緒に考えていく。

隣で話を聞いていた寮生のカンナちゃんも、続けて話をしてくれる。

「私は県外からこの高校に入学してきたんですけど、自分の意見を求められる機会がすごく多いなって感じました。そういう環境で過ごすことで、自分で考えることも増えたし、いろんな角度から考えられるようになってきたと思います」

教育寮には、『おたま』と呼ばれる寮生だけで構成された寮の運営組織がある。

そこでは、日々、寮生から上がってくる問題について生徒たち自身で話し合い、解決していく。カンナちゃんもメンバーの一人だ。

「組織にはいろんな人がいるので、いろんな考え方が出てくるんです。そこで、自分の意見にこだわりすぎてしまうと、話し合うこともできないし、問題も解決できない。どうしたらいいか、日々学ぶことばかりで面白いです」

「この前の引き継ぎはよかったよね」と、再び島村さん。

おたまのメンバーとハウスマスターは週に1回会議をしていて、共有しておきたい問題や、今後やってみたいイベントなど、考えていることをシェアしているそう。

そこで少し前に出た議題が、次の代への引き継ぎの時期をどうするかという話だった。

「議論が煮詰まってきたときに、ある子が『何月に引き継ぐかを話し合うんじゃなくて、おたまがどんなことをしているかについて、後輩たちと一緒にパワーポイントをつくってまとめるのはどうかな?』って提案してくれて」

「次の代と今の代が一緒に作業すれば、お互いに整理できるし時間も短縮できるんじゃないかって。その案が出たときは、みんながめっちゃいいやんって。あのときは、すごくよかったよね」

取材終わり、カンナちゃんと島村さんに「お二人の仲で、印象に残っていることはありますか?」と聞いてみると、二人して「あれだよね」と話してくれたエピソードがある。

「この学校の生徒って、すごく活動的で。カンナも勉強とかイベントとかで、いっぱいいっぱいになって泣いちゃったことがあったんです。そのときは話を聞いて、泣き止むまで一緒にいて。そのあと『お腹空いたでしょ?一緒にうどん食べに行こ』って。 それはすごく覚えていますね」

「と言いつつ、私も1年に一回は泣いているんですけど(笑)。私も日々悩むし、私が言うことが正解ではないと思うので。いい意味でブレブレなんです。いつもあれでよかったのかなって、反省しながらの毎日です。でもそれでいいと思うし、それを受け入れてくる生徒やスタッフがここにはいて。いい環境ですよね」



一方的に教えるわけでも、ただ話を聞くだけでもない。一緒に考えて、毎日試行錯誤していく。当たり前のことのようで、自分が一番正しいと思っていたらできないこと。

自分の弱いところ、足りないところも認めて、生徒と向き合う。大人だってブレブレで、だからこそ教えられることもあるし、教えてもらうこともある。

生徒とともに成長できる環境が、この場所にはあると思いました。

(2022/2/8 取材 杉本丞)
※撮影時はマスクを外していただきました。

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