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コミュニティビルディング?
Onを卒業した駒田さんが
なぜビールをはじめるのか

予算もない。知名度もない。スタッフもいない。

そんなスイスの名もないランニングシューズブランドだったOnを、この10年間で日本で愛されるブランドに育て上げた駒田博紀さん。

自らの役割を終えたと感じて、2024年2月29日、日本法人・Onジャパンの代表を退くことに。

そんな駒田さんが次にはじめたのが、クラフトビールの醸造所兼タップルーム「Yellow Monkey Brewing (イエローモンキーブリューイング)」。

ミッションは、「ビールとスポーツを通じて人と人を繋ぎ、笑顔を広める」。

Onジャパンでそうしてきたのと同じように、「コミュニティビルディング」を大切にしています。

今でこそ広く知られるようになった、コミュニティビルディング。駒田さんが実践しているものは、世の中に広がっているコミュニティマーケティング的な手法とは本質的に異なるように感じます。

募集する職種は、YMBで働くタップルームマネージャー。

コミュニティビルディングの起点となる役割を担います。

ゆくゆくは世界中にYMBのコミュニティが広がり、みんなが笑顔になる。

大きなビジョンに向かって、同志を募ります。

 

渋谷駅から電車で約40分。

あざみ野駅で横浜市営地下鉄ブルーラインに乗り換え、一駅となりの中川駅で降りる。

歩いて数分ほど、ベージュ色のマンション一階にYMBを見つけた。

「こんにちは、今日はよろしくお願いします」

代表の駒田さんが迎えてくれる。

ひと目でトレーニングしているのだとわかる体つき、そして落ち着いた雰囲気。

「コミュニティビルディングっていうのは、今でこそマーケティングのキーワードになっていると思いますけど、僕がOnを始めた2013年には、そんな言葉は日本に存在していなかったと思います」

当時、駒田さんはスイス系商社で働いていた。

同じくOnも創業はスイス。本社とOnで日本進出の話が決まり、話が降ってきたという。

「上司から、『このブランドを日本でトップにしてください』と言われて」

ランニングシューズ市場は、巨人のようなブランドたちがすでにマーケットを押さえている状況。

それに対して、駒田さんに与えられたマーケティング予算は、たったの年間400万円。

お金もなければ、広告効果が見込めるような有名人とのつながりもない。何より、駒田さんはランニングが嫌いだった。

厳しい状況の中、どうしたらOnというブランドが存在することを知ってもらえるのか。頭を抱えながらも、知恵を絞り出す。

目をつけたのは、Onに興味を持ってくれた人たちの共通項。

見知らぬブランドのシューズにお金を出せる、好奇心旺盛な性格。

そこで駒田さんは、イベント出展時などに出会ったお客さんたちとFacebookでつながっていく。

Onに興味を持ってくれた人とつながり、メッセージを直接届けることで、ブランドの認知や購買につながっていくのではないかと考えた。

マラソンやトライアスロン、トレイルランニングなど、さまざまな大会にブースの出展を続ける。一人ひとりのランナーとつながり、彼らの応援を続けていくなかで、自身も感化されていった。

「2013年4月の全日本宮古島トライアスロン大会のフィニッシュ会場で、『これって、観るものじゃなくて、やるもんなんですかね…』って、Onを履いている人にポロッと言ってしまった」

「そしたら彼は満面の笑みを浮かべて、手を差し出してくれて。『駒田さん、約束ですよ』って」

自分自身も同じ大会で完走することを決意する。もちろんOnを履いて。

スイム3km、自転車155km、最後にフルマラソンと同じ42.195km。トライアスロンの中でも「ロングディスタンス」に分類される過酷な大会。未経験者が最初に目標とする大会ではない。

それでも日々練習しながら、SNS上で発信を続けた。

そして迎えた大会当日。

「制限時間の5分前ごろかな、なんとか完走することができて。ゴールに帰ってきた写真をSNSに投稿しました。そしたら、今までは駒田さんって呼ばれ方をしていたんだけど、 “こまちゃん” になったんです」

「『よくやった、こまちゃん。これで君もストロングマンだ!』って。もはや友だちですよね」

もともとはスポーツブランドのスタッフとお客さんという関係ですよね。

「そうなんですよ。でも、僕の中ではもう友達のようでもありました。そんなみんなと盛り上がって、祝福し合って。あれは今でもハッキリと思い出せる新たな感覚でした」

この日を境に、少しずつOnが日本で広まっていく手応えを感じる。

今では、コミュニティビルディングをマーケティングに取り入れているブランドも増えました。ただ、うまく機能していない事例も見かけます。

この違いについて、駒田さんはどう思いますか?

「コミュニティビルディングをやろうとして、インフルエンサーマーケティングになっている事例をたくさん見てきました。インフルエンサーマーケティング自体がわるいわけではなくて、コミュニティビルディングだと思ってやろうとすると間違いが起きます」

イベントにインフルエンサーを呼ぶと、その人のファンたちが集まる。ただ、イベントが終わったら、ファンは満足して帰ってしまう。

そのため、ファン同士のつながりは生まれにくいし、ブランドが目指していたコミュニティは残らない。

「コミュニティビルディングのゴールは、『自走式のコミュニティ』をつくることにあると思っています。たとえば、Onでラン&ビールのイベントをやったとき、僕はある実験をしてみました。乾杯にレベル分けをして、みんなにそれをやってもらうんです」

レベル1、周りにいるはじめましての人5人と杯を合わせる。

レベル2、乾杯した人たちと一緒に写真を撮る。

レベル3、その人たちをメンションして、Instagramのストーリーズに投稿する。

「レベル3までできたら大したものです。イベントのときには『さあ、レベル3までやれるかな!?』って、ちょっと焚き付けてみる。まるでプロレスですよね(笑)。そしたら『やってやるよ!』みたいになって、みんながつながっていくんですよ」

「つながってもらうことが大切。インフルエンサーだけに矢印が向いていては、コミュニティビルディングにはならないんです」

従来のマーケティングでは、各施策に対して、どれだけフォロワー数が増えたか、来場者数につながったか、商品の購買数につながったのか定量的に把握できる。

ただ、コミュニティビルディングでは、参加者たちがどれくらいつながったのか、網羅的な把握は不可能に近い。

「でも、僕はこっちのほうがリアルだと思っていて。Onをきっかけに一緒に大会に出ている人がいたり、合宿する人が出てきたり、結婚するカップルまでいたり。そういうことが生まれているのは肌で感じています」

日本に正規輸入された最初のOnの一足が、駒田さんの目の前に置かれてから、10年。

Onのまわりにはコミュニティが生まれ、多くの人に支持されるブランドになった。

「2015年にOnジャパンを立ち上げたときは、僕がいなかったらすぐに空中分解するような会社でした。でもそこから仲間が集まってきて、それぞれが自立していってくれて」

「もう僕がいなくても何の問題もなくOnというブランドは日本に存続できている。Onのコミュニティもそう。それがわかったからこそ、新しい挑戦をする決意が出来ました」

Yellow Monkey Brewing を始めるきっかけは、2023年1月、ヘッドブルワーの健吾さんとの出会い。

「彼は、『僕の醸造のゴールは、ビールそれ自体じゃなくて、飲み手の笑顔だ』って言ったんです。僕も、Onを売ること自体が目的じゃなくて、それを通じて人と人がつながって、その人たちが笑顔になるのを見るのが好きだったんです」

「彼と性格はまったく違うけど、ゴールは同じだろうなと思いました」

最初の目標は、YMBをコミュニティハブとして成り立たせること。

そのために、タップルームマネージャーを募集する。

ビールの説明がきちんとできたり、フードメニューを開発してお客さんの反応を見て改善したり。アルバイトスタッフのシフト作成や、売り上げ管理など。基本的なお店の運営についてはもちろんのこと、コミュニティビルディングに向けた動きも求められる。

「お客さんとスタッフできっちりと分けすぎるのではなくて、ときには友だちのような接し方もできるといいですね。そうすると、いろんなアイデアが生まれてくることもあるんです」

たとえば、タップルーム入り口にあるワンちゃん用スペースも、お客さんの声から新しく設置したもの。

ほかにも、地元の人からオープン前にヨガイベントができないか、閉店後に映画上映会をやれないか、など。さまざまな要望が届いているそう。

中期的には、YMBを通じて、横浜をクラフトビールの街にすることを目指している。

そして、長期的には、クラフトビールの街になった横浜を世界の人に知ってもらうこと。そのために、国外輸出や国外生産も視野に入れている。

「世界中の人がYellow Monkey Brewingのビールを飲んでスポーツをして楽しそうにしている。その様子をSNSで発信してもらったり、その人たちが聖地巡礼みたいにここに来て一緒に走って乾杯したり。そんなことが実現できたら楽しいですね」

 

駒田さんとともに、その夢を実現させようとしているのが、ヘッドブルワーの健吾さん。

「いまはゲストビールのみの取り扱いなんですけど、あと2、3ヶ月でここに醸造所ができます。生きたブルワリーにしたいと思っていて」

生きたブルワリー、ですか。

「ブルワリーってオブジェみたいになっていることが多くて、それがイヤなんですよ。だから、ここでは醸造タンクをガラスで囲って。お客さんがグラスを持って覗けるような機会もつくりたいと思っています」

自分が飲んでいるビールの製造過程を、香りや音とともに楽しむことができる。

「もともとはお酒もあまり飲めなかったし、ビールに興味はなかったんです。でも、熊澤酒造のインペリアルスタウトってスタイルのビールを飲んだ瞬間に、こんなにうまいビールがあるんだって衝撃を受けて。それで自分もビールをつくりたいと思ったんです」

「同時に、そんな感動をほかの人にも共有したいと思いました」

健吾さんはどんな人と一緒に働きたいですか。

「1番は明るい人。僕らの本質は、ここでみんなの笑顔をつくること。そこがないと続かない仕事だと思います」

となりから、駒田さんも続ける。

「コミュニティをつくろうとしても、そもそも僕らが楽しんでないと、それが透けて見えるんです。お客さんはよく分かっていますよ。だから、嘘が通じない世界に生きているって思ったほうがよくて。そういう意味では自分の良さもダメなところも、オープンにできる人がいいですね」

 

印象に残っているのは、訪れるお客さんと駒田さんが仲良く握手を交わしているシーン。

気になって、自分も駒田さんに握手を求めてみた。

「もちろん!」、と言って握り返してくれた手は厚く、ギュッと握られた瞬間、不思議と元気が伝播してくる感じ。

もうひとつ、数年ぶりの再会を果たしているお客さんたちがいたことも印象的だった。

YMBでも、コミュニティがすでに生まれつつあります。

キャラクターの強い人たちと働くには、同じくらい自分の軸を持っている必要があると思います。

ただ、ひとりですべてを担う必要はなくて、得意不得意をチームで共有し、互いを信頼して進めていけば大丈夫。

小さなハプニングも、運命を変えるような出来事も。日々さまざまな景色に出会える場所だと思いました。

(2024/05/31 取材 杉本丞)

7月5日に、代表の駒田さんをお招きしてイベントも開催します。オンライン参加もできるので、よければご参加ください

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