迫力ある大きな車体、カラフルに光る電飾、高級生地とシャンデリアで豪華に彩られた内装……。
日本独自の文化として発達し、海外からの評価も高い「デコトラ」。細部にまでトラックオーナーの美学がつまっています。
高速道路や市場の近くで、目を奪われた経験のある人もいるのではないでしょうか。
そんなデコトラのカスタムをはじめ、トラックパーツの製造販売を手がける株式会社ビッグウエストで、販売スタッフを募集します。
群馬と埼玉で運営する店舗「トラックアート歌麿(うたまろ)」での接客・販売を中心に、パソコンで商品の情報を入力したり、オリジナル商品のステッカーをつくったり。ときには重いカスタムパーツを運ぶこともあります。
「デコトラって、なんだかおもしろそう!」という気持ちさえあれば、現場でどんどん学ぶことができるので、経験は一切不問。トラックの知識はもちろん、大型免許もなくて大丈夫です。
想像よりはいかつくない、案外普通のカー用品店で、残業もほとんどなし。長時間労働で大変な思いをしていた人や、昼夜逆転していた人も、きっと健やかに働けますよ。
群馬県伊勢崎市。インターチェンジのほど近く、大通り沿いにビッグウエストはある。
大型トラックのドライバーさん御用達というだけあって、駐車場は広大。店舗と倉庫、工場が一緒になっていて、スタミナ満点のラーメン屋さんも隣接している。
トラック用品店「トラックアート歌麿」には、見慣れない商品がずらり。圧巻の品揃えで、全国のトラック乗りはもちろん、車好きのファミリーからも愛されている。近くの自動車整備学校に通う生徒さんが、自転車で来ることもあるとか。
迎えてくれたのは、創業社長の息子で専務の大西さん。
「これはうちで復刻した『ジョナサン号』です。1970年代に大人気を博した映画『トラック野郎』シリーズで、愛川欽也演じるヤモメのジョナサンが乗っていたトラックなんですよ」
近くで見ると、丁寧にペイントされていてかっこいいですね!
「デコトラって、総合芸術だと思うんです。外装や内装、さらには排気管の音に至るまで、できるところは全部いじる。すべてを自分らしくカスタムして、終わりなく手を加え続けるのが面白いところですね」
大西さんが特に好きなのが、トラックオーナーさんたちのワードセンス。
「映画『トラック野郎』をきっかけに『生まれてすみません』というフレーズがよく使われているのですが、実は太宰治の作品に由来しているもの。みなさんアーティストでもなく、普通のトラックの運ちゃんなんだけど、たくさん考えて、自分なりに表現しているのが素敵なところです」
聞けば、派手なデコトラは金銭面の問題から、近年新規に制作するのが難しく、廃車になるときに外されたパーツが他のトラックに受け継がれていることも多いのだそう。
「今トラック本体を新車で買うだけでも2000万円以上。そこにカスタムしていくとなると、かなりの金額になってしまう。新規でつくるのは現実的に難しいんですよね」
「うちで手がけるカスタムも、基本的にはそこまで派手ではないものばかり。法律での規制や、労働環境の見直しも影響して、業界全体としては盛り上がっているとは言えないのが現状です」
業界を盛り上げたいからこそ、デコトラに興味を持ってくれた媒体の取材はなるべく断らないという大西さん。
「海外からの取材も年1回くらいのペースで受けています。国内だとデコトラに抵抗のある方もいるかと思いますが、僕は『こういう人がいてもいいんじゃない』って思うんですよね」
たとえば平日は長距離運転で忙しく荷物を運んでいるのに、休日もトラックに乗って『能登の災害ボランティアで野菜を運んできた』というお客さんがいる。
「学歴は無いし、得意不得意もあるけれど『トラックでできることがあるなら頑張ろうぜ』って、厚い人情があるんです。そういう人たちが少しでも生きやすくなるといいなと思って、日々会社をやっています」
こういう人がいてもいいんじゃない、って本当に大切な視点だと思います。
大西さんのお父さんは、もともと「チューニングカー」が好きでカスタムショップをスタート。ビッグウエストとしては40年以上、トラックパーツの企画製造から、輸入、販売、カスタムまでを一貫して手掛けている。
大西さん自身はファッション関係の仕事などを経て、12年前に入社した。
「昔はパンチパーマの方などもいましたが、今はいかついお客さんも全然いないですし、想像よりは『普通』のトラック用品店だと思いますよ」
続いて話を聞いたのは、トラックアート歌麿 群馬店で働く、スタッフの須藤さん。
「商品の値上がりがあったので、最近はずっとその作業をしています。店頭の値札はもちろん、オンラインショップの値段も一つずつ変えないといけなくて、けっこう大変なんですよ」
運送会社など複数の仕事を経て、6年前に入社した。大型トラックの運転もしていたそう。
「当時は朝2時に起きて、群馬から熊本まで荷物を運んで。そこから名古屋、宮城を経由して戻ってくる、みたいな働き方でした」
運転している間は一人自由気ままで、仕事は楽しかったものの、大雪の日に視界不良でミラーを擦ったことをきっかけに、転職しようと決意。
「労働時間が長い職場が多かったので、朝が早すぎず、残業がないということで入りました。特にトラックが好きだったわけではないですが、業務内容よりも人間関係を重視しました」
販売スタッフが、まずはじめに覚えなければいけないというのが「ハンドルカバー」のサイズ。「このメーカーの車種に乗っているんだけど、どのサイズが合う?」などと店頭で聞かれることが多いという。
「いくつもサイズがあるので最初は全然分からなかったですが、だんだんと覚えてきて、何も見ずに答えられたときはうれしかったですね。『新格子』という生地が特にお気に入りです。『モンブランローズ』『王朝』など、柄の名前もユニークですよね」
いわゆる大型トラックといわれているものは、4社4車種程度のラインナップ。
年式によって若干の違いはあるけれど、合計20種類ほどのトラックを覚えれば大丈夫なのだとか。古い車種を合わせても、合計50種類ほど。店内には車の写真とサイズのポップが貼ってあるので、それがだいたい把握できていればオッケー。
一般的なカー用品店だと、扱うメーカーも車種も幅広いため、そこと比べれば覚えることは格段に少ない。
「テールランプについても聞かれることが多いです。点灯するタイプと、光が流れるタイプがあって、流れるタイプのほうが高価。流れ方もメーカーや商品によって違います。こだわりが強いお客さんも多いので、光り方の動画を確認してもらうこともあります」
ステッカーの製作も須藤さんの仕事。Illustratorでデータをつくり、カッティングシートを切り出している。
「菊マークは人気でよく出ていますね。お客さんに聞いたら、スマホを落としたときのイタズラ防止で貼っているそうです」
続いて話を聞いたのは、トラックアート歌麿 埼玉店の北野さん。入社27年目という大ベテランだ。
「マーカーランプもよく売れる定番商品です。黄色だけでもいくつも種類があって。カットの仕方や材質で見え方が変わるんですよ」
「今はネットに安いものもいろいろ転がっているけれど、うちに置いてある商品は、やっぱり耐久性が違います。1年でダメになるものでいいのか、多少高いけれど10年持つものがいいのか、そういう話ですよね」
北野さんは16歳で免許を取ってから、バイクいじりや車いじりに夢中になっていった。
「いわゆる暴走族から、チーマー、カラーギャングに移り変わっていった狭間の世代です。僕は定時制高校に5年通っていましたが、あくまでも学校が大好きだったからで(笑)ヤンチャではなかった……ということにしておいてください」
バーで働いたものの、昼夜逆転の生活で体調を崩し、人間は日光に当たらないとダメだ!と転職。20年ほど、ビッグウエストの工場でカスタムを担当していた。
「近年は人手不足なので店頭にも立っていますが、新しい人に入ってもらって役割分担できるとありがたいです。僕が入ったころは見て覚えろっていう時代でしたけど、今はもう、教えたほうが絶対に早いですから」
どんな人が合っていると思いますか?
「勉強熱心なのは大事だけど、真面目すぎるとダメですね。『こうしなきゃいけない』『ああしなきゃいけない』ってなると、仕事はどんどん『ハマって』しまう」
「できないなら、自分一人で抱え込まず『無理っす、間に合いません』って、早めに言えることが大事だと思います。そのほうが働いていて楽しいし。今の若い人は知らないことを恥ずかしいと思っていることが多いけれど、教えたがりの人も案外いるので、どんどん聞いたほうがいいですよ」
印象的だったお客さんについても教えてもらった。
「パーツが浮いているように見える、特殊なカスタムを依頼されたことがあって。工場の人間だから、無茶なお題って燃えるんです」
「無事納品してしばらくしたら、お客さんから連絡があって『どうやってやってるの、いくらかかった?って何人にも聞かれて、いい加減うぜえ』だって(笑)。反響があったんだなあって、あれは面白かったですね」
一見派手なデコトラですが、北野さんいわく、車検は「通す」もの。
ルールの中で遊び、トラックオーナーさんたちの美学に応える仕事です。
今現在、トラックの知識や販売経験がなくても一切問題ありません。好きこそものの上手なれというように、興味さえ持てれば、働くなかで成長できるはず。
海外からも評価の高い、日本独自のニッチなカルチャー、トラックカスタムの世界に飛び込んでみませんか?
(2025/04/09 取材 今井夕華)