求人 NEW

ひとつ屋根の下
悩んで、笑って
ともに築く3年間

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

「ねえ、はなさん、聞いてください。今日学校でこんなことがあって…」「えー、なになに?」

お菓子をつまみながら今日のできごとを話したり、悩み相談をしたり。

高知県の山あいにある小さな学生寮では、高校生とハウスマスターのはなさんが、毎晩そんなふうに過ごしています。

高知県立嶺北高等学校。いま、この高校に全国から生徒が集まってきています。

きっかけとなったのは、2年前にスタートした高校魅力化プロジェクト。

地域の自然や歴史をひもときながら学ぶオリジナルの授業や、日々の学習をサポートしてくれる公営塾がはじまりました。さらには四国一のダム湖で活動するカヌー部や、地域の農家さんのもとで学ぶ農業コースなど、以前からある取り組みも注目を浴びるように。

ここでしか過ごせない3年間を求めて進学してきた子どもたちが、毎日を過ごす場所。それが今回の舞台となる学生寮です。

2棟目となる女子寮のハウスマスターを募集します。



羽田を飛び立った飛行機は、およそ1時間半で高知に着陸する。「高知龍馬空港」という愛称のとおり、到着ロビーのあちこちに坂本龍馬の姿が。

「あいにく土佐町は龍馬ゆかりの土地ではなくて。その代わり…ではないんですけど、平家の落人伝説が残っているまちです」

そう教えてくれたのは、土佐町役場の尾崎康隆さん。

この日はちょうど高知市内で会議があったということで、同乗させてもらった。

これから向かう土佐町は、四国のまんなかに位置している。高知市からは、高速道路を走って40分ほど。

「県内でもけっこう寒いほうで、雪も降ります。一昨年はマイナス10度まで下がって、福島県と気温が一緒やったんです(笑)」

四国一高い山に囲まれて、一級河川の吉野川がゆったりと流れる。そんな環境にありつつ、スーパーやコンビニ、総合病院もあって、生活に不便はしないそう。

人口に占める移住者の割合が、県内でもトップクラスに高い土佐町。

早い時期から移住支援に取り組んでおり、とくに東日本大震災以降は、子育て世代が多く移り住んでいるという。

「移住した家族が、またほかの家族を呼んで…という連鎖で、ここ何年かでベビーラッシュがきていて。地元の方も含め、子どもが3、4人いる家庭が多いんです」

「そんな背景もあって、近年は町として子育てや教育に力を入れていて。その一つが、嶺北高校魅力化プロジェクトなんですよ」

土佐町はじめ、4町村で構成される嶺北地域。その地域内に唯一残っている高校が、嶺北高校だ。

71年の歴史を持つこの高校も、生徒数が少しずつ減っている。

嶺北高校を、生徒たちにとって魅力的な学校にしたい。そんな想いで、嶺北地域では2年前から、高校の魅力化プロジェクトに取り組んでいる。

プロジェクトの2本柱は、基礎学力アップと、地域を舞台にした課題解決型学習。

一つめの基礎学力アップは、2018年にオープンした公営塾のスタッフが、高校の先生と協力しながらその役割を担っている。

そしてもう一つの柱が、高校のオリジナル授業「嶺北探究」だ。

町長や地域の大人を学校に招き、嶺北の現状について生徒たちから直接聞くことができる場をつくったり、フィールドワークを通して「どんな発信をすれば、嶺北の魅力が伝わるだろう」と考えたり。

地域を舞台に生徒みずからが課題を見つけ、これまでの知識や経験をかけあわせながら、自分なりの答えを導き出せるような場づくりに取り組んでいる。

こうした取り組みの甲斐あって、今年度の入学者数は、昨年度の17名から37名へと倍増。地域内進学が増えたほか、東京や関西など全国から10人の生徒がやってきた。

「この2年で、プロジェクトがどどっと進み出して。とはいえ、まだまだ高校の中身を変えていこうという段階です。人気に見合う高校になれているのか、不安に思う部分もあって」

「でも、生徒にとって何が一番いいのかという視点を忘れなければ、何も変わらないよりずっといいのかなと思っています」

今年の出願者数は37人。無事に合格すれば、寮生も男女5名ずつ入学する見込みだ。

そうなると、昨年オープンした女子寮は定員超えとなる。そこで土佐町は町内のモデルハウスを、4人制の寮として整備した。

嶺北の木材を使った、2階建ての一軒家。今回は、この新寮のハウスマスターを募集したい。

「まずは、去年オープンした女子寮がどんな雰囲気か知ってもらおうと思って。ハウスマスターと寮生が待ってくれているので、今から会いに行きましょうか」



車は女子寮に到着。チャイムを鳴らすと、「はーい」という元気な声が聞こえてきた。

温かいお茶とお菓子を用意して待っていてくれたのは、ハウスマスターの佐藤はなさんと2人の寮生。

まずは寮生二人の自己紹介から。制服がよく似合う野乃花ちゃんは東京から、となりでニコニコと話す葉月ちゃんは県内からやってきたという。

はじめての寮生活は、どうですか?

「すごく楽しいです」と野乃花ちゃん。

「くだらないことで涙が出るくらい笑ったり、はなさんに悩み相談をしていたら深夜になっちゃって、『もう消灯時間やけど、お腹空いたよね。カップラーメン買ってくるから待ってて!』ってコンビニまで走ってくれたり」

わあ、それは楽しそう(笑)。みんな仲がいいんですね。

「家族みたいな感じです。…でも、最初はすごく大変でした」

「そうだね。お互いに気を遣っていたし、夕食以外の家事、掃除や洗濯は自分たちの仕事で。炊飯器にご飯が入ったままだったり、食べかけのパンがそのままだったり。本当にいろんな事件がありました」

何も決まっていないところからスタートした寮生活。

何時に起きるか、掃除はどうするか、そもそもルールはどう決めていくか。全員で、ゼロから話し合ってきた。

「週1で寮会議をひらいて、案を出し合って、やってみてダメだったらもう一回考えて。当番を決めてみたり、これ忘れちゃうよねってことは誰でも見える場所にメモしたり」

「試行錯誤しながら、自分たちらしい寮をつくってきたんです」

たとえば朝食。ひとり2個のパンがレギュラーメニューだったものの、「これじゃ飽きちゃうし、お腹が空かない?」と議題に挙がったそう。

「寮生で話し合って、役場の方にも相談して『パンの配達を1つにして、浮いたお金で自炊したり、おかずを買ったりするのに使おう』ってルールに変えたんです」

そんなふうに自分たちで考えて決めるなんて、すごいなあ。

「いまは『これをこう変えたら、もっと過ごしやすくなるのかな?』って毎日ワクワクしていて。すごく成長したよね!って自分たちで言っているんです」



「うん、本当に成長してるよ。すごいと思う」

ハウスマスターのはなさんも、会話に加わる。

「二人が話してくれたように、自治寮にしたいと思っているんです。わたしの勤務時間もみんなが決めたルールによって変えていて、いまは朝の掃除がはじまる6時半が出勤時間です」

寮生たちと一緒に暮らしながら、生活や精神面をサポートしていくのがハウスマスターの仕事。

耳馴染みのない仕事だけれど、どんなふうに過ごしているんだろう? はなさんの1日を教えてもらう。

朝、一緒に掃除と朝ごはんを済ませたら、学校へと送り出す。その後は事務作業などをこなしつつ、タイミングをみて休憩をとる。

「わたしは栄養士と調理師の資格をもっていたし、料理も好きなので、特別に夕食づくりも担当させてもらっていて。昼間はその準備をしています」

「ほかにも、地域の方と一緒にご飯を食べにいったり、遊びに行ったり。そのつながりをなにか寮生に還元できればいいなとも思っています」

そして放課後。「おかえり。今日はどうだった?」と迎えて、その日のできごとに耳を傾けたりしながら過ごす。夕食のあとはおしゃべりをしたり、寮会議を見守ったり。

「21時の点呼後は、自由時間です。でもわたし自身はオンオフないタイプというか、仕事という感覚があまりなくて」

「寮会議も、深夜のお菓子パーティーも、みんなを地域に連れ出すのも、業務でありプライベートでもある。みんなの成長と一緒に、寮がどんどん変化していくのがすごく楽しいです」

そう笑うはなさんも、最初は毎日壁にぶつかっていたそう。

「経験も価値観もバラバラの子たちが、はじめて親元を離れて暮らす。しかもルールは自分たちで決めないといけない。最初は何がわからないのかがわからない、という感じでした」

「わたしもどうサポートすればいいか、めちゃめちゃ悩んで。失敗したなと思うのが、みんなに口を出しすぎちゃったんです」

口を出しすぎた、というのは?

「みんなが会議で黙っているのを見て『こうしたらいいんじゃない?』って言っちゃったり、じっくり考えて意見を伝えたい子もいるのに『〇〇ちゃんはどう思う?』ってすぐディスカッションに持っていっちゃったり」

「みんなで決めていこうといいつつ、勝手に焦っていたのかもしれません」

そんなときに相談に乗ってくれたのが、役場の担当者や高校の先生、そして塾スタッフや男子寮のハウスマスターといった、同じプロジェクトのメンバーたち。

週に一度のペースで集まって会議をするなかで、さまざまなアドバイスをもらったという。

「最初のころはとくに、会議のほとんどをわたしの悩み相談にあててくれました。みんな真剣に考えてくれて、塾とか学校でのようすや、男子寮の取り組みも教えてくれて」

「ほかにも『このカードを使ったワークショップがよかったから、何か役に立てるかも』って共有してくれたり、同じように魅力化プロジェクトに取り組んでいる全国のハウスマスターを紹介してくれたり。みんなの力をたくさん借りました」

となりで話を聞いていた寮生の二人。はじめて聞く話もあったようで、「へー、知らなかった」となんだかうれしそう。

そんな二人を見て、「いまでもわたしは全然完璧じゃなくて」とはなさん。

「ほら、この間も『今日はわたしが会議のファシリテーションやるね!』って張り切ってみたはいいものの、全然うまくできなかったやろ?(笑)」

「でも、野乃花ちゃんが上手にまとめてくれて、葉月ちゃんも冗談をいって空気を和ませてくれて。そうやって、一緒に学んで、成長していければいいんやなってみんなが教えてくれたというか。その感覚がすごく心地いいんです」

4月には、新入生がやってくる。寮のメンバーも、他学年が混ざり合うように編成し直すそうだ。

そして1年後には、塾と寮が一体となったあたらしい施設が完成する予定。

「ベースができたところで、また一段階上の立ち上げに携われるのが楽しみです。今回募集する人とも、どう運用していくかゼロから一緒に決めていきたいですね」

「そのときには、みんなも3年生やね」「あ、本当だ!」と再び盛り上がる3人。

ときにふざけあったり、一緒に悩んだり。はなさんと寮生の関係は、家族のようであり、友達のようでもありました。

まだ何も決まっていない、まっさらな寮。高校生と一緒に、どんな場をつくっていこう。

そんなふうにワクワクした人は、きっといい伴走者になれると思います。

(2020/01/28 取材 遠藤真利奈)

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