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からだを温めると
森もととのう

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

一見関係なさそうなことが、nifuの事業ではつながっています。

発酵温浴nifuは、女性専用の温浴施設。おがくずの発酵熱のみで身体を温めます。

身体の深部から温めることで、胃腸の動きが活性化し、排泄機能の向上や血流を上げ、リンパの流れを促すことによって免疫力の向上も期待できます。

運営しているのは、株式会社テーブルカンパニー。もともとは、ヘアメイクさんなどを派遣する会社でした。

2013年に発酵温浴事業を開始し、いまは関東と大阪に9つのお店を展開中。

使用しているのは、ヒノキパウダーとヒノキの葉に、米ぬかを混ぜたもの。奈良県吉野町のヒノキを使っています。

温浴事業をスタートさせ、木材関係の人たちと関わるなかで、吉野の林業の危機を知った代表の片山さん。

現在は東京と奈良の2拠点で活動し、お客さんがお風呂に入れば入るほど、荒れた吉野の山が整備されていく。そんな仕組みをつくっている最中です。

今回は、新宿三丁目の直営店で、お客さんをもてなすスタッフを募集します。

お客さんがリラックスできるように、寝床をつくったり、声をかけたり。

nifuの循環を感じると、面白く働けると思います。

 

nifuのお店は、新宿三丁目駅から歩いて5分ほど。

一本道を外れると繁華街が広がっていて、夜はにぎやかになりそう。

大通りに面したビルの6階が今回の目的地。1階にカフェが入っているビルだ。

エレベーターで上がり、お店に到着。

店内はコンパクトな感じ。

入ってすぐに受付と待合のソファがあり、壁の棚にはnifuがプロデュースしている甘酒や化粧水、入浴剤などが並んでいる。おうちでもnifuを体験できるみたい。

受付を通って、浴室へ。

扉を開けると、一瞬でレンズが曇るほどの高い湿度。

ヒノキの発酵した独特な匂いがするけれど、そこまで気にならない。

「これでも匂いは強いほうで、3週間に1回のペースでおがくずをすべて入れ替えているんです」

教えてくれたのは、スコップで作業している新保(しんぽ)さん。新しく入る人の上司になる方だ。

「業界のなかでも入れ替える頻度は多いと思います。そのときによって香りも違うんですけど、肌触りも違っていて」

「わたしは入れ替える直前の3週目に入るのが好きなんです」

どういう違いがあるんですか?

「新しいおがくずは香りが新鮮で、肌ざわりがちょっと硬め。日にちが経つと、しっとりとした肌触りになっていって。そのあとシャワーを浴びて肌を触ると、もっちりしているんです」

おがくずを触らせてもらうと、見た目以上にサラサラしていて、肌に浸透していく感覚がある。

温浴時間は約15分。その後、シャワーを浴びて休憩室へ。

温泉や銭湯にくらべると入浴時間が短く感じるけれど、短い時間でも身体を内側から温め、血流、リンパの流れを促すのが発酵温浴の特徴。

二次発汗効果で、入浴後も汗がなかなか止まらない人もいるのだとか。

継続的に入浴することで、基礎代謝や基礎体温の向上など、さまざまな効果が期待できるという。

お店は昼の12時にオープンして、最終受付が夜の19時まで。

1時間前に出社してオープンの準備をし、お客さんが来店したら浴室に案内。

着替えている間に、浴室で寝床をつくっておき、お客さんが寝床に入ったらおがくずを被せていく。

「この仕事を始めて、15キロぐらい痩せたんですよ」と新保さん。

もともとIT業界で管理者をしたり、マッサージの仕事をしたりしていた。人の癒しに関わることを軸に仕事を探していたところ、nifuを発見。

入ってみていかがでした?

「おがくずをかけるのって、見た目以上にむずかしくて。ベテランの人がかけると、かまぼこのような形になって重さが均等になるんですけど、最初はなかなかできませんでした」

「山盛りになってしまうんですよね。でもそれだと真ん中の部分が重く感じてしまう。あとは、片足だけかけすぎちゃうとか、盛り方が曲がっているとか」

新保さんがある常連のお客さんを担当したとき。

一生懸命やってみたものの、均等におがくずをかけることができず、お客さんを満足させることができなかった。

「そのときは悔しかったです。次は絶対にうまくかけれるようにするって決意しました」

先輩スタッフにアドバイスをもらい、ふたたび同じお客さんを接客することに。

「今度は『均等にかけてもらってよかったです』って口コミをいただいて。お客さんに満足してもらえて、やりがいを感じた瞬間でした」

均等にかけるだけでなく、自分の汗がお客さんにかからないように気をつけたり、こまめにお客さんの様子を確認したり。覚えることはたくさんある。

新しく入る人も、3ヶ月ほどは仕事を覚えることで手一杯になりそうだ。

おかくずをかける技術と接客の技術を磨いて、本番にのぞむ。

なんだかスポーツのような仕事にも思える。

「スポーツが好きな人は多いです。山登りしてる人とか、ジムに通ってる人とか。運動が好きな人は合っているんじゃないかな」

「肉体労働ってほどではないんですけど、体力は必要だと思います。その相性はあるかな」

健康志向のお客さんが多いので、健康や美容について興味がある人は、いろいろ会話も楽しめそうだ。

 

マネージャーの西村さんは、「脱力が大切なんです」と教えてくれた。

直営店のほか、フランチャイズのお店に技術指導もおこなっている。

「脱力」ってどういうことでしょう。

「おがくずをかけるときに、全身ガチガチに力を入れてしまうと、すぐに疲れてしまうんですよね」

「必要なときに必要な筋肉にだけ力を入れて、あとは力を抜いてかける。そんなところから教えています」

力技ではなく、技術が大切。筋力に自信のない人も、コツを掴めば長時間働けそうだ。

「熱い浴槽のなかに入ってもらうので、お客さんによっては熱いと感じる人もいます。逆にもっと熱いほうがいいという人もいるので、お客さんにあわせて温度を調整します」

電気もガスも使わず、どのように温度を変えるんでしょう。

「浴槽のなかでも温度の違いがあるんです。下のほうが熱いですね。表面は外気に触れるのでちょっと冷たい」

「熱いのが苦手なお客さんだったら、少し早めに寝床をつくって表面を冷ますとか。もっと熱くしたいときは、奥からおがくずをかけてあげるとか」

時間帯によっても、温度が異なるそう。

「営業後は60℃くらいまで温度が下がっているので、おがくずに米ぬかや水、空気といったエサをあげるんです」

エサを与えることで、おかくずの発酵が進む。熱があがっていき、営業開始時間になると80℃くらいになる。季節によっても左右されるし、来店人数によっても微妙に変化していく。

「温度、匂い、質感。自分の手でさわって確かめる。感覚的な部分がとても大切なんです」

勤務後に入浴もできるので、どんどん自分で体感してみるのがいいと思う。

以前、飲食店で働いていたときに、体調を崩してしまったという西村さん。

そのとき、たまたま見つけたのが酵素風呂だった。

身体が芯から温まり、調子も良くなっていったのをきっかけに、温浴の世界にはまっていった。

nifuのお店には、立ち上げから関わっている。

「エステに行かなくても、肌の調子もいいし、身体の調子もいい。それでいてお給料もいただける。いいことしかないなと思いました」

「妊活をしていた人が、妊娠をして子どもを見せにきてくれたり、皮膚の問題に悩まれていた方が、化粧をして楽しく話してくれるようになったり。身体だけじゃなくて、お客さまの表情が良い方向に変わっていくのは、うれしいです」

温度も湿度も高い環境で一日中働くのは大変だと思う。

でも、ふたりとも楽しそうな顔でお客さんとのエピソードを話してくれる。

スタッフの新保さんが付け足してくれた。

「おがくずって肥料にもなるので、使用した後に農家さんに譲っているんです。その話をお客さんにすると、『わたしたちも吉野の森や農家さんに貢献できるんですね』って、どんどんファンになってくださって」

nifuの取り組みに共感したお客さんが、友だちを連れてきてくれることもあるという。

森と仕事が、確かにつながっている。

そのことを実感できると、働くのもより楽しくなると思う。

 

そもそもどうして森に関わっているんだろう。

日をあらためて、吉野の森へ車を走らせる。

「今日は天気もわるいので、一本だけにします」

代表の片山さんは、慣れた足取りで傾斜を登り、チェーンソーであっという間に木を伐ってしまった。

オープン当初から吉野のヒノキを使用しているnifu。

「いま、おがくずを買う人と売る人の想いが違うように感じていて」

どういうことでしょう。

「買う側は、捨てるようなおがくずを使うことでエコなサイクルを生んでいると思っている。全国の酵素風呂屋さんはそういう発想だと思うんですよ」

「でも、実際に山に来て売る側の林業関係者に話を聞いてみると、そもそもおがくずを売るために林業をしているわけじゃない。林業、製材業の衰退という大きな問題のなかで、いろんな悩みを抱えてる」

昔は林業で栄えていた吉野町。たくさんあった製材所も次々と廃業し、ヒノキ専門の製材所は残りわずかになってしまった。

林業が衰退すれば、森の管理が行き届かなくなり、どんどん荒れていく。

本来であれば、木が育っていく過程で枝を切ったり、間伐したりして整える必要がある。けれど、放置された森では、結果として一本一本の木がきれいに育たず、森も暗い。

そうなると建築用材などに利用できない木材が増えてしまうため、伐り倒されても回収されず、そのまま森に放置されてしまう問題もある。

土砂崩れや山火事の原因になりかねないため、本来は搬出する必要があるけれど、人手がないとそれもむずかしい。

「吉野のヒノキを使ってますと言っても、製材所から出てくる挽き粉だけしか使えていないわけで。今のままだと、いずれ挽き粉も調達できなくなってしまう」

「自分たちが欲しいものだけもらって、ほかのことは見て見ぬふり。これだと、山を美しくすることにつながらない。本当に意味のある活動をしたいと思っているんです」

2022年には自ら製材所を買い取り、森へ入って、木を伐り、葉っぱや枝を乾燥させ、粉砕して粉にして、発酵させている。

現在は使っているおがくずの10%ほどしか自分たちでつくれていないけれど、今後はその比率をもっと高めていきたい。

学生時代のころに大病を患った片山さん。本質的な健康について考えてきた。

身体にとっても、森にとっても良いことをしたい。

目を逸らさず、関わっていく。

頑張るほど、そのやりがいを感じられる仕事だと思います。

(2024/01/18 取材 杉本丞)

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