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天下の台所から
世界へ発信する
アート&カルチャー

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

中之島は、大阪市北区にある堂島川と土佐堀川に挟まれた中州です。

この場所には江戸時代、全国の藩の蔵屋敷が建ち並び、商人が出入りするなど、古くから経済・文化・行政の中心として栄えてきました。

京阪電車中之島線なにわ橋駅の地下コンコースにあるのが、「アートエリアB1」。

京阪ホールディングス株式会社、大阪大学、NPO法人ダンスボックスが三者協同で運営するコミュニティスペースです。

大阪の文化芸術やカルチャーを発信、活性化させる目的でさまざまなプログラムがおこなわれています。

メインプロジェクトは3つ。

鉄道を多彩な文脈で捉える企画展「鉄道芸術祭」。子どもから大人までを対象に、多彩なテーマに基づいてアートや知の可能性を探求する「サーチプロジェクト」。

そして、大阪大学主催で、哲学や音楽などいろいろなテーマに基づいた発表やワークショップをおこなう「ラボカフェ」。

今回は、運営を任されている一般社団法人アートエリアビーワンに所属して、各プロジェクトの進行、管理をおこなうプロジェクトマネージャーを募集します。

組織の理事には、関西を拠点に活躍する、デザイン事務所や出版社の代表など、錚々たるメンバーがアドバイザーとして関わっています。

マネジメントの経験は必要ですが、業種は問いません。

アートやカルチャーなど、興味の幅が広い人。やったことのないことに挑戦するのが好きな人にとっては、おもしろい環境だと思います。

あわせて、アシスタントスタッフも募集します。

 

新大阪駅から大阪メトロ御堂筋線で4駅、淀屋橋駅で降りる。

北区を代表するビジネス街・淀屋橋。地上に出ると、高層ビルが立ち並ぶ。

すぐ近くにかかっている淀屋橋を渡り、中之島へ。道は広々としていて、近代建築の建造物を見ることができる。

少し歩いて行くと、なにわ橋駅に着いた。

この駅の出入り口の建物は、建築家・安藤忠雄によって設計されたものだそう。大きなアーチが特徴的でかっこいい。

吸い込まれるように地下へと降りていくと、アートエリアB1に到着。

今日は施設が休館日のため、事務所に入って話を聞くことに。

はじめに、代表理事の服部さんの話を聞いた。

「中之島に来たのは25年前ぐらいですね。grafっていうクリエイティブユニットを立ち上げて。『ものづくりを通して暮らしを豊かにする』ことを目指して、プロダクトデザインとかブランディングデザインとか。アートとデザイン両方の領域を行ったり来たりするような仕事をしています」

「2008年に中之島線が開通して。アートエリアB1ができた当初から、プログラムの企画などで関わらせてもらうことが何度かありました」

はじめは、ほかのNPO法人に運営をお願いしていたけれど、2015年からは、一般社団法人アートエリアビーワンを設立し、自分たちで場の運営を担って行くことに。

服部さんは、2020年から代表理事として関わっている。

「アートエリアB1から生まれたものに、“クリエイティブアイランド中之島”というネットワークがあって」

クリエイティブアイランド中之島は、アートエリアB1をはじめ、国立国際美術館、文化施設「こども本の森 中之島」など、中之島にある14の機関が連携し、新たなものを創造していくプロジェクト。

たとえば、2ヶ所の美術館が連携して企画するナイトミュージアムや、江戸期から現代にいたる大阪の歴史を船で周遊しながら学ぶツアー。

さらには、中之島駅から発車する京阪電車の車内でさまざまなプロジェクトを展開する「電車企画」など、各機関が交わることでいろいろな化学反応を生んでいる。

アートエリアB1は、会場の貸し出しのみで関わることもあれば、企画から合同で関わることもあるそう。

「大阪に文化があるのか?って言われたときに、たこ焼きとかお笑いみたいな話になりがちで、まちのPRとしてもそれメインで打って出ることが多いんですね」

「でも、僕らが海外へ行って、本当にその土地のことを知ろうと思ったら、まずは博物館や美術館へ足を運ぶはずで。その土地の歴史やったり、最新の現代アートに触れたり。そのまちの現在地点を知ったうえで、まちの中に入っていくと思うんです」

大阪を振り返ると、中之島には歴史や文化が集まっている。

「パリのシテ島とかベルリンの博物館島とか。都市の中州って、空気が少し変わっていて、文化発信の中心になるようなエリアだと思うんですね」

「こうやって14の館が集まっていること自体、すごく珍しいことだと思っていて。それぞれの館のみで活動を完結されるのではなく、中之島っていう島自体を国際的な島にしていきたいという思いで協働して取り組んでいます」

中之島全体として掲げる未来のなかで、アートエリアB1が担っていこうとしているのは、どんな役割なんでしょうか。

「美術館で評価されるような作品が大切な一方で、そこでは評価されないけど、文化を支えているカルチャーの人たちも大事なわけで。そこをつなぐ接点を担いたいと思っています」

 

具体的には、どんな企画がおこなわれているのだろう。教えてくれたのは、理事の松村さん。

2005年に合同会社インセクツを立ち上げ、大阪を拠点に情報誌やWebサイトの記事を手がけ、自分たちでも「IN/SECTS」という雑誌を発行している。

アートエリアB1に関わるようになったのは、2013年に、代表理事の服部さんから「展示の企画を一緒にやらないか」と声をかけられたのがきっかけだったという。

「そのときの展示は“アパートメント・ワンワンワン”っていうタイトルで、名前の通り、111日間の展示をおこないました。何をやるかって言うと、このB1をアパートに見立てて、101号室、102号室みたいな感じで4つの展示部屋をつくったんです。作家さんは住人で、会期中も不定期で変わっていく」

ファッションデザイナーや庭師、映像作家に古本屋など。さまざまなジャンルの”入居者”が空間を自在に使った展示をおこなった。

「PC上に仮想空間を創りその中に自身が立ち、そこから切り取った風景を描いている」

「風変わり編み物作品『へんなあみもの』を作り続け、町中を編み物で埋め尽くす、ゲリラ編み集団『編み奇集団』を立ち上げる」

パンフレットを読むと、はじめて聞くような表現をしている人たちの紹介文が並んでいて、それだけでも興味を惹かれる。

インセクツが関西の若手作家を担当、grafが関東方面の作家をつなぐことで実現。展示期間中の間には、トークイベントやワークショップも開いたそう。

「それらの部屋とは別に、芝生を引いてフットサル場に見立てたスペースもつくって。インセクツチーム、grafチーム、作家チームみたいな感じで、本当にフットサルもやりましたね」

さまざまな展示をおこなってきた。なかでも2010年から毎年開催されてきた「鉄道芸術祭」は、アートエリアB1を象徴するような展示だという。

駅コンコースという場の特性を活かして、鉄道の魅力やそこにまつわる技術、文化、歴史などを、さまざまなアーティストと協働してつくりあげてきた。

これまでに鉄道芸術祭のひとつの目玉となっていたのが、京阪電車を1日貸切にしておこなう「電車公演」。

中之島駅から樟葉駅まで、往復1時間30分ほどの距離を走行しながら、音楽ライブにファッションショー、販売など、車内でさまざまなパフォーマンスをおこなうという実験的な試み。

「ノイズ・トレイン」や「クラブ電車 ~ストラクチャーの冒険~」、「京阪バザール電車」など、京阪の担当者とアーティストの間で調整を重ねながら、規制や制約の多い電車を舞台にさまざまなイベントを展開してきた。

今回新しく入るプロジェクトマネージャーは、そのように展示や企画を形にするために、各所との調整を担っていく。

アートエリアB1が主催する主な企画は、「鉄道芸術祭」「サーチプロジェクト」「ラボカフェ」の3つ。

京阪ホールディングス株式会社、大阪大学のディレクターが企画を考え、一般社団法人アートエリアビーワンは事務局を担当、所属しているふたりの社員が、それぞれの事業の実務を回している。

今回新しく入るプロジェクトマネージャーには、ふたりのマネジメントをおこないつつ、すべてのプロジェクトを俯瞰してほしい。

「柔軟に物事を考えられることはすごく重要だと思います。オルタナティブスペースって、なんでも表現できるからこそ、新しいことをどうやって可能にするのか求められるので」

「業務範囲が明確じゃないことに対して、一緒になって面白がってくれるような人がいいと思います」

 

社員のひとりで、一緒に働いていくことになる丸塚さんにも話を聞いた。

現在は、「鉄道芸術祭」と「ラボカフェ」といった主催事業に関わっている。

また、アートエリアB1が会場提供などでイベントに関わる「共催事業」や「地域連携事業」も含めた、アートエリアB1の施設運営に関する業務も担当している。

「月に一回、阪大や京阪の方とか、松村さんなどの理事も含めて2時間ほどの会議をしていて。B1の事務所にはいろいろな人が出入りしますが、全体の話し合いとしては、そこが唯一のオフィシャルな場というか」

「そこで各事業について決めるべきことは決めて。今は自分が資料をつくって、会議を回して、方針が決まったら各事業の担当者と連絡・調整し、業務を進めています」

前回の会議では、今年度の3月に行われる鉄道芸術祭について話し合った。

「12年間続いてきた鉄道芸術祭ですが、一度振り返ってみましょうということで、これまでの鉄芸をまとめた企画を、昨年から始めたんです」

これまでのデータをドキュメントや写真で展示。それにあわせて、メディアや哲学、デザインといった各分野の専門家10名をゲストに迎え、アーカイブの活用について話すプログラムも開催した。

「去年は展示をおこない、ゲストのみなさんに次年度に向けたアイデアをいただきました」

「今年はWebで過去の鉄道芸術祭の展示やイベントの映像を見られるようにしたり、若い世代のキュレーターや批評家に、鉄道芸術祭についての批評文を執筆してもらったりする予定で進めています」

現在、事務局は丸塚さんともう一人のメンバーで業務を回している。

事務局として発行する書類や資料の共有から、日々の業務の進捗、主催イベントの企画内容に関する相談まで、必要な事項は都度理事に確認しているような状況。

数ヶ月単位で同時に進行するプロジェクトがあるなかで、新しく加わる人は、事務局長的なポジションとして、ある程度の決裁権も持つことになる。

日々のプロジェクト管理はもちろん、アートエリアB1はどのような場所なのか、みずから語れるような人が向いていると思う。

「このあいだ、民間アートフェア『Osaka Art&design 2023』のひとつの会場としてここが使われたんです。京都の若手のアーティストであるexoriumさんが、ここで展示をして」

「暗闇の中で光るカプセルに霧が充満していて、霧の隙間から草木のようなものが見える。そういう全貌の見えない景色の断片から、鑑賞者の心象風景に思いをはせる時間をつくり出す、というコンセプトのインスタレーション作品でした」

「僕らが思っている以上に、アーティストがB1の会場を喜んでくれて。そうやって作品に貢献できるのはうれしいですね」

 

誰かの「つくりたかった」景色を、ともにつくっていく。

アーティストに限らない、オルタナティブなスペースの裏方だからこそ味わえる喜びもきっとここにはあると思う。

アートとカルチャーをつないで、新しい表現を生み出していく。天下の台所から世界へ発信していく仲間を求めています。

(2023/11/30 取材 杉本丞)

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