求人 NEW

文化財をまもる、いかす
パブリックなまちづくりを
黒子になり支える

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「奈良の食文化が集ったガストロノミーをつくりたい。レストランや宿泊施設、銭湯にオフィスもあって、いろいろなものが混ざり合う。それがおもしろいと思うんです」

そう話すのは、株式会社narrativeの大久保さん。

narrativeは、奈良を拠点にさまざまな地域活性事業に取り組んでいる会社です。

たとえば、歴史ある醤油蔵を宿として活用したり、まちに眠っていた古民家をレストランにしたり、廃業していた銭湯を復活させたり。

マーケットがないところに踏み込んで、自分たちでマーケットをつくる。そうして奈良全体を盛り上げていこうとしています。

今回募集するのは、事業を進めていくプロジェクトマネージャーと、主に古民家のリノベーションを担当する設計士。

あわせて、経理・総務など経営企画を担うバックオフィスも募集します。

自分たちは目立たなくていい。黒子として、地域に新しい価値を生み出し続けていたい。

その仲間になってみませんか。

 

取材に向かったのは、奈良県奈良市。

近鉄奈良駅から、商店街を通って南の方へ。奈良公園や興福寺にも近い場所で、外国人の観光客もたくさんまちを歩いている。

賑やかな通りから少し離れ、駅から歩いて10分ほどで到着するのが、narrativeのオフィス。

もともと蔵だった建物を改修して、オフィスとして使っている。

中は、蔵の面影が残りつつ、きれいな内装に仕上がっている。

2階にある会議スペースで話を聞いたのは、narrative代表の大久保さん。語り口は穏やかだけど、目に力があり、不思議と人を惹きつける魅力を持っている方。

「2018年にぼくらが手がけて開業した古民家宿『NIPPONIA HOTEL 奈良 ならまち』が斜向かいにあるんです。そのご縁でこの蔵も紹介してもらって、今は事務所として使っています」

narrativeは、奈良を中心に古民家などを活用したまちづくり事業をおこなっている会社。古民家を中心とした物件の開発から運営まで自分たちで手がけている。

会社の理念として掲げているのが、「文化財をまもる、いかす」。

古民家だけに焦点を当てるのではなく、工芸や伝統的な手法でつくられる醤油や日本酒など。有形無形関係なく、いまの時代に合う形で活かす。そんな事業に数年かけて取り組んできた。

たとえば、奈良の中南部、田原本(たわらもと)にある「NIPPONIA 田原本 マルト醤油」。

奈良最古の醤油蔵であるマルト醤油を、“現役の醤油蔵に泊まれる宿”として開業した。

ほかにも、奈良の南部、御所市(ごせし)にある廃業した銭湯「宝湯」を復活させるプロジェクトや、銭湯周辺の古民家を活用して宿や飲食店にするなど、地域の文化財を守りながら活かす事業を展開してきた。

「これから、工芸や芸能の事業承継をするかもしれない。有形・無形に関係なく、それらを受け入れて広げていく、プロフェッショナルな集団になりたいと思っているんです」

narrativeの特徴は、物件の開発だけにとどまらず、運営まで自分たちで手がけている点。

最初にnarrativeが開業した「NIPPONIA HOTEL 奈良 ならまち」は、開業後の運営を別会社に委託しているけれど、それ以降に手かげた事業は自分たちで運営のオペレーションを構築してきた。

コロナ禍でダメージはあったものの、いまは業績も回復。運営まで手がけることで施設をまわしていくノウハウも蓄積されてきた。

そしていままさに動いているのが、奈良市の若草山エリアと、橿原市(かしはらし)にある今井町という重要伝統的建造物群保存地区で、食を軸にしたガストロノミーをつくるプロジェクト。

「どちらも、地元の銀行さんから物件を紹介してもらって、ここでなにかできないか、という相談をもらったところからスタートしました」

「どういった形で活用するか迷っていたんですが、偶然奈良の生駒にある『communico』というミシュラン一つ星レストランのシェフが、若草山の物件でオーベルジュをしたいって話が出てきて」

そのシェフも、奈良で食のガストロノミーをつくり、奈良の食文化をもっとおもしろくしたいという思いを持っていて、そこが大久保さんと一致した。

奈良にたくさんの料理人が集まり、群生する。そのための土壌をつくるため、今まさに奮闘しているところだ。

「若草山のほうは、もうちょっとで工事に入る予定です。本当に若草山の目の前にあって、開業は来年の6月を予定しています」

それと同時に進んでいるのが、今井町でのプロジェクト。

古いまちなみにある4軒の長屋を改修していく予定だ。

3軒は自分たちで運営してカフェやショップに。シェアキッチンも備え付け、奈良での開業を考えているシェフのチャレンジキッチンのような場所にしたいと考えている。

「コロナ禍を経て、飲食の業界から一旦離れてしまった人もいると思うんです。そういった人に向けて、奈良で一週間や一日単位でチャレンジできる場所をつくるのはおもしろそうだなと」

「そこでうまくいったら物件を紹介してお店を開いてもらってもいいし、私たちが雇う形で宿などの飲食を担当してもらってもいい。奈良で職人のキャリアが育ち、花ひらくような生態系をつくりたいというのが、若草山と今井町のプロジェクトになります」

一見、大風呂敷を広げているように見えるけれど、大久保さんの言葉の節々から、いろいろな苦労や努力、そしてアイデアの力で、着実に前に進んでいる様子が感じられる。

大久保さんがここまで奈良にこだわっているのはどうしてなんでしょう。

「前職の銀行員時代から奈良とはつながりがあって。いろいろな人とのご縁で奈良で事業をすることになったんです」

「でも一番は、黒子的な存在でパブリックな取り組みをしたい、というのがあって。ぼくらは表にでなくていい。黒子として支えて、つくって終わりじゃなく、その後の運営まで担っていく。これは常に意識しています」

上流から下流まで、広くかかわるからこそ、大変なこと以上にやりがいもある仕事なのだと思う。

「働いているスタッフも、能力が上がって実績を積んでいく経験をしてほしい。そうすると会社のパワーもどんどんアップして、よりいろんな仕事のご相談をいただけるし、より高い付加価値を提供できると思っているので」

 

会社だけでなく、個人の成長も応援したい。

そんな大久保さんのもとでは、どんな人が働いているのだろう。

次に話を聞いたのが、narrativeでプロジェクトマネジメントを担当している浦山さん。

以前は鉄道会社で働いていて、日本仕事百貨の記事をきっかけに、昨年の6月、narrativeに入社した。

「もともと公共的なまちづくりがしたいなと思っていて。東京の大学で学んでいたんですが、2011年の震災をきっかけに、地方と都市がおなじように残っていくのは不可能なのかもしれないと感じたんです。だから、それぞれのオリジナル性に注目したまちづくりがしたいなと」

「そんなとき、ちょうど日本仕事百貨の記事を見て、大久保さんの考え方とか事業に共感して。それで応募しました」

働いてみてどうでしたか?

「本当にむずかしいことをやっているなって感じました。ちょうど「GOSE SENTO HOTEL」の開業前だったので、毎日のように御所に行って、ホテルの支配人と一緒に家具を搬入したり、シェフと備品を揃えたり」

「やっぱり現場に行くって大事なんだと実感しましたね。古民家に触れて、地域の人の話を聞いて。入社して1年が経ちましたが、現場での経験が、企画とかバックオフィスの業務に活きているんですよ。開業を経験できることってなかなかないので、貴重な経験だったなと思います」

プロジェクトマネージャーの仕事は、それぞれの事業のコストコントロールと、タイムマネジメント。そしてリレーションシップマネジメントの三つ。

それにかかわることであればなんでもやるのが、narrativeのプロジェクトマネージャーだ。

「今は若草山や今井町の企画ミーティングに入りながら、シェフとか建築士とか、社内外たくさんの人の動きや考えていることを読み取って、自分の想いを伝えて。少しずつでもプロジェクトを進めていく。それに全力を注いでいます」

ちょっとした声掛けや、資料の作成、プレスリリースの執筆など。プロジェクトを前に進めていくためにできることはたくさんある。

「そうした細かい積み重ねで、だんだんジグソーパズルが完成に近づいていく。そんなイメージです」

昨年の10月末に開業した御所のレストランと銭湯では、初日から人が並んでいた。

「おこがましいかもしれないけど、まちの人が利用してくれるというのが、パズルの最後のピースのように感じたんですよね。その瞬間に立ち会えたのがうれしかったし、自信にもなりました」

スキルや経験はもちろん大切なことだけれど、浦山さんの話を聞いていると、当事者意識を持って取り組めるかどうか。その態度が求められる環境なんだと感じる。

「わたしの話を聞いて、自分にはむずかしいかも… って考えちゃう人もいると思うんです。でも、そこはあんまり心配しなくてもいいと思っていて」

「自分にできることを、仲間と一緒に取り組んでいく。それがピースとしてはまっていって、ひとつの形になる。専門性がなくとも、実感を伴ったまちづくりをしたいという人だったら、できると思います」

 

最後に話を聞いたのは、設計を担当している英武(ひでたけ)さん。

一級建築士の資格をもっていて、半年前に入社した。

最初に手掛けたのは、いま取材をしている蔵のリノベーション。

「半年前は事務所がなかったんですよ(笑)。とにかくここをつくってくれって言われたのが最初の仕事でした」

「改修してトイレをつくって、現場管理もして。事務所が落ち着いたので、いまは今井町にある物件の設計も担当しています」

古民家と普通の新築では、仕事の進め方はちがうのでしょうか。

「古民家の改修って、法律が制定されていない時代に建築されているので、活用させるとなると制約が多くて。古民家特有の建物構造や、昔の雰囲気を残しながら法律も守り、いまの時代にフィットさせるというのは、むずかしいなと感じました」

「まだまだ勉強中ですが、昔の柱とか梁とか、そういったものをどう活かすか。技術的なことはもちろんあるんですけど、どっちかっていうと粘り強さ、でしょうか。考え続けてあきらめなければ乗り越えられることって、けっこうあって。粘り強さはぜったい必要だと思いますね」

新築は快適性や綺麗さが求められるけれど、古民家は雰囲気のあたたかみや、歴史を醸し出す空間づくりを意識しないといけない。

「古民家を相手にすると、同じ仕事はひとつもないんです。型がないぶん、柔軟な発想が求められる。黒子として、古き良き文化財を次世代につなげていくお手伝いのような仕事だなと感じています」

黒子として、奈良をはじめとする歴史や文化をまもり、いかし、そして次につないでいく。

これから先、奈良のまちがもっとおもしろくなっていく、いい予感を感じました。

仲間になるには、いまがちょうどいいタイミングだと思います。

(2023/5/31 取材 稲本琢仙)

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