求人 NEW

やわらかな世界を
透明なコットンから

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「一人ひとりの心がやわらかくなれば、世界はきっとやわらかくなる。」

世界で起きる紛争や貧困、気候変動。

日々積み重なる人間関係、ふと感じる孤独や生きづらさ。

暮らしのなかで感じるさまざまな痛みに対して、やわらかく向き合っていこうとする人たちに会いました。

パノコトレーディングは、オーガニックコットンの原糸の輸入、生地の企画や販売をしている会社です。

インドやタンザニアなど、世界各地から届くコットンはすべて、だれがどこで育てたかがわかるもの。

そんなコットンを使い、8年前からはSISIFILLE(シシフィーユ)というブランドを展開。生理用ナプキンやマスク、インナーなど、オーガニックコットンのやわらかさを活かした製品をつくっています。

今回募集するのは、SISIFILLEの営業や生産管理を担当する人。

取り扱いのある店舗とやりとりをしたり、ポップアップで出店したり、製品の在庫や生産スケジュールを管理したり。任せたい仕事の範囲は多岐に渡りますが、とくに経験は問いません。

コットンの畑から製品を使う人まで、包み隠さず、正直につないでくことが仕事になると思います。

  

東京・神田駅から歩いて5分。

オフィスビルの3階にパノコトレーディングの事務所がある。

生地のサンプルが並ぶ部屋で話を聞いたのは、この春、会社の代表になった三保さん。

三保さんはファッションブランドの立ち上げなどを経験したあと、16年前パノコトレーディングに入社。

生地の企画営業やSISIFILLEのブランドマネージャーなど、さまざまな役割を担ってきた。

「先代の社長が引退するということで、その役割を引き継ぐことになりました。パノコトレーディングはさまざまな事業をしてきた会社です。オーガニックコットンの原糸の輸入、生地づくり、プロダクトの販売に取り組むようになったのは、30年ほど前のことです」

「これまでに培ってきたサプライヤーやお客さまとの関係性を大切にしながら、これからの時代によりフィットするものを発信していきたいですね」

土地に負荷をかけない持続可能な栽培が可能で、育てている人たちの健康を害す可能性も少ないこと。収穫したあとの紡績、織布、染色などの製造工程全体を通じても、化学薬品の使用が最小限に抑えられていること。

ほかにも現地で児童労働などを行って栽培をしていないことなど、パノコトレーディングでは、さまざまな取り決めをクリアしているものだけをオーガニックコットンとして輸入、販売している。

オーガニックコットンという言葉は、日本でも目にする機会が増えているように感じる。

パノコトレーディングでも、ここ何年かでほかの事業を減らし、オーガニックコットンを事業の中心に据えてきた。

三保さんいわく、計画的にそうなってきたというよりも、とても自然な流れだったように感じるそう。

「私たちは、品質の確認と現地スタッフとの交流のために、インドやタンザニア、ペルー、エジプトなど、コットンが育つ地を頻繁に訪れるようにしています。オーガニックコットンを取り扱いはじめた当時、先代の社長は、そこで農家の方々の暮らしぶりを見てしまった。それが大きいんでしょうね」

現実を知ってしまった。

「そう。実際に足を運んでみるとやはり、目を覆いたくなるような現実を目の当たりにしてしまう。そうすると、ビジネスといえどもサプライチェーンのどこかに不都合を生まない仕組みで商売をしていくこと、それが自分たちの使命だと先代は感じたんだと思います」

「その使命感が少しずつ会社の中にも浸透していって、結果として、オーガニックコットンの事業が私たちの世代に受け継がれることになりました」

パノコトレーディングは、スイスのリーメイ社が手掛ける、生産者にフェアなオーガニックコットンを生産するプロジェクトに参加。単にオーガニックコットンを買い取るだけでなく、売上の一部からコットンの産地で暮らす人々の生活を支援している。

より健全な社会をつくりたい。

声高に叫ぶわけではないけれど、やわらかく話してくれる三保さんの言葉の奥に、強い想いがあることが感じられる。

パノコトレーディングのつくる生地の特徴のひとつが、すべてにQRコードを掲載したタグをつけていること。

読み込んでみると、「FARM to FABRIC」という言葉とともに、コットンが育った風景や生地をつくった場所の様子が表示される。

どこで育てられたコットンなのか、生地はどのような行程でつくられているのか。手にしている生地、身につけている服ができるまでの流れを、すべて見ることができるのは、なんだか安心するし気持ちがいい。

「私たちの生地を使ってくださっているお客さまは、原料の背景であったり、生地のクオリティだったりに対して共感してくださっている方が圧倒的に多いんです。ただ単にオーガニックと名乗れたらいい、ということではないんですよね」

そんなパノコトレーディングのなかで8年前に立ち上がったのが、SISIFILLE(シシフィーユ)というブランド。

オーガニックコットンを使った生理用ナプキンやマスクなどのラインナップに、最近はインナーなどアパレル商品も加わっている。

SISIFILLEを立ち上げ、今はブランドコミュニケーターとしてSNSやWebコンテンツの企画、運営を中心に担当しているのが本田さん。

アメリカのサンフランシスコベイエリア在住ということで、オンラインでつなぎ、話を聞かせてもらう。

「産後、化学繊維に反応して肌がかぶれてしまった時期があって。周りの人に勧められて布ナプキンを使ったり、授乳パッドとしてオーガニックコットンの生地の端切れをあてたりしてみたら、とてもやわらかくて、肌も気持ちも落ち着いたんです」

自分の肌にあった布ナプキン。しばらく使い続けていたものの、子育てと仕事の両立で自分の時間がつくれないなか、継続するのが難しかったそう。

当時は生地の営業やPRを担当していた本田さん。社内で長年温められてきたオーガニックコットンナプキンの企画を知り、ブランドを立ち上げることに。

「一度違いを知ってしまうと、元に戻れないんですよね。布ナプキンのような使い心地をもっと多くの人が手軽に感じられるもの、布ナプキンを使っている人が無理なく続けるためのアイテムをつくりたかった。国内で製造できる状況が整ったタイミングで、SISIFILLE第一弾のプロダクトとして取り組むことになりました」

当時はまだ、オーガニックコットンで使いきりタイプの生理用ナプキンは少なく、少しずつ問い合わせが増えていった。

ブランドが軌道に乗ったころ、本田さんは旦那さんの仕事の都合でアメリカに移住。パノコトレーディングを退社することに。

「立ち上げから愛情を注いできたブランドだったので、思い入れが強かったんです。アメリカで暮らしながらも、SISIFILLEではこんなこともできたんじゃないかと、気づくと考えてしまっていて」

「ときどき三保と連絡をとって、いつかまた関われたらという話もしていて。そんなころに感染症の流行でパノコトレーディングもリモートで働く体制に変わりました。こうなったらどこに住んでいても一緒に働けるんじゃないかと言ってもらえて、再びチームに戻ってくることができたんです」

本田さんの復帰を機に、SISIFILLEはどんなブランドなのか、これからなにをしていくのかを話し合うようになった。

1年かけて紡ぎ出し、ブランドの中心に据えたのが「世界をやわらかくする」という言葉。

「オーガニックコットンを使っている方から多く聞かれる『やわらかい』という感想。この気持ちよさは、丁寧に育ててつくられている生産背景も影響していると思っていて。これからはプロダクトだけではなくて、産地で生産に携わる人たちの声もしっかりと届けていきたいと思っています」

Webサイトでは産地の様子を伝えたり、さまざまな人のインタビューを掲載したり。SNSを活用して、フォロワーとコミュニケーションができる機会も増やしている。

「自分自身も気持ちよく使えて、それを選ぶことが、背景にあるコットン農家の人々の暮らしや環境を豊かにしていく。そこまで理解して選んでもらえるようになったらうれしいし、それが世界をやわらかくするということにもつながると信じています」

知ること。想像すること。自分で選ぶこと。

自分自身がやわらかな心持ちでいられる人が増えていけば、世界はやわらかくなっていく。

「やわらかなプロダクトの周りにいる人たちと、やわらかなコミュニティをつくっていきたいんです。ユーザーも、生産者もやわらかくつながっていく。そうすることで、より透明性のある、いいシナジーを紡いでいけるブランドにできたらいいよねって」

「海外に出て、コミュニティの必要性をより感じるようになって。情報量が多いなかで、信頼のおけるコミュニティを持つというのは心の支えになる。自分の生活に活かしたり、自分だけじゃなかったんだって安心したり。あたらしい一歩へのきっかけを得ることもあるかもしれない。SISIFILLEのつくる場が、そういう存在になってくれたらいいなと思っています」



最後に紹介するのは、5年前に入社して、ブランド周りのさまざまなことを担当している道端さん。あらたに入社する人は、道端さんの仕事の一部を引き継ぐことになる予定。

「一応MD、マーチャンダイザーっていう肩書きはあるんですけどね。製品の企画開発やWebサイトの運営、広報や営業のサポートなど、業務が多岐にわたりすぎていて。こういうとき、なんて名乗るのがいいですかね」

大変だ、ということを笑いながら話してくれる道端さん。

美大で建築を学び、内装の仕事を経験した後、ワーキングホリデーを活用してカナダへ。その後海外を周っていたとき、日本仕事百貨でパノコトレーディングの記事を見つけた。

「大学生のころから、生産と消費の場がすごく離れていることに疑問を抱いていて。欧米では各地でファーマーズマーケットが開催されていたり、はたまたアジアの市場に行けば生きた鶏がその場で絞められたり。日本では、スーパーに並んだパックの食品がどんな環境でつくられたものなのか想像できないなって」

「パノコトレーディングの記事を見たとき、オーガニックという言葉に惹かれたというよりも、コットンが糸に、生地になる過程を消費者に伝えようとしている。嘘のないものづくりをしているんだなと、その真っ直ぐな姿勢に感銘を受けました」

ファッションにはあまり関心がなかったそうで、自分が繊維業界で働くことになるとは思ってもみなかった。

入社当初は覚えることが山ほどあったそう。

「生地の世界ではあたり前のことかもしれないですが、糸の太さによって生地の厚さが変わるとか、コットンは白以外にも茶色や緑、たくさんの色があるとか。編物と織物の違いも、この業界に入るまで考えたこともありませんでした。5年経った今でも、知らないことがたくさんあるんです」

「お客さまのなかには生地のことはもちろん、オーガニックコットンについて詳しい方も多いので、やりとりしながら逆に教えていただくようなこともあって。だけど私、あたらしいことを知るのが楽しいんですよね」

オンラインストアの在庫の管理や、お客さまからの注文や問い合わせへの対応、イベントの企画や運営。あたらしい製品をつくるため、デザイナーさんや工場と細かなやりとりをすることも。

わかることが増えるほど、できることも増えてきた。

「昨年担当したあたらしいWebサイトの立ち上げのような大きなことから、オンラインストアの梱包方法といった些細なこと。どれをとっても、このブランドの価値と可能性を伝えることができる。ブランドをもっといいものにしようと思うと、やるべきことがたくさん出てくるんですよ」

「どの過程にも隠すことがない。ごまかさないで全部を見せられる。そういうブランドを自分たちでつくりあげているという実感があるからこそやりがいがあるし、これから先、もっとできることがたくさんあるんだって感じています」

やわらかな口調で話をしてくれた3人からは、やさしさと同時に、芯の強さのようなものを感じました。

自分にも周りにも、正直に生きていきたい。

そんな人からのご連絡をお待ちしています。

(2023/6/23 取材 中嶋希実)

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