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暮らしと仕事が近づいていく環境だからこそ、嘘をつけない。だから無理なく、いつでも等身大の自分でいられるのかもしれない。
そう感じた取材でした。
株式会社ツチクラ住建は、長野駅から車で30分ほどの距離にある飯綱町(いいづなまち)の工務店です。
「地域活性化工務店」と名乗り、フルオーダーの家づくりや不動産事業のほか、地域を巻き込んだイベントの企画・開催にも取り組み、住みたくなる地域づくりに取り組んできました。
今回は4つの職種を募集します。現場監督と設計担当、大工、そして新たにはじめる、空き別荘の宿泊事業の立ち上げ担当者。
経験がある人は経験を活かしつつ、これから挑戦したいという人も、興味と素直な心があれば、さまざまなことにチャレンジしていける環境だと思います。
長野県飯綱町。
新幹線を使えば東京まで2時間ということもあり、ほどよい田舎として移住者が増えつつある。地元の人いわく、新しい賃貸物件が出ると、1週間も経たないうちに借り手が決まるのだとか。
だんだんと周りの景色が畑に変わってきたところで、事務所に到着。
近くの倉庫では大工さんたちが現場に向かう準備をしている。挨拶をすると「どうぞどうぞ!」と、気さくに話しかけてくれた。
事務所で迎えてくれたのは、代表の土倉武幸さん。
ひとつ質問をすると10返してくれるような、楽しい話をたくさん持っている方。時折冗談も交えながら、会社のこと、まちのことを丁寧に教えてくれる。
創業して50年。二代目社長として会社を引っ張ってきた土倉さん。
工務店は地場産業。満足度の高い仕事をするために、施工区域はむやみに広げず、飯綱町を中心に注力してきた。
「飯綱でも人口はがんがん減っていて。つまり、お客さんが減るってこと。飯綱みたいな人口1万人規模の自治体だったら、われわれがなにかアクションを起こすことで、地域の人口を増やすことに貢献できるんじゃないかと思ったんです」
5年ほど前に企画したのが、婚活イベント。新築の完成見学会に来場したお客さんの「息子が結婚でもすれば、新しく家建てるんだけどな」というつぶやきがきっかけだった。
かつて別荘地としても栄えた飯綱町。自社で持つ別荘をパーティー会場にして開催したところ、2組のカップルが誕生したのだとか。
一見すると工務店の仕事ではないけれど、イベントに参加した人たちが飯綱に住みたいと思うことがあれば、住まいの相談相手としてきっと声がかかるはず。
「ほかには、住建まつりってイベントを毎年やっていてね。うちの大工が『感謝祭やりましょうよ』って発案したものなんです。客なんか来るの?ってちょっと心配したけど、初年度から250人くらいの人が来てくれて」
大工仕事に興味をもってもらえたら、と子ども向けに始めた釘打ち競争のコーナーでは、大人のほうが夢中になっている場面も。地元の小学生からは「今年の住建まつり、いつやるの?」と声があがるくらい、人気を集めるイベントになっている。
「最近家を建てた方もいれば、10年前に別荘を建てたお客さんもいらっしゃって。『社長、会社は無事継げそう?』って心配して来てくれる方もいるんですよ。建てて終わりじゃなくて、そのあとも気にしてくれるのはありがたいですよね」
時代の変化で、建設当時の工務店がなくなっていることも少なくない。新築工事だけでなく、ほかの工務店で施工した物件の修繕や、別荘売却の相談を受けることも増えてきた。
「別荘地でも、10万、20万くらいにしかならない建物もある。なにかできるかなと、買えそうなところは買い取ってきたんですけど、そろそろ出口戦略を考えないといけないと思っていたところなんです」
そこで土倉さんが考えているのが、宿泊事業。まずは自社で保有している別荘を、一泊3〜4万円ほどで一棟貸しできるような建物に改修していく。
具体的なイメージはこれから詰めていくところ。薪ストーブを囲みながら、グループでゆっくりと滞在できるような場所をつくる予定だ。
宿泊事業の担当者として加わる人は、貸し出す別荘の運営管理を考えるところから関わってほしい。
「ゆくゆくは自分で直しながら別荘として使って、使わないときは人に貸し出してその料金をメンテやリフォーム費用に充てて… みたいなことができると、おもしろくないですか。価値が高まった状態で売却したら、それなりのお金にもなるはず」
「宿泊事業が目的ではなくて、古い別荘のオーナーさんに、資産の有効活用を提案するための事業なんです。苦なく資産価値を上げられるビジネスモデルが確立すれば、別荘地の景観もよくなる。人の流れも生まれるし、地域の税収アップにもつながると思うんですよ」
宿泊事業は、地域の価値をあげていく仕事とも言える。
土倉さんが築いてきたまちとのつながりや、改修を担当する設計担当や大工、現場監督の力も借りながら、どんな事業に育てていくか、みんなで考えていけるといいと思う。
次に話を聞いたのは、営業リーダーの西村さん。屋久島出身で、移住して21年目になる。
「営業と名乗ってはいるけど、あんまりしっくり来てなくて(笑)。新しく家を建てたいとか、建てたあとのメンテナンスとか、基本的には相談窓口のような仕事をしています」
移住したいという人には、自身の移住の経験も活かし、単に住まいを紹介するだけではなく、まずは地域を案内することから始めている。
プライベートでは、公民館の広報誌をつくったり、有志とまちの魅力を再発見するイベントを企画したりしているそう。
そんな様子を見た土倉さん、西村さんの名刺に「飯綱暮らし案内人」とつけた。
「本業はツチクラだけど、本当に自由な働き方をさせてもらっているなと思います。うちはタイムカードはないですし、天気次第では、当日に休みを申告して趣味の山登りをしに行くこともあるんですよ」
え!そうなんですか。
「大工さんが、子どもの急な体調不良で休みを取ることもよくあります。帳尻合わせも含めて、すべて自己判断というか。でもちゃんと食っていくためには、どこかでお金を生み出さないといけない。責任も伴うから、経営感覚はとても身につきますよね」
西村さんは飯綱のまちのどこを魅力に感じているんでしょう。
「なんだろう?… 朝、窓の外を見ると毎日ちがう景色がある、というか。季節の変化を感じられるのがすごくいいですね。社長には『いつもの景色だ』って言われるんですけどね。いつも新鮮な感じがします」
「あとは、そうですね。今年は初日の出を拝みに登山したんですけど。そういうことを言ったら、登山好きなお客さんを紹介してくれて、今度行きましょうよって話になったんです。山でも、仕事の話は一切しなくて」
営業としてじゃなくて、本当にプライベートな感じで。
「そういうときに仲良くなった人って、商談になったとき、値段交渉にならないんです。駆け引きしなくなるというか。人と人との信頼関係が仕事につながっていくような感覚があります」
人と人として、関係を築いていく。
暮らしと仕事が近い環境だからこそ、まっすぐ人と向き合えるのかもしれない。
お客さんのなかには「あの大工さんにお願いしたい」と指名が入ることもある。親子三代、ツチクラ住建でというお客さんも多い。
地域や現場で積み重ねてきた関係が、ツチクラ住建への信頼になっているのだと思う。
「仕事も生活も、どちらも楽しめる人に来てほしいです。もちろん知らない環境に飛び込むのは大変ですし、新しい仕事もお任せしきりじゃなくて、僕らでもサポートしていきたいと思ってます」
「やっぱりね、最初の一歩を踏み出すことが大事なので」
地区にもよるけれど、地域活動に参加することもきっとあるはず。暮らしのことも、仕事のことも相談できる存在が近くにいることは、心強いと思う。
最後に話を聞いたのは、入社3年目で設計担当の佐竹さん。
穏やかな雰囲気の方で、土倉さんや西村さんにも気負わずフラットに話す姿が印象的。
新潟出身の佐竹さん。大学時代に、ゼミの活動で飯綱町を訪れたのが最初のきっかけだった。
「IEMP(イエップ)っていう、家を遊び尽くそう!って活動をしていたんです。地域の方と一緒になってツリーハウスや家具をつくったり、DIYやBBQしたり。その家を貸してくれていたのがツチクラ住建でした」
「ここに来るたび、居心地のよさを感じていて。大工さんも気さくな人が多いですし、設計のなかにはバンドをやってる人もいる。地域の人も、笑ってる人が多いんですよ。もともと田舎で育ってきたので、地域の人と関わりを持てるのもいいなと思って就職しました」
いまは会社で借り上げた古民家で暮らしている。敷地内の倉庫を改修して、地元でお菓子づくりをする人向けのシェアキッチンつくるなど、家づくりを楽しんでいる。
「実は学生のとき、いま暮らしている場所をモデルに、空き家の利活用案を立てていたんです。シェアキッチンもそのひとつ。ただ、まさか実現するなんて。うれしかったですね。学生が発表したものが実現することって、なかなかないじゃないですか」
新しく加わる人も、基本的には借り上げた空き家に住むことになる。物件にもよるけれど、修繕を喜ぶオーナーさんも多いだろうから、DIY好きな人だと楽しいかもしれない。
仕事のほうは、図面を引くことはもちろん、お客さんとの打ち合わせや、現場での指示出し、また工事に同行することもあり、内容は多岐にわたる。
「よくもわるくも、うちの会社はあんまり分業されていなくて。工事初日に現場に行くところから、お引き渡しするところまで、一連の流れを把握できるのは、すごくやりがいを感じますね。ほかの会社の設計職では、なかなか経験できないかもしれません」
「やっぱりうれしいのは、お客さんに『ツチクラさんに頼んでよかった』と言ってもらえること。お前に任せた!と言ってもらえたときには、よっしゃやるぞ!って、気合いが入ります」
お客さんが笑顔になるためにはどうしたらいいだろう? どんな生活スタイル? 家での過ごし方は?
お客さんの話をもとに想像することが大切。それ以外にも、山地の眺望を味わいたいなど、それぞれの要望にあわせた提案を形にしていくのが、注文住宅のよさでもある。
「機能性はありつつ、感覚的に格好いいと思えるようなものを目指すのが、自分なりの流儀ですね」
「住宅って、一生に一度の大きな買い物じゃないですか。規格住宅と違ってコストはかかりますけど、それ以上の魅力を感じてもらえると思います。僕なんてまだ3年しか経験してないので、そんな大きなことは言えないんですけどね」
すこし恥ずかしそうに、でも真剣な目で話す佐竹さんの姿が印象に残っています。
人の暮らしに欠かすことのできない住まい。その住まいを通して、地域の一員になっていく仕事だと思います。
等身大の自分で、新たな一歩を踏み出してほしいです。
(2023/4/10 取材 阿部夏海)