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ぼくらはみんな生きている

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2023年にグッドデザイン賞を受賞した「ふくしデザインゼミ」、京都の「船岡山オープンパーク」、そして滋賀の「未来のジャム」。

やっていることはさまざまだけれど、ぼくみんの真ん中にはいつだって「ひと」がいます。

目の前のひとと話して、話して、話して。じっくり、じっくり、まるで、小さな社会を創造するように、プロジェクトが生まれます。

自分たちを「コンテクストカンパニー」と呼ぶぼくみん。コンテクストとは、文脈のこと。どんな場に集い、誰と出会ったのかという「ひとの文脈」が、小さな社会のはじまりです。

一般社団法人ぼくみんで、文脈のデザイナーを募集します。

近しい仕事としては、地域コーディネーター、コミュニティデザイナーなどが挙げられそう。

社会人経験はあったほうがいいかもしれませんが、職歴は問いません。学校を出て、数年仕事に没頭して、ふと「次のステージに進む時機かもしれない」と感じたなら。きっと、文脈のデザインに活かせると思います。

 

京都駅からJR湖西線で40分。

琵琶湖を眺めながら、滋賀・高島市にある新旭(しんあさひ)駅へ。その目の前に、ぼくみんの拠点の一つであるTAKASHIMA未ラボ 新旭駅前ベースキャンプ、通称「未ラボ」がある。

到着すると、みんなで庭でコーヒーを飲んでいるところ。

ぼくみんのメンバーは、まいにち同じ事務所に出社して、顔をつき合わせながら働いているわけではない。

理事の高田さんは大阪暮らし。代表の今津さんは日本各地を、スタッフの“ざわけん”は関東と関西を、瀬川くんは京都と滋賀を行き来している。

日々のコミュニケーションは、SlackやLINEで行う。毎週月曜日には、じっくり数時間かけてのオンライン定例会。また、季節ごとに2泊3日の合宿があり、一人ひとりのこと、ぼくみんのことを、過去も未来も語り合う。

「だから、こうやって顔を合わせて話すのはちょっとワクワクしているというか」

と、新卒で働きはじめて2年目の瀬川くん。

8時過ぎにやってきて、庭の草むしりをして、コーヒーを淹れて迎えてくれた。取材中も、なにかと気をきかせてくれる。日ごろから、そういう姿勢を心がけているのだろうな。

取材をはじめようとしたところで、代表の今津さんがどこかへ行ってしまったようだけれど、ひとまず自己紹介を進めていく。

しばらくすると、戻ってきた今津さん。

「低血糖で。ちょっと甘いもの買ってきました」と、温かいお茶とお菓子を差し入れてくれた。

栗まんじゅうを食べ、ギアの入った今津さん。

「これが、いまぼくらがここ高島で取り組んでいることなんです」と、一枚のチラシを手渡された。

タイムテーブルをみると、トークセッションからはじまる。ゲストには、福島県の編集者・小松理虔(りけん)さんや、京都の一級建築士事務所STUDIO MONAKA・岡山泰士さんが名を連ねる。

そのトークを皮切りに、会場に集った参加者のみなさんもスピーカーとなり、ゲストも交えてのジャムセッションがはじまる。それで2時間半。さらに市内のお店での懇親会を2時間あまり。つまり、参加すると最大5時間も話す時間があるらしい。

ゲストトークは空気を温める、いわばイントロで、メインは参加者たちが思いの丈をことばにすること。そんなふうにも見える未来のジャムは、どのように高島ではじまったのだろう?

口を開いたのは、ぼくみんとともに未来のジャムをつくる西村さん。高島で福祉事業を経営している。

「福祉は、まちの家族の最前線に向き合う仕事です。ここ数年、聞くようになった貧困や孤独。きっと、日本中のどのまちでも起きていること。高島も同じなんです」

高齢化率37%を超える高島市にあって、老いを支える介護サービス事業所が集まる協議会の会長も西村さん。市内にある30の福祉法人からの「福祉の担い手が不足している」という声をもとに、2019年からまちぐるみの採用プロジェクトを手さぐりで進めてきた。

一法人ではなく、地域のリクルートブックを制作する。まちのインターンシップを実施する。思いつく限りの方法を試みたものの、採用には至らなかった。

「どうしたらいいんだろう」

思いのともしびが消えそうになっていた2022年1月。西村さんは、ぼくみんの今津さんと出会った。

それからの半年間、今津さんは毎月高島へ。西村さんの周りにいるひとたちと、毎回4時間も5時間も話し合った。

「ほんとうに『話し合い』なんですよ(笑)。話して、話して、話して、話しっぱなし。ホワイトボードに話をまとめたり、発表もしない。時間になると今津さんは電車に乗って帰るんです。『また来月!』って」

はじめは立場を気にしてことばを選んでいたものの、時間を重ねるごとに、本音がこぼれてきた。

「ひとりが『自分、ほんまはこういうことやりたかったんや』と思いを口にすると、『あんたも同じようなこと考えてたんや』『できるかわからへんけど応援するよ』『いやいや一緒にやると、いいんちゃうかな』『仲間がいるんやったら、やってみようか』って」

ここで、西村さんとの出会いをふりかえる今津さん。

「ほんとうに高島をどうにかしたいと思っていたんですよ、西村さん。本気がひしひしと伝わってきたのと同時に、もっと『ひらけるな』とも思いました」

ひらける?

「いろいろ取り組まれているけれど、あくまで『福祉』で『採用』で『新卒』で『一法人』で。決められた枠のなかで動いているなと思ったんです」

話し合いの場では、こんな声も聞こえてきた。

「今までは採用という入り口だけに焦点をあてていたけれど、ずっと働きつづけたくなる職場環境づくりや、暮らしつづけたくなるまちの魅力を育てることも考えていけないかな?」

そんなことできたらいいよねと、みんなが思っていたことだった。

新卒採用も、マッチングイベントも、進路相談も、まちづくりも、人事研修も、生活支援も、ごちゃまぜにしたい。

「福祉」の枠から飛び出して、高島で働くひとやこのまちに生まれ育ったみんなで、一緒に話し合っていけたら。

そうして生まれたのが、未来のジャム。

当日は「みんな高島のどこにいたの?」と思うほどのひとが集まった。

参加するひとの思いも百人百様。

「いいひとに出会えたら」と考える人事担当者。「まちづくりに関われたら」とおじさん経営者。「高島が大好き!」でなにかしたい大学生。かと思えば、親の背中に憧れて福祉の仕事についた若手が、仕事の悩みを職場外のおとなに相談する。

地元のおばあちゃんがガラス瓶を差し入れてくれることもあった。「未来のジャム」を、果物からジャムをつくる料理イベントだと思われたよう。

きっと、それだって間違いじゃない。高島になにかしたいと思っている気持ちの表れだった。

そして2023年2月。

このジャムをただの打ち上げ花火で終わらせたくないと、みんなが集まれる場として、築50年の空き家を借りて「未ラボ」をはじめた。

市内の福祉法人とのプロジェクトも動き出し、高島や京都でさまざまなタネが芽を出しつつある今、仲間を募りたい。

ぼくみんについて「独特な組織だと思います」と話すのは、理事の高田さん。

ベンチャー企業の新卒採用担当からキャリアをスタートしたひとで、現在は複業家。複数の法人と仕事をしているからこそ、ぼくみんを客観的にとらえている。

「プロジェクトを一本の木にたとえると、ぼくみんは、土の下側をすごくすごく大事にする組織です」

土の下側には根っこと、それを包む土がある。そばに大きな石が埋まっていては、あおあおと葉が茂り、新たに芽吹き、ぐんぐんと幹が伸びていくことも難しい。

そこで、きちんと石を取り除いて、根を深く伸ばす環境を整えるのがぼくみん流。

「多くの組織では、効率よく、生産性を高めて、短時間で目標を達成する。そういう優秀さが求められる世の中だと思うんですけど、ぼくみんで求められるのは、それがすべてでもないのかな」

「社内ミーティングでもね、今津さん、ときどき沈黙して考えこむんです。『次なに喋るん?』。そのときはみんな待つ。わたしは今でも戸惑いますけど、そこから生まれるものこそ、ぼくみんらしさなのかもしれません」

今回募集したいのは、今津さんとともに根っこを掘り下げていき、プロジェクトの幹を太く上へと育てていけるひと。

「新卒でメンバーとなった瀬川くんとざわけんとは違って、社会人経験のあるメンバーがいいかなと思っています。形にできるひとが増えていくことで、次のフェーズに進めたらなっていう採用です」

職種としては、プロジェクトマネージャーに近いものともいえそう。これまでの職歴が丸ごと活きるかはわからないけれど、かならずどこかでつながる仕事だと思う。

文脈のデザイナーにとって、大切なことを話してくれたのが、ざわけん。

地元は滋賀。京都の大学を卒業後、新卒でぼくみんへやってきた。

瀬川くんとともに、未ラボや船岡山公園といった場をベースにした事業にも関わりつつ、今津さんに伴走して全国各地を飛び回っている。社会福祉法人武蔵野会での仲間さがしや、伊豆大島での移住をともなう地域づくりなども手がけている。

運動量が多いひとという印象で、取材の翌週に、ばったり東京でもお会いした。

取材当日は、2023年度の「ふくしデザインゼミ」開講にむけて準備中。会場予約、ゲストとの調整、参加者募集ページの作成を進めているところ。

また、在学中からファシリテーターとして活動していた経験もあり、イベント当日には自ら進行を担うことも。本人の希望もあるとはいえ、守備範囲が広い。

そんなざわけんは、ぼくみんの仕事をどうとらえているんだろう。

「引けないな、と思う場面があるんです。目の前で西村さんが、真剣に高島のこれからを考えているとき。ああ、これまでの自分は世界を俯瞰してるだけだったんだな、と痛感します。一つの地域、一つの法人、一人のひとと向き合うなかで、自分自身も変化していく仕事だと思います」

「こわいんです、変わるのって。こわいんです、決めることは。まだ20代だし、未来なんてわからないし。ダメだったら転職とか、いろんな可能性持っときたい。でも、ここに座ろう、って決めたからできることがあります」

取材が終わると、瀬川くんはこれから京都の船岡山公園へ向かうという。

「オープンパークがきっかけで、ある大学生が、やっぱり地元の京都で働きたいって言いはじめてるんです!」

京都でも、文脈のデザインがはじまっているみたい。

誰と出会ったのか。どんな場に人がいるのか。集まったひとの文脈が、ものごとのはじまり。

ぼくみんの真ん中には、いつだって「ひと」がいます。目の前のひとと話して、話して、話して。じっくり、じっくり、小さな社会をつくるように、プロジェクトが生まれます。

(2023/10/27 取材 大越はじめ)

12/6(水)には、今津さんをゲストに、しごとバーを開催します。こちらもあわせてご参加ください。

「しごとバー なかった仕事の生まれ方-出会いの偶然を越えるところ-」

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