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循環するまちづくり
素晴らしき山暮らしを伝える
山の宿泊施設

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

自然は循環しています。

海で発生した雲が山にぶつかって雨を降らし、植物を育て、生態系が育まれる。

水も野菜もお肉も、住んでいる家や着ている服も。本来、人間の営みも自然の循環のなかにあるけれど、都会ではなかなか実感しづらい。

「僕らは宿もやって製造もやって、山にも踏み入って。この地域の歴史や文化、自然を活かしたビジネスをすることで雇用を生み、地域の経済循環をつくっていく。そんな企業になるのが目標です」

株式会社デキタは、東京で立ち上がったまちづくりの会社。その後、福井県若狭エリアの熊川宿に会社ごと引っ越してきました。

古民家を活用したコミュニティスペース「菱屋」、一棟貸宿の「八百熊川(やおくまがわ)」、若狭の豊かな自然を活かした食品加工所「KIKUYA 八百熊川ファクトリー」など。地元の人たちも巻き込みながら、持続可能なまちづくりに取り組んでいます。

来年の春には、ダム開発で生まれた土地を利活用して、「山座熊川(さんざくまがわ)」という複合アウトドア施設をフルオープン。

今回募集するのは、山座熊川の宿泊施設で働くオープンニングスタッフ。

基本業務は、チェックイン・アウトの対応や、食事の準備など。加えて、ウェルネスツーリズムの企画やガイド、SNSでの情報発信など、お客さんを増やすための施策や企画にも力を入れていきます。

自然の循環を感じながら、地域に根ざして働くことができる仕事です。

 

京都駅のホームで待っていたのは、JR湖西線。

若狭方面の電車に乗り、琵琶湖の西岸に沿って北上していく。

この道は、古代から続く交流の道「鯖街道」のひとつ。若狭・京都間を結び、鯖をはじめ、さまざまな物資や人、文化を運んできたという。

琵琶湖を眺めながら電車に揺られ、途中からはバスに乗り換え山間部へ。

30分もしないうちに、最寄りのバス停に着いた。熊川宿はそのすぐ近く、瓦屋根の建物が並ぶ景色が見えてくる。

山がチラッと顔を出し、スーッと流れる近くの川の音。

この土地が積み重ねてきた時間の長さに、なんだか安心する。

デキタの拠点は、この集落内でも大規模な古民家をリノベーションした「街道シェアオフィス&スペース菱屋」。

はじめに、代表の時岡さんに話を聞いた。落ち着いた雰囲気でいて、ニカっと笑う姿が柔らかい印象の方。

福井県出身で、建築系の大学を卒業。そのあとは建築会社で働き、30歳のときに都内でデキタを立ち上げる。

手がけていたのは、築地場外市場など、商店街活性化のコンサルティング。

「東京ってパワー勝負なとこもあって。お金を積んで話題を呼んで、お客さんに来てもらうみたいな。それはそれで楽しいんやけど、もう1回やりたいたいかっていうと、あんまり意味を見出せなくて」

田舎でのまちづくりにずっと興味があったことから、3年前に会社ごと熊川宿に移転してきた。

「商売的には宿をするのがいいと思ったんですけど、東京から移ってくるうえで拠点が何もなかったので、まずここを一番につくったんです」

「とはいえ、人のご縁みたいなところも大きくて。菱屋の物件も、町長から『空き家の活用に困っている』っていう相談を受けたことから始まりました」

家財整理から空き家のコンセプト考案、設計、運営まで、すべて自分たちでおこなった、この菱屋。

今ではシェアオフィスのほか、一棟貸宿「八百熊川」のレセプション、食文化体験スペース、コーヒーショップ「SOL`S COFFEE」など、複数の機能を持っている。

また、この拠点を機に熊川宿のまちづくり計画にも参画。

新たに食品加工事業も始めるなど、まちの人たちと協力しながら、持続可能なまちづくりに取り組んできた。

「地域の資源って有限なんですよ。食品加工事業の商品も、野菜の作付け面積で数量が決まるとか。リノベーションできる古民家の数も限られている」

「量的に拡大していくのは限界があって。僕らの役割としては、地域の資源を持続的に回していくことが大事だと思っています」

地域の資源をつかって、地域経済を循環させる。

時岡さんたちが提供しているのも、循環を感じるようなものばかり。

2020年4月に一棟目がオープンした「八百熊川」は、まさにその一つ。

内装はできるだけシンプルに、仕上げも土壁をそのままにして山村の古民家らしく設計。

食事は、若狭の魚介や野菜をふんだんに使用したものを、宿泊者自身で調理してもらうスタイル。それは、この土地の暮らしをより味わってもらいたいという思いから。

たとえば、朝食で提供しているお粥セット。

熊川宿近くには、瓜割の滝と呼ばれるスポットがある。瓜も割れるほど冷たいこの水は、純度の高いミネラル成分が含まれていて、おいしさも抜群。

その豊かな水と地域でつくられたお米を、宿泊者自身がお粥にして、熊川葛のあんをかけて食べてもらうようにしている。

泊まった方には、その後も緩やかに熊川宿とのつながりを感じられるように、熊川の季節の写真を絵葉書で送っているそう。

奇を衒うのではなく、土着の文化を体験してもらう。

訪れるお客さんも、まちを観光するというよりは、川を眺めたり、宿の周辺を散策したり、山村での暮らしを楽しむ人が多いという。

そんな気づきから、時岡さんは、宿泊者に対して自然の循環をより味わってほしいと思うように。加えて、山の問題にも関心があった。

「今って山が荒れてしまっていて。その影響で獣が下りてきたり、川に砂が流れ込んで水位が浅くなってしまったり。ゆくゆくは環境問題にも触れていく必要があると思っているんだけど」

関心が高まるなか、またも町長から相談が届く。

熊川宿から少し山を登ったところに、4年前にダムができた。その開発でできた土地の利活用について、アイディアをもらいたいとのこと。

時岡さんは、新しい宿泊施設の形を提案する。

そうして官民連携で事業を進め、今年の10月に複合アウトドア施設「山座熊川」が出来あがった。

場所は、熊川宿から車で10分ほど山を登ったところ。

まずは別会社が運営するアクティビティ施設があり、さらにその上にデキタが運営する宿泊施設が広がっている。

山と山の間にあり、周りには何もなく、山が広がるのみ。

一棟貸キャビンが6棟、オートキャンプサイトが12区画。新しく入る人は、この宿泊施設の運営を担っていく。

 

熊川宿の自然や文化に魅了されて、今年の夏に大阪から移住してきたのが寺西さん。

山座熊川の企画や営業を担当している。

「朝の8時から11時までの間は、チェックアウトの対応をして。その後は清掃業務に入っていきます。14時ごろからは、チェックイン対応。その後は、バーベキュー台の火おこしをしたり、配膳を手伝ったり」

「食事が20時ごろに終わるので、片付けをして21時には山から下りてくる、みたいな流れです」

値段は、一棟貸キャビン朝夕2食付きプランで4万8千円から。普通のキャンプ場に比べると少し高めなので、そのぶん求められるものも大きい。

新しく入る人は、基本的な業務をしつつ、SNSでの情報発信やイベントの企画など、集客のための施策を積極的に実行していってほしい。

「八百熊川の仕組みも参考にしながら、まずは、人、物、金に関する管理の仕組みをつくっていくことになると思います」

「それができたら、ウェルネスツーリズムのブラッシュアップや、ガイドの仕事もあるので、そちらも頑張ってもらえたらありがたいですね」

ウェルネスツーリズムとは、豊かな自然のなかでフィットネスや食、レクリエーションなどを通してリフレッシュして、新しい気づきを得る旅のこと。

山座熊川の裏山は、トレイルコースが整備されていて、そのうちの一つは、八百熊川まで下りていくことができる。長いルートは滋賀まで続いていて、数十キロもあるのだとか。

現在はこの資源を活かして、プログラムの開発をしているところ。

ターゲットは10名前後のチームや企業などの団体。リラックスできる環境とチームビルディングを通して、生産性をあげてもらう狙いだ。

チームビルディング事業を得意とする企業がプログラムの監修に入り、AIの会社がプログラムを通して、どれだけストレスが下がったのかが目に見えてわかるような技術を用意している。

宿泊施設から車ですぐのところには、ダム湖や山でさまざまなアクティビティを体験できる施設もある。ここの運営会社と連携してプログラムを開発していけると、より多様な自然体験を提供していけると思う。

「コミュニケーション能力を持っていらっしゃる方、それから専門性特化というよりは、視野を広く持てる方。アウトドアを自分の楽しみとして見出せる方に来てほしいですね」

 

「個人の発想と提案で宿がより魅力的になっていく感覚があって、それは山座熊川でも同じなんじゃないかと思います」

続けて話してくれたのは、八百熊川の設計やレセプションなど、幅広く担当している堀さん。

「たとえば、お部屋で梅シロップをつくってもらうセットをほかのスタッフが考案して。お客さんにも好評なんですよ」

「ここは山の上にあるので、八百熊川と連携してコーヒーとパンをピクニックセットにして持っていくとか、お客さん自身に薪を拾ってきてもらって次泊まる人のために準備するとか。いろいろできることはあると思います」

最近は、熊川宿を訪れるインバウンドのお客さんも増えてきている。八百熊川で歴史や文化を感じてもらった後、山座熊川で自然を感じてもらうのもいいかもしれない。

熊川宿や若狭全体といった面を活用して、この土地ならではの価値を提案する。やり込み甲斐のある仕事だと思う。

 

最後に話を聞いたのは、食のメニューを考案している竹村さん。

「火を得たことで、人類は進化してきました。熊川宿は家と家が近いので、昔は火事が多かったようで、火に敏感な土地です。逆にキャンプ場は火を扱いやすいので、火をコンセプトにした料理になっています」

山座熊川で提供される食事は、土鍋かバーベキューの2タイプ。

バーベキューで用意するお肉は、地元の焼肉屋さんに卸してもらったもの。山里の恵みを感じてもらえるように、わさび、山椒、柚子などの薬味を合わせて食べてもらう。

「小鉢には郷土料理を考えていて。たとえば、地域の伝統食へしこは、生や炙りで一品として食べるのが一般的なんですけど、ポテトサラダに混ぜて提供しようかなと」

「ある人に、ネオ郷土料理だねって言ってもらったことがあって。少しプラスアルファの要素を足してできると面白いと思うんです」

へしこのほかにも、小さな鯛を酢漬けした小鯛の笹漬けを季節のフルーツとあわせた料理や、地域の伝統野菜である山内かぶらの葉をジェノベーゼ風にアレンジして豆腐にかけた料理など。

「場所と場所、時代と時代をミックスするような料理にすることで、美味しさの幅というか、気づきや楽しさを提供できるといいなと思っています」

自然の循環に入りながら、今の時代に合わせて工夫していく。

お客さんも働く人も。心と体の巡りをよくするような、気持ちのいい仕事だと思いました。

(2023/10/24 取材 杉本丞)

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