求人 NEW

あなたがあなたで
いいと思えるまで

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「やりたいことが見つからないときは、無理やり自分を追い込んで苦しむより、向こうからやって来るまでゆっくり“待つ”ほうが、得てして効果があるものです」

「『まなびと』は、そんな“待つ”ための場所として、必要とされる存在になりたいと考えています」

そう話すのは、まなびと代表の中山さん。

まなびとは、神戸を中心に活動するNPO法人。

放課後学びスペース「アシスト」、学童保育「北野くん家」や外国人留学生向けの日本語教室「だんらん」など、さまざまな居場所づくりをおこなっています。

今年の秋には、障がいのある子どもや、発達に特性のある子どものための福祉サービス、放課後等デイサービス(放デイ)を新しくオープン。ほかにも、同じ場所で2つの事業をはじめます。

今回募集するのは、放デイの立ち上げから働く児童発達支援管理責任者(児発管)と、保育士。あわせて児童指導員の資格を持っている方も募集します。

誰もがその人らしく生きられるように。じっくり時間をかけて人に寄り添う仕事です。

 

9月はじめ、新神戸駅のまわりはまだまだ元気な緑であふれている。

川沿いのベンチには、日陰で涼んでいる近所のおじさんたちがちらほら。

ゆったりとした時間を感じながら歩くこと5分ほど、ねずみ色のマンションが見えてきた。

1階が新しくオープンする放課後等デイサービスの施設。ちょうどまなびとのみなさんもやってきて、一緒に中へ入る。

はじめに話を聞いたのは、代表の中山さん。落ち着いたトーンで、これまでの話をしてくれた。

「教育実習に行ったときに、そもそも学校に来ていない子がいたり、日本に来たばかりで日本語がわからない中国人の女の子がいたり。発達障がいの子もいて」

当時、塾でも働いていた中山さん。

もともと勉強ができる子は、自分が教えなくても勝手に勉強していく。一方で勉強が苦手な子は、そもそも塾に来なかったり、遅れてきたり。学ぶ環境が合わないこともある。

「学校や塾での勉強って、前を向いて生きようとしている人にとっては、すごく助けになるものだと思うんです。でも前を向くための心が整ってない人にとっては、押し付けになってしまう」

誰もが安心して学べるような場所。自分は自分のままでいいんだと思える場所。

いろんな出会いを通じて、学ぶことに前向きになり、自分から1歩踏み出すような機会をつくりたい。

そこで、2014年に認定NPO法人まなびとを立ち上げる。

まずはじめたのが、放課後学びスペース「アシスト」。

塾の集団授業が苦手な子や、不登校を経験してまわりの子と同じペースで勉強できない子などに対して、本人がやりたいと思える形で学びの機会を届ける、というもの。

ほかにも、日本語を話す機会や、日本人の友だちがほしい外国人の居場所づくりに取り組む事業など、いくつか並行していたそう。

「どれか一つだけだと、そこに訪れる人としか関わることができない。自分のなかでは、それがすごく狭いと思って」

「なので、対象者別にその人が必要としていることをまずやってみる。そして、場が横のつながりを持ってごちゃ混ぜになる。それが実現できたら面白いなっていうのは、はじめから考えていました」

「まなびと文化祭WASSHOI」もそのひとつ。

子どもも大学生も外国人も。みんながごちゃまぜになり、一緒に小さなチャレンジをすることで自分の「好き」を見つけようというお祭り。

大学生ボランティアがリーダーになり、日本語教室の外国人留学生と、学童に通っている小学生を巻き込んで、バンドの発表をしたグループもあるのだとか。

今回新しくできる放課後等デイサービスも、根っこは同じ。

一人ひとりにじっくり向き合う時間をつくりつつ、いろんな価値観に触れる機会を提供したい。

放デイと同じ拠点を使い、ほかに2つの居場所づくりも始めている。

1つ目は、食糧支援を通した子どもの居場所づくり。

「まずは子どもがいる家庭の経済的負担を減らしたくて。さらに子どもたちを安心して預けられる場所があることで、親御さんは子育ての合間にひと息つく時間ができますよね」

心身ともに休む時間が生まれれば、結果として虐待のリスクが下がっていくんじゃないか。そういった狙いもあるという。

2つ目は、中高生の居場所づくり。

「放デイは小学校の放課後の時間がメインなので、15時ごろから遅くても夜の19時ぐらいまでになると思います。19時から21時までの遅い時間帯で、中高生が気軽に集まれる場所もつくりたいなって」

中山さんは、じっと相手の顔を見て話を聞いてくれる。見られている感覚はあるけれど、威圧感のようなものはなく、ただ自分を見てくれている感じ。

この安心感はどこからくるんだろう。

少しさかのぼって、中山さんが自分の過去のことを話してくれた。

「勉強はきらいじゃなくて、頑張って京大に入ったんです。でも入ってみると、授業に興味を持てなくて。自分をごまかしながらなんとか単位を取得していました」

自分のやりたいことを見つけて社会へ出ていく同級生たち。一方で自分は何をしたらいいかわからない。

まわりが社会人生活をスタートさせるなか、中山さんは卒業できず、実家で2週間ほど寝込んでいたそう。

「何をしようかモヤモヤしていて。結局、やることがないから家の裏に穴を掘り始めました。誰が止めるでもないし、自分が掘りたいだけ掘れることが、すごく気持ちよかった」

「それと、大学も卒業しないで1ヶ月間ただ穴を掘っている自分に対して、父親は何も言わずにずっと見守ってくれたんです」

偏差値の高い大学に入って、有名企業に入る。そうやって常に競争して勝ち続けないと、自分はここにいてはいけない。そう思っていた中山さん。

でも父親は、そんなこと気にせず自分を受け入れてくれた。

その体験は中山さんの原動力になっていく。

「気が済むまで走ったり、弟とフットサルチームをつくったり。どんなことでも、やらなきゃ人生もったいない。ひとまずやってみようという気持ちになって」

お金を貯めてタイに行ったこともあった。

「タイには自由な人しかいないなって感じました。自分が思っている以上に、世の中はすごく自由なんだって実感して」

話を聞いていると、これだけ幅広い事業をしているのもより腹落ちする気がする。

「もっといろんな生き方や考え方があるはずだし、それらにたくさん触れて自分で合うものを選べたら、幸せだと思うんです」

 

フットサルを通じて中山さんと知り合ったのが、副事務局長の高見さん。

今回募集する、児童発達支援管理責任者(児発管)と保育士の仕事について、具体的に教えてくれた。

「放デイで働く児発管に関しては、障がいのある子たちに対して、一から個別支援計画をつくってもらうことになると思います」

障がいがあるといっても、読み書きだけが苦手だったり、じっとしていられなかったり、特性は人それぞれ。

情報を集めて分析し、一人ひとりに合わせて、その子がより生活しやすいように計画をつくるのが児発管の仕事。また、保護者とのコミュニケーションも欠かせない。

放デイを開所するには、児発管が在籍していることが必要だけれど、子どもたちの支援をするのは児発管だけに限らない。

たとえば、保育士の資格を持っている人。子どもの発達に対して専門的な知識を学んだ実務経験は、放デイでも活かすことができる。

「放デイをメインでお願いしたいんですけど、ほかの2つの事業も同じ場所で取り組むので、そこに対して共感できる人だとうれしいです」

新しい拠点では、放デイスタッフに加えて食糧支援のスタッフ2名が常駐する予定。

取材に行った日はちょうど食糧支援の日で、担当スタッフが段ボール箱に食料を詰めて準備をしていた。

放デイがはじまるまでは、地域の子どもたちが集まるイベントもおこなっていくそうだ。

新しく入る人も、いろんな人を巻き込んでイベントやワークショップを企画しても面白いかもしれない。

 

まなびとらしさについて、続けて話してくれたのは米谷さん。学童保育施設「北野くん家」で働いている。

新しく入る人にとって、きっと働き方の参考になると思う。

「学童って、神戸市の基準だったら、子ども20人に対して大人が1人いればいいんです。でも北野くん家では、子ども20人に対してスタッフが5人いて」

「ただ見守るだけじゃなくて、子どもたち同士をつなぐとか、いろんなことにチャレンジするように意識しています。そうすることで、子どもたちが自分のやりたいことや得意なことを見つけていける。それがまなびとらしいと思うんです」

北野くん家でも、発達障がいがあって特別な配慮が必要な子たちの受け入れをしてきた。

印象に残っているお子さんについて話してくれた。

「ほかの子とうまくコミュニケーションがとれていない自閉症の子がいて。はじめは永遠につみ木を積んで遊んでいて、喋りかけてもあんまりリアクションが返ってこなかったんです」

その子は、ガヤガヤしたなかで勉強するのが苦手だったそう。そこで米谷さんは、静かな場所で一緒に勉強しながらコミュニケーションをとるようにした。

「だんだんと心を開いてくれるようになって。ちっちゃい声で『このゲームやる人おらんかな』って。その子にとっては、友だちと一緒にやりたいってことなんですけど、直接伝えるのはまだむずかしい」

「なので、わたしがほかの子に一緒にやろうって誘って。そうやってフォローしていたら、いつの間にか仲のいい友だちができていました。その姿を見たときは、すごくうれしかったです」

人と接するとき、年齢や国籍、性別や性格など、何かしらの肩書きをフィルターに通して見てしまいがちだけど、まなびとのみなさんは、ただただありのままの姿を見てくれる。

ここで働くなかで、自分自身も学び、いろいろな人を受け入れる器が大きくなるように感じました。

現場に不満を感じている人、心のなかにモヤモヤを抱えている人。そんな人にとっては、予想外のヒントがあるような場所だと思います。

(2023/09/23 取材 杉本丞)

この企業の再募集通知を受ける

おすすめの記事