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余白あるまちで人を癒す
観光をつくり育てる
パイオニア求む

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森林セラピーという言葉、聞いたことのある人も多いのではないでしょうか。

整備されたセラピーロードでのウォーキングや温泉、夏はシャワークライミングに、冬はスノーシューなど。

豊かな自然を活かして、参加者の心身を癒す。そして季節に応じたアクティビティを行う。これらを総じて森林セラピーといいます。

そんな森林セラピーに力を入れているのが、島根・飯南町(いいなんちょう)。

出雲と広島のあいだ、山間部にあるまちです。

今回は、ここで観光の軸となる森林セラピーを推進し、さらに町外に向けてまちを広くアピールしていく人を募集します。

地域おこし協力隊としての雇用になりますが、資質・適性が認められれば、3年後、観光協会で雇用されることもあるとのこと

単身でも、家族での移住も歓迎です。飯南町は「人口1万人未満の町」カテゴリーで、子育て部門のランキング1位という評価も得ているそう。子どもに対する施策に力を入れており、子育てを考える人にもおすすめです。

自然に囲まれた暮らしを楽しみながら、自然について学び、伝えていく人を探しています。

 

広島駅から電車かバスに乗って1時間50分ほど。三次(みよし)駅に到着する。

目指す飯南町は、三次からさらにバスで約1時間。赤名というバス停で降りる。

この日は今季最強の寒波が来ているというタイミングで、まわりは銀世界。膝の高さくらいまでは積もっているだろうか。

ただ除雪がしっかりしていて、車道も歩道もしっかり道をつくってくれているので歩きやすい。

足元に気をつけながら、バス停から5分ほどのところにある、待ち合わせ場所の観光協会へ。

本当は冬の森林セラピーのひとつ、スノーシューを体験させてもらう予定だったけれど、前日の雪がひどく、今回は残念ながら見送ることに。

ここで迎えてくれたのは、観光協会の伊藤さん。そのまま車で移動しながら話を聞く。

島根・出雲出身。家族が暮らしているため、出雲から毎日1時間以上かけて車で通っているそう。

「この雪だと、スノーシューのコースまで辿り着けなさそうで。せっかく来てもらったのにすみません。でも逆に一番ひどい雪の日を見てもらって良かったかもしれないですね」

「森林セラピーをしているエリアは禁猟区になっているので、動物の足跡くらいしかない真っ白な道が続いていて。まっさらな雪の上を歩いていくのは格別です。雪が音を吸うので静かだし、静かすぎて耳が痛くなるような感覚になります」

飯南町で働き始めて10年近くになるという伊藤さん。

「もともと出雲の出身で。大学は他県に行ったんですけど、島根に戻ってなにか島根に役立つことがしたいと思ったんです」

最初は廃棄物処理の会社で働いていた。ただ3年ほど経ったときに、これが本当に自分のしたかったことなのか、と疑問を持つように。

そこで退職し、ライフワークである各地の伝統行事を見て回っていたときにたどり着いたのが、飯南町だった。

「ちょうどやっていたのが、秋に毎年開催している『はやしこ奉納』っていうお祭りでした」

「小学生からおじいさんまで、年代関係なくお祭りに参加している。地域の小学校も祭りの日は午後休になるほど、大事にされてきたお祭りなんです。それを見たら、なんか感動しちゃって」

地域で大切に受け継がれてきた行事。ただ、祭りも人がいないと実施することができなくなってしまう。

飯南町も人口減少で悩んでいることを知り、伊藤さんは町の力になりたいと、飯南町で仕事を探し、観光協会の前身組織にあたる第三セクターで働くことになった。

「当時から森林セラピーは行われていて、年間2000人ほど来ていたそうです。ただ、2015年に第三セクターが発展的解消して観光協会が立ち上がるときに、ガクッとお客さんが減ってしまって。あらためて森林セラピーをつくっていく必要がありました」

春夏秋冬、それぞれプログラムはあるけれど、当時は夏場の集客がよくなかった。

そこで地域おこし協力隊と一緒につくったのが、シャワークライミング。源流に近い川で、きれいな水の流れと木々のさざめきを感じることができる。今では人気のプログラムなのだそう。

また飯南町には温泉施設もあり、宿泊施設も少ないながら整っている。そういった条件から、日本でも数少ない「森林セラピー基地2つ星」の評価も得ている。

森林セラピーでは、伊藤さんはみずからガイドをすることは少なく、基本的には10人ほどいる認定ガイドから、お客さんに合わせて担当を選んでいるそう。

申し込みに対する外部手配、料金収集、当日の段取り、準備物の用意など、裏方業務が多い。またセラピー事業全般を担っていて、ガイドの育成にも関わっている。

「新しい企画も考えて実行しています。直近だと今週末、琴引山に登ってすき焼きを食う、っていう企画をやろうとしていて。雪山に登ること自体過酷なんですけど、そのあとのご飯って格別だろうと。そこですき焼きするわけです(笑)。僕がガイドで、8名参加してくれる予定なんですよ」

今回新しく加わる人は、これまで伊藤さんがやってきた仕事に一緒に取り組みながら、できそうなことがあればどんどんアイデアを出していってほしい。

軸である森林セラピーはもちろん、それ以外の観光の企画もスタッフが考えて実施する。伊藤さんのようにやりたいと思ったことを実現できる環境はありそうだ。

 

話しているうちに、町内のカフェに到着。

待ってくれていたのが、森林セラピーのガイドを長年務めている荻野さん。23年前に京都から移住してきた。

「最初は地方の求人だけが載っている転職情報誌で知りました。当時は田舎暮らしに注目が集まりつつある時期で。仕事帰りに一冊だけ残ってるのを見つけて買ったんです」

「手に取ってバスの中で読んで。北海道から沖縄まで全部書いてあるので、週刊少年ジャンプくらい分厚いんですよ(笑)。それに飯南町が載っていたんです。いろいろ募集があったんですけど、飯南町は家族で来てくださいと書いてあったんですよね」

奥さんと一緒に移住しようとしていた荻野さんにとっては、飯南町の条件が良かった。

移住前はSEをしていた荻野さん。家族もいる状態で仕事を辞めて移住するというのは、大変だったんじゃないですか。

「そうですね。自分自身も、仕事がいそがしくて疲れていて。それを変えたいと思ったんですが、30代の人間が仕事とかを全部置いて、知らない土地に突然移住・就職するっていうのは、相当体力が必要でした。楽するためとかではなく、転職する感覚で来ないと長く続かないと思います」

「やっていて楽しいことをやりたい。それが僕にとっては森林セラピーで。ガイドの一期生として森林セラピーの立ち上げから関わってきました」

1年間講座を受けて、植物や山の安全、救命の知識、さらには町の歴史も学んだ荻野さん。

「楽しかったですね。散歩しているときも、足元に生えている雑草を知っているのと知らないのとでは、自然の見え方がぜんぜんちがう。愛着が湧くような感じです」

「何百人もガイドをしてきましたけど、お客さんは一人ひとりみんなちがう。毎回初めての感覚なんですよね」

森林セラピーは癒しを感じてもらうのが一番。「森は単なる手段に過ぎないんです」と、荻野さん。

人によっては、たくさん説明してもらえるほうがいい人もいるし、あまり話しかけないほうがいい人もいる。

話すにしても、相応の知識や会話の引き出しが必要になるので、ガイドとして一人前になるにはかなりの勉強や経験が必要になりそうだ。

「大事なのは、知識を相手に押し付けないことです。そして聞かれたときには答えられないといけない」

「わからないときはわかりません、って正直に言います。恥ずかしいんですけどね。それを調べて自分のものにして、次聞かれても大丈夫なようにする。その繰り返し。日々勉強です」

ガイドは全体で3時間ほど。そのなかでお客さんにとっての最適な癒しは何なのかを、対話のなかで探っていく。

「こっちに来てから家族と過ごす時間が長くなりました。休みの日は外にいくらでも遊ぶところあるし。ものはネットで買えるし。不自由はないです」

都会と異なることとしては、地区の集まりや草刈りといった行事があるということ。

大変ではあるけれど、近所の人にとっても外から来た人がどんな人かわからないのは不安なこと。集まりにも積極的に顔を出して、知ってもらう努力をするのが大切なのかもしれない。

「町が子育てに力を入れているし、教育環境もいい。尻込みせずに一度来てほしいですね。7割は情報収集でわかるけど、あとの3割は実際に来ないとわからないこともあるので」

 

荻野さんとはここで別れ、観光協会へ。最後に話を聞いたのは、伊藤さんとともに観光協会で働く大上さん。

飯南町の出身で、10年ほど岡山や松江で働いたのち、Uターンで3年前に帰ってきた。

いま担当しているのは、主にふるさと納税に関する業務。新しい返礼品の発掘や発注作業、寄付者の方へ送る書類の送付など、事務的な作業をメインにしている。

「実はこの業界に引き込んでくれたのは伊藤さんなんですよ(笑)。もともと福祉の業界で働いていたんですが、ぼんやりUターンを考えていたときに、以前飯南町でのイベントでお会いしていた伊藤さんから連絡をもらって。今は、飯南町の魅力を多くの方に伝えられる仕事ができていて、楽しいです」

大上さんは地元出身なので、なにか暮らしで困ったことがあったら、相談に乗ってくれると思う。

新しく入る人は、どんな仕事から始めることになるんでしょう。

すると、隣で聞いていた伊藤さん。

「基本的に私の業務を一緒にやってもらおうと思っています。夏だとシャワークライミングに同行してもらうとか。ただ、その人の特性とかもあると思うので、観光協会内で配置転換する、みたいなことも考えています。相談しながら、という感じですね」

「大上さんはなにかやりたいことはある?」と、問いかける伊藤さん。

「えー… 山が好きです。登山。伊藤さんは、なにかやりたいことがあれば自分で企画していいよって言ってくれるんですけど、まだそこまで手が回っていなくて」

「帰ってきてから登山が楽しくなってきたので、それを企画にできたらいいなって、頭の奥底では思ってます。こうやってチャレンジできる余白があるのがうちのいいところだと感じていて。新しく来る人も、これがやりたいです! って、気軽に言ってほしいですね。私も触発されて何かできそうな気がします」

 

最後に伊藤さんがこんな話をしてくれた。

「私が一番好きな光景は、夏のセラピーロードの森の中に広がるヒメボタルの風景なんです。漆黒の闇の中に、ヒメボタルの点々とした光がポツポツと光って。宇宙に身を置いているような感覚になるんですよ」

「真の闇であの光に包まれると、人生観変わりますよ。今喋ってても鳥肌が立つくらい。なんかもうね、達観しますね、いろんなことを。肌で味わってほしいです。くらわしてあげたい。すごいだろって言いたい」

森林セラピーに興味がある人はもちろん、人をもてなしたり、喜んでもらうことにやりがいを感じたりする人。そんな人にとっては、ここでの仕事はぴったりだと思いました。

気になる人は、ぜひ一度訪れて伊藤さんたちと話してみてください。

(2024/01/25 取材 稲本琢仙)

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