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よい学校と教育、
そしてひとづくりで
まちを将来世代につなぐ

まちに、多様な人とよい関係性があり、そのときどきに必要な活動や仕事がほどよく生まれている。

近い将来、過疎により消滅する危機に直面していた徳島・神山町で、そういった環境が生まれるように動き続けているのが、「まちを将来世代につなぐプロジェクト」。通称つなプロ。

神山町は、この十数年ほどで大きく変わり続けています。

ここでまちづくりの軸になっているのが、一般社団法人 神山つなぐ公社。

「すまいづくり・ひとづくり・しごとづくり・循環の仕組みづくり・安心な暮らしづくり・関係づくり」という6つの領域で、まちを将来世代につなぐための活動に取り組んでいます。

今回募集するのは、主にひとづくりに関わっていく人。

具体的には、町内にある県立の農業高校で、生徒一人ひとりや学校、町がそれぞれ主体者として共に可能性を広げ、まちを将来世代につなぐ。そんな「まちの高校」をつくるプロジェクトを推進していきます。

教育関係の経験は必須ではありません。よりよい教育と、地域の未来について考えたことのある人に知ってほしいです。

 

神山町へは、徳島空港から車で1時間ほど。

取材に訪れたのは3月末。東京ではまだ桜は咲いていなかったけれど、神山に入った途端、たくさんの桜の木がちょうど満開を迎えていた。

神山は住民が有志で桜をたくさん植えてきた歴史があり、桜のまちとしても知られている。

春の空気を感じながら、神山町役場へ。つなぐ公社のオフィスもここにある。

「昨日までは雨だったんですけどね。ちょうどいい天気で、桜も満開。いいときに来てくださいました」

そう迎えてくれたのが、役場職員であり、神山つなぐ公社の代表理事も務めている馬場さん。代表になって今年で3年目になる。

「8年ほど前に、神山町は創生戦略として『まちを将来世代につなぐプロジェクト』を策定しました。そのときから役場の担当者として関わってきたので、8年間どっぷりとこのプロジェクトと付き合っています」

つなプロが始まるきっかけとなったのは、人口減少という大きな課題。

神山町のピーク時の人口は2万人。それが2015年には6000人になり、2060年には1000人台になると推定されている。

「子どもの数も、今は1学年20人くらいですが、将来は5人くらいになる。そうなると、学校が廃校になったり、インターネットとかまちのインフラも維持できなくなったりする可能性がある。結果、子育て世代がいなくなり、まちが消滅していく」

「その現実を知って、ガツンと衝撃を受けた人が少なくなかったと思います。本気で考えていかないと、町がなくなってしまう。それで当時、役場が中心となって、まちに暮らし、関わっていた49歳以下の若いメンバーに集まってもらい、つなプロを考えはじめました」

こういうふうに暮らしていきたい、町にはこうあってほしい。一般論で語るのではなく、自分ごととして町のことを考えていくために、検討メンバーは若い世代を対象とした。

つなプロの策定と同時に、プロジェクトを推進する組織として神山町が設立したのが「一般社団法人 神山つなぐ公社」。行政と民間、両方の人材が入った組織で、それぞれの強みを活かし、柔軟性とスピード感を持って、ときに分野や組織を横断しながら事業を進めている。

町内の高校の魅力化プロジェクトでは先生や役場職員と、子育て世代向けの集合住宅建設プロジェクトでは町の大工さんや高校生と。そのときどきで、熱意ある組織や町内外の人たちと、さまざまな取り組みを重ねてきた。

「つなプロの動きに限らず、このまちでは新しいことがたくさん動いていて。人口は減っているけど、これまでいなかった層の人が増えています。IT企業のサテライトオフィスができたり、2023年には神山まるごと高専が開校したり」

「新たにいろんな人が神山と関係を持つことで、より人の出入りが活発になる。加えて、新しく来た人が、さまざまな試みに神山で挑戦する。小さなことでも、やってみたらいいという空気感と、それを実現できる土壌が神山には生まれています。まちの人たちのこれまでの活動や気風があってこそですね」

教育面だと、小学校ではNPO法人による食農教育がはじまり、中学・高校では公社と連携したキャリア教育や企業へのインターンなどの機会も増えている。ほかにも、お山のようちえんや小学生対象のオルタナティブスクールなど、民間の教育機関もここ数年で始まった。

つなプロが目指しているのは、「まちに、多様な人とよい関係性があり、そのときどきに必要な活動や仕事がほどよく生まれている」状況をつくること。神山はその理想の姿にだいぶ近づいているように感じる。

「いつの時代も課題はあるので、その時々に活動している人たちが良い関係のなかで動けたらいいなと思っています。いまは手応えも感じているし、もう止められないって感じですね。もちろん止める気はないんですが(笑)」

代表として公社を支えている馬場さん。いまの公社はどんな雰囲気でしょう。

「メンバーがみんなポジティブだなと思います。前向きに、自分でプロジェクトを進めていける人が多い」

「公社は役場からの委託を受けて活動しているんですが、この8年間の取り組みで協働を積み重ねてきたため役場との信頼関係もできている。なので、いろいろなことを推進しやすいです。あとはみんなが神山での暮らしに馴染んでくれているのは、単純にうれしいですね」

公社のメンバーは、ほとんどが町外からやってきた人たち。休日はまちのイベントに参加したり、川遊びをしたり、少し足を伸ばして海でサーフィンをしたりなど、それぞれが神山での暮らしを楽しんでいるそう。

「つなプロに専属的に取り組む公社を、10年で終わらすことではないだろうと思っています。僕たちにも神山町にも、まだやめる気はないので(笑)。新しいメンバーと一緒に、いまやれることに全力で取り組んでいきたいですね」

 

今回募集するのは、つなぐ公社のひとづくり担当。

どんなことをしているのか。公社の理事で、ひとづくりを担当している梅田さんに話を聞いてみる。

梅田さんはさまざまな仕事を経験してきた方で、神山に来る前はウェディングプランナーを育成する専門学校の講師をしていた。

「公社に入ったのは2018年の6月です。その前の年くらいから、専門学校で教えることに物足りなさを感じていて。そろそろ場所を変えないとなって思っていたんですよね」

そんなときに偶然知ったのが、神山での取り組み。過去の日本仕事百貨の記事も読んで、興味を持った。

「採用過程に含まれる神山での滞在プログラムに参加したんですが、それがすごく面白くて。つなプロという大きな指針はありつつも、実現するための方法はメンバーに任されている。それぞれの人が持っているスキルを活かしてください、と」

「それだったら自分の力も発揮できると思ったし、自分のやりたいことも実現できそうだなって。子どもたちに生きる力を身につけてほしい、と思っていたので」

滞在プログラムではまちを散策したり、公社の人からひとづくりについての話を聞いて、ほかの参加者と意見を交わしたり。

「グループでディスカッションをすると、それぞれの人柄とか考え方がよくわかるんです。今回の採用過程でも、滞在プログラムを実施して『一緒に働いていけそうか?』お互いに相性を確認する時間を過ごしたいと考えています」

ひとづくりのチームが目指しているのは、まちによい学校と教育がある、ということ。

そのために力を入れているのが「高校の魅力化プロジェクト」。

たとえば、耕作放棄地で高校生たちが草刈りや石積みをおこない、畑を再生。そこで育てた小麦をまちのお店で使ってもらっている。

ほかにも、まちの公共事業に高校生が関わる機会をつくったり、近隣の企業を巻き込んで高校生のインターンシップを実施したり。

そうした活動に伴走するのも、ひとづくり担当の仕事だ。

「ひとづくりの仕事ってこんなに魅力があるんだ!って感じた瞬間があって。それが、高校生のインターンシップなんです」

「体験後に、それぞれが感じたことをじっくり話す時間をつくったとき、生徒の話に感動してしまって。あきらかに、行く前と後では雰囲気とか、発する言葉が違っているんですよね」

言葉が違う?

「細かい内容は覚えていないんですけど… インターンシップを通して、この子には将来花ひらく種が植えられたんだなってわかる、彼らから出てくる言葉の重みが違うっていうのかな」

「ともかく心を揺さぶられた。こんなに子どもたちの可能性を感じられる魅力的な仕事ってないよなって、心から思いました。いまでもそのときのことは忘れられないです」

新しく入る人は、まずはすでに動いているプロジェクトのサポートから。

たとえば梅田さんが担当している中学や高校での授業など。最初は補助的に参加して、次第に引き継いでいけるようにしたい。

授業といっても、先生だけでなく、生活の知恵を持っているおじいちゃんやおばあちゃん、移住して自分で事業をつくっている人や、サテライトオフィスで働くIT企業の人たち。短期間だけ神山に滞在しているアーティスト、それに調査研究でやってくる大学生。ほかにも県や町の職員など。

神山には実にさまざまな大人が集っている。

生徒が彼らと話すことで学べることはきっとたくさんある。生徒とまちの人をつないで新しいチャレンジを積極的に生み出していってほしい。

生徒のためだけでなく、自分自身の未来を考える手がかりにもなるはず。

「答えのないことを、話し合いながら形にしていく。その過程を楽しめる人がいいのかなと思います。答えのない問いに向かって、面白いことをどんどんつくっていってほしいですね」

 

最後に話を聞いたのが、梅田さんと同じくひとづくり担当の秋山さん。6年前に神山にやってきた。

「当時から、神山に可能性を感じていて。出会う人出会う人が前向きな人ばかりで、小中高に地域の人がたくさん入り、地域連携が始まっていて。つなぐ公社もあったり、勢いがあるなと」

「いろんな人に相談して、2週間くらい悩んで。ほかにも働きたい会社はあったんですが、感覚的にこっちのほうがわくわくする、と心が動いたので、神山に来ることを決めました」

実際に公社の仕事をしてみてどうでしょう?

「公共的なところに入り込めるっていうのがおもしろいです。学校って、民間の身で入るのはむずかしいけど、公社だといろいろな面で生徒たちと関わることができる」

「あとは余白があること。もちろんやらないといけないプロジェクトはありますが、こんなことをしたら面白そうだっていうときに、実際に試してみることができる。儲けを出すより、町の人が喜ぶことがよしとされるのが面白いなって」

梅田さんと高校プロジェクトを動かしているほか、まちの中高生をオランダに連れていく国際交流プロジェクトなども、秋山さんが企画から携わった。

「神山校の寮や、『鮎喰川(あくいがわ)コモン』っていう子どもたちを中心に、まちの人子どもたちが自由に使える施設の立ち上げにも関わりました。学校の授業を担当することもあるし、教職員の方に向けた研修をすることもあります」

「先生や地域の方と一緒に、高校のこれからを考える。最近はそういう時間が増えていますね」

神山は住んでみてどうですか?

「人との距離感は、都会と比べてだいぶ違いを感じました。メールとかテキストで伝えればよかったことも、ここだと電話がいいし、なんなら会いに行ったほうがいい」

「会って話すことで、信頼されて物事が進むっていうことはよくあるので。散歩して近所の人と会話するのも、このまちで暮らすうえでは大切なことなのかなと思います」

民間の会社だと利益が出ないからとできないことも、まちのため、子どもたちのためになるのであれば、公社ならできる。

だからこそ神山は、教育やまちづくりの先進的な地域として注目されているのだと思います。

チャレンジを繰り返し、新たな試みを続けている神山。ここでともに、子どもたち、地域、そして自分自身の可能性を広げてみませんか?

(2024/3/29 取材 稲本琢仙)

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