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ツールとベースで
働きたいあなたの
道を切り拓く

物理的な距離を気にせず遠くの人と話すことも、買い物することも。インターネットの普及によって、どこにいても、指先ひとつでいろんな世界を見ることができます。

一方で、パソコンやスマホの操作が難しい重度の身体障がいがある人は、その機会を得ることも少ない。

そこで、マウスやキーボードなどの入力ツールを中心に、身体が不自由な人でも操作がしやすいアシスティブテクノロジーを開発してきたのが、テクノツール株式会社です。

設立から30年。商品数も使用する人も増えていくなか、次の一歩として、重度の身体障がいのある人が働く場所を新たに立ち上げました。

今回紹介するテクノベース株式会社は、これまで就職先の選択肢が少なかった重度の身体障がいのある人の就労機会をつくる、就労継続支援B型事業所を運営しています。

全国に1万以上ある就労継続支援B型事業所。障がいや難病のある人が利用できる障がい福祉サービスのひとつです。

テクノベースの親会社であるテクノツール株式会社と、障がいのある人に向けた就労支援サービスを展開している「株式会社LITALICO」が共同出資し、昨年12月に横浜で開所しました。

今回の募集は、利用者へ業務を教えたり、操作方法のサポートをしたりする職業指導員。あわせて事務スタッフも募集します。

福祉業界での経験がなくても大丈夫。常駐しているスタッフは福祉業界で経験を積んできたプロたち。新しく加わる人には、アノテーションや図面作成の仕事など、利用者がさまざまな体験をできるよう、新たな業務の開拓も担ってほしいそう。

テクノロジーと、それを活かすベースとなる機会や場所。両方あることで、世界はどんどん広がっていく。

そのサポートに興味が湧いたら、読み進めてみてほしいです。

 

横浜駅から地下鉄のブルーラインに乗って10分ほど。南区にある吉野町駅に到着。

5分ほど歩くと、川のほとりに茶色いタイルのビルが。この「ライオンズマンション吉野町」の一階にテクノベースがある。

ガラス張りの窓から、作業している人の様子が見える。

テクノベースのスタッフは4人。利用者は現在8名で、ほとんどが身体障がいを持ち、知的・発達・精神障がいがある人もいるそう。

会議室で待っていると、「こんにちは」と笑顔で迎えてくれたのは、テクノベース代表の島田さん。親会社テクノツールの代表でもある。

テクノツールのはじまりは、重度の身体障がいを持ち、4歳で亡くなった島田さんのお姉さんの存在だった。それをきっかけに、父の努さんがテクノツールを設立。

大学を卒業後、電子部品メーカーで営業をしていた島田さん。その後、テクノツールへ入社し、ツールの開発や市場開拓に携わっていた。

開発したツールを使う人と出会うなかで、だんだんと疑問を抱えるように。

「僕らはテクノロジーを使って社会参加をしてほしい気持ちがあって。ツールをつくることでそれを応援できると思っていたんです」

「でも、なんかおかしいなって。人って、好き嫌いも、得意不得意も当然ある。なのに、一人ひとりの気持ちを置き去りにして、『障がい者だからできません。これしか選べません』と、世の中がなりすぎているんじゃないかって」

テクノロジーの提供だけでは足りないのかもしれない。そう感じた島田さん。事業を受け継ぎ、テクノツールの代表になると同時に、新たな動きをはじめた。

「テクノロジーだけではなく、それを活かすチャンスも必要だと気づいたんです。その両方を掛け合わせることで、社会参加しやすくなるんじゃないかって。チャンスが社会にないなら僕らでつくろうと」

「どうつくっていこうかと考えて、思いついたのが“働く場所”でした」

全国には障がいや難病がある人に向けて、就労を支援してくれる場所はある。けれど、手先を使ったり通所したりすることが前提の事業所が多く、重度の身体障がいのある人にとっては就労が難しい。

そこで立ち上げたのが、テクノベース。昨年の12月に「就労継続支援B型事業所テクノベース」を開所した。

利用者は通所とリモートを選ぶことができ、ほとんどが在宅で働いている。この日も通所していたのは1名で、そのほかの利用者はリモートで勤務していた。

テクノベースなら自分も働けるかもしれない。そんな問い合わせも増えていて、この春に2人ほど利用者も増える見込みだ。

「本人に働く意思があっても、行政によって許可が下りないこともある。それって前例がないからという理由も多くて」

「今あるルールのなかでも、短期間で利用までつなげられたり、障がいの程度が重くて利用できなかった人にも許可が下りたり。テクノベースで事例をつくっていくことで、ルールも変えていけたらと思っています」

 

「人の役に少しでも立てるのであれば、なんでもやってみたいんです」

そう話すのは、テクノベース利用者のAさん。肢体不自由と軽度の知的障がいがある。名前と顔写真は控えたいとのことで、手元を撮らせてもらった。

3ヶ月前に愛媛から家族で引っ越してきたばかり。話すペースはゆっくりだけれど、はっきり自分の想いを話してくれる。

今日は、パソコンを使いデータの入力をしていたAさん。通所と在宅を組み合わせて勤務している。

3ヶ月、過ごしてみていかがでしょう。

「今は、生活に慣れることで精一杯なところはあります。横浜は坂道が多くて、移動が大変なこともあって。テクノベースで一番ありがたいのは、施設の環境整備がされていることですね。段差も少なくて過ごしやすいです」

「環境に慣れられるのか不安もありましたが、運がよかったというか。無事に見つかって安心しています」

体調次第で出勤の調整はできるけれど、基本的に週4〜5日働いている。

雨や雪で外出が難しい日は在宅での勤務。在宅の日はテクノベースから支給されたパソコンで、バーチャルオフィスを使い、スタッフとやりとりをする。

「今の業務のパソコン操作は簡単なのですが、慣れてきたら難しい仕事にも挑戦してみたいと思っていて。機器も使いやすいように工夫していこうってスタッフさんと話しています」

「コミュニケーションをとることは好きなんです」と、Aさん。テクノベースに通所するとき以外は家で過ごすことが多いそう。ここで話すことを楽しみにしている。

「石田さんとか、スタッフのみなさんが『ものすごく頑張っていますね』とか、声をかけてくれて。それが原動力になっていますね」

 

「僕がやることって承認くらいなんですよ(笑)」

そう話すのは、サービス管理責任者で公認心理師の石田さん。事業所に常駐している方で、新しく入る人も仕事を教わる場面は多いと思う。

LITALICOで働いたのち、障がいのある人のグループホームでサービス管理責任者を務めていた石田さん。

ちょうど島田さんがテクノベースを立ち上げようとしていたころ、共通の知り合いを通じてつながった。

「当時は、知的・発達・精神障がいのある方 が利用しているグループホームで働いていました。恥ずかしい話なんですけど、それまで多様な障がいのある方を支援してきた と思ってしまっていて」

「島田さんの話を聞いて、なんて自分は視野が狭いんだって。社会に出たくても出られない人がまだたくさんいることに気づいたんです」

アシスティブテクノロジーを使うことで、身体が動かなくても社会参加できる。障がいの有無に関係なく、働いた成果で評価される。

それを実現したいと、もともとのグループホームを退職し、テクノベースの立ち上げから関わっている。

今力を入れていることは、たくさんの人にテクノベースの存在を知ってもらうこと。

病院やリハビリセンター、特別支援学校などに取り組みを紹介している。

「とくに支援者同士がつながるのが大事だと思っていて。『今受け入れることは難しいんだけど、ほかのところだったらいいかも』ってテクノベースを紹介してもらったりとか。支援者側も、使える制度を意外と知らなかったりするので、情報交換の意味もあるんです」

テクノベースを利用している人は、テクノツールのつながりや、石田さんたちの広報によりつながった近隣の人もいる。

「『事業所をやっています』って、ただ言うだけでは利用までつながらなくて。ほかのスタッフ2人も積極的に説明会とか企画してくれていますよ」

「新規事業だし、何が正解かは誰もわからない。先行き不透明でも、挑戦してみたいってマインドがある人に来てもらいたいですね」

 

最後に話を聞いたのは、職業指導員の佐藤さん。今回一緒に働く人にとって先輩になる方。

LITALICOのサービスのひとつ、LITALICOワークスで就労移行支援員として3年ほど働いたのち、昨年の10月にテクノベースへ出向してきた。

「純粋に楽しいです。開設して間もないので、利用者さんに教える業務のマニュアルを整えたり、役所に申請書類をつくったり。事務作業も多いですけど、だんだん形になってきているのがうれしいです」

大学では文学部に所属していた佐藤さん。福祉業界に興味を持ったのは、アルバイトがきっかけだった。

「知的障がいがある方のグループホームで、言葉でのやりとりというより、怒ったり笑ったり。身体で体当たりというか(笑)。でも自分が元気をもらうことも多くて、心も豊かになるような感じがしたんです」

「テクノベースでは、寝たきりだったり発声ができなかったりする方もいて。そういう方はチャットで話してもらうんですけど、入力するのも時間かかるんです」

「この利用者さんは、ちょっと体を動かすだけでも激痛が走ってしまう方で」そう話しながらチャットの画面を見せてくれる佐藤さん。

スタッフ側はバーチャルオフィスのビデオ会議をつないだ状態で、 利用者の様子を 見ることができる。利用者はジョイスティックマウスというテクノツールで開発された装置を使い、チャットを送っている。

「利用者さんが入力している間、沈黙の時間が続くんです。カメラ越しに様子を伺いながら、こちらからの質問ばかりにならないよう気をつけていますね」

「これまでは、働くっていう選択肢が少なかった方だと思うんです。でもテクノベースを見つけてくれて、ちょっとでもいいから働きたい、働けることがうれしいって思ってくれている。ふだんの様子から、頑張っているのが伝わってきます」

そのためにも、どんどんできることを増やしていきたい。

「今のスタッフで利用者さんに教えられることって、限られていて。たとえば、CADを使った図面作成の仕事も、これから依頼を受けていこうと話しているので、新しい領域の知識を増やすことに抵抗のない方 に来てもらえるとありがたいですね」

IT系や設計などの知識や得意分野 がある人に来てもらえたら、受注も増え利用者に担ってもらえる仕事も増える。自分ではできない、そう思っていた人も、テクノツールの商品を使ったり、スタッフがサポートしたりすることで幅広く活躍できる。

 

誰かの役に立っている。その気持ちは、働くためのエネルギーになってくれる。

テクノベースはその気持ちが生まれる場所なんだと思います。

そんなパワーを感じながら、新しい選択肢を切り拓いてみてほしいです。

(2024/03/07 取材 大津恵理子)

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