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ショップカードをデザインしてほしい。ただそれだけの依頼だとしても、表面的なデザインだけでは終わらない。
EDING:POST(エディングポスト)は、食品や衣類から、教育、バイオテクノロジーまで、さまざまな業種のブランディングを幅広く手がけるデザイン事務所です。
サクッとつくってすぐに納品、という仕事は限りなく少なく、依頼主と対話を重ねて、相手のことをとことん理解してからデザインに取り組むのが特徴。
事業の規模拡大にあたって、プロジェクトマネージャーとデザイナーを募集します。さまざまなデザインに取り組みますが、今回はグラフィックに強い人が来てくれるとありがたいです。
探しているのは、デザインが好きで、人が好きで、人のために動ける人。年齢や職歴は不問で、実力を正当に評価することを大切にしています。
想いの「根っこ」の部分にまで深く寄り添うので、時間はかかるけれど、一つひとつの仕事にじっくりと向き合うことができます。真摯に働きたいと思っている人に、ぜひ知ってもらいたいです。
EDING:POSTがあるのは、三軒茶屋駅のほど近くにある3階建ての小さなビル。1階が玄関、2階が応接間、3階がオフィスとアトリエになっていて、螺旋階段でつながっている。
先日、会社の規模拡大に合わせオフィスを引越したばかりということで、お話は代々木公園駅にある旧事務所で伺った。
柔らかな笑顔で迎えてくれたのは、代表の加藤さん。幼少期からものづくりが好きで、高校では油絵・日本画・彫刻を、専門学校ではファッションの勉強をしていた。
加藤さんがEDING:POSTを立ち上げたのは、専門学校在学中の2007年、21歳のとき。知人からロゴや名刺、ポスターなどのデザインを依頼されるようになり、雪だるま式にどんどん依頼が増えていって今に至る。
最近では、微細藻類ユーグレナ(ミドリムシ)を活用した事業を展開するバイオテクノロジー企業、株式会社ユーグレナのチーフクリエイティブディレクターに就任。
今まで大手代理店が請け負っていたような規模のプロジェクトに入って、デザインの統括を担当している。
「毎週デザイン定例があって、なかなか忙しいですよ。先日は、グループ総会に登壇する機会もありました」
「ユーグレナ社の事業が成長すればするほど、社会問題が縮小するソーシャルグッドを目指して、社内外から専門家を招致したクリエイティブチームを編成し、各ブランドの改革に着手しています」
適性を見ながらではあるけれど、新しく入る人はユーグレナ社の案件にも関わってもらう可能性が高いとのこと。
EDING:POSTの立ち上げから17年以上経つなかで、特に印象深かったと話すのは、起業から3〜4年目で担当したコーヒーショップの案件。
「『OMOTESANDO KOFFEE』というコーヒー屋さんのブランディングを丸ごと担当しました。オーナーの國友さんは以前からの知り合いで、独立するときに声をかけてくださって。『予算はあまりないけど、丸ごと加藤くんに任せるから』と言われ、初めて大きな規模の仕事を請け負うことになったんです」
ロゴや販促物のデザインのほか、お店のコンセプトやネーミング、ユニフォームや内装まで。信頼しているクリエイターたちとプロジェクトチームをつくって、一緒に考えていったそう。
「打ち合わせのなかで、國友さんが『地域の友になるようなコーヒー屋さんをやりたい』と話していて、『それって國友さんの名前とリンクしているな』と気付いたんです。そこから、國という漢字のくにがまえをモチーフに、四角を使ったデザインを考えていきました」
メニューも、パッケージも、空間も、お菓子も、モチーフは全て四角。コーヒーのスペルがCじゃなくてKなのも、國友さんの名前がもとになっている。
「建築、グラフィック、サービスまで、業界業種の垣根を越えて、一つひとつの要素が相互に作用する新しい業態が生まれました。『自分がやりたいことって、これだ!』と、この仕事をしたときに思えたんですよね」
國友さんが新しく手掛けた清澄白河の店舗「KOFFEE MAMEYA -Kakeru-」のブランディングも、EDING:POSTが担当している。
メニューのデザインには、茶色のグラデーションを使い、浅煎りか深煎りか、パッと見て分かりやすいように表現。細かな味の違いは、バリスタさんたちがお客さんとコミュニケーションをとりながら店頭で伝える形をとった。
豆の種類は入れ替わりが激しいため、お店側から情報をもらって、EDING:POSTのデザイナーがそのつど文字組みのデータを作成。文字以外の要素は事前に印刷しておいて、文字部分のみお店のプリンターでモノクロ出力すれば更新できる、という仕組みになっている。
飲食店のメニューは更新頻度の多さから、手書きにせざるを得ないことも多い。そんななかでも、「細部まできれいに魅せたい」という國友さんと加藤さんのこだわりがこの運用につながった。
グラフィックの美しさのみならず、きちんと運用できるかどうかまで考えてデザインする加藤さん。
新しい案件の話をもらったときには、依頼主の話をよく聞いて、その取り組みに共感できるか、他者や世の中のためになる仕事かどうかをじっくりと検討するそう。
「『何をつくりたいか』から一緒に考えるし、『人生のターニングポイントを語る会』をやったり、ご飯を一緒に食べたりして、『あなたはどういう人なんですか?』ということを理解してから仕事に取り組むようにしています」
「事業を維持・発展させるために、資金が必要なのは十分理解していますけど、お金儲けが主題のご依頼はお断りしています。クライアント自身に対するメリットだけではなく、その仕事の先にどんな未来を描いているか、次の世代や文化に対して貢献できるのか。そういった視点を大切にしています」
建築雑誌の表紙になっていた「KOFFEE MAMEYA -Kakeru-」を通じてEDING:POSTを知ったという、入社3年目のデザイナー、小野さんにも話を聞いてみる。
小野さんは、大学で宇宙物理学を学んだあと、建築を学びたいと美大に入学したユニークな経歴の持ち主。
「有名建築家が建てたレストランでも、行ってみたらロゴがちょっと残念だとか、メニューに統一感がないことって多いんです。空間、メニュー、従業員さんのふるまいなど、すべての要素が組み合わさって体験を形づくるので、どれか1つ欠けることで全体の魅力が落ちてしまう」
「でも『KOFFEE MAMEYA -Kakeru-』は違いました。実際に足を運んでみると、すごくまとまりがあって。メニューも四角だし、トイレにある鏡もゴミ箱も四角で、ここまで徹底されているのかと驚きましたね」
小野さんが入社してすぐに担当したのが、群馬県高崎市にある神社「山名八幡宮」の仕事。平和の象徴である鳩をモチーフに、お守りや絵馬などをリニューアルした。
「デザインをする前に、絵馬やお守りをつくっている工房におじゃまして、どうやってつくっているのかを見せてもらって。メーカーの方とも、どんなことができるのか、どんなことは技術的に難しいのかなど、話し合いながら進めていきました」
1つのデザインをつくるときには、ラフを100案以上つくるそう。
「手描きでラフをつくってから、スキャンしてパソコンできれいな線にすることが多いですね。今回は鳩の形が肝になるので、絵馬をつくる際には、重心の位置を意識しながら、さまざまな形を検討していって、やっと今の形にたどり着きました」
どんな仕事でも、依頼主とのコミュニケーションを大切に。時間がかかってもじっくりと取り組んでいくのが、EDING:POSTのデザインのやり方だ。
小野さんよりも年下だけど社歴は先輩のデザイナー・有村さんは、EDING:POSTの手掛けるデザインに惹かれて、約4年前に入社した。
今のEDING:POSTは男性が多めだけど、女性ばかりだった時代もあったそう。
楽しみながら一緒にものづくりできる人であれば、性別はもちろん、学歴も年齢も関係ない。フラットに、一人の人として見てもらえるのが、この会社の良さだと思う。
「専門学校に通っていたとき、デザイン事務所のホームページを見るのが好きで、勝手にランキングを付けたりしながら、何百件もブックマークして、よくチェックしていたんです。トップ10のなかに1件だけ小さなデザイン事務所がランクインしていて、それがEDING:POSTでした」
高校時代にインテリア、専門学校ではプロダクトのデザインを学んだ有村さん。小さな事務所だからこそ、幅広くチャレンジできると話す。
「大企業から個人事業主の方まで、さまざまな人たちと一緒に仕事をしています。ここ3年くらいは、岡山県の西粟倉村で企業の組織づくりに関わっていて。コミュニケーションの一貫で、猟師さんと一緒に鹿を食べたりもしているんですよ」
「若手のうちから、クライアントと近い距離感で直接やりとりできるのは楽しいですし、大きな組織のなかで働いてきた人だったらびっくりするような環境だと思います」
ともさん(加藤さん)、小野ちゃん、だいちゃん(有村さん)と呼び合う3人。業務量も多くて忙しいはずなのに、取材中の雰囲気からも、和気あいあいとした心地の良い関係性が伝わってくる。
依頼主に向き合うのと同じように、社内メンバー同士も普段からうまくコミュニケーションを交わせているんだろうな。
「現在の社内メンバー9人とも、仲は良いと思います。以前、土曜日に撮影が入ったときには、ともさんの娘さんも一緒に代々木公園でご飯を食べました。新しく入ってくる方とも、仕事関係なくデザインについていろいろ話せたらうれしいですね。あとは、負けず嫌いで競い合える人がいたら面白そうです」
加藤さんいわく、学生時代からコンペ荒らしだったという有村さん。将来独立することも視野に入れながら、日々力をつけている。
最後に、加藤さんにどんな人に応募してもらいたいか聞いた。
「前提として、他人を喜ばせることが好きな人が適していると思います。デザイナー枠としては、現在プロダクトやインテリアなど立体造形が得意な仲間が多いので、グラフィックデザインに特化した方を探しています。マネージャー枠としては、常に先回りしてプロジェクト全体の困りごとを見つけ、解決策を考え行動に移せる方だとうれしいです」
「年齢や性別・学歴や職歴は不問です。僕自身、ここまで独自の道を選んで歩んできましたし、実力をきちんと評価し合えるチームでありたいと思っています」
短納期でつくって納品、という仕事はほとんど請けていないEDING:POST。依頼主の「デザイン室 室長」を担うように、密にコミュニケーションをとりながら、想いの根っこの部分を探ってデザインにつなげていく。
店名の検討から、メニュー開発、はたまた組織づくりまで。「デザイン」「ブランディング」と一言でまとめられないくらい、担当範囲は広くて深い。
「今、デザイン事務所として結構おもしろい案件を、各界のトップランナーの方々とご一緒できていると感じています。大変ありがたいことに受けきれないほどのオーダーをいただいていて、単純に人的リソースが足りない。良いものをきちんと良い形で世の中に送り出すために、ぜひ力を貸してほしいですね」時間はかかる。だけど、だからこそ楽しい。
しっかり相手と向き合って仕事をしたい人からのご応募、お待ちしています。
(2022/12/19、2024/3/18 取材 今井夕華)