求人 NEW

ずっと取り組む
やっと見えてくる
じゃじゃ馬とカーペット

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

1980年代には、新築住宅の床面積の20%ほどを占めていたカーペット。

ライフスタイルの変化に伴って、近年では0.2%まで減少しています。

そんな状況を打開しようと取り組んでいるのが、堀田カーペット3代目代表の堀田将矢さん。

国内では数少ない「ウィルトンカーペット」を手がけるメーカー。糸の密度が高く耐久性に優れていて、高級ホテルなどに商品を提供してきた歴史ある会社です。

最近では、ファッションの要素を取り入れたラグブランドや、パズルのように組み合わせて、床のかたちにデザインできるDIYカーペットを開発。

今年の秋ごろには、カーペットの良さを実際に体感してもらえるような複合施設もオープン予定です。

今回はウィルトン織機を使ってカーペットを織る織工を募集します。

一人前の職人になるには、10年ほどの年月がかかるといいます。

ずっと取り組んで、ようやく何かが見えてくる。目の前のことに没頭して働く仕事です。

あわせて、カーペットを届ける人や伝える人、ほかにもデザイナーやウェブディレクターとして働く人なども募集します。

 

大阪駅から関空方面に向かって40分ほど、和泉府中(いずみふちゅう)駅に到着。

バスに乗り換えて約10分のところで降り、少し歩くと工場が見えてきた。

入り口付近には植物が植えられていて、その少し上方にはガラス張りのスペース。

若い女性の方が窓辺で談笑している姿が。工場にカフェでも併設しているのかな。

階段を上って扉を開ける。

なかはデザイン事務所のような感じ。

たくさんの本があり、インテリアにもこだわりを感じる。カフェだと思っていた空間は来客用で、談笑していたのは女性スタッフさんたちだった。

靴を脱ぎ、深い青色のカーペットを踏む。ふわふわしていて気持ちがいい。

はじめに話を聞いたのは、代表の堀田さん。新卒で入社したのは、トヨタ自動車だった。

車のゴム部品など、年間で1000億円ほどの部品を調達するバイヤーとして働いていた。

6年ほど楽しく働いていたころ、お父さんから電話がかかってきたという。

戻ってくるか来ないか、それだけ決めてほしい。

「日本一の会社と言われていたところと、大阪の中小企業。条件面も含めて、ほんまにいいんかなって考えました。けど、親父と一緒に働いてみたい感覚があったんですよね」

お父さんはどんな方なんですか。

「“ものづくりは、夢づくり”って彼はいつも言うんですけど、彼にとっては本当にそうなんだろうなって」

楽しそうにものづくりされるんですね。

「はい、でも失敗もいっぱいするし(笑)。たとえば、『カーペットに金属を埋め込んだら、こんな面白い意匠ができる』って言うけど、それ誰が買うの?! みたいな。手作業でやるから非効率ですし」

「ただ、新しいものってそうやって生まれてくるのかなって、親父を見ていると思います」

お父さんが築きあげてきた会社としてのあり方を大切にしたい。

そんな思いから、2008年の2月に堀田カーペットへ入社した。

「いいものをつくっていることは、すぐにわかりました。ただ、商品の良さが伝わっていない状態だから、売れていない。ブランディングするしか道はないと思って」

「5年ぐらいは、ずっと試行錯誤の連続。何をしたいとか、どんなブランドをつくりたいとか。イメージをまったく持てないまま、ひたすら学び続けて。でも、うまくいかなかった」

転機となったのは、「BOWMORE(ボウモア)」との出会い。

スコットランド北部のアイラ島でつくられる、シングルモルトウイスキー。

アイラ島は、大西洋から吹きつける強風の影響で天候が不安定。

600㎡の広さに、人口およそ3000人。海沿いに9つの蒸留所があるのを除き、大きな建物はあまり見当たらない。

スコッチウイスキーは、世界のウイスキー消費量の約60%を占めているけれど、アイラウイスキーはそのうちの6%程度だそう。

BOWMOREは、気品あるスモーキーフレーバーが特徴で、アイラモルトの女王と呼ばれるようなブランド。

「一般的に、お客さまが何を求めているのか?から考えると思います。でも彼らは、お客さまのニーズよりも、アイラ島という島の特徴を活かしながら、自分たちが本当にいいと思ったものを長年つくり続けている」

「僕はそのあり方がいいなと思ったんです」

ウィルトン織機も、もともとはイギリスで生まれ、日本では大阪でつくられはじめたもの。そして、市場が小さいなかでも、強いブランドをつくり続けている。いろいろな背景がBOWMOREと重なっている。

「BOWMOREとの出会いは、ブレイクスルーの大きなポイントでした」

「それが決まってからは、今の世界観を表現していくのはすごくやりやすくなりました。当然ものづくりはめちゃくちゃ苦労したんですけど、ブランドのトンマナも含めて一本筋が通っていく感覚ができました」

2016年に立ち上げた「COURT」は、まさに堀田カーペットが目指す世界を体現したもの。

ファッションのエッセンスをインテリアに取り入れたウールラグブランド。英国ならではの気品を感じさせるデザイン。そして英国の特徴の一つである曇天のような、落ち着いたクールさも感じられる。

COURTの狙いは、エンドユーザーと接点を持つこと。

それまではインテリアメーカーからの下請けが中心で、依頼を受けてカーペットをつくっていればよかったけど、時代の変化によって、カーペットの需要が減少。

市場自体を広めていく必要がでてきた。

「裸足で踏む気持ちよさや、汚れのつきづらさとか。ブランドを通じて、カーペットを敷くからこそできる暮らし方を伝えられる環境をつくってきました」

2017年には、堀田カーペットをリブランディングして、Webサイトも立ち上げた。事務所も改装して、今の形に。

COURTはインテリアショップを中心に、100店舗ほどで取り扱いしてもらえるようになった。

さらには、DIYカーペットブランドを開発したり、宿泊やギャラリーなどの機能がある複合的な施設をつくったり。

取り組み続け、そしてやっと芽が育ちつつある。そんな状況なんじゃないかと思う。

 

今回募集するのは、織工とカーペットを届ける人。

織工は、ワインダーと呼ばれる糸を繰る作業、カーペットの裁断、補修、和歌山工場など。まずは数ヶ月間かけて、工場のひと通りの流れを研修で学ぶ。そのあと、織機の扱い方を専門的に覚えていく。

堀田カーペットでは、すべての商品にウールを使用。協力紡績工場と一緒に素材を吟味し、染色まで終えると、堀田カーペットに糸が入荷されてくる。

まずはワインダーから担当。繰った糸はコマのような形になっていて、それを手作業で織機にセットする。

無地のカーペットをつくるとしたら、およそ1200個のコマが必要で、最大で5色・6000個を交換するのだとか。

セッティングされた様子は圧巻で、奥の機械に吸い込まれるよう。

上下に動く機械に対して、シャットルと呼ばれる装置が左右にヨコ糸を出していくことで、カーペットが織り込まれていくイメージ。

「ウィルトンカーペットの製作工程を見たときは、どうなってんねん、みたいな感じでしたね」

率直な感想を聞かせてくれたのは、織工の村本さん。入社して2年目、自分の感覚を大切にしながら働いていると感じる。

「基本的に、カーペットを織っている時間のほうが少ないんです」

「品番や別注案件によって、毛の色も細さもすべて異なってくるんで、それを準備しているほうが大変だし、あとはコマ替えも重要です」

機械を動かしながら、糸を替えるのがコマ替えと呼ばれる作業。

「独特の結び方なので、初めてやらせてもらったときは、ぜんぜん結べなくて。ちょっと待てよ、みたいな」

「商品に影響が出るから、しっかり結ばないと、職人さんに怒られるんですよ。『おいっ!めっちゃ糸切れるやんけ』って。プレッシャーに負けたくなかったので、次はもっと早く結んでやる! と思ってました(笑)」

今はどんな仕事をされているんですか。

「ダブル織機っていう、2倍の量が織れる機械をつかっていて。通常の織機はカーペットの表面が見えているんですけど、ダブルは裏しか見えないんですよ」

コマの糸は切らしていないか、シャットルのヨコ糸は切れていないか。機械はきちんと作動して、カーペットはちゃんと織られているだろうか。

織れる量が2倍になるぶん、作業も2倍になる。

「手が6つ欲しいぐらいで。スポーツ感覚です。常に目を動かして、手も動かす。音も聞かないといけないので、めちゃくちゃ疲れるんですよ」

大変そうではあるけれど、村本さんはちょこちょこ笑っている。

「ほんと、じゃじゃ馬なんで」

織機はじゃじゃ馬。

「すごく上機嫌な日もあるし、機嫌がわるいときは、どつきたくなる日もある。故障したときは、先輩に声をかけて一緒に手伝ってもらうんですけど。できへんかったことができていく瞬間っていうか」

「はじめてダブル織機に触れたときも、全然なんのこっちゃやったけど、何回もやってると、ちょっとずつわかるようになって。日に日に感じるから、やっててよかったなって思います。楽しいなって」

 

「ダブルで織っても、給料は変わらずよな(笑)」

絶妙なツッコミを入れるのは、10年目の工藤さん。いまは主にカーペットを届ける仕事を担当している。

「お客さまから出荷依頼の発注が来たタイミングで、それに基づいて正しいものを出すのが、一番の仕事になります」

まずはカーペットのサイズを調整するため、ハサミでカットする。新しく入る人も、まっすぐカーペットを切れるようになるのが、はじめの試練。

ちょっとでもずれるとほつれてしまうため、注意が必要。まっすぐ切れたときは何の抵抗もなく、コリコリという音がして気持ちいいのだとか。

寸法を整えたら、商品に傷がないか品質をチェック。何十メートルものカーペットを広げて、自分の手と目で確認していく。

「カーペットには、カット商品とループ商品があって。簡単にいうと、毛先がワイヤーで切られているかいないか。ワイヤーの入りがちょっとでも斜めになっていると、光の加減でカーペットに影ができてしまうんですよ」

ぱっと見では分からないほどの傷。届ける仕事、という名前ではあるけれど、根っこには徹底したものづくりへの姿勢がある。

 

最後に代表の堀田さん。

「今は本当に大きな過渡期で。会社として60年を超えて、使ってきた織機がもう寿命に近づいてきている。今までは騙し騙し動かしてきたところから、騙しきれないような状態になりつつあるんですよね」

「だから、織機そのものをつくるところまでいかないといけない。そういう意味では、まさに“ものづくりは、夢づくり”というか。さらに面白くなっていくんじゃないかな」

困難な状況が続いているように思えるけど、話し手のみなさんからは、前向きな姿勢を感じる。

まずは相棒のじゃじゃ馬とともに。

ちょっと荒々しいけど、毎日刺激的な環境だと思います。

(2024/04/23 取材 杉本丞)

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