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オホーツクをのぞむ
おこっぺ町で
牛と生きる、人と生きる

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

ひらけた空と、見渡す限りの豊かな自然。

オホーツク海をのぞむ興部(おこっぺ)町に、小さな牧場を主体とした会社、ノースプレインファームはあります。

1988年の創業から目指してきたのは、自然と共生する酪農。

牛のエサとなる牧草から、原材料となる生乳の生産、牛乳・乳製品の製造まで。一貫して、自分たちの手で行っています。

さらに、興部町の直売店「ミルクホール」をはじめ、道内3ヶ所・道外3ヶ所の姉妹店を展開。ソフトクリームや乳製品を使ったメニューを味わうことができます。

今回は、北海道・おこっぺ町の本社で働く、酪農、製造のスタッフをそれぞれ募集します。

経験は必要ありません。

環境を変えて新しいことに取り組みたい、食や農に関わってみたい、おこっぺ町で暮らしたい。それら全部という人も大歓迎です。

 

羽田空港から飛行機に乗って、オホーツク紋別空港へ。着陸すると、窓ガラスの向こうでは雪が舞っている。

オホーツクをのぞむ海沿いを、車で走っていく。ひと月ほど前までは流氷のシーズンだったようで、溶けかけた氷が岸に打ち上げられている。

空港から40分ほどで、ノースプレインファームの拠点に到着。

100ヘクタールほどの敷地面積。牛舎や放牧地、生乳を加工する工場などがあるエリアは、すべて歩いていける距離にある。

直売店兼レストランのミルクホールで、副社長の吉田さんに話を聞く。

ノースプレインファームは、おこっぺ町で酪農家のもと生まれ育った大黒(だいこく)さんが創業した。

おこっぺ町で搾った新鮮な牛乳を、まちの人に飲んでほしい。そんな想いで、酪農から牛乳・乳製品の生産まで、一連の営みを行う会社として立ち上げた。

「当時、私が食べていた添加物を使わない加工食品って美味しくなかったんです。ただ、ノースプレインファームのウインナーや低温殺菌の牛乳は、本当うまかったんですよね」

縁のあった農家さんの紹介でノースプレインファームを知った吉田さん。ここで働いて20年近くになる。

最初は製造加工のスタッフとして働き、生産管理を経て、副社長へ。

「おこっぺに特別こだわりがあるわけではないんです。働きたいと思える会社が、おこっぺにたまたまあったっていうのが近いかな。こんなこと言うと、社長に怒られてしまうかもしれないけれど(笑)」

近年、酪農を取り巻く社会情勢は大きく変わっている。

後継者不足や輸入飼料の価格高騰など。さまざまな影響を受け、2023年の1年間で、全国の酪農家のうち5パーセントが離農している現実がある。

ノースプレインファームは、社会変化とどう付き合ってきたんだろう。

「うちはほとんど影響ないですね」

「創業当初から小規模で、土地の自然体系を崩さない、昔ながらの農の営みを続けてきました。会社としても持続していけるよう、生産量の調整と、適切な価格設定をしています」

会社のモットーは、「大地も草も牛も人もみんな健康」。放牧を主体に、循環型の酪農経営に取り組んできた。

たとえば牧場では、牛の糞尿はすべて堆肥にして、牧草地に活用。また牛が食べる草には、化学的な肥料や農薬を使用せず、牛たちが食べやすい健やかな牧草を育てている。

さらに商品の多くは、化学肥料などに頼らない原料を基本に、自然界の力で生産された食品に与えられる「有機JAS」の認証を受けている。

環境への負荷をできる限り減らしながら、エサづくりから乳製品の製造までを一貫して行うノースプレインファーム。

「豊かな自然体系のなかに、僕らの農業の営みがある。自然環境へ、なるべく負担をかけない循環型の酪農は、何千年とつづいてきた歴史があります。そのやり方にのっとって、自分たちの手に届く範囲の豊かさを大切にしているんです」

「これからも、量ではなく質を高めていきたい。もっと美味しくとか、もっと綺麗に、とか。お店のサービスも同じく質です。努力を怠らずに、継続して買ってくださるお客さんを大切にするということが、残したい会社としての姿です」

一本、筋が通るように、はっきりと話す吉田さんの話は、聞いていて気持ちがいい。 

 

次の日。

朝4時に起きて、搾乳を見させてもらう。外はマイナス10℃の凍てつく寒さも、牛舎に入るとあたたかい。

独特の匂いはほとんどしない。それは、有機JASにのっとった飼料を与えているからとのこと。

農場長の道坂(みちさか)さんと、スタッフさんの二人で、一頭ずつ牛の搾乳をしている。

牛の身体を軽く叩いたりさすったりして合図をしながら、牛と牛の間にスッとしゃがみ込む。

まずは乳頭の消毒。次に前搾りをして、乳頭内の雑菌を出してお乳が出やすくなるように。最後に、ミルカーと呼ばれる、空気圧でお乳を搾る機械で搾乳をする。

50頭の搾乳牛がいて、すべての牛の搾乳には、およそ2時間ほどかかるという。

朝の作業を終えてから、農場長の道坂さんに話を聞く。楽しそうに仕事について教えてくれる。

「めんこいめんこいって可愛がるときもある。うちは、あだ名で呼ぶ牛がいますよ。たとえば顔の模様のことを斑紋(はんもん)って呼ぶんですけど、涙みたいに見えるのを『涙目』って呼んだりしています」

「牛の可愛がり方も、牛舎の構造や飼育方法、搾乳に使う機械も。酪農家さんごとに、みなさんこだわりをもっていて、やり方も考え方もバラバラなんですよ。だから、経験ない人の方がありがたいかな」

そう話す道坂さんが酪農に出会ったのは、今から25年前のこと。牛と関わる仕事の経験はゼロだった。

「うちの実家が農家をやっていて。ほんと、おこっぺが都会に思えるぐらいのど田舎なんですよね。じいちゃんばあちゃんの手伝いをよくしてました」

「入りたてのころは、牛おっきいし、おっかなかったですよ(笑)。でも慣れちゃって、今は全然平気です。うちの牛、わりかし大人しいんですよね」

一日の仕事は、先ほど見学した搾乳と、子牛への哺乳からはじまる。

そのあと牛を外に出して、日光浴と運動の時間。そのあいだに2時間ほど、朝ごはん休憩。

9時から11時の間に牛舎の掃除をして、牛たちを牛舎に帰らせる。

11時から14時半まで昼ごはん休憩と昼寝をとったあと、夕方の搾乳の準備を整える。16時前から搾乳をはじめ、18時に退勤。

飼料も、トラクターに乗り自分たちで草を刈るところから。ほかの牧場に比べ、手作業ですることが多いそう。

「そこが、楽しいところです。売りでもあり、大変なとこでもあるけれど」

「餌も、暮らし方も。なるべく牛の本来のあり方に近づけていきたい。ストレスがない牛って、健康に育つよねって。健康な牛から出る牛乳は、美味しいよねっていう。そんな気持ちで、毎日働いてます」

天気や牛の体調など、環境に身を委ねることが多い仕事。

生き物相手の仕事だから休みはないのかな? と思ったけれど、会社なので部署に関わらず月9日休み。道坂さんを含む4名で、ローテーションしている。

ただ人手が足りず、現状は道坂さんが休みを数日返上して働いているそう。増員をして、みんなが均等に休める状態にしたい。

「最近、Zoomのやり方を覚えたんです」と、道坂さん。

「まずは、オンラインでも見ていただきたい気持ちがあるんです。牛舎の様子や、働いている姿。実際に見てわかることって本当にたくさんあると思っているんで」

やりがいのひとつは、お客さんとの距離が近いこと。

「となりのミルクホールで食事をしたお客さんが、放牧地や牛舎を見に来てくれることもあって。ちびっ子とか、入り口で手招きすると、全然ビビらない子もいれば怖がる子もいて。楽しいですよ」

ときどき催事へ出展し、部署問わず接客対応もすることも。

「牛乳を買ってくださる方に、『おととい自分が絞ったやつっす!』とか言える。すごい手ごたえを感じるというか、うれしいっていうか」

自分がつくったものへの反応をダイレクトに感じれられるのは、きっと大きな喜びになるはず。

 

最後に話を聞いたのが、製造課の課長、雨宮さん。

雨宮さんが入社したのは4年前。東京の乳業メーカーで勤めていて、配属先の工場がおこっぺ町だった。社長の大黒さんの娘さんとご結婚したことを機に入社。

「初めて来たのは4月だったんですけど、まだ結構残雪があって。飛行機の窓から見た真っ白な景色は、今でもはっきりと覚えています」

「昔、母方の故郷である佐渡ヶ島へ遊びに行っていたんです。自然の豊かさがおこっぺ町にも重なったんです。釣り、登山、キャンプとか。アウトドアが好きな人にとっては充実していますよ」

現在乳製品を製造するミルクプラントは社員2名、パートさん9名。

新しく入る人は、清掃をはじめ、まずは食品工場としての基本を覚える。

牛乳や飲むヨーグルト、バターやチーズなど。レシピを基に、少しずつ、目指す品質の幅の製品を安全につくれるようにしていく。

「以前入社してきた方は、将来自分でチーズをつくりたい気持ちがあって。2年間一緒に働いて、基本を覚えたあとにチーズの管理を重点的にやってもらいました」

「挑戦できることの幅は広いし、きっと自分に合うものがある。興味があれば、挑戦できる環境は整っていますよ」

どんなところに、おもしろさを感じているんだろう。

「当たり前ですが、元となる牛乳は生き物からいただいているので、日々移り変わりますよね」

たとえば、雨宮さんが担当しているモッツァレラチーズの製造。チーズはとくに発酵の過程があるため微細な変化が現れやすく、温度が1度違うだけで味も質も大きく変わる。

「目指す味ができたときに、少しずつ自信がついて。次も頑張ろうって思うんです。なんだか、日々戦っているような感覚です」

「原料も近くでつくられている環境って、なかなか無い。牛や生乳の状態について、農場部とも情報共有をします。チーム感がありますね」

おいしさをとことん追求する。試行錯誤を繰り返す、発酵のメカニズムなど、化学的な楽しさもあると思う。

「3年でも4年でも。自分で区切りをつけて応募していただいても大丈夫です。乳製品の製造を勉強してみたいとか、そういう理由でも大歓迎で」

「仕事もここでの生活も。楽しみたい!という気持ちがあれば、ぜひ飛び込んできてほしいです」

 

取材のあと、ミルクホールでランチへ。

すぐそばの工場で製造したゴーダチーズがかかったハンバーグと、瓶詰めされた牛乳をいただく。

表面に生クリームの層ができていて、これは生の牛乳に近い証とのこと。

飲み口はさらっとしているけれど、やさしい甘さとコクがある。季節によって、味わいも変わるんだそう。

自然にも、牛にも、人にもやさしい酪農のあり方。

オンラインでの相談も受け付けているそうです。興味がわいたら、一度話をしてみてください。ノースプレインファームのみなさんが、快く迎えてくれるはずです。

(2024/03/15 取材 田辺宏太)

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