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どんな仕事でも、経験を積み、プロフェッショナルと呼ばれる人がいる。
その人一人だけで仕事が完結してしまうことも多いけれど、プロが複数集まってチームを組んだらどうだろう。
一人で責任を背負い込むことも避けられるし、良いところを引き出し合い、一人ではつくれなかったものを生み出すことができるかもしれない。
今回紹介するのは、まちづくりという文脈をさらに広げていき、まちづくり業という一つの領域として発展させようとしている人たちです。
株式会社NOTE。兵庫・丹波篠山(たんばささやま)にある「集落丸山」の事例を発端に、全国さまざまな場所で主に空き家・古民家を活用しながら、その地域・まちなみの魅力を再整理し、事業化するまちづくり事業をおこなっている会社です。
必要最低限の改修にとどめ、古民家そのものが持つ魅力を活かした宿「NIPPONIA」。その名前を知る人も少なくないかもしれません。NOTEではこれまで、全国31ヶ所で宿泊施設をはじめとしたまちづくり事業を手がけてきました。
今回は、地域に入り、地域資源の調査、関係者の調整、事業計画の立案、資金調達等のプロセスを経て、計画に基づいた空き家・古民家の改修、そして開業へと導くプロジェクトマネージャーを募集します。
まちづくりの経験は問いません。重要なのは、NOTEの考え方への共感、そして目の前の課題解決に向けて、やりきる覚悟だと思います。
NOTEの本社があるのは、兵庫・丹波篠山。大阪から電車で1時間ほどで到着する。
趣のある城下町の途中に、神社の参道と鳥居が。NOTEのオフィスはこの参道の右側に面している。
中は木でつくられた温かみのある空間。2階に上がり、代表の藤原さんに話を聞く。
藤原さんに会うのも、4度目。直近だと約2年前に取材をした記憶があります。
「そうですね。あのときはちょうどメンバーが独立したりして、スタッフが少なくなった時期でした」
「そんななかでも、前の記事を見て2人入ってくれて。おかげさまで、中心的なメンバーとしてがんばってくれていますよ」
それまでは個々の力を重要視していたNOTE。組織のかたちも、一人ひとりが独立したギルド的なものだった。
ただメンバーが少なくなったとき、個々人だけではできないこともたくさん出てきたそう。この数年間、より会社らしい組織にしていくことで、チームで仕事をするというやり方を充実させてきた。
「僕らのゴールは、まちづくり業をつくるということなんです。たとえば、今の子どもに将来何になりたいか聞いたら、まちづくり業とは出てこない」
「我々がもっとがんばることで、うちと同じことをしている会社が増えたらいいなと思っていて。そうすることで、まちづくり業界みたいなものができて、経済が回る。それが理想ですよね」
ほかにも、この2年間で変わってきたことがあるという。
それが、民間企業からの問い合わせが増えてきたこと。以前は自治体や地域組織からの相談が多かった。
「最近は大手の商社さんとか、ベンダーさんとか。いろんな会社がまちづくりを一緒にやっていきたいと言ってくれて」
たとえば、風力発電をつくるコンペティションがあったとして。
事業を入札するためには、単純に風力発電をつくるだけでなく、その地域のまちづくりという視点で評価されることが多くなっているという。
「民間企業だと、それぞれの専門的なことは詳しくても、まちづくりに関してはノウハウがないことが多い。それで我々に声をかけてくれるわけです」
持続可能性や地域貢献などがビジョンやパーパスのなかに位置付けられることが増えてきた今、企業として儲かるかどうかではなく、地域に貢献しながら事業を進めなければいけないというのが、今の流れ。
「収益だけ考えて地域に入っても、地域の人はなかなか心を許してくれないんです。『お前ら、いつかいなくなるんじゃないか』って思われるし、企業側の担当者や経営者が変わったら撤退しかねない」
「だからこそ僕らに、その接続点をつくることを期待していて。極論を言ってしまうと、企業が去ってもNOTEは残るっていうこと。地域に最後まで伴走するっていうのが、うちのやり方です」
宿ができるまでは、3、4年ほど。今回募集するPMは、NIPPONIAが完成するまでのすべての工程を担うことになる。
近隣住民との関係性をつくり、事業計画を作成。必要な資金、人材を集めて座組をつくり、事業スキームを形にして、実際の改修、運営に入っていく。
「姿勢として大切にしてほしいのは、僕らはあくまで伴走者だということです」
伴走者、ですか。
「伴走じゃなくて担いで走っとるやんけ、とかはよくなくて(笑)。あくまで我々は外からやってきた人。中心にいるべきは地域の人たちなんです」
「伴走に徹することで、地域の人たちだけで回していける仕組みが自ずとできていく。それが理想だし、持続可能なまちづくりだと思っています」
現状、稼働しているNIPPONIAは31ヶ所。新たに事業が始まっている地域がいくつもあるため、PMとして各地でまちづくり業をしてくれる人を求めている。
「NOTEとしてはまだまだ道半ばなので、一緒に組織もつくりながら歩んでくれる人だとうれしいですね」
「教えないとできませんっていう人は、正直きついかなと。まだ誰もつくったことのない世界をつくるんだと。そう考えてワクワクしてもらえたらうれしい。若くてもいいし、社会人経験もそんなに気にしません。スキルよりは、素直に人とコミュニケーションできることが大事ですね」
まちづくり業を現実のものに、と奮闘するNOTEのみなさん。その現場で活躍しているのはどんな人なのだろう。
続けて、PMとして働いている石﨑さんに話を聞く。
もともと銀行で働いていた石﨑さん。4年ほど前に退職し、NOTEに入社した。
現在担当しているエリアは、地元でもある北陸地方。もともと、北陸でNOTEの事業をしたいという想いもあったそう。
「篠山では、藤原さんからノウハウを学んだり、自分で勉強したり。2年くらい学ばせてもらって、北陸に移住しました」
北陸のいくつかの地域でまちづくり事業に伴走している石﨑さん。
この夏には、石川県白山市の白峰という地域でNIPPONIAがオープンする予定。
「700人くらいの村なんですけど、いろんな企業さんや地元の大学、自治体と連携して、2棟の古民家を改修していて。それを地元の事業者さんが運営する、そのサポートをするところです」
白峰では、関係者が多かったのもあり、その調整に苦労したという。
「外の人たちは、白峰が白山信仰のメッカだという色を前面に出したいのに対して、地元の人たちはそこも大事なんですが、目の前の空き家をなんとかしたい、暮らしを残したいのが前提でNIPPONIAに取り組みたいと。想いにギャップがあったんです」
関係者が多いと調整が大変だと思うんですが、なにか自分なりのやり方があったりするんでしょうか。
「そうですね… 。僕らの仕事はPM。なのでマネジメントすべきはお金と時間と利害関係者の調整なんですね。そこで大事なのは、地域のニーズを汲み取ってそれを満たすこと」
「そのなかでNOTEが間に入って、ほかの事業者も、そしてNOTEも儲かるようにする。そのバランスが重要で。Win-Winになるためにどうすればいいかというのが、一番頭を使うところですね」
たとえ社会貢献であったとしても、最終的に持続可能なものにするためには、ビジネスの要素は外すことができない。まちづくりはボランティアではない。
地域に根ざして、本気でやる。逃げない。その気持ちがあってこそ、地域の人からの信頼も得ることができるし、本当の意味でのまちづくりにつながっていくのだろうな。
ほかにも、北陸新幹線の延伸エリアでもある石川県小松市や、福井県越前市など。
いろいろな地域に入りながら、多くの人と関わり、まちづくりを進めている。
「僕らが得意としているのが、地域資源の価値を見出して、編集すること。その上で持続可能な事業を企画して実践する。かといって、プレイヤーではなく伴走者であることが大事です」
改修できそうな空き家を見つけたり、補助金をとったり、地域の人たちをまとめたり。
どれも大変そうではあるけれど、藤原さんの言っていた通り、特別なスキルとかは必要ないようにも感じる。
「そうなんです。言ってしまえば誰でもできる。ただそれを本気でやるかやらないか。それだけなんですよ」
「この地域をなんとかしたい、とか。そういう想いがないと持続しないんです。僕みたいに、まちづくりをしたいって思うエリアがある人だと、やりがいもあるしモチベーションにもなるのかなと思います」
最後に話を聞いたのは、経営企画部の小栗さん。
NOTEでは唯一の新卒採用で入った方で、経営企画にとどまらず、広報など幅広い仕事を担当している。
NOTEのことを知ったのは、大学時代、古民家活用の研究をしていたのがきっかけ。
「わたしはずっと都会育ちで。大学のときに地方へ行って衝撃を受けたんです。こんな素敵な古民家でも、持ち主がいないと数年後には壊されてしまう。そこに課題感を持って」
「でも自分にはなんのノウハウもないし、調査してもそれを発表して終わり。なんだか無力に感じてしまって。それでNOTEに興味を持ったんです」
最初はPMのアシスタントとして篠山エリアを担当。その後、NIPPONIAの情報発信に注力するため、広報として活動することになった。
「わたしは篠山にいることが多くて。現場に行くのは、開業前ですね。いいとこ取りをしているみたいですが(笑)」
「北陸も行けば東北や関東も行くし、四国も行く。幅広くすべてのNIPPONIAを見て、その地域を見て、その人を見て、その施設を見て。魅力を伝えられたらと思っています」
今回募集するPMには、どんなことを期待しているのでしょう。
「今回、PMとして一括で募集するんですが、業務分担をしたほうがいいと思っていて。将来的には、あなたは調査や分析が得意なので初期調査の担当、あなたはプロジェクトを形にするのが得意なので、資金調達や地域交渉などが必要になる開発の担当、みたいに分けることで、負担も少なくできるのかなと。そのぶん横の連携は強めていかないとなと思っています」
石﨑さんのように、エリアに特化して最初から最後まですべて担当するのもOK。もう少し多様な働き方をつくれたら、と小栗さん。
「ただ、自分はこうなりたいっていうビジョンや方向性を持っている人じゃないと、途中で迷子になるんじゃないかと思っていて。地域に貢献したい、っていう漠然とした気持ちだけだと、うちの仕事はけっこうきついと思います」
地域に入ったばかりのころは、ときに地域の人から責められてしまうこともあるかもしれないし、やらければいけない業務も多い。
地域に貢献したいのに、なんでこんなにしんどい思いをしないといけないんだ。そんなふうに感じて、途中で折れてしまう人も何人かいたという。
「NOTEを通して自分はこうしたいって、具体的に語れるといいですよね。石﨑さんみたいに、地元をなんとかしたいというように。地域の人は、いかに仕事ができるかというよりは、いかに本気で向き合ってくれるか。そこを見ているので」
「いい意味で、NOTEを利用してやるくらいの気持ちで来てくれる人がいたらいいですね」
確実に地域の課題を解決しながら、自らの組織も進化させつつあるNOTE。
取材を通して、今回入るPMの人たちが、新しいNOTEをつくっていくその中心になっていくように感じました。
覚悟と誇りを持って、地域に向き合う人を求めています。
(2024/3/5 取材 稲本琢仙)