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早朝、羽田空港から宮古空港に向かう直通便に乗り込む。
シーズンインで満席の飛行機は、海と空しか見えない航路をぐんぐん進む。
高度が下がり始め、宮古島の姿が見えてきた。座席のところどころから、わっと小さな歓声が上がる。
木々の緑と、真っ白な砂浜。そしてさとうきび畑。
島を囲うように、海の鮮やかなグラデーションが広がる。沖合のコバルトブルーが、浅瀬に近づくにつれてエメラルドグリーンに変化している。
この島で、株式会社パラダイスプランは本社を構えている。
今回は、パラダイスプランが運営する「島の駅みやこ」の販売スタッフを募集。接客や販売の経験は問いません。
空港から、島の中心にある西里(にしざと)大通りまでバスで移動する。そこから徒歩で15分ほどの場所に、島の駅みやこがある。
シーサーのすべり台、発見。
カママ嶺公園、県立病院と続く道沿いを歩いて、島の駅みやこへ到着。駐車場は地元ナンバーの車がたくさん。開店を待っているよう。
ここで、代表の西里さんが迎えてくれる。「まずはいろいろと、ご案内しますね」と、島の駅のすぐとなりにある本社へ。物流倉庫も備えていて、看板商品である「宮古島の雪塩」を見せてくれた。
飛行機が満席だったことを伝えると、うれしそうに笑ってくれた。
「沖縄全体の中ではね、宮古島はそんなに目立つ存在ではありませんでした。観光と言えば沖縄本島、次に石垣、3番目に宮古島が選ばれる」
「最近では、観光のお客さんがぐんと増えましたし、いろいろな施設もできて。人の流れが激しくなってきて、変化が速すぎる。そんなふうに感じています」
速すぎる…。宮古で生まれ育った西里さんには、どう映っていますか。
「喜ばしいことだとは思っています。ですが、どこかでコントロールしなきゃいけないとは思っていて。ルールを決めるなり、規制をかけるなりは必要でしょうね。持続的な発展を目指すんだったら」
持続的な発展。
パラダイスプランも、西里さんの宮古島への想いから始まっている。
「大学を卒業後、JA沖縄経済連に就職しまして。農業畑で働いていました。次第に、自分で手を動かして、宮古島の未来に貢献したいと思うようになりまして」
「一念発起し、1994年にパラダイスプランを立ち上げて。当初は観光農園など、いろんなことに挑戦しましたが、鳴かず飛ばずでうまくいかなくてね」
そんなとき、宮古島の海水を利用した製塩事業をはじめる。「雪塩」という名称で、一躍有名に。
雪塩の販売を拡大しながら、全国の塩を扱う専門店「塩屋(まーすやー)」を展開したり、雪塩ミュージアムを建てたり。ものづくりと観光が結びつくような事業を展開し、今では宮古島を代表する会社のひとつに成長した。
「昔も今も、パラダイスプランの立ち位置は明確で。島の未来に貢献する企業でありたいんです」
2013年、島でつくっているものを発信するための直売所として、「島の駅みやこ」をオープン。
島の駅では、宮古島の農家さんが収穫した新鮮な農産物を販売。店内には飲食コーナーを設け、その場で宮古島の食が楽しめるようになっている。
ほかにも、雪塩をつかったお菓子や調味料、ラフテー、泡盛など。生産者さんを身近に感じる商品が並んでいる。
「島の駅は、島の生産者さんたちの発表の場なんです。『いいものができたぞ。どうだ買ってくれねえか』って。胸を張って言ってもらえる場所にしたい」
島の駅みやこの二大主力商品が、マンゴーとメロン。とくにメロンは、6年ほど前からブランディングに取り組んでいる。
5月から旬の季節に入るというメロン。「メロメロメロン島」とキャンペーンを打ち出し、にぎやかな売り場が構えられている。
「メロンの名産地は全国にありますが、宮古島だって負けていないぞ、ということを、島の駅から伝えてきました」
ブランディングは実を結び、以前と比べて販売価格は3倍ほどになっているそう。
「高く感じるかもしれないですが、やっと適正価格になったと思っています。それだけ元が安かったってことなんです」
さらに、メロンの産地として知ってくれる人が増えたことで、30〜40代の新規就農者がぐんと増えた。
「自分でも、少し自慢できることだと思っています」と、照れくさそうに話す西里さん。
さらに、大企業を誘致した製菓工場の着工も進めている。来年に完成予定で、地元の人や移住者の雇用につながり、農家さんにとっても、生果と加工品の両方で利益を得ることができるようになるはず。
島の未来に貢献できるような企業へ。島の駅みやこは、会社の原点のような場所に育っている。
「生き生きと、自分の夢を語れるような人が住みやすい島であるために。これからも、僕らができることをしていきたいですね」
話を終えると、ちょうどお昼どき。
メロンやゴーヤを手に取る女性、土産用にお菓子を物色する外国人、イートインスペースではソーキそばをすする年配のご夫婦…。
店員さんのアロハシャツが店内を彩り、気分も晴れやかになる。
入り口近く、発送カウンターで梱包作業をしていたのが、塩川さん。
「そのまま持ち帰るのは大変なので、みやこで発送を承っているんです。団体のお客さまが来られたときは、行列もできるくらいで」
沖縄弁? なのか、独特のリズムで、心地よい話し方に楽しくなる。新しく入る人にとっては、気軽に相談できる人になると思う。
塩川さんは、西里さんの親戚。島の中では、いろいろな仕事をしながら忙しく働いているタイプの人。
「親父が代表のいとこで、みやこで働いていたんです。そのご縁で、10年ほど前に入社しました」
店舗業務以外の主な仕事は、農家さんとの関係づくり。
「実は、島の駅と農家さんは契約関係がないんです。島の駅に出すかどうかは、農家さんの自由」
毎シーズン安定して島の駅に卸してもらうため、定期的に農場へ赴き、生育状況や出荷目安について農家さんとコミュニケーションをとっている。
加えて、副業で肉牛の飼育販売もしている塩川さん。
いずれは塩川さんの育てた牛が、島の駅で販売されることもあるかもしれない。
「島の駅に来れば、宮古島産のお肉、魚や野菜が揃う場所にしたい。そのためにも、農家さんと島の駅とのつなぎ役として、卸してくださる方をこれからも増やしていきたいと思っています」
「そうすれば生産者さんもうれしいし、近くに住む人も買い物に来てくれる。観光を盛り上げつつ、きちんと地元の人にも愛されていることが、島の駅の目指すべき姿かな」
現在、島の駅みやこのスタッフは23名。うち、社員数は6名。
新しく入る人は、レジや品出しの基本業務のほか、精米や発送なども覚えていくことになる。
慣れてくれば、飲料や加工食品などの部門担当に配属され、在庫発注などの売り上げ管理も任される。
「最初の数ヶ月は、覚えることばかりです」と話すのは、伊藤さん。
岡山県出身で、新卒でパラダイスプランに入社し、今年で3年目。4月から、本店から空港店に異動したそう。
伊藤さんの働き方は、塩川さんとはある意味対照的かもしれない。新しく来る人にとっては参考になると思う。
「東京や大阪で働いてる先輩がいて、憧れもありました。試しに説明会に参加してみたら、バリバリ働く! っていう空気に、一歩引いてしまって。自分の言葉が出なくなってしまったんです」
「業種ではなく、まずは自分の住みたいところで決めようと思ったんです。南のほうの人は性格もあたたかいってイメージを勝手に持っていたので、沖縄の会社を探しました」
そうして調べていたときに見つけたのが、パラダイスプラン。
「雪塩を見たことがあったので、親近感がありましたね」
「まずは雰囲気を知ろうと、座談会に参加したんです。採用担当の方が、オレンジのアロハを着ていて、なんだか安心して(笑)。気負わずに働ける環境かもって思いました」
現在は、売り場づくりやSNSの発信などに携わっている。
売り場にも、伊藤さん手書きの文字で書かれたポップがつけられている。
「ほかにも『島の駅新聞』っていう、毎月のタウン雑誌の連載記事に携わっていて。マンゴーやメロン、豆腐などの生産者さんを取材して、記事で紹介しています」
今回加わる人も、得意なことを活かしながら、島の駅を盛り上げていってほしい。
「月に2回、毎月の売り上げ目標達成に向けて進捗共有をするんです。自分の部門で売りたい商品を設定して、販売個数とそのためにおこなったアクションを共有します」
「目標に向けて、きちんと取り組めているかフィードバックがもらえるんですけど、順調に売り上げが伸びているときはうれしいですね」
働いていて、大変なことはありますか。
「南の野菜に馴染みがなかったので、最初は見たことない野菜や果物を覚えるのは大変でした」
「でも、常連のおじいおばあとか、出荷に来た生産者さんが、いろいろと教えてくれるんです。スタッフさんも、お昼ごはんのときに手料理を持ってきてくれて。テビチっていう豚足とか、ゴーヤチャンプルとか。一緒に食べるんです」
宮古島での暮らしも、本土とは異なる部分があるそう。
「雨や風、雷とか。内地より強いんです。1年に何度かですけど、こんな音聞いたことない!って驚くほどで」
「宮古島は、合う人と合わない人、はっきりしていると思います。同期でも、1年間一緒に働いたけど、辞めてしまう子もいました」
「わたしは、宮古島での生活好きですね」と伊藤さん。
これからの具体的なキャリアプランは決めておらず、興味がある売り場づくりやポスター制作など、デザインの仕事を増やしていきたいと考えている。
「ショピングモールは無いし、遊ぶにも海しかない。暮らしに不便なことは多いです。でも、不便なことが悪いことだとは思っていなくて。周りには、週末だけ那覇に遊びに行って、宮古では落ち着いた暮らしを楽しんでいる人も多いですよ」
「都会に比べると変化は少ないかもしれないけれど、自分には合っていると思うんです。ときどき、朝ビーチに行って海を眺めて。そんなぼんやりした過ごし方が好きなんです」
自分に合っている。自分の心地よさに正直でいる。そんな仕事の選び方もあっていいと思う。
次の日の早朝。
空港に向かうまで時間があったので、近くのビーチへ行ってみる。朝早くからランニングに励む人や、ゴミ拾いをする人も。
波と、遠くから聞こえる汽笛の音。
目的を持ってバリバリと働きたい人も、心地よさを大切に働きたい人も。
小さな島だからこそ、生き方働き方を自分の意思で選べる余白がある。そんな環境だと思いました。
(2024/05/16 取材 田辺宏太)