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美しい里山に
挑戦の種火を

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里山は、人の営みと自然とが交わるところに生まれます。

草原も同じ。日本の気候において、放っておけば雑木林になってしまうところを野焼きすることで、草原の景観や生態系は保たれています。

熊本県南小国町(みなみおぐにまち)。きよらかな水が湧き出る、人口4000人弱の小さなまちです。

先人たちが守り継いできた美しい里山を、よりよい形で未来に残すために。まちづくり公社「SMO南小国」は、物産・観光・情報発信・人材育成という4つの柱で事業を展開してきました。

今回は、人材育成や人材還流に関わる未来づくり事業部のメンバーを募集します。

多岐にわたる取り組みに共通しているのは、このまちで何かに挑戦したい、こんなまちにしていきたいという人たちの想いの種火を拾い、育てていくことです。

経験は問いません。小さなまち“だからこそ”できること、自分を活かせる余地があると思います。

 

熊本空港から車で1時間ほどの南小国町。筑後川の源流域に位置していて、きよらかで美しいという意味から「きよらの郷」とも呼ばれている。

SMO南小国は、このまちで30年以上続く物産館「きよらカァサ」と観光協会が機能を融合し、2018年に生まれたまちづくり公社。

物産館の運営や南小国町のふるさと納税のプロモーション、国内外の観光客に向けたツアー造成に、オウンドメディアやYouTubeチャンネルを通じた情報発信など。観光・物産・情報発信にまつわるさまざまな事業に取り組んできた。

そんなSMO南小国のなかで、2019年に新設されたのが未来づくり事業部。今回はここで一緒に働く人を求めている。

「未来づくり拠点MOG」と名付けられたコワーキングスペースを訪ねると、未来づくり事業部長の安部さんが迎えてくれた。

「この場所はもともと学習塾だったんです。備品を揃えて、町民の方々とお話しして。『どんな場所がほしい?どういうことに挑戦したい?』と声を聞くところから、いろんな事業の種を見つけ育て、広げてきました」

立ち上げから3年間は、起業や事業支援の取り組みがメイン。

地域おこし協力隊の制度を活用して、町内で起業したい人を募る「ミライづくり起業塾」を企画運営したり。令和2年の豪雨で被災したキャンプ場の復興に向けて、災害時には仮設住宅にもなる防災バンガローのクラウドファンディングを実施したり。

挑戦の種火を蒔き、育てることに取り組んできた。

「やってみたいことがある人は、老若男女問わず不思議と多いまちで。わたしたちは、それをただ実現するだけでなく、他地域のモデルとなるように波及効果を持たせたり、深めたりする役割を担っています」

少しずつ形になるプロジェクトが増えてきたなかで、ここ1〜2年の課題となっているのは、慢性的な人手不足。

南小国町は、年間100万人が訪れる黒川温泉を中心とした観光業と、小国杉やあか牛などで知られる農林畜産業が盛ん。ただ、いずれも通年での雇用や採用には課題があった。

そこで、短時間のワークシェアリングサービス「しごとコンビニ®︎」を、九州エリアではじめて導入。人手不足で困っている事業者や行政と、空いた時間を活用したい住民とをつなげる仕組みだ。

SMO南小国は事務局として、仕事と人のマッチングや、専門性を磨くためのセミナーの企画運営などを行なっている。

ほかにも大学生のインターンシップや、町内の仕事にオンラインで関われる副業プログラムづくり、町内外の企業の研修受け入れ、地域おこし協力隊の事業伴走など。まちの関わりしろを増やす活動が広がっている。

「やっていることは多岐にわたるんですが、共通しているのは、このまちに関わる人の総数を増やしたい、ということです」

移住に限らず、インターンや副業を通じてまちに愛着を抱く人が増えたり、さまざまな人との交流を通じて、住民もあらためてまちの魅力に気づいたり。

人の流れを生み続けることが、土地のいとなみを守り継いでいくためには欠かせない。

「南小国町って、すごく美しい場所だと思うんです。それは、この里山を守ってきてくださった先人の想いがあってこそ。受け継ぐからには、次の世代にただ手渡すだけじゃなく、より住みやすい場所にして渡していきたい。そんな未来づくりにつながるであろうことを、とにかくずっとやり続けている会社ですね」

未来づくり事業部は、プロジェクトごとに主担当を置きつつ、イベントがあれば当日運営はみんなで手伝うなど、臨機応変に動くのが特徴だそう。

これから入る人も、幅広く経験を積むなかで自分の持ち場を見つけていってほしい。

「地域って、信じられないチャンスがゴロゴロ舞い込んでくるんですよ。まさにわたしがいい例で」

前職は東京の一般社団法人で、国や大企業と連携しながら東北の地方創生に関わっていた安部さん。大規模なプロジェクトにも携わったものの、決裁権はない立場だった。

「こっちに来てからは、一事業部の部長として、社長さんやいろんな関係者の方とお話ししながら、事業を立ち上げて。新しいチャンスを常にいただいています」

行政や地域内外の企業、教育機関などと連携し、地域一体となって人材を活かしていく。

そんなSMO南小国の取り組みは、経済産業省が推進する「地域の人事部」のモデル事例としても取り上げられるようになった。

「骨を埋めろ、とかは全然ないです。2〜3年修行のつもりでがんばりたい人でもいいし、専門性や強い軸がまだなくても、一緒につくっていける。今いる場所を一旦離れて、こっちで一旗あげたいっていう人はピッタリなんじゃないかと思います」

民間企業で働いていて、より公的な仕事に携わりたい人。あるいは公的機関で勤めてきて、民間のスピード感をもって事業を推進していきたい人も。

民間と行政、両方の特徴をもつこの会社だからこそ実現できる働き方があると思う。

 

続いて、MOGから歩いて5分ほどに位置する南小国町役場へ。

SMO南小国との関わりも深い、まちづくり課の河津さんに話を聞く。

「もしもSMOがなくて、役場だけでこれをやりなさいと言われたら、無理ですよね。マンパワーの問題もありますし、スキル的にむずかしい。力を借りて一緒に事業を推進できるのは、町としてもメリットが大きいと思っています」

そう謙虚に語るものの、話を聞いていると、行政側の理解やサポートがあってこそ、この5年間でさまざまな事業が広がっているように思える。

たとえば、意欲の高い人に参加してもらえるよう、インターンシップを有償にしたいと安部さんたちが相談したとき。「地域おこし協力隊インターン」という国の制度が活用できるとわかってから、河津さんや上司の方が制度の活用に向けてすぐに動いてくれたおかげで、スムーズに実施できたそう。

「まちづくり課に関して言えば、『まずやってみよう』っていう考え方はありますね。何事も、やらずに切り捨てることは絶対にしないようにと思っています」

そんなふうに構えていてもらえるのは、頼もしいです。

「当然、できないこともありますよ。新しい制度を活用するときには、労力や時間もかかります。でもそこを乗り越えて、SMOのみなさんと一緒に進めれば、必ず道が開けてくるので」

言葉の端々から、SMOと役場のいい関係性が伝わってくる。「取材だから言っているわけじゃないですよ(笑)!」と河津さん。

これから入ってくる人は、どんな人がいいと思いますか。

「能力があるとか、すごく頭が切れるとか。そんな方もいいんでしょうけど、チームの一員として動ける方がいいのかなって思います。こういう田舎で事業を進めていくにあたっては、地域のみなさんの協力が不可欠なので」

役場だけでなく、地域の人たちとのあいだにも築かれてきたパートナーシップ。それを温め、よりよいものにしていくことが、何に取り組むにしても土台になってくるはず。

 

とはいえ、堅苦しいものではない。役場からMOGへと戻る道すがら、すれ違う地元の人たちと挨拶を交わすスタッフの平井さんの姿を見ていると、それは自然と育まれていくものでもあるんだなと感じる。

2年半前に、関西から家族で移住してきた平井さん。お隣の阿蘇市から、車で片道30分かけてMOGに通っている。

「奥まった田舎みたいなイメージがあるとしたら、暮らしやすいよっていうことは言いたいです。それに通勤も、まちなかの渋滞の30分とは全然違うんですよ! マジックアワーの帰り道とか、金色のすすき原とか。最高なんです」

チームには移住者も多く、暮らしの困りごとがあれば「よってたかって解決する」文化があるとのこと。

スーパーやコンビニもあるし、年間100万人が訪れる黒川温泉も近い。地方での暮らしがはじめてでも、さほど心配はいらないかもしれない。

これまでは、大手ホテルやライフスタイル専門店などで人に関わる仕事をしてきたそう。

今はMOGの受付をしつつ、広告の画像制作をしたり、情報発信のためのnoteを運営管理したり。オンラインとリアルの両方で、未来づくり事業部の窓口となる部分を担っている。

以前の職場と今で、ギャップを感じることはありますか。

「仕事は与えられない、って思っていいと思います。自分で見つけるし、つくるもの。静かに座っていると、たぶん一生ほっとかれます(笑)」

「ガツガツ系じゃないんですけど、やりたいこと、今できることを見つけていく作業はすごく必要だと思うんですよね。逆を言えば、何か気になるとか、これやってみたいって言ったときに、耳を傾けてくれる人はたくさんいます」

未来に向けて種を蒔き、育てていくような仕事だから、既存のパターンに当てはめるような働き方は通用しない。

加えて、「そんなに華やかではない、泥臭い仕事」と平井さん。

「全然後ろ向きな意味合いじゃなくて、肉声がある、体温の伴う仕事というか。働くうちにそういうのが聞こえて、見えてくると思います。わたしは受付だと思って入ったけれども、1年超えたあたりから、やりたいことがばーっと増えました」

事業部長の安部さんは、「時間を経て醍醐味がわかってくる仕事」とも話していた。

「自分のやったことがどんな変化につながるのか、見えるまでには最低でも2〜3年はかかると思うんです。そこからまた必要なことが見えてくるから、いつまでもやりたいことが出てきて、仕事が終わらない…(笑)」

「個人的には、免許を持たない若者や高齢者が移動の自由を享受できるように、1〜2人乗りの自動運転車を導入したいんです。夢物語ではなくて、30年後には実現すると思いますよ。というか、します!」

挑戦したい、という気持ちに、地道に寄り添い続けていくと、自分も何か挑戦したくなってくる。

そんなふうに挑戦の種火がともり、草原の野焼きのように広がって、美しい里山の風景は未来へとつながっていくのかもしれません。

何ができるか。このチームにどんな形で貢献できるか。

まだわかっていなくても大丈夫です。人のいいところを見つけて、育てるのが好きな人たちが待っています。

(2024/5/29 取材 中川晃輔)

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