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平日午後4時。
デンマークなら、みんな仕事を終えて家に帰る時間だという。
始業や日照時間の違いなどを考慮しても、本当にそんなことが可能なのか、東京で働く身としては不思議に思う。
「デンマークでは残業をしていると、業務管理ができないというマイナス評価を受けてしまう。どうしても片付かない場合は、家に帰って家族と過ごしたあとに、仕事を仕上げることもあります。決して、定時に帰れるから楽という訳ではありません」
「彼らは、与えられた仕事に対する責任感が強いから、見えないところで遂行する努力や工夫をしている。だからこそ、自分の仕事に誇りを持っている人が多いと思います」
そう教えてくれたのは株式会社NOMADの代表を務める齋藤さん。社会人としてはじめて働いたのがデンマークの会社で、現地のビジネスマナーや仕事観に大きな影響を受けたそう。
NOMADはデンマークを中心に、北欧からインテリア雑貨や家具の輸入と卸を担う会社。クラシカルもモダンも組み合わせて提案できるのが強みです。
今回は、法人営業担当として小売店などに製品や企画の提案を行う人を募集します。営業未経験でも構いません。
北欧のライフスタイルは、社会の仕組みや風土の特徴と表裏一体に育まれてきたもの。
理由を知れば、なるほどと腑に落ちる合理性。きちんと納得しながら仕事に向き合いたい人なら、扱う製品も、NOMADの社風も、馴染みやすいと思います。
東京・恵比寿。駅から歩いて5分ほどのところにあるビルの6階がNOMADの事務所。
入口を入ってすぐのスペースがショールームになっている。
中でもひときわ目を引くのが、カラフルな花器やウォールアートのようなフックが並ぶ壁面のコーナー。
「これは今年ローンチしたRAAWII(ラーウィ)というブランドの製品で、デンマークの中でもかなり先鋭的なデザインで注目を集めています」
「我々の仕入先となるブランドは、1700年代に創業した老舗から最新のものまでかなり幅広いです。新旧を競合させるのではなく、ミックスして相乗効果を楽しめるように提案する。それは、我々の大切にしている“共存共栄”にも通じる考え方ですね」
まず話を聞かせてくれたのは、代表の齋藤さん。
もともと齋藤さんはROSENDAHL(ローゼンダール)というデンマークのメーカーで、日本を含むアジアのマーケットを担当する社員として働いていた。2008年に独立し、現在はローゼンダールを含む16ブランドの総代理店として日本の小売店への輸入・卸を担っている。
「北欧のライフスタイルブランドは、新商品開発のとき必ずと言っていいほど、フラワーベースとキャンドルスタンドをつくるんです。向こうは冬の日照時間が短く、家で過ごす時間が長いので、日常的に花を飾って家を居心地良く整える習慣がある。仕事帰りに、路面店で花を買う光景もよく見かけましたね」
学生時代からの14年間をデンマークで過ごした齋藤さん。
自分が使う暮らしの道具を、フリーマーケットなどで入手することもあった。
「デンマークには古いものを大切に使う感覚が根付いていて、壊れたものを修理したり、不要品も廃棄せず人に譲ったり。家ごとに代々受け継がれている家具も多いです。物価や税金が高いからこそ、消費者も吟味するし、メーカーも質の高いものをつくる循環が生まれるのかもしれません」
時代を超えて愛されるデザイン、上質で長持ちする素材、環境への負荷を考慮したプロセスでつくられるもの。
NOMADが日本に届ける製品には、そんな共通点がある。
北欧で育まれた豊かな暮らしのアイデアを、ものと一緒に伝えることも会社のミッションのひとつ。
「とはいえ、やっぱりお互いにビジネスですから、良さを語るだけではものは売れません。きちんと小売店やその先にいるエンドユーザーの価値につながる提案をして、利益を生み出すことが我々の使命だし、ブランドを育てていくことにもつながります」
自分の役割と、責任。それを果たした先にある理想。
齋藤さんは、それらを曖昧な“いい話”にせず、ときに、とてもストレートな言葉で表現する。
それは18歳で日本を出て、大人になる過程を海外で過ごした齋藤さんが培ってきたビジネス感覚なのだと思う。
大学を出てすぐに経験したデンマークでの就職事情も、日本とはかなり異なるものだった。
「まず雇用契約書にサインをするんですけど、そこにはこれから担当するポストや予算など、かなり具体的な条件が盛り込まれていて、達成できなければ契約不履行で解雇の要因になる。僕の場合はそこで、できないこともできるって言っちゃったので、入ってからかなり苦労しました」
「新卒で商談なんかしたこともないのに、いかにも現場慣れしているふうを装って大手企業にいったりして。今にしてみれば、相手も僕の経験が浅いことはわかっていたはず。ただ、誠意を尽くせば、それなりに認めてもらえるという自信もつきました」
今回の募集では、営業の経験がない人にも広く門戸を開きたいという齋藤さん。
未経験から新しいことに挑戦していくうえで、必要なのはどんなことでしょう。
「自分が言ったこと、引き受けたことには責任を持つ。そのためにはまず自分ができることに対して正直である必要があるし、できないことも他責にせず、どうすればできるか考えるマインドがあるといいですね」
「たとえば営業も、業績がいいときばかりじゃない。コロナ禍のような社会情勢の変化や海外輸送の遅れなど不可抗力で予定が狂うこともある。どういったことが要因になっているのか、ロジカルに理由を分析してそれに向き合う姿勢があれば、スキルは後からついてくると思います」
いまNOMADでは、チームの成長に合わせて組織再編中。
齋藤さん自身も営業のメンバーと一緒に、現場で仕事をする機会が増えている。
もともとは、齋藤さんの個人事業からスタートしたNOMAD。当初は自身が経験したやり方を活かそうとして、うまくいかなかった部分もあったそう。
「僕は上司から仕事を教わった経験がなかったし、自分で責任を負うからこそ得られる豊かさもある。会社であっても個人商店のような自由さを残したくて、基本的に放任主義でした。でもそれが、やりづらさにつながる面があることもわかってきて。最近は少しずつ、業務のスキーム化を進めようとしています」
NOMADは、外部のパートナーを含めても20人未満のコンパクトなチーム。
そのうち営業を担当しているのは齋藤さんも入れて5人。ここ2〜3年で新たに加わったメンバーも多いので、新しく入る人も馴染みやすい状況だと思う。
なかでも、前職で同じく小売店向けの営業を経験してきた渡邉さんは、なにかと気軽に相談できる先輩になりそう。
「前職は、マス向けに量産する業界だったので、デザイナーズブランドが多いNOMADとの違いも感じます。ここで扱う製品は一つひとつデザイナーの想いがあって、お客さまも長く使えるものを求めている。そういうスタンスの違いが、仕事で関わる人の意識にも表れていると思います」
「あとNOMADの営業は、シーズンごとの新商品を単に売っていくだけではないので、そういった意味では長期的な売上の見込みを立てるのが難しい部分もあります。最初は、数字の組み立て方に戸惑いもありましたね」
営業という役割上、数字とシビアに向き合うことは避けて通れない。
一方、結果だけでなくプロセスを評価してもらえることも、NOMADに入って新鮮に感じたことのひとつだと渡邉さんは話す。
「何年も取引が止まっていた家具屋さんがあって。僕が入社したときも、先輩からは『連絡が取りにくいお店』と聞いていたんですけど、何度かトライしてみたらアポイントが取れて。お会いしてみたら前職のつながりで担当者と共通の話題があることもわかってきました」
「そこから店舗まわりをするときにカタログをお持ちしたり、企画を練って提案したり。アプローチを続けていたら、久々に新商品を導入いただけることになって。結果はもちろんですが、そういう取り組みの過程や姿勢を評価してもらえるのもNOMADならではだと思います」
一方、同時期に入社した伊奈さんは、また違うやり方で仕事を進めている。
「私の担当取引先の中には、遠方のお客様もいらっしゃって、こちらで企画書を用意してオンラインで商談をすることも多いです」
現在、NOMADで取引している小売店は北海道から沖縄まで700社ほど。営業ひとりあたり100社ほどを担当し、ニーズや相手の特性を見ながらコミュニケーションの取り方を考える。
「私は前職も異業種で営業を担当していたんですが、そのときは特定の1〜2社と毎日やり取りをするような仕事でした。今は規模感が全然違って新鮮です。NOMADの営業は裁量が大きく、一人で考えて動く場面も多いぶん、やりがいもあるし、私自身はまだ課題に感じているところもあります」
小売店や、その先にいるエンドユーザーが今、暮らしのなかで何を求めているか。
提案のヒントは、自分の日常から得られることもある。
「最近、私の義理の母が『古い家に住んでいると冬が寒いから、大掃除は初夏から秋にかけてするのよ』って話しているのを聞いて。小売店さん向けの企画で、HUMDAKIN(ハムダキン)というメーカーのお掃除道具を使って、夏の大掃除というご提案をしたら、実際に売り場をつくっていただけることになりました」
もともとは北欧の暮らしのなかで生まれた製品。
気候も環境も違う日本で暮らす自分なら、どう活かすか。想像力や実体験などが、活きた提案のヒントになる。
営業チームでは普段から雑談の延長で、アイデアを交換し合うこともよくあるそう。
この秋からは、元々ほかの部署で仕事をしていた東(あずま)さんもメンバーに加わり、より広い視野で提案できる体制を整えていく。
もともと百貨店での勤務経験が長く、当時から北欧デザインの魅力に惹かれていたという東さん。
「NOMADで扱うものは流行り廃りのないデザインなので、ブランドごとの歴史やポリシーを学んで長く活かせる。営業も前年踏襲ではなく、そのとき必要なことを考えて動くことが多いので、前向きで、何事もポジティブに考えられる人だといいのかもしれません」
新しく入る人ともフランクな関係でチームワークを実現していきたい。
そう話す営業のメンバーに、齋藤さんから一言。
「僕や、ほかの社歴の長いメンバーにだって、フランクでいいんだよ。社長だと思うと、話しかけにくいかもしれないけど、業界の情報をいっぱい持っている、ひとつの便利なツールだと思って活用すればいい。僕としては『もっと、頼ってきなよ!』っていう気持ちですね」
異国の文化に触れたとき、今まで当たり前だと思っていたものの違和感に気づけるように、知識や経験豊富な人と接することは、自分の伸びしろを知る手がかりにもなる。
まずは自分に正直に、等身大を知るところから、ときには胸を借りるつもりで。
豊かな暮らしや、誇りを持てる仕事のあり方を一緒に考えていけるチームだと思います。
(2024/7/16 取材 高橋佑香子)