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“まちを変えちゃろう”
錦帯橋がつなぐ
これからの城下町

山口・岩国。

県の東端部に位置し、まちを流れる錦川には錦帯橋(きんたいきょう)という橋があります。

川で隔てられた岩国の城下町をつなぐためにつくられた橋で、アーチ状のめずらしい形を目当てに、昔から多くの人が訪れました。

今回は、この岩国の城下町を活性化する地域おこし協力隊を募集します。

岩国を盛り上げる新しい観光コンテンツの企画や、現在構想中の古民家を活用した宿の運営など。

地域とのつながりを持ち、自分で考え、仲間と相談し、歴史と文化を感じながら、新たな取り組みに携わることができる仕事です。

 

東京駅から新岩国駅までは、新幹線で約4時間。飛行機だと羽田空港から岩国錦帯橋空港までは2時間弱で到着する。空港から市街地への距離も近い。駅でレンタカーを借りて、まずは岩国市役所へ向かう。

道中は、低い山々が見え、道もしっかりとしている。まちなかに入ると大きなお店もあり、ほどよい田舎という感じ。

市役所を訪ねると、錦帯橋課と文化財課の方が迎えてくれる。

話をしてくれたのは、錦帯橋課 世界遺産推進班の濱中さん。

錦帯橋課って、橋を専門にした課があるんですね。

「錦帯橋は国の名勝に指定されており、城下町と錦川周囲の山々を含めた一帯が、国の重要文化的景観に選定されています。現在、錦帯橋を世界遺産に登録しようとしているんですよ」

文化的景観とは、風土に根ざして営まれてきた人々の生活や生業のあり方を表すもの。取材日の時点で、全国に72箇所ある。

「錦帯橋周辺は、そこで生活や商売をする方々も含めて重要文化的景観に選定された素晴らしい価値がある場所で。城下町の魅力を多くの方に感じてもらい、賑わいをつくるためにつぎと九州さんと連携協定を結ばさせていただいたんです」

株式会社つぎと九州は、九州や中国地方などを中心に、主に古民家や歴史的なまちなみを活用したまちづくり事業に取り組んでいる会社。

福岡県うきは市や、鹿児島県出水(いずみ)市など、いくつかの地域でまちの活性化の実績をのこしていて、今回岩国市とも事業をともにすることになった。

「城下町は、橋を隔てて、岩国地区と横山地区というふたつの地区で成り立っています。関ヶ原のあとに、毛利家の家臣だった吉川氏が城を横山地区につくったところからはじまりました」

城をこの場所につくったのは、まちを流れる錦川が大きく蛇行している地形だったから。これを自然の掘に見立て、城をつくった。

また台風などの時は川の水位の変化が激しいのもあり、今の錦帯橋が完成する前の橋は何度も流失したそう。

「江戸時代、これほど変わったかたちの橋はここにしかなくて。お伊勢参りなど、旅が盛んになるなかで、大阪の旅人が立ち寄ったり、九州から回り道して寄ったりするほどの観光名所だったようです」

錦帯橋は残り続けてきた一方で、まちの中心部が岩国駅のほうに移動したこともあり、地域の生業は衰退しつつある。

市とつぎと九州、そして今回募集する協力隊の力で、この状況を変えていきたい。

「地域の方にも、このまちを誇りに思っていただきたい。わたしたちから見たら宝のような家に住んでいる人も、『ここは寒くて掃除も大変』とか、『子どもたちも帰って来ん』とか。そんな話が多いんですよ。それを変えていけたらいいなと思うんです」

今後、具体的に目指していきたいのは、地域にある古民家を活用した宿泊施設をつくること。

古民家の雰囲気を活かした、クオリティの高い宿泊施設をつくることで、新たな人の流れを生み出し、それに伴って城下町の商店や飲食店を活性化させていくのが理想的な流れ。

古民家改修に関しては、ともに取り組むつぎとの人たちがノウハウを持っているので、一緒に進めていけたらいいと思う。

宿が具体的に進むまでは、地域の観光コンテンツを掘り出し、具体的なかたちにしたり、空き家の利活用を促進するイベントの企画立案をしたり、地域のお祭りなどの行事に参加して地域に馴染んだり。

地域の空き家の情報などを、市に共有するような役割も担ってほしい、と濱中さん。

「錦帯橋以外にも、たとえば岩国城からの景観とか、城下町の古い建物とか」

「地域の歴史や地形も、岩国を知ってもらう一つの要素だと思うので。山があって、城もあって、城下町もあって、きれいな川もあって、そして錦帯橋がある。どんどんコンテンツの幅を広げていきたいと思っています」

登山ルートもあるので、山と川のアクティビティ、そして城下町など、インバウンドの観光客にアピールできる要素も多い。うまく発信できれば、国内外多くの人が訪れるポテンシャルがある。

「当然市役所も関わるし、まちの自治会長も想いを持ってまちのために動いてくれています。家もこちらで用意するので、まちで暮らすなかで仲間を見つけていけたらいいですよね」

「いろんな人を巻き込んでいく仕事だと思うので、コミュニケーション能力があって、人と話すのが好きな人に来てもらえたらうれしいです」

役場の人たちの話を聞く限り、まずは地域に溶け込んで、いろんな人と関係性をつくっていくことから始められるとよさそうだ。

 

一方で、地元の人はどう思っているのか。

向かったのは、役場から車で10分ほどのところにある、株式会社藤川興業所。地元で建設・土木業を営んでいる。

この会社の会長、藤川克己さんが、濱中さんの話にも登場した岩国地区の自治会連合会の会長。豪快だけど、やさしい口調で話してくれる方。

「ずっとここに住んどる人ってのは、頭がガチガチになってるんよ。だから外から入ってきた人にまちを変えていってもらわにゃいかん」

「まずはまちを見て歩いて、人と仲良くなってもらわんとね。7月にやる盆踊りと、敬老会と、正月明けのとんど祭り。これは続いているから、そういった行事から参加してもらいたい」

地元の人と関わるなかで、まずは、何か新しいことをしたい人や、まちづくりに興味を持つ人を見つけていく。

いろんな人を巻き込んでいくことで、他人ごとではなく「自分ごと」として事業に協力してくれる人も出てくるはず。

藤川さんがまちづくりに関心をもったのは、10年前、神社の33年に1回ひらかれる祭りの実行委員長を引き受けたこと。

そのときに、通りを埋め尽くすほどの人手があり、祭り自体も盛り上がって勢いがあったそう。

「これだけ人が集まったのを見て、まだこのまちにはパワーもあるのぉと思って。それまでは自分の会社のことしか考えちゃおけんかったけど、あの祭りからまちのことを考えるようになったね」

城下町のエリアでは、お祭り以外にも行事が残っている。

たとえば11月の終わりの水祭りや、1月のとんど祭りなど。川では鵜飼もおこなわれている。

一人では入りづらいかもしれないけれど、藤川さんも積極的に連れて回ってくれるそうなので、まずは顔と名前を覚えてもらうところから。

先入観を持たず、まちを観察してみることで「まち歩きの企画ができそう」「山登りと郷土料理を合わせたプランをつくれるかも」など。外の視点だからこそ発見できる魅力を、コンテンツ化してほしい。

「協力隊の人がなにをすればこの町のためになるか。それをしっかり考えてほしい。熱心でええ人に来てもらいたいね」

「住んどってない家もあるけど、古すぎても改修でお金がかかるから。そこはつぎとさんから知恵を貸してもらって、ちょうどええ古民家を見つけていきたいです」

今は地域の人がふらっと集まれるようなお店や施設もない状態。これからつくっていく宿も、観光客だけでなく、地域の人が集まれる場にもしていきたい。

「昔は風呂屋がみんなの集まる場所やったから。力道山の時代やね。そこでテレビ見るわけ。ステテコ一枚で、ランニング着て、風呂桶に石鹸入れてね。話しながらテレビを見てたなぁ」

「とにかく協力隊の人には期待してますんで。このまちを変えちゃる、って思ってくれる人だといいね。手伝えるところは手伝うけえ、住んでよし、訪れてよし。そんなまちになったらいいな」

自分の力でまちを変えられる。決まった枠がないからこその余白や、自分が事業を動かしていく手触り感がありそうだ。

 

まちの人たちから一通り話を聞いて、つぎと九州の人はどう考えているのだろう。

錦帯橋を実際に見ながら、最後につぎと九州の井垣さんに話を聞いてみる。

「岩国も、磨けば良くなりそうな素材がいっぱいあるんですよ。それらを磨いて発信できるっていうのは、わたしにとって大きなやりがいで。人に喜んでもらえて、地元の人もいいねって言ってくれる」

「地域はすぐには変わるものではないですが、ちょっとずつでもいい方向へ変えることができる。そんな希望を持ちながら仕事ができるのは、楽しいしやりがいがあります」

数々の現場を担当している井垣さん。

井垣さんから見て、この岩国のプロジェクトはどんな感触でしょう。

「地域資源はすごく良いと思っています。錦帯橋っていうシンボリックなものがあって、発信力があるし、城下町も残っている。竹林や堤防も、昔から川がよく氾濫するという歴史があるから存在している」

「つまり、歴史や地形にストーリーがあり、いろんな知恵とか技術が積み重なって今に残っているわけで。あとは、それらをどう編集して発信するか、だと思うんです」

新しく入る協力隊の人も、井垣さんと行動したり、連絡を取り合うことが多くなる。

「うーん… イメージとしては、地域資源を見て、観光コンテンツをどうつくるかとかを一緒に考えるところ始めてもらうのがいいかなと。まち歩きコースを新たに考えるとか」

「そうすると地元の人との絡みも出てくるので、その調整役も担ってほしいなと思っています。2、3年後くらいからは、宿の開業準備も一緒にできると。早くて宿が稼働するのが3、4年後なので、協力隊の3年の任期が終わったあとも、希望があれば宿で働いてもらえるとありがたいですね」

井垣さんはどんな人と一緒に働きたいですか?

「むずかしいですが、いろんな人を巻き込む力がある人、でしょうか」

人を巻き込む力、ですか。

「みんなまちが好きだし、地域のなかにもやりたいことのある人がいると思うので。そういう人を発見して、一緒にやりましょうよって、盛り上げていく力っていうのかな」

「わたしたちもいるので、決してひとりにはしません。そこは安心して、自分たちの力でまちを変えていく。そんな実感が持てる仕事がしたい人にはぴったりなんじゃないかな」

 

言われたことだけする人だとむずかしいと思います。

自分で何が必要かを考えて、井垣さんや市の人、自治会長の力も借りながら、プロジェクトを前に進める推進力となる。

気になる人は、一度岩国市を訪れてみてください。なにか魅力を感じたら、この土地に呼ばれているのかもしれません。

(2024/7/8 取材 稲本琢仙)

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