求人 NEW

花とコーヒーと
レレレのおじさん的
まちづくり

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

レレレのおじさん、を知っていますか。

漫画『天才バカボン』のキャラクターで、いつもほうきを持って道に立ち、みんなに「お出かけですか?レレレのレ〜」と声をかけてくれる人です。

昔はそういうふうに道端で声をかける人が当たり前にいて、東京でも地域にゆるやかなつながりが保たれていたのかもしれません。

今回紹介する仕事は、ちょっとその役割に近い部分があると思います。

仲間を募集しているのは、東京・東久留米で、花と暮らしとまちづくりを手がけるタネニハプロジェクトのメンバー。

園芸用の花苗を育てる「秋田緑花農園」を中心としたチームで、現在は、農園と花屋さん、緑のある暮らしを提案する不動産の事業が三位一体となって活動中です。

今回はこのタネニハプロジェクトの一環として、東久留米駅のそばに新しくできる「kinone(キノネ)東久留米」を拠点に働く人を募集します。

kinone東久留米は賃貸住宅と、ショップ、コーヒースタンドからなる複合施設。新しく入る人は、コーヒースタンドでカフェ業務をおこないながら、空いた時間で物件の掃除などを担います。

スタンドのオープンは2024年の秋予定なので、それまではキッチンカーなどを活用して地域とのつながりを温めます。

接客や掃除をしながら、道ゆく人と挨拶を交わしたり世間話をしたり。短時間のシフトから対応できるので、家事や育児などと両立したい人も関わりやすいです。

求人としてはとても間口が広いのですが、実はこれ、東久留米ひいては多摩の水と緑を守るという大きなミッションにつながる仕事でもあるのです。

 

訪ねたのは、東久留米市の南部にある秋田緑花農園。都心から向かう場合は西武新宿線の田無駅から路線バスが出ている。

この日は朝から梅雨空。街中での雨は憂鬱だけど、植物のある場所は生き生きして見える。

花を育てるビニールハウス、まだ青い葡萄、片隅に自生しているトウモロコシ、井戸端で雨宿りする猫のトラちゃんなど。いろんな生き物を横目に、農園を奥へと進むと事務所に辿り着く。

迎えてくれたのは、タネニハで共同代表を務める荒川さん。もともとは、この農園が所有する土地や物件を管理する不動産会社の営業マンだった。

「新卒で不動産会社に入って、ずっとこのエリアを担当してきました。東久留米は都心まで20分ほどでアクセスできるのに、緑も豊かで水も綺麗。近くを流れる川なんか、川底の小石が一つひとつ見えるくらい澄んでいて、こんないいまちないと思いますよ」

ここが自分の第二のふるさとだという荒川さんが、前職時代に農園と一緒に手掛けたのが「ツクルメの家」。

武蔵野の雑木林に隣接したメゾネットタイプのアパートで、大きな森をのぞむ景観は避暑地のゲストハウスのよう。また広い中庭が共同農園になっており、夏にはトウモロコシやトマトが実をつける。

植物を育てる楽しさを知る人ならではのアイデアが共感を呼び、駅から遠い立地にもかかわらず、満室の状態が続いている。

「ツクルメの家は住民同士の共有スペースも多いですが、細かいルールはありません。入居する方に伝えるのは、お互いに挨拶をしましょうねということのみ。それだけで、何か問題が起きたときの反応も違います」

自然と暮らすうえでは予期せぬハプニングも多い。

最近も住民からLINEで相談を受け、荒川さん自ら敷地に迷い込んだミドリガメを探しに行ったばかりだという。

「普段から顔を合わせる関係だから、クレームっていう感じではまったくなく。一般的な賃貸では、なかなか実現できない関係ですよ」

「ツクルメの家に携わっていくうちに、この地域で不動産屋としてやるべき仕事の本質に気付かされたような気がします。秋田さんたちとなら、自分のやりたいことが実現できると思って、一念発起で退職して一緒にまちづくりに取り組むことにしたんです」

東久留米は都内ではまだ自然が多く残る地域ではあるものの、相続や事業継承がネックとなって畑が宅地やマンションに変わる事例も増えている。

農地が少なくなれば、湧水をはじめ、この土地固有の資源も失われてしまう。

「自然と共にある暮らしのモデルケースをつくって発信することで、緑を残せる可能性に気づいてもらいたい。まずは物件単位で小さなコミュニティをつくり、共感の輪を広げて仲間を増やしていく。それがタネニハのまちづくりの考え方です」

共感を生むには、ハード面をつくるだけでなく運営も自分たちの手で担っていく必要がある。

物件周辺の清掃業務は、まさにコミュニティづくりの重要なタッチポイント。

 

今、メインで清掃業務を担っているのは、パートタイムで働く右松さん。

「ツクルメの家は、雑木林に隣接しているから駐車場に落ちる葉っぱがすごくて。それを全部掃き集めた後、ちょっと離れた場所から『うわ〜、きれいになったな』って眺めるのが好きなんです」

もともと掃除が好きだという右松さん。今は週3日勤務で、物件清掃と花苗の栽培を担当しているほか、看板をつくったりペンキを塗ったり、ちょっとしたDIYを担当することも。

掃除のときは物件の敷地だけでなく、建物に面した通りの曲がり角まで一緒にきれいにする。通りがかりの人に労いの言葉をもらうこともあるという。

「いつも同じ時間に犬の散歩をされている方や、道の反対側で掃除をしている人とも顔見知りになりました。シニアの方には挨拶しながら『水分とってくださいね〜』って一言かけたりしています」

木々があるから葉っぱが落ちる。葉っぱを掃除することで関わりが生まれる。生まれた関わりを、物件や、町内という枠を超えた自然なコミュニティに育てたい。

そんな考えで生まれたのが、今回募集する人の仕事場になる「kinone東久留米」。

kinone東久留米は、西武池袋線の東久留米駅西口そばにできる8階建てのビル。1階にはオーガニックやエシカルをテーマとしたショップが横丁のように並び、2階はテナント、3階から8階は賃貸住宅になる予定。

 

その準備を進めているのが谷口さん。

「8月から入居が可能になるので、先日バルコニーの植栽も完了しました。住宅エリアの玄関には小さな花器が備え付けられていて。そこに農園で育てた花を飾るのも、新しく入る方にお願いしたい仕事のひとつです」

動植物との共生をコンセプトにした物件ということで、最上階にはドッグランもある。

周辺の建物に比べると比較的大きなビルで存在感はあるものの、バルコニーからはみ出したグリーンや、ウッディな素材を取り入れた空間デザインは温かみがあってタネニハらしい。

建物の1階エントランス部分、ちょうど駅に向かう通りに面したところにタネニハのコーヒースタンドができる予定。

コーヒーやクラフトジンジャー、スコーンなどのカフェメニューを中心に、農園で育てた花や野菜も販売し、街で暮らす人がちょっと立ち寄って話ができる空間を目指す。

今はその準備も兼ねて、谷口さんたちは農園のそばで週に1回キッチンカーを営業している。

「もともと農園の隣にもカフェレストランをつくる計画があって。そこを一緒につくっていく石神井のピザ屋さんが、キッチンカーを貸してくださったんです。お店を出していると、ご近所の方から『カフェはいつできるの?』っていう声も聞けてうれしいですね」

谷口さんは料理が好きで、農園や花屋さんではスタッフに賄いカレーをつくってきた。

そのカレーをピザ屋さんから提供された生地に入れてサンド風にするなど、アレンジメニューも考案中。

ほのかにスパイスが香るクラフトドリンクは爽やかで飲みやすい。提供に使うカップも、環境に配慮した素材のものを揃えた。

「飲食店を運営するのは初めてなので、実際にやってみると、大変さを痛感します。買い出しや仕込みなど、日々の業務のなかで新メニューを考えて。せっかくなら農園で育てた野菜を使おうとか、いろいろ工夫したほうが楽しいし、まだまだやるべきことはたくさんあります」

これから具体化していく部分も多いので、新しく入る人も仕事の幅広さを柔軟に楽しむスタンスがあるといい。

今は、ほぼ谷口さんのワンオペで進行しているキッチンカー業務。これからメンバーが増えたら、少しずつ営業日数を増やしてコーヒースタンドのオペレーションにも活かしたいという。

コーヒースタンドの営業時間は朝の7時半から夜の19時半くらいまで。交代制のシフトなので週3日、1日4時間からでも働ける。ただ、少人数で回す時間も多いので一人でも淡々と働ける人のほうが馴染みやすいと思う。

「通勤する人に『いってらっしゃい』『おかえりなさい』を届けられる場所にしたくて。ただ、その声かけも“積極的に”とはあまり言いたくない。こちらからグイグイ関わっていくんじゃなくて、みんなで一緒に場をつくっていきたいです」

もともとはアパレルで販売員として働いていた谷口さん。学生時代から興味を持っていたまちづくりに携わってみたいと、今の仕事に就いた。

農園のイベントなどに関わるなかで、もっと地域の誰もがチャレンジしやすい土壌をつくっていきたいと感じるようになった。

「たとえばイベントの出展者っていうと、飲食店や農家さんなどプロが中心になりやすいけれど、これからお店を出したいとか趣味でやっているような人も参加できる仕組みをつくれたらいいなと思っていて。自分たちらしいやり方でコミュニティを広げていくことが今後の目標ですね」

「社長たちは、僕たちがやりたいって言ったことに対して『やりなさい』ではなくて『やってみたらいいよ、ダメだったら考えればいい』っていうスタンスでいてくれる。自分次第で成長できる環境はすごくありがたいと思っています。普段は社長に反抗してブーブー文句言っているんですけどね(笑)」

“社長たち”という言葉の通り、このチームには荒川さんのほかに2人のリーダーがいる。これから働く人も密に関わっていくことになるので、少し紹介しておきます。

まずは、小森妙華(みょうか)さん。

もともと秋田緑花農園から花苗を仕入れて販売する花屋さんで、今は農園から歩いてすぐのところに、寄せ植えのレッスンなどをおこなうアトリエを運営し、タネニハプロジェクトのデザインや発信の面でリーダーシップをとっている。

最近行くたびに事務所がおしゃれになっていくのは、小森さんの仕業だと思う。

もう一人が、農園の12代目秋田茂良さん。

かわいい花を届けたい、地域を良くしたい。秋田さんの信念はいつもシンプルで真っ直ぐ。仲間を増やす求心力になっているのは、この自然体な人柄にほかならないと思う。

数年前までアイデアでしかなかったこと。

長年温めてきたまちづくりのビジョンが、芽を出し枝を伸ばそうとしています。このプロジェクトを一緒に育ててくれる人を待っています。

(2024/7/12 取材 高橋佑香子)

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