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このロゴ、見たことありますか。
株式会社アトリエサンクが運営する、メガネのオリジナルブランド「YUICHI TOYAMA.」。ファッション好きであれば、ピンとくる人も多いかもしれません。
商品はすべて、メガネのまちとして知られる福井県・鯖江産にこだわっています。
今回募集するのは、営業、南青山にある店舗のスタッフ、財務の各ポジション。それぞれ、経験のある人を求めています。
表参道駅を降りて、骨董通りを歩く。古くからあるアンティークのお店から、洋服、靴、アクセサリーなど、さまざまなファッションブランドが立ち並ぶ。
その一角に、YUICHI TOYAMA. の店舗を見つけた。今年の4月にオープンした、ブランド初の旗艦店。
中に入るとまず目に入るのは、岩のようなオブジェ。よく見ると、表面は釉薬のような質感。
姿見など大きな鏡もあって、メガネ屋さんであり、そうでない雰囲気もある、不思議な感じ。
迎えてくれたのが、ブランドのデザイナーでもあり代表の外山さん。
自分の周りにも愛用している人が多いブランドだから、緊張しながらインタビューを始める。
有名人に会っている気分ですというと、「そんな、そんな」と気さくな笑顔を見せてくれた。
「お店に入ってきたとき、まずはメガネではなく、日本の工芸品が目に入るように設計しています」
店内に飾ってあったのは、セラミックアーティストの橋本知成さんが手がけた岩を模したオブジェ。店内中央のテーブルの脚には、宮城にある大蔵山スタジオで採れた伊達冠石(だてかんむりいし)を使っている。
ほかにも床材からスピーカーまで、空間を彩っているのは、日本でつくられ、外山さんが感銘を受けたものばかり。
「お店のテーマが、『工芸品としてのメガネ』で。メガネ屋に来るというよりも、日本のかっこいいものを体感しに訪れる、そんな場所でありたい」
高校生のころから、ファッションや音楽など、さまざまなカルチャーが大好きだったという外山さん。グラフィックからプロダクト、平面から立体まで、デザインへの興味を幅広く持っていた。
「就職先を探していたときに、自分の好きな要素をかけ合わせて働けるのはメガネの世界だと思ったんです」
1993年、鯖江のメガネメーカーで、デザイナーとして働きはじめる。
12年在籍した後、フリーに転向。デザインの仕事を請け負いながら資金を貯め、2009年に前身のブランドとなる「USH.(アッシュ)」を立ち上げ、2017年にYUICHI TOYAMA. にブランド名を変えた。
「デザインをはじめてから、31年間。変わっていないのは、意味のあるデザインが一番かっこいい、ということです」
意味のあるデザイン。
「置いてあるだけのものじゃないんで、メガネって。もとは視力を矯正するためのもので、医療的な側面がある。メガネは、人がかけてはじめて機能するんです」
「だから、デザインが先行してかけ心地がわるいものはつくらない。人が使うことを前提とした機能のうえに、僕らが思う美しさを表現しています」
YUICHI TOYAMA. の代表的なモデルのひとつが、「Double Dutch(ダブルダッチ)」。二本のロープを用いるダブルダッチという縄跳び競技から着想を得てつくった。
左右のレンズをつなぐブリッジと呼ばれる部分に、二本の縄が重なり合うようなデザインが施されている。
去年リリースされたアルマーニとのコラボレーションワークでも、モデルのひとつとしてダブルダッチのデザインが採用されている。
さらに2022年には、TOGAとコラボ。アパレルブランドとのコラボレーションワークにも精力的だ。
「異業種の人たちと、物をつくることが好きなんです。彼らはふだんメガネをつくっていないから、互いの世界観がぶつかって、難しいお願いをしてくることがある。ただ、それをいかにして魅力的に実現するかが僕らの仕事だと思っていて」
「つくることに特化した職人さんのように、ブランドである僕らは、デザインにおける職人でありたい。僕らの考えたもので、違う世界の人たちをいかに驚かせるか、創意工夫をするのがとても楽しいんです」
現在、社員数は8名。今回募集する営業と店舗スタッフは、すでに人員がいて拡充するかたち。財務のみ、現在担当しているスタッフから引き継ぐことになるので、即戦力になる人を期待している。
「デザインにおける創意工夫という言葉は、僕らの働き方にも通ずると思っていて。要は、『なぜメガネをつくり、届けているか』を考え続けて、それに応えるように働いてほしいんです」
営業では、お客さんがどんな売り場でメガネと出会うべきなのか。販売では、ブランドを体現するにはどんなサービスが必要なのか。財務では、ブランドが次のステップに進むためにどんな舵取りをするべきか。
「シンプルだけれど徹底する、芯の強さが必要です。考え続けた先で、ブランドをよくしていくための意見や考えがあれば聞きたいし、会社としてサポートしていきたいと思っています」
具体的に、どんな仕事をしていくんだろう。2階のオフィスに上がり、営業を担当している高桑さんに話を聞いた。
新卒でメガネのセレクトショップに入社して、7年ほど勤務。販売から検眼、フィッティングやレンズの加工まで、業務を一通り経験した。
ファッション小物を扱うメーカーに転職し、3年ほど営業を経験。2021年にアトリエサンクへ入社した。
「仕事は、年2回、4月と10月に行われる展示会を基準に進んでいきます。展示会に向けて、卸先さんへのコミュニケーションや商品準備など。展示会が終われば、参加できなかったショップへのアフターフォローが続く、という感じですね」
展示会に参加できなかった卸先へは、サンプルを持って直接会いにいく。既に商品を置いてくれているお店の在庫が少なくなれば、追加でオーダーしてもらうために全国のショップを回る。
オンラインでのやりとりでも完結できそうなことだけれど、「卸先のお店に、直接足を運ぶことがめちゃくちゃ大事で」と続ける高桑さん。
「お店のコンセプトや内装外装はもちろんですが、近くを歩いてみて、どんなお店があって、まちを歩く人のファッションを見る。そうすることで、商品の提案も変わっていくんです」
お店にどう展開されているかは、ブランドがどう見られているか、ということ。
ほかにも、ポップアップイベントの実施や、卸先への勉強会を主催することも。月に2回ほど出張して、全国を駆け回っている。
「最初のころは、いろいろと失敗もしましたね…。メガネショップのオーナーさんになると、自分より年齢がひと回りもふた回りも上の方が多いので。社内の業務で手一杯になって、連絡が滞ってしまったり、コミュニケーションで注意されたりすることもありました」
「ただ、トラブルが起きたあと、誠心誠意対応することが一番大切だと思っていて。非があればきちんと謝罪して、次に同じようなことが起きないようにする。シンプルなことですが、徹底しています」
シンプルだけれど、徹底する。ここにも出てくる。
鯖江のメーカーにも、年に1回は足を運び、オーダーの状況を共有したり、生産についてコミュニケーションをとったりするようにしているそう。
「めがねの生産体制は分業なので、どこで詰まっているのか、現状を知ることで卸先とのコミュニケーションも変わってくるんです」
現在、国内の取り扱いは100店舗ほど。海外は15ヶ国、計550店舗以上で展開している。
「ただ、これ以上販路を広げていくことはないと思っています」
「どこでも見られてどこでも買えるというよりは、今取引していただいている卸先さんとのご縁を深めていくことを大切にしていきたいですね」
これから入る人も、まずは高桑さんから仕事を学んでいくことになる。
「コミュニケーションを大切にしたくて。自分で考えて、ブランドをより良くするために必要だと思えば、臆せず発言してほしいです。周りも聞いてくれるはずなので。自分から動く働き方が楽しいと気づける会社だと思いますよ」
最後に話を聞いたのが、店長の渡辺さん。
新卒で就職したメガネメーカーで12年間勤務して、接客販売、営業を経験。旗艦店のオープンに合わせ、今年4月にアトリエサンクに入社した。
現在販売スタッフは、社員2人とアルバイトスタッフ1人の計3人。
「前の会社は社員が150人程度の規模だったので、ある程度業務がルーティン化している部分があって。ブランドの成長へチャレンジしていく環境に身を置きたいと思ったタイミングで、転職を決めました」
入社してどうですか。
「店舗のすぐ上に事務所があるので、外山さん含め社員全員が見える距離にいるのがうれしいですね。一体感も生まれるし、接客をするなかでの気づきや考えをすぐに共有できます」
お店のオープンは12時から20時まで。販売、検眼、フィッティング、加工など。お客さんとコミュニケーションをとりながら、メガネを提案していく。
「今、ブランドの認知が拡大していて、国内外問わずお客さまに来ていただいていますね」
接客で意識していることを聞くと、「なによりも、会話です」とのこと。
「身につけているものや、買い物する場所とか。相手の好みだけでなく、生活スタイルを引き出していく。メガネなのか、サングラスなのか、どんなデザインや機能があればいいのか。少しずつ、選択肢を絞っていきます」
話をしながら合うデザインを見つけていくことが多いので、まずは目の前の相手に興味を持つことが大事だと思う。
「YUICHI TOYAMA.をどんなブランドとして捉えてもらうか。ブランドの根幹を体現しているのが旗艦店なんです。ただ売るだけじゃなく、お客さまがここに来たからこそ体験できる時間を提供できるようにしたくて」
今年の秋からは、店舗内のオーダーメイドルームで外山さんが自らカウンセリングをしてメガネをつくってくれるサービスが始まる予定。
デザイナー本人が接客してつくってくれる場所というのは、日本ではここだけになるそう。
「ブランドへの憧れだけで入社を考えてしまうと、難しいと思っています。組織化されてないところもまだまだある。少数精鋭のメンバーで、ブランドをつくっていくことは、大変さもありつつ、楽しさもあって。そのぶん、求められることも多い。常に自分の頭で考えることが必要だと思います」
ファッションが好き、カルチャーが好き、メガネが好き。それらは大前提。
根っこにあるのは、そもそもなぜメガネをつくるのか、というシンプルな問い。柔軟に頭を動かしながら、徹底して考え続けること。
いつでも新鮮な気持ちを仕事の原動力に。会社も自分もともに成長していく場所だと思いました。
(2024/07/02 取材 田辺宏太)