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人生には余白が必要だ。
自由な時間。試せる場所。会いに行ける友人たち。
小学生の夏休みのようなものは、大人にだって必要だと思う。
東京・清澄白河のリトルトーキョーの3階「あのひと」には、様々なプロフェッショナルが集まって一日店長として働いている。ここには自由があり、日々、化学変化が起きている。
ラジオディレクター、小学2年生のバリスタとその師匠、編集者、デザイナー、蒸溜所の共同オーナー、小型焙煎機の代理店、レコードのカッティングエンジニアなど。
一日店長のみなさんのことを「あのひと」と呼んでいる。
あのひとには、ご近所さんも多いし、上京に合わせてカウンターに立つ方もいる。
在庫にある飲み物を販売する人もいれば、自分でセレクトしたワインを持ってきたり、食事を提供したりする人も。
お店にあるものを販売する場合は売上の3割、持ち込みの場合は売上の7割をお支払いします。固定費はありません。
すでに予定の入っている方の時間を優先しますが、昼・夜ともに営業できます。バリスタが昼にコーヒーを出している時間帯に、お菓子や食事を販売される方もいます。小学生2年生のバリスタもいます。一日店長をすれば、そのまま宿泊できる場所も提供できます。
「あのひと」になりたい方を募集します。自薦他薦、問いません。
東京・清澄白河。
隅田川の左岸に位置し、公園や運河などが広がり、ゆったりとした時間が流れている。東京駅や日本橋はすぐ近く。渋谷や六本木、新宿にも地下鉄一本でアクセスできる。一人ひとりの顔が見えるような個人店が多いのも特徴。
そんな清澄白河駅から徒歩3分。
正面には地域の象徴である銭湯「辰巳湯」があり、お隣には大人気の町中華「桃太楼」。それらに挟まれているのがリトルトーキョーという小規模複合施設。
1階には日本のワインを扱うお店などがオープンする予定。
2階には日本全国各地の生産者たちとつながるレストラン「the Blind Donkey」。
3階に「あのひと」があり、4階がフリースペース。5階は日本仕事百貨やリトルトーキョーを運営する株式会社シゴトヒトのオフィスがある。
屋上に上がれば清澄庭園の青々とした緑が目の前に飛び込んでくる。
3階の「あのひと」には、ロの字のカウンターが中央に大きく構えている。
まわりにはいろいろな人たちの人生に強く影響を与えた1冊ばかりが並んだ本棚。
もともとは「しごとバー」を開催することが主な場所として、2023年11月にリニューアルオープンした。しごとバーはいろいろな生き方・働き方をしている人をゲストとしてお呼びして話を聞くトークイベント。
そんな3階が今のような形で運営されるようになったのは、みんなの声が集まって少しづつ形を変えていったから。
コロナ禍を経て「またオフラインのイベントを増やしたい!」という思いで、リトルトーキョーをリニューアルした。とはいえ、なかなか集客がうまくいかない。大苦戦した。
今でこそ、しごとバーにもお客さんが戻ってきたものの、当時は再開したことがあまり知られていなかったのかもしれない。
普通のバー営業などもしてみたら、「自分もやりたい」という声が届くようになった。試行錯誤しながら「まずはやってみよう」とはじめてみる。
すると口コミで「自分も!」「私も!」という声が集まるようになり、少しずつ「あのひと」が増えていった。
そこで、この3階「あのひと」ではイベント営業をやめて、昼も夜も「あのひと」のみなさんだけで営業していこうと決断する。それが2024年7月のこと。
予想外なこともあったり、手探りに進んでいたりするものの、せっかくならいろいろな人が入れ替わりで毎日、昼も夜も集まるような場所にしてみたい。
そう考えて、一日店長「あのひと」を求人することにした。
どんな人が「あのひと」をしているのだろう?
橋満南さんはラジオ番組のディレクター。もともとは日本仕事百貨で求人したラジオのAD募集に応募したのがきっかけでラジオ業界に入り、今ではJ-WAVE で4つのレギュラー番組を担当している。
「前にリトルトーキョーでイベントディレクターをやらせてもらったこともあって、また何かあれば参加したいなと思っていました」
南さんは北海道出身なこともあって、不定期でオホーツク会というイベントも開催していた。
ただ、毎回、場所を借りて調整するのは大変。
「オホーツク会も、あのひとで開催するなら、調整も簡単になるし気軽にできそうだなと思いました」
実際にやってみてどうでしたか?
「会計の方法とか、慣れてしまえば大丈夫。初回はシゴトヒトのスタッフの方に立ち会ってもらえるし」
会計は電子決済のみ。iPadに入っている「エアレジ」というアプリに事前に持ち込んだフードやドリンクのメニューを登録しておく。
飲食の経験がない人でも、カウンターに入って営業できている。
「あのひと」の一日はどういうものだろう。
営業時間などは、それぞれの希望を調整している。夜の営業なら、19時とか、20時からオープンする方がほとんど。
持ち込みのお酒がある人は、まず冷蔵庫に入れる。テーブルを拭いたり、掃除をしたり、開店に向けて準備をする。
オープンしたら、オーダーが入ったものを提供する。余裕があったら、会話も楽しむ。一人で寂しそうにしている人がいたら、声をかけてみるのも良いかもしれない。ふらりとご近所さんがいらっしゃることも多い。
慣れてしまえば、あっという間に営業時間は終了する。
カウンターやグラスをきれいにしたら、クロスなどは消毒して干す。ゴミ箱がいっぱいなら、1階のゴミ捨て場まで持っていく。最後に戸締まりしておしまい。
最初はバタバタしてしまうことでも、慣れてしまえばそれほど難しいことではない。
「あのひと」をとことん楽しむには、いくつかポイントがあるように感じる。
1点目は、一日店長同士でつながること。
「あのひと」の特徴として、一日店長が常連客になることも多い。自分自身がお客さんとして訪問する日が多い人ほど、自分が営業する日にもお客さんが増えていく。当たり前の結果かもしれないけど、それを楽しめるような人が良いかもしれない。
特に清澄白河周辺に住んでいる人ならば、新しく知り合うご近所さんが増えて楽しいと思う。
また1、2ヶ月に1度のペースで、店長さんとお友達、常連さんが集まる懇親会を開催している。そこに顔を出すと、いろいろな「あのひと」たちと知り合うきっかけになるはず。
8月は小学2年生のバリスタのしゅんすけくんのアイデアもあり、カウンターの上で流しそうめんをやってみた。試行錯誤しつつも、楽しい時間だった。
2点目は、一人ひとりを大切にして、とことん楽しんでもらうこと。
編集者の山本梓さんの時間は、スナックみたいなコミュニケーションとともに、あっと言わせる一品がうれしい。
たとえば、先日の営業ではサワーに生ピーマンを突っ込んだ飲み物を提供していた。
キンキンに冷えたピーマンをグラスから引き抜いて、付け合わせの肉味噌につけて食べる。シュワシュワした炭酸を感じながら、シャキシャキ感が増したピーマンにびっくりする。
さらに生のピーマンの香りがほのかに移ったサワーは、爽やかに鼻と喉を抜ける。夏にぴったりだ。
梓さんのポッドキャストを聞いていらっしゃった方が多くて、初めての方も含めて、一人ひとりとの会話を楽しんでいた。
もう一人紹介したいのが、福岡の下町の空気が色濃い、美野島商店街でナチュラルワインが飲める「あまねき」を切り盛りしているもっちさん。
彼女の強みは、おいしい一品料理とワインのペアリング、それに多くの人に愛されるキャラクターだと思う。
余談だが、なぜ福岡のもっちさんがリトルトーキョーで一日店長をしてもらうことになったのか。それは自分自身が福岡のお店に訪問したときに聞いたもっちさんの「来月、東京行くんですよね」という何気ない一言だった。
リトルトーキョーで一日店長をしてもらえれば、そのまま宿泊もできるし、交通費の足しになるかもしれない。東京で会いたい人が大勢いたら、みんな集まって一緒に楽しむこともできる。
そんな話をしたら、一日店長をしてもらうことになった。
もっちさんのように、東京に住んでいる人だけが対象じゃない。ときどき上京する人にも「あのひと」になってもらえたらうれしい。
ちょっと話が逸れてしまったけど、もっちさんの営業日は大盛況だった。ただ、本人は一人ひとりにおかまいできなくて申し訳ない気持ちを持っていたように感じた。
梓さんももっちさんも、お客さんに楽しんでもらえるように工夫したり、一人ひとりとの関係性をとても大切にしているように感じる。
そして3点目。それは継続していくこと。
人と人、人と場所のつながりは、一朝一夕にできるものではない。継続していくことで、育まれることが大いにあると思う。
一日店長をはじめると、最初は珍しがってもらえるのか、たくさんのお客さんに来てもらえる。ただ、2回、3回と続けていくと、最初ほどお客さんが集まらないことも。
そのまま右肩下がりかというと、そういうわけではない。
4回、5回と続けていくことで、だんだんと常連さんが増えていくことも多い。
もちろん、続ければ誰もがうまくいくわけではない。毎回、振り返りながら調整していくことが大切だと思う。
一日店長が面白いのは、実践を通して試行錯誤できること。うまくいかないこともあれば、思いの外、うまくいくこともある。
結果を経て、また工夫してみる。頭で考えるよりも、まずやってみて、世に問うことで、養われる感覚みたいなものはあると思う。
この求人記事を書いている間にも、「あのひと」では新しいことが起きている。
ちょうど今夜はレコードのカッティングエンジニアであるナルさんが、音楽イベントを開催している。音楽に関するお酒も充実していたり、山芋ステーキが名物にもなっていたりして、「あのひと」にはいろいろな可能性があるのだと感じる。
数日前に開催が決まったこの日の営業。「まずやってみよう」という精神でスムーズに開催できそうだ。
最後に。この求人には応募フォームがありません。
もし「あのひと」になってみたければ、ぜひ「あのひと」に遊びに来てください。地方在住の方なら、上京するタイミングに。
夜の営業時間はリトルトーキョーのInstagramをご確認ください。昼間の営業は+Angle coffee worksのInstagramを見てもらえるとわかりやすいです。
自分もやってみたいと思ったら「あのひと」に声をかけてください。
いろいろなことを一緒に試していくことで、それぞれの余白が生まれる場所になればうれしいです。お待ちしています。
(2024/8/1 取材 ナカムラケンタ)