求人 NEW

ひとつの地域で
マルチに働く
じっくり育てるわたしの芽

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

いまの仕事や生活って、本当に自分に合っているのかな。

興味や関心のある分野、思い描く生活のイメージはあっても、思いっきり舵を切るほど固まってはいない。

そんなとき、複数の仕事を組み合わせて働くことができたらどうだろう。

舞台は、鳥取県・智頭町(ちづちょう)。森林面積がまちの90パーセント以上を占めており、林業のまちとして栄えてきた歴史があります。

今回募集するのは、このまちでマルチワークをしながら暮らす人。

智頭町複業協同組合に所属して、観光、飲食、林業など、本人の希望と適性にあわせて、複数の仕事を組み合わせて働きます。

主な働き方は2つ。飲食店などを主軸にするマルチワーカーか、林業を主軸にするマルチフォレスター。

男女別のシェアハウスに入居できたり、個人活動に充てられる有給日が別途設けられていたり。働く日数も相談して調整することができます。

地域に根づき、さまざまな経験を通して、暮らしや仕事のあり方を自分自身で創造する。それが実現しやすい環境だと思います。

 

兵庫県姫路市から、5両編成の特急列車スーパーはくとに乗車。

しばらくすると山の中に入り、山間を縫うように北上していく。

1時間ほどで、智頭駅に着いた。

古くは宿場町として栄えていた智頭町。駅を離れてすこし歩いてみると、国指定重要文化財の石谷家住宅をはじめ、いまでも町屋の建物が残っていて、趣のある景色が広がっている。

まちの中心には、橋の上からでも川底が見える透明度の高い大きな川があり、鳥取砂丘まで続いている。

智頭町は源流のまちとして、きれいな天然水を活かした豊かな食文化が残っている。たとえば、江戸時代から続く蔵元、町内外に多くのファンを抱える豆腐工場、移住して有機農業を始めたご夫婦もいらっしゃるそう。

ふたたび駅前に戻り、智頭町複業協同組合のスタッフさんと合流。車で事務所へ案内してくれる。

「遠いところから、わざわざありがとうございます」と声をかけてくれたのは、事務局長の星野さん。

一つひとつやさしく丁寧に説明してくれる方。

「智頭町って、夏は気温が36度になるくらい暑いんですけど、冬は豪雪地帯なので場所によっては150cmぐらい雪が積もるんですよ。だから、お店を休業される町内事業者さんも多くて。とくに林業事業者さんの仕事は、天候に左右されやすく不安定です」

年間を通して安定した雇用を生みづらい、という課題を抱えていた智頭町。この課題を解決するため、4年前に智頭町複業協同組合がつくられた。

「組合は、林業事業者や飲食店、観光協会、森のようちえんなど、幅広い業種の事業者が集まっています。働いてくれる人材を一つの会社で雇うのではなく、組合として雇うことで、安定した雇用環境をつくりだすことができるようになりました」

今回募集する人は組合に所属し、マルチワーカーやマルチフォレスターとして、さまざまな事業者におもむき働くことになる。

「地域全体をひとつの会社として見立てて、その中の人事部機能を担うことを目指しています」という星野さん。

「役場や事業者と相談させてもらいながら、さまざまな環境づくりをしています。たとえば、新しく林業に就く人がスタートしやすい仕組みをつくり、チェーンソーなどの必要備品の貸与や、研修受講費用の負担などができるようにしたり」

「そのほかにも、移住者のための住居を用意したり、就業先の事業者の皆さんと育成や配置の方針を話し合ったり。職員の受け入れや定着できる環境づくりを大切にしています」

その結果、マルチワーカーとマルチフォレスター、あわせて10名がまちに移住。

林業事業者でITスキルを活かして仕事をしている人もいれば、山里料理屋で、山の幸を美味しくいただく調理方法の習得を目指している人など、自分の得意を活かして働いている人も多い。いまも8名が継続して働いていて、退職した2人も町内に残り、つながりがあるという。

最近では、事務局に事業継承の相談も届いていて、もしかしたらマルチワーカーから後継者が現れるかもしれない。

星野さんたちの取り組みによって、移住しやすく、働きやすい土壌が育っていると感じる。

 

事務所を後にして、マルチフォレスターの守本さんが作業しているという山へ。

林道に入ると、想像していたよりも明るい。

「初めて智頭を訪れたときは、木々が整然としている、というか。整えられた山の雰囲気に、ちょっと背筋がピンとするような場所だなって感じました」

お昼休みを終えたばかりの守本さんが話してくれる。兵庫県出身で、もともと貿易関係の仕事をしていた。

「船に関わる仕事をしていると、海外から日本に丸太を運んでくる船がたくさんあるんです。日本にもたくさんの木材があるのに、なんで化石燃料を大量に使って持ってくるんだろうって」

「一度気になっちゃうと、割り切れないんですよね。いきなり日本の森林業界を変えるっていうのも難しいし、まずは自分が納得できる環境に身を置きたいと思って林業を始めました」

はじめに鳥取市内に移住し、50人規模の森林組合に入ることに。

「5年ほど働いていました。組合のように大きな機械を導入する林業も効率的で必要かもしれないんですが、より山への負担が少なく、小さな機械でもできる林業がしたいと思って。それで智頭町に移住してきました」

守本さんがメインで就業しているのは、合同会社MANABIYA。同年代の林業家も所属しており、自然を感じながら美しい森の維持に貢献している。

対象エリアの木をすべて切るのではなく、将来残したい木を決めて、そのほかの木を間引いていく。環境を整えられて育った木は、品質も上がり高く売れるようになるため、長期的に山の価値が上がる。また、規模に合わせた最小の作業道に抑えることで、災害防止や、その山本来の姿を損なわず、美しい森林も残すこともできる。

「MANABIYAでは、植林活動にも取り組んでいて。転職前よりも、環境に貢献する仕事に関われている実感があります」

1日の流れはどんな感じなんですか?

「朝8時ごろに集合して。その日の流れを話しあったあとに、荷物を積み込んで山に入る。今日だったら午前中に何本か木を伐倒して、さらにそれを丸太にしてから、下に運んでいきます」

「休憩はこまめにとります。お昼は12時から1時間。午後も14時半から30分ぐらい休みますね。16時半ぐらいには仕事を終えて、山を下ったらちょうど17時くらい」

守本さんは、週の2〜3日ほどは林業の仕事。そのほかは山里料理屋で配膳、観光協会が運営するショップで接客の仕事をしている。

「わたしの場合は、勤務日数を減らしてもらっている月もあって。月に16日ほど職員として働いています。そのうちの2日間はマルチフォレスターデイという制度を利用して、ほかの取り組みもしていて」

マルチフォレスターデイ?

「スキルアップや地域活動のためなら、何をしてもいい日、みたいな。たとえば、草刈りに参加して地域の人と交流するとか、木工旋盤の技術を学ぶとか。わたしは鳥取県内で環境改善に向けた活動をしている人たちのところへ勉強しに行くことが多いですね」

「組合でのマルチワーク以外にも、やりたいことができる。そのことは、いまの自分にとって、すごく大切だと感じています」

現在は畑で野菜を育てることに挑戦していて、それも精神的なバランスを保つことに共通しているそう。

「わたしは、消費するだけじゃない側にいきたい。いくらお金があっても、災害があったときには役に立たないと思うんです。どんな状況に置かれても生き抜けるように、自分でつくれるものがあったらつくっていきたいと思っています」

 

最後に向かったのは、山里料理屋「みたき園」。

大きな茅葺きの門をくぐると、まるでジブリの世界に入ったような異世界感。

スーッと空に伸びる木々と共存するように、茅葺き屋根の母屋と10棟ほどの庵がある。

園内を駆け回る鶏、生け簀には川魚、清流にはキンキンに冷えたラムネ。みたき園は、山里の暮らしが垣間見えるような場所。

山で採れたふきや筍を塩漬けにしたり、わらびを入れて特製豆腐をつくったり。ほかにも、鉄鍋で煎った大豆をゆっくりと石臼で挽いてきな粉にし、きび砂糖と塩を入れてきな粉餅をつくるなど。豊かな自然の恵みに感謝して丁寧に調理し、ここでしか味わうことができない料理を提供している。

近くには川が流れていて、川沿いに道がのびている。水が流れる音に癒されながら歩いていくと、母家とは少し離れたところに、一軒の古民家のような建物を見つけた。

三面がガラス張りになっていて、室内に入っても木々の中にいるような開放感。そして目の前には滝を見ることができ、ゆったりとした時間が流れている。

この場所はカフェスペースになっていて、ここでマルチワーカーの田切さんに話を聞く。田切さんは、週の4日はみたき園で働き、それ以外の1日で教育系の仕事をしている。

「もともと滋賀県で塾講師をしていました。子どもたちに『先生は仕事楽しい?』って聞かれたときに、胸を張って楽しいって言えなくて」

「知り合いが智頭町に住んでいて、何回か遊びに来たことはあったんです。自然は好きだったし、思い切って飛び込んじゃえ!って思って、移住を決めました」

働いてみてどうでした?

「調理経験はまったくなかったので不安もありました。でも、やってみたら思ったよりもすごく自分にマッチしていて楽しいなって」

どうしてそう感じたんでしょう。

「もちろん相談をしながらですが、わたしのやりたいことを尊重していただいているな、と思うからです」

田切さんの働きぶりをみて、どんどん仕事を任せてくれるようになり、いまでは仕込みも含めて、ほぼ一人でお店の運営をしている。

「こんなにすぐに、いろいろなことをさせてもらえるのか! って驚きもしたけれど、逆に燃えました」

「お客さんに美味しいって言ってもらえると、じゃあもっと仕込みを頑張ろうって思えるし、新メニューも出したくなる。前職のときは、失敗を恐れて新しいことをやろうなんて思わなかったんです。いまは毎回発見があるし、やりたいことがたくさんあって、楽しいですね」

新作のアイディアを求めて、SNSでケーキなどを検索しては、家で試作を繰り返している。この日は初めてアイスクリームを仕込んでみたそう。

「もともと、頑張りすぎちゃう性格なんです。だからひとつの職場だと、そのことばかりで周りが見えなくなりやすい。複数の職場があるから気分転換もできて、いいリズムで働けていると思います」

「今は置かれた状況で精一杯、力を尽くしたい。マルチに働くっていう根っこだけは、ずっと変えずにいれたらいいかな」

 

ありたい姿に応じて複数の仕事を組み合わせ、自分らしく働く守本さんと田切さんの姿が印象的でした。

豊かな自然、受け継がれてきた文化、智頭町複業協同組合がつくってきた新たな働き方や仕組み。智頭町には、自分らしい働き方や暮らし方を実現しやすい環境があると思います。この地に根付いて、じっくりと自分自身に向き合ってみませんか。

(2024/06/13 取材 杉本丞)

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