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「頼まれたものをつくって終わり、という働き方にモヤモヤしている人にこそ来てほしいです。ここではデザインしたものが、社会実装されていく手応えを感じられると思うので」
そう話すのは、平成医療福祉グループの柳田さん。訪問診療など、病院の外で医療ケアを受けられるサービスがもっと身近なものになるよう、クリニックの開設やマネジメントに取り組んでいます。
今回は、その取り組みの広報のためのデザイン・企画担当を募集します。
診療所のパンフレットなどコミュニケーションツールの制作を通して、人との関わり方、サービスのあり方を一緒に考えていくような仕事です。
デザイナーや広報として自分で手を動かした経験は必要ですが、医療に対する知識や経験は問いません。人の気持ちに寄り添って発信ができる人を求めています。
一緒に働くメンバーは医療の専門家でありつつ、業界外の視点も柔軟に歓迎してくれる人たち。自分から相談する姿勢があれば、お互いの経験や得意なことを活かしあえるチームをつくれるはず。
平成医療福祉グループでは、病院や介護施設など全国に100を超える施設を運営しています。その理念である「じぶんを生きる を みんなのものに。」を体現していくために欠かせないものとして、力を入れはじめたのが在宅医療の分野です。
病気があっても、住み慣れた家での生活を続けたい。
そんな望みを叶えるために、デザインや言葉の力で何ができるのか。東京・国分寺へ話を聞きに行きました。
JR中央線の国分寺駅から歩いて10分ほど。
小学校の向かいにある住宅のような佇まいの建物が、平成医療福祉グループが運営する訪問診療クリニック。今年の9月に開院したばかりの「おうち診療所」だ。
診療所とはいえ訪問が主体なので、日中でも待合室に患者さんの姿はなく、医師や看護師は外出しているようで院内はとても静か。
迎えてくれたのは、平成医療福祉グループの訪問事業部で部長を務める天辰(あまたつ)さん。ふだんは神奈川などを拠点に医師として臨床にも携わりながら、訪問診療に関わる事業の経営企画を担っている。
代表直下に発足したこの事業部のメンバーは、現在天辰さんを入れて3人。グループ内でもベンチャー的な存在なのだという。
「根っこにあるのは、代表の問題意識だと思います。たとえば病院で患者さんと退院の相談をするとき、本心では家に帰りたくても、家族の負担を考えて施設への入所を選ぶ人は多い。我々のグループのリソースも病院や特養などが中心なので、ほかの提案がなかなか難しくて」
「もちろん、地域によっては外部のクリニックとの連携で家に帰れるケースもあります。ただ、ご家族の気持ちに寄り添ったシームレスなサービスを提供するためには、グループのなかで『チーム医療』を実現できる体制をつくりたい。そのためにこうしたクリニックの開設を進めているところです」
訪問診療を受けやすい仕組みが広がれば、自力での通院が難しい状態の人でも、家で過ごせる可能性が持てる。
一方でシームレスという点では、すでにある病院のなかにそういう部門をつくるという発想もありそうです。なぜ、新しいクリニックを病院の外につくるのですか?
「おお…、すごい質問ですね(笑)。でも、それはまさに問題のコアの部分です」
何気なく尋ねたつもりが、天辰さんは少し苦笑い。
「病院と在宅では、医療者に求められるマインドがまったく違っていて。その切り替えが結構難しいんです。たとえば急性期の病院では、まず身体を治すことが最優先なので、生活リズムから、食事、服薬、退院のタイミングまで、すべての主導権が医師側にあります」
「一方、回復期や在宅ではどちらかというと、その人らしく生きるためのサポートが中心で、医療は患者さんを支えるたくさんのサービスの一部にすぎません。極論、死にゆく人に対して医者ができることは限られている。ひとりの人間として家族や患者の気持ちに寄り添えるかどうかが大切です」
病院から、自宅という患者個人のフィールドへ移行することで、見えてくるものもたくさんある。
家のしつらえや、生活習慣、趣味。住み慣れた家に戻り、家族とのふれあいが増えることで、口から食事をとれるようになったり、認知機能が改善したりするケースも少なくないという。
「やっぱり環境や人とのつながりが、健康に与える影響は大きいです。それはちゃんと教科書にも書いてあるし、頭ではみんなわかっているけど、現場ではあまり信じられていなくて。在宅医療を実践する場を増やすことで、可能性を実証していきたいんです」
そのためにはクリニックや医師だけでなく、訪問看護師や、介護士、ケアマネジャーなど、組織の枠組みを超えた連携が欠かせない。
在宅医療の現場においては、医師がつねに絶対的なリーダーではなく、チームメンバーそれぞれが専門性を発揮できるよう、黒子に徹することも多いそう。
「地域にクリニックがひとつあることで、周辺にある病院や特養と新しい連携が生まれることもあります。そういうつなぎ役も、僕たちが担う役割だと思っています」
おうち診療所は、この国分寺を含め現在全国に3拠点。今後は関東を中心に、グループ内の病院がある地域にひとつくらいの割合で新設していく構想だ。
新しい診療所を軌道に乗せていくためには、まず、近隣の病院や介護施設などに自分たちのことを知ってもらう必要がある。
「病院の地域連携室や、地域の訪問看護ステーションに挨拶に行くとき、何か持参できるものがほしくて。これから入る人には、まず診療所のパンフレットや広報誌の制作をお願いしたいです」
そう話すのは、天辰さんと一緒に訪問事業部で活動する柳田さん。もともとは理学療法士として訪問看護などの現場に携わってきた方だ。
「僕たち事業部のメンバーも、現場の医師や看護師も、在宅医療にかける想いはあるんですが、言語化したり見せ方を考えたりするのは得意じゃなくて。ヒアリングやデザインを通して一緒に届け方を考えてくれる人がいると助かりますね」
今回は、もともとグループの本部内にある広報の部署とは別に、専属でデザイン担当を募集する。同じチームのメンバーとして一緒に動きながら考えられるほうが、スピード感もあり、共有されるビジョンの解像度も高いからだ。
直接相談しながら手を動かせるのは、デザインする側にとっても、やりやすさにつながると思う。
今は診療所の近況を発信するnoteなども、柳田さんがメインで更新している。広報誌の原案も制作中で、新しい人が入ったらデザイン的な視点でブラッシュアップしたいという。
「今の段階の広報で大切なのは、定量的な成果ではなく、『じぶんを生きる を みんなのものに。』というグループのミッションが在宅医療とどう結びついているかを示すこと。それも一般向けのアピールより、まずは同じグループで働く仲間に伝える必要があると思います」
「在宅医療って、病院に比べるとリソースも限られているけど、天辰先生が言うように自宅に戻ることで生まれる変化も少なからずあって。患者さんに寄り添いながら、一人ひとりの最適解を探る “在宅マインド”のようなものを、病院で働く人たちに向けて発信していきたいです」
話を聞いていると、訪問診療に出かけていた医師や看護師が戻ってきた。診察室で何か事務作業をして、30分もしないうちにまた次の診察に出て行った。
「これからデザインを担当する人も、まずは日々の訪問診療に同行してみたらいいんじゃないかと思っていて。やっぱり、患者さんやご家族との関わりを自分の目で確かめてほしいし、取り組みのなかでデザインが足りていない部分を見つけるヒントも得られるはずです」
「たとえば患者さんのご家族には、診療所からのお知らせや契約書を保管するためのファイルを配布していて。そういうツールをオリジナルでつくってもいいかもしれない。あとは料金表や院内の掲示物なども、今後整えていきたいです」
トイレのサインや、車に貼るステッカー、そういう何気ない表示ひとつで診療所に対するイメージも変わる。
どんな形、色合い、言葉づかいをすれば、診療所の人となりが伝わるか。デザインはそのものらしさを考えるプロセスでもある。
ふだん柳田さんたちは、この「おうち診療所」だけでなくグループ内で複数の施設に横断的に関わっているため、働く場所が定まっていない。用事がある拠点へ足を運んだり、代々木のオフィスに立ち寄ったり、リモートワークの日も多い。
これから入る人も基本的には同じような働き方なので、タスク管理や業務上のコミュニケーションに主体性が持てるといい。
働く場所に縛られないことで、得られる生活の自由も大きい。同じ事業部のメンバーである吉野さんも、それを実感しているそう。
「少人数の事業部なので、何かを決めるスピード感もあります。事前に吟味しすぎるよりは『患者さんのためのアイデアならやってみたら』という感じで、代表や天辰先生からも、失敗したとき考えたらいいと言ってもらえることが多いです」
自由だからこそ独りよがりではなく、みんなで話し合って進めるチームワークを実現したいという吉野さん。もともと柳田さんと同じく理学療法士で、以前は病院や訪問看護の現場で働いていた。
7月にこのグループに入職した初日は診療所の開設準備の真っ最中。着いてすぐに段ボールの開梱作業や家具の組み立てに追われたそう。
「最初だから一応スーツで来たものの、全然意味なくて(笑)。むしろもっと身軽な格好にすればよかったです」
その日組み立てた60インチのモニターは、待合室のなかで存在感を示している。
何に使うんですか?
「この待合室は、訪問診療に関する勉強会を開いたり、近所の人が相談に訪れたり、そういう関わりを生み出すために設けられたスペースです。小学校のそばという立地もあるし、今後は子どもたちや地域の人とのタッチポイントとしても活用していけたらいいですよね」
たとえば看護師や介護士など、地域で在宅ケアに携わる人たちが訪問の途中で立ち寄れる休憩場所として。同じ地域で家族を看病する人たちの交流の場として。
ちなみにここの院長さんはピアノが弾けるので、ミニコンサートなどのイベントを企画してもよさそう。まずは季節ごとに花を飾るくらいのささやかなことでも、地域の人がここに立ち寄る理由が生まれるといい。
地域の診療所として、どう根ざしていくか。新たに入る人は、それもぜひ一緒に考えてみてください。
ここから生まれたつながりが、病気とともに生きる人の日常、自分らしい生き方を取り戻すきっかけになるかもしれません。
(2024/9/19取材 高橋佑香子)