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その人らしさを
掬い上げるデザイン

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

介護や障がい者支援など、福祉のこと。

なんとなくデリケートで、資格や知識を持っていないと近づけないというイメージがあるかもしれません。

ただ実際には、専門分野以外の経験やスキルを必要とする場面がたくさんあるようです。

たとえばデザインもそのひとつ。

就労継続支援B型事業所などでつくられた製品に素敵なデザインのパッケージをつけたり、施設で開かれるイベントの広報ツールをつくったり。

外とつながるきっかけづくりもデザインの力です。

そうしたデザインなどの企画力に注目して取り組みを続けているのが、平成医療福祉グループ。医療、福祉の分野で全国に100を超える施設を持つ法人です。

5年前ほど前から介護福祉の事業部内に企画チームを設け、業界の外にいた人たちを積極的に採用。慣習にとらわれない発想で、事業のあり方を考えてきました。

今回はこの企画チームでデザイナーとして働く人を募集します。パッケージやロゴ、パンフレットなど平面のデザインがメインですが、施設の仕組みづくりから考える場面も多いです。

現場の声に耳を傾けながら、そこにあるものの良さを形にできる人を求めています。

合わせて企画アシスタントも募集します。

 

向かったのは、池袋から東京メトロで3駅先にある小竹向原駅。駅から住宅街を10分ほど歩くと、障がい者支援施設ココロネ板橋が見えてくる。

2021年に開所したココロネ板橋は、生活介護や児童発達支援など、複数の機能を備えた施設で、敷地はぐるりと植物に囲まれている。

その一角にあるカフェ「ねねね」で迎えてくれたのが、介護福祉事業部のなかで企画を担っている皆さん。

このチームが発足したのは5年前。当初は具体的に何をしていくかという方向性も曖昧ななか、グループの内外から想いを持って集まったメンバーで活動をはじめた。

ここにいる4人それぞれ、役割もバックグラウンドもさまざま。

初期メンバーのひとりであるグレイブスさんは、もともとグループ内の病院でリハビリ助手として働いていた。今は、ココロネに隣接する介護施設で鍼灸師として働くかたわら、カフェの企画運営と、敷地内に畑をつくる計画も進行中。

「病院で働いていたときは、リハビリ助手の立場では患者さんとの関わり方にどうしても制限があって。たとえば足が冷たい人に足浴をしたり、拘縮がある人の手を温めて柔らかくしたり。そういう些細なことも、気軽にやってあげられなかったんです」

「それが福祉の現場に来ると、同じ提案でもすぐ『やってください』って言われる。柔軟な環境なんだって知って、すごく新鮮でしたね」

企画チームの役割は、そんなふうに現場の人たちが持っている「やってみたい」という思いを引き出しながら場をよくしていくこと。

このカフェも、グレイブスさんたちが中心となって立ち上げた。

メインメニューはスープとおにぎり。季節野菜のポタージュをはじめスープが4〜5種類、おにぎりも2種類から選べる。セットには彩りのよいミニサラダも。

あえて言われなければ、ここが障がいのある人たちが働く就労継続支援B型事業所であることを意識しないかもしれない。

最近は、施設内でつくった焼き菓子を、TODAY’S SPECIALなど一般の小売店で取り扱ってもらえる機会も増えてきた。

障がいのある人を応援したいという理由だけじゃなく、コンテンツの魅力で手に取りたくなる商品を。つくり手である利用者さんたちの自信につなげるためにも、クオリティにこだわりたいという信念は最初から一貫していた。

一方、立ち上げ当初は現場から難色も。

「施設の職員さんからは『そもそも障がい者が運営していくのに、カフェという業態は無理がある』というような厳しいご意見もありました。それに最初のころは焼き菓子の仕上がりにもバラつきがあって、それがダメな理由をどう説明したらいいか、かなり悩みましたね」

グレイブスさんはオープン準備と並行し、時間をかけて職員さんたちと対話を続けた。

話を聞いてみると、拒否反応のもとになる不安が企画そのものではなく、ほかの日常業務の悩みに起因していることもあったそう。

もともと抱えていた問題を一緒に解きほぐすことで、少しずつ連帯感も芽生えてきた。

「外から来て、いきなり新しいことを押し付けると、相手も壁をつくってしまって、そこから先に進めなくなってしまう。私たち自身が何度もそういう経験をしたからこそ、今は対話の大切さをすごく感じています」

「それに最初は、実態が見えないという不安もあったと思います。場ができて動き出すと空気感も変わってきて。今は職員さんが、自分たちのカフェとして地域の人に紹介してくれるようになりました」

懸念されたオペレーションの課題は、完全に解消されたわけではない。

それでも今は、職員さんや利用者さんも一緒にカフェのあり方を考える関係ができてきた。焼き菓子などの商品名も、利用者さんを中心にみんなで話し合って決めている。

「みんなで、カンパイ! クラッカー、みんなに、あげたい、グラノーラ。すごく良くないですか?」

グレイブスさんは一言ずつゆっくり商品名を読み上げて、とても満足そう。

 

利用者さんの手描き文字を活かしたパッケージをデザインしたのは、2年前の募集で入職した山口さん。

「私はもともと、10年以上デザイン事務所でクライアントワークをしていました。デザインを必要とする人と、もう少し近い距離感で仕事をしてみたいという思いもあって、インハウスデザイナーという働き方を選んだんです」

今は、前任のデザイナーから仕事を引き継ぐ形で、商品のパッケージや施設ごとのイベントチラシ、ロゴマークのデザインなどを手がけている。

デザインの依頼があれば、ラフの段階から担当者と相談しながらイメージを固めていく。写真素材が必要となれば、カメラを持って撮影もする。

「みんな、あまりデザインに対してダメ出しがないから、逆に不安で(笑)。つくったデザインがちゃんと機能しているかなって、自分で現場に確かめにいくようになったのも、前職との違いですね」

都内にある複数の施設に横断的に関わるため、異なる立場の同僚や、移動、デスクワーク以外の動きが増えたことも、新鮮に感じているそう。

「今までは、福祉というと支援する側とされる側に境界があるイメージでした。実際に現場で働いてみると、もっと自然に一緒に生活していくような関係性なのかな、と感じています」

「利用者さんとは、施設に通っているうちに打ち解けられました。すごくシャイな人もいれば、初対面でも『誰なの〜?』ってそばに来てくれたり、身体を動かすのは難しいけど手を振って挨拶してくれたり。距離感はそれぞれです」

ココロネでは週に1回、障がいのある人のためにアートクラスも開かれている。

一緒に作品をつくると、その人が好きなものがストレートに伝わってくるという。

施設運営の枠にはめるのではなく、その人が持っている気持ちに寄り添うように。

平成医療福祉グループでは、患者や利用者だけでなく働く人の自分らしさも尊重するため、福祉施設で働く職員の制服を廃止した。

企画されるプロジェクトにも、ところどころで個人の好みや趣味が顔を覗かせる。

足立区にある就労継続支援B型事業所「OUCHI CAFE・KITCHEN」では、職員の個人的な熱意からクラフトチョコレートがコンテンツに加わり、今では6種類までフレーバーが増えた。

そのOUCHIでつくるパンやデザートを地域の児童養護施設に届けて縁をつなぐチャリティ「くるりプロジェクト」は、担当者が好きなアーティストの名前を借りている。

運営する側も楽しんでいい。

その雰囲気がコミュニティの垣根を低くし、関わりを広げていく手がかりになる。

 

地域とのつながりづくりを担う水戸さんは、普段から施設の周辺のショップや保育園などに足を運び、一緒にできることの種を探している。

水戸さんが企画したイベントのひとつが、足立区の特別養護老人ホームで毎月行なわれている「あだちご近所マルシェ」。

「基本は近隣の飲食店などが出店するんですけど、施設で暮らす高齢者の方たちも思い思いの方法で参加してくれて。お孫さんのために焼き菓子を買いに来る人もいるし、そのときだけ蝶ネクタイをつけてコーヒーを淹れてくれるおじいちゃんもいます」

イベントは利用者のレクリエーションだけでなく、普段施設の近くに住んでいる人たちが、高齢者や障がいのある人と自然な形で出会い、理解を深めるきっかけにもなる。

場を開き続けていくことで、そこにいる人が自然な関わり方を見つけることも多い。

最近も、いつもマルシェに足を運んでくれるご近所さんが、ほかのチャリティプロジェクトにも参加したいと申し出てくれた。

マルシェの広報には、毎月山口さんが描いたイラストを使ってチラシを作成している。

「デザインがきっかけで取り組みを評価される機会は増えていて。行政の方とかご近所の方とか、ときには遠く県外の自治体から問い合わせが来ることもあります。しかも、その褒め言葉が、私でも山口さんでもなく、施設で働く人に直接届くのがすごくありがたいです」

外からのポジティブなリアクションは、前例のない取り組みを続ける上で追い風になる。

なにより、いつも現場にいる人たちに賞賛や労いの言葉が向けられることがうれしい。その感覚が、企画チームみんなに共通しているように感じる。

 

「福祉って、本当はすごくクリエイティブだと思うんです」

そう話を継いでくれたのは、5年前、広告業界からの転職でチームに加わった城野さん。

もともとは水戸さんたちと同じ企画担当として入職し、今は関東エリアにある16の介護施設に包括的に関わり、現場でのヒアリングを通して運営の方向性を探る役割を担っている。

「関東エリア長」という管理職然とした肩書きが、まだあまりしっくり来ていないという。

「介護施設で働く職員さんたちは、おむつ交換や入浴の介助など、日常的な関わりのなかでも利用者さんの表情や言葉を一つひとつ受け止めながら、対応を考えていて。私から見たらすごいことなんですけど、中にいる人はそれを当たり前だと思っている」

「ちゃんと『あなたの仕事はすごくクリエイティブなんだよ』っていうことを、中にも外にも発信していくのが、自分たちの役割なのかなと思います」

光の当て方ひとつで、ものの見え方は変わっていく。

現場の課題感だけでなく、良いところに気づけることも、外から入る人の大切な素質。

そこにいる人たちが、ありのままで自信を持って進めるように、仕組みやつながりを整えるような仕事だと思います。

(2024/4/22 取材 高橋佑香子)

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