※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
おいしいものを、人に勧めたくなるのはなぜだろう。自分がつくったごはんを誰かに食べてもらうときの、じんわりうれしくなる気持ち。それが原動力になって、料理を仕事に選んだ人も多いと思う。
今回紹介するのは、そんな料理のやりがいを伝えていく仕事です。

病気や障害があっても、地域と自然な関わり合いを持ちながら生活できるように。OUCHIが大切にしているのは、利用者さん自身が自発的に仕事に取り組みたいと思えるような環境づくりです。
調理の資格や経験は問いません。特別な料理を手際よくつくれることよりも、料理を教えることで人を育てていきたいという気持ちが大切だと思います。
また、病気や障害についても、特別な知識は必要ありません。
OUCHIを運営する平成医療福祉グループは、業界の常識の外にこそ、これからの福祉の可能性があると考えている人たちなので、未経験者の素朴な疑問を大切にしてくれるはずです。
合わせて、障がい福祉施設管理者(就労支援B型)候補も募集します。
都心から電車に乗り、荒川を越えるとまもなく西新井駅。そこからひと駅分だけ枝分かれした大師線に乗り換える。
西新井大師の境内が見える駅から住宅街を15分ほど、のんびり歩いていく。
この道を通るのは2回目。OUCHIがオープンする直前に、できたばかりの建物を見学しながら、これから実現していきたいことを聞かせてもらった。あれから2年半、どんな施設になっただろう。
路地を抜けた先に大きな公園が見えてきた。OUCHIはその向かいにある。

パンを買いに来たご近所さん、仕事の合間にランチを食べるスタッフ、ただおしゃべりをしに来たらしい人もいる。
ケースに入ったパン、焼き菓子とチョコレート。カウンターには、ランチやスイーツのメニューが並んでいる。パッケージもかわいらしくて、お土産にも良さそう。
日差しが気持ちいい窓辺で、まずは、事業部長の前川さんに話を聞かせてもらう。

実際に形になってみて、どうですか?
「コロナ禍でカフェを休業せざるをえないなど、想定外の難しさもあったんですが、一方では、予想以上に地域の方に助けていただいて、つながりもできています」
パンや、テイクアウトのお弁当を買いに来るご近所さんが、チラシを持ち帰り配ってくれたり、地域のイベントなどに誘ってくれたり。
カフェが休業している期間は、ラウンジを地域の会合に使えないかと相談を受けることもあった。

その名前の通り、実家のようにいつでも気軽に立ち寄れる場所にしたいという思いでスタートしたOUCHI。
窓の多い間取り、明るい色調のファブリックなど、居心地のいい空間を実現するためには、これまで業界で“普通”とされていた枠組みを超えていく必要があった。

「業務に関してもマニュアルを設けず、自由な雰囲気を大切にしているので、現場で働くスタッフは迷うことも多かったと思います。そういうとき、私たちはいつもここのコンセプトに戻って考えてみるようにしていて」
「利用者さんや地域にとってプラスになることなら、損になってもいいから、やってみよう。やってみてダメだったら修正すればいい、って。それはグループの上長たちも共通して持っている認識なので、小さなことでもやってみる機会は今後も大切にしていきたいですね」

「私たちはずっと同じ業界にいて、疑問を感じなくなっている部分もあって。業界の外から来た仲間が提案してくれることには、いつも発見があって楽しいです。アイデアのユニークさもそうですが、彼女たちがすごく楽しそうにやってくれることで、周りも明るくなっていくから」
この冬には、OUCHIから地域へクリスマスプレゼントを計画中。
OUCHIでパンを予約注文して代金を支払うと、それが近くの養護施設の子どもたちにクリスマスプレゼントとして届けられるという仕組み。みんながどこか温かい気持ちになれるイベントだ。

「福祉の世界は本当に限界がないものだから。常識にとらわれず、いろんなことに挑戦してみてほしいです」
続いて話を聞いたのは、OUCHIのサービス管理責任者を務める石坂さん。もともとは精神科病院で作業療法士として働いていた。

一般の組織でいうマネージャーのような役割を担っている。
「OUCHIがオープンした当初は、まず存在を知ってもらえるようにPRするのが大変でした。コロナで営業が難しい時期もあったんですが、口コミなどで徐々に利用者さんも増えて。今は2階のグループホームも満室、1階のキッチンやホールで働く利用者さんも増えてきました」
「そうなると今度は人間関係も複雑になるので、きちんと目を配り、耳を傾ける余裕を持っておきたいなと思いますね。ここでは売り上げや効率よりも、利用者さんが前向きに働ける環境を維持することのほうが大事ですから」
たとえば、クッキーの形を四角く整える作業が難しければ、手で丸められる形に変更する。ピークの時間帯に忙しくなりすぎるのであれば、メニューの品数を減らす。
味やお客さんの満足、手際などを考えるのも大事なことだけど、まずは利用者さんたちが無理なく仕事に向き合えることを前提に現場の流れを整えていく。

「今まで病気を理由に仕事をさせてもらえなかった利用者さんが、ここに通うようになって、ご家族から『お前すごいな、そんなことできるんだな!』って褒められて、自信になっているみたいで。そのことを一緒によろこんでくれるような人だといいですね」
障害や病気があることで、料理を覚えるときに少し遠回りをする部分はあるかもしれない。けれど、基本的には職場で新人さんに仕事を教えるのと同じこと。
福祉の仕事だと意識しすぎず、気楽に考えてほしいと石坂さんたちは言う。
「個人プレーでは絶対にできない仕事なので、わからないことはすぐに質問して、『疲れた〜』とか、『困った〜』とか、みんなで声に出しながら、考えていきたいですね」
「あとは真面目すぎる性格だと、少し大変かもしれない。利用者さんのなかには、うつっぽい状態の方もいるので、感情移入しすぎないように、自分を保てる余裕があるといいかな。適度に遊び心を持つことも大切ですよ」
そう話す石坂さんは、OUCHIの立ち上げ当初から、クラフトチョコレートづくりに夢中なのだという。

そんな些細なやりとりから、利用者さんの気持ちも少しずつ解放されていくのかもしれない。
最近は同業者から見学の希望も多いというOUCHI。訪れた人がまず驚くのは、利用者さんたちの表情がいきいきしていることだという。
キッチンやホールのスタッフのみなさんにも少しずつ声を聞かせてもらう。まずは、パンや焼き菓子を担当している小林さん。

小林さんはもともと大学病院内のベーカリーに勤務していたものの、障害のある人と一緒に働くのはここがはじめてだという。
「病状も体調も人それぞれ違うので、コミュニケーションのとり方は、日々勉強中ですね」
そこから言葉を継いでくれたのは、片野さん。

もともとは知的障害者が通う施設での経験が長く、OUCHIでは2階のグループホームで世話人をしていた片野さん。
1階のカフェやショップの運営にも携わりはじめたのは、ごく最近のこと。片野さん自身もはじめて経験する業務が多いという。
スタッフ同士でいろんな気づきを共有するために、どんなに忙しくても朝夕のミーティングは欠かさない。
「まあ、どうにかなるだろうって思っています。私はあんまり考え込まない性格なので、みんなでワイワイ頑張っていけたらいいんじゃないかなと思います」
働く楽しさを伝えていくために、まずは自分がその環境を楽しんで、やってみる。
一人で技を磨いていくのとは違う、やりがいがあるはずです。気負わず、素直な気持ちで踏み出してみてください。
(2021/10/29 取材 高橋佑香子)
※撮影時はマスクを外していただきました。