人口減少が進んでいるなか、きれいな分譲マンションを建てて、商業施設をオープンさせて。ハード面だけを充実させる開発は限界がきているように感じます。
住む人がより豊かに安心して暮らせるように、コミュニティ醸成をしてきたのが、株式会社フォーシーカンパニー。
同じマンションや一戸建てに暮らす住民同士の交流を図るイベントを実施するなど、首都圏と関西圏を中心に、全国各地でさまざまなまちのコミュニティづくりに関わってきました。
今回は東京と大阪のオフィスそれぞれで、プランナーを募集します。
ディベロッパーがおこなうマンションやまちの開発に対して、ソフト面から企画提案します。
不動産の知識があると入りやすいですが、未経験でも大丈夫。
まずは、マンションの入居者向け交流会などの運営補助から入り、どのようなコミュニティがあり、どのようにコミュニティをつくっているのかを学ぶところから。
行政、ディベロッパー、地域住民など、まちづくりに対するさまざまな人の想いや考えを調整しながら、具体的な形に落とし込んでいく仕事です。
まちづくりの過程を、企画から運営まですべて経験することができます。
向かったのは、大阪オフィス。
地下鉄の堺筋本町駅から歩いて5分ほどの場所に位置し、まわりには中華料理店や居酒屋もちらほら。
ビルの10階まであがると、フォーシーカンパニーのみなさんが迎えてくれた。
みんなで自己紹介といまの気分を共有してから、取材に入る。
「新卒でこの会社に入ったのが、2016年ですね。気分共有でいうと、マンションなどでおこなっている、住民さん同士の交流を促すイベントでもこんな感じの自己紹介をしていて。なんかちょっと雰囲気が似てるなって思いました(笑)」
そう話すのは、企画開発チームの北野さん。
「フォーシーカンパニーは、マンション内や戸建て住宅地内でのコミュニティ形成を主軸に取り組んできた会社です」
「たとえば、住民の方同士がつながるきっかけとして、入居後のウェルカムパーティを開いたり、子育て世代向けに、ベビーリトミックの講師をお招きしてみたり。物件ごとに住んでいる人も変わるので、コミュニティのあり方も都度考えながら取り組んでいます」
住民同士の円滑なコミュニケーションをサポートしてきたフォーシーカンパニー。
最近はマンション内にとどまらず、まち全体のコミュニティを育むエリアマネジメントの依頼も増えているそう。
たとえば、大阪・茨木市の工場跡地での再開発プロジェクト。
総戸数475戸の大規模分譲マンションと約70戸の戸建て街区が生まれた。さらに約60もの専門店が入る商業施設がオープンし、南側には豊かな自然が残る総合公園。東側には、中高大の教育機関、福祉施設など。総面積18.5haの大型開発がおこなわれた。
ここで求められたのは、マンションや戸建街区それぞれのコミュニティづくりと、さらに商業施設・地元企業を含む4者を集めた横断的なまちづくり。
後者の具体的な活動としてまちづくり協議会を立ち上げ、2ヶ月に1回程度、住民や企業から選出された委員が集まりミーティングを実施。
まちの情報交換をしつつ、エリア内の大学やケアセンターとも連携しながら、防災のワークショップ、地域美化のゴミ拾い、親子で楽しめるハロウィンイベントなどの活動をおこなっている。
「行政からディベロッパーに対するまちの開発要件の中で、『エリアマネジメントの仕組みを入れて、継続していけるように運営までしてください』って条件を課すことが増えていて。ディベロッパーさんも取り組んだことがないので、わたしたちに相談をいただくケースが増えてきているんです」
エリアマネジメントにおいて、プランナーは、事業計画、販売計画、コンセプトをもとに、地域の自治会や協議会、行政などへのヒアリングや、都市計画法や建築基準法などの法令に基づいているかなどを整理しながらコミュニティ設計する。
たとえば、敷地内広場でイベントを開きたいというディベロッパーの要望が、事業計画に含まれていたとき。
土地の所有者やその用途制限などについても確認するのが、プランナーの役目。なかには所有権がオーナーにあったとしても、イベントで利用するには行政への手続きが必要、といったケースもあるという。
細かい部分では、広場にキッチンカーを呼んでマルシェを開きたい場合。入り口の大きさはもう少し広いほうがいい、電源容量はこれくらいあると安心、コンセントの位置はここに配置したほうが動線を考えやすいなど。ソフト面からハード面に助言することもある。
コミュニティの活動に関係するそういった与件も丁寧に洗い出し、ひとつずつ地道にクリアしていくことで、ようやくイベントを実施することができる。
「企画から関わって結果が出るのは、10年後とか。長期間積み重ねたからこそ、なにか形として見えてきたときはやっぱり嬉しいですね」
「あとは、いろんな人の声を聞くのって面白いと思います。住民さん、ディベロッパーさん、行政の方、コンテンツを提供してくださる講師の方とも関わる。ほんとうにさまざまな立場の方と接するので、自分の幅も広がるのが楽しいんです」
次に話を聞いたのは、同じく企画開発チームの吉田さん。マンションの企画開発について聞いてみる。
「エリマネの仕事に比べると、要件整理自体はそこまで大変ではないんですけど、ディベロッパーさんの想いを確認するのは、やっぱり大切ですね」
吉田さんが担当している物件の一つが、滋賀県琵琶湖沿いのマンション。
内装には国産材を使用、二酸化炭素排出量実質ゼロの電気を導入するなど、住んでいる人の健康と、環境に配慮したマンションだ。
「近くには個性的な商業施設と、民間業者が市から受託運営している大きな公園があって。ディベロッパーさんとしては、ぜひここと一緒にコミュニティ醸成の取り組みができたら、という想いがありました」
そこで、商業施設の中に入っているテナントに事前に相談をして、どんなイベントができそうか確認。
「スポーツコンテンツを提供している面白いテナントさんがいたんですね。スタジオでヨガクラスを提供していたので、公園でパークヨガのイベントをご一緒できませんか? とか。ほかにも大人の体力測定会を定期的にされていたので、住民さん向けにもできないか相談してみました。話してみることで、いろいろなアイディアが生まれるんです」
アイディアは社内からも。フォーシーカンパニーは、梅田エリアで約3万5000人のワーカーズを対象としたコミュニティビルディングをおこなっている。そこで反響の良かったコンテンツを参考にして、マンションで実施したこともあったという。
社内には、コミュニティづくりに関するさまざまな案件データが蓄積されていて、定期的に首都圏と関西圏メンバーで情報共有もおこなっている。長年培ってきたそれらの知見を活かして、積極的に新しい提案をしていけるといいと思う。
運営も含めると、担当する案件は一人あたり10件ほど。基本的には、ひとつの物件に対して2名の担当者がつく。
地域が変われば暮らしも変わる。さまざまなコミュニティづくりに関われるのは、この仕事ならではだ。
神戸で育ったという吉田さん。大学は沖縄の学校に進学した。
「生協の人たちと学生スタッフがウェルカムパーティとか、平和学習のイベントとかいろいろと開いてくれて。はじめて実家を離れて心細い気持ちもあったんですけど、それがきっかけで友だちもできて、4年間楽しく過ごすことができました」
「つながるためのきっかけづくりって、すごく大事だなと身をもって体験したんです」
一社目は環境保護団体で総務の仕事をしていたけれど、人と人がつながる仕事に関わりたいと思うように。日本仕事百貨の記事を読んでフォーシーカンパニーに入社した。
「住民さんと話していると、イベントがきっかけでグループLINEができて、今度みんなでパーティするんですよって教えてもらうこともあります。目に見えるつながりは少しずつ、確実にできていると感じますね」
「パパさん同士で明日はみんなで映画を観に行くんですとか。そういう話を聞くと、ああ、いいきっかけになってよかったなって」
最後に話を聞いたのは、入社1年目の井ノ下さん。
これから加わる人にとって、いちばん身近な先輩になる。
「京都の大学で社会学を学んでいました。そこで景観デザインとか、まちづくり参画のためのデザインとか、コミュニティづくりに興味があって、いろいろと講義を受けていました」
「家や学校だけじゃなく、わたしがわたしらしくいられる場所って、これからの時代、もっと大事になってくるんじゃないかと思って。自分もそういう場所をつくってみたい気持ちがあったので、フォーシーカンパニーに入社しました」
現在は、企画開発にまつわる資料づくりのための情報を集めたり、運営しているイベントの手伝いをしたり。先輩たちと一緒に担当しながら、ひとつずつ知識を吸収しているところ。
「専門的な言葉が多いので、はじめは会議に参加させてもらってもわからないことがよくありました。議事録の作成を任されているんですけど、それが自分の中に落とし込む大事な時間になっているなと思います」
「実際にマンションに入ってみると、住民の方から挨拶してもらうこともあるんです。マンション暮らしってどちらかというと、みんな干渉しないのかなって思っていたんですよね。ああ、やっぱり人って話したいんだなと」
最後に、みなさんにどんな人と働きたいか聞いてみると、「物腰やわらかく意見を伝えられる人がいいんじゃないかな」と返ってきた。
「相手の意見に耳を傾けられるのはもちろん大事。だけど傾聴だけでは物事は進まないんですよね」
耳を傾けつつも、調整する力が必要というか。
「そう、調整力ですね。あとは愛嬌も」
「この仕事をはじめてから、まちで知らない人に話しかけられることが増えました(笑)」
たしかに、フォーシーカンパニーのみなさんとは初対面だけれど、安心して話せるというか。それでいて、情報をうまく整理して伝えてくれる感じがあった。
相手のことを受け止めつつ、言うべきところではしっかり意見する。メリハリをつけて動ける人だといいと思う。
時代によって変化していくコミュニティのあり方。誰も正解がわからないから、手探りでつくっていく。
規模が大きいぶん、働いている人とまちの距離が離れやすそうな気もするけれど、フォーシーカンパニーの人たちは運営もやっているからこそ、目の前の人の顔を見て仕事ができる。
じっくりと成果を感じられる仕事。コミュニティづくりを仕事にしたいと思う人に、ぜひチャレンジしてほしいです。
(2024/08/28 取材 杉本丞)