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組織が大きくなると、仕事が縦割りになったり、動き出しが鈍くなったり。
「自分の仕事はどこにつながっているんだろう」と、疑問に思うこともあるかもしれない。小さい組織でスピード感を持って働きたい、顔の見える関係性のなかで働きたい。
そんな人に紹介したい仕事があります。
鳥取県の東南端にある若桜町(わかさちょう)。
標高1510mの氷ノ山をはじめ、高い山々に囲まれています。冬はスキー、夏はハイキングなど、自然を活かしたアクティビティが人気。まちの中心部には、明治時代から残る町家も立ち並んでいます。
豊かな自然や歴史が残る一方で、民間企業と連携してまち歩きアプリを導入したり、エネルギーの地産地消を実践しようとしたり。柔軟な発想でまちづくりに取り組んでいます。
今回募集するのは、そんな若桜町の役場で働く一般事務職員。
町民課、経済産業課、福祉保健課など、あらゆる部門で働きます。配属先は入庁してから決まるので、具体的にこの仕事がしたい!というよりも、与えられた環境で町民のために動ける人がいいと思います。
小規模なまちなので、町民と顔の見える関係性で働くことができます。また、町長との距離が近いため、実現したいアイデアや施策があれば、スピーディーに合意形成することもできます。
いわゆる「お役所仕事」のイメージではなく、自ら動いていろいろなアイデアを実現していきたい人におすすめです。
鳥取空港から東南の方角へ車を走らせる。
県の総面積のおよそ7割が森林ということで、あたりの木々山々が目に映る。若桜町へ向かう道は、映画「ルート29」の舞台にもなった国道29号線。落ち着いた雰囲気の道を進んでいくと、1時間ほどで若桜町に着いた。
まちの中心部には、昔ながらの街並みが広がっている。
天然水でつくられる日本酒の酒蔵や、味噌屋。鹿肉のステーキを食べられる食堂に駄菓子屋など、個性的なお店も多い印象。
通りの一本裏手には、かつての城下町・宿場町の名残を感じる蔵通りも。
また、レトロな駅舎「若桜駅」も発見。
まちの雰囲気を感じながら、若桜町役場へ向かう。
「おとなりの八頭町と若桜町をつなぐ若桜鉄道の駅舎なんです。転車台を含む7つが国の登録有形文化財に認定されているんですよ。4年前に車両を観光列車化して、駅舎もリニューアルしました」
教えてくれたのは、町長の上川さん。穏やかな笑顔の持ち主だ。
「若桜町は観光資源が豊富にありまして。役場のすぐ上には、若桜鬼ヶ城跡があり、続日本100名城に認定されています。明治時代の城下町の街並みも見ていただきましたよね」
「そのほかにも、日本三大投入堂のひとつのお堂があったり。年間を通してアウトドアを楽しめる氷ノ山など、自然も豊かなんです」
上川さんは、生まれも育ちも若桜町。大学で上京し、そのあとは鳥取県庁に入庁した。
「ちょうど10年前、県西部の南部町役場に交流派遣で出向したんですね。そのときに役場の仕事も非常に面白いなと思って」
どんなところが面白いと感じたのでしょうか。
「意思決定がスピーディーにできること、ですかね。県庁組織はすごく大きいので、知事と話す機会なんてめったになかったんですけど、町役場では町長と直談判してすぐに施策につなげることができました」
「それから、当時の町長はすごく開けた方で」
たとえば、地方創生の総合戦略をつくるときには、できるだけ町民の声を拾いたいと、町民100人を集めて検討委員会をつくったそう。また、出来上がった戦略を実現するためにまちづくり会社も設立。ほかにも、エネルギーの地産地消を進めるなど、先進的な取り組みをいくつも行っていた。
「もうひとついいなと思ったのは、役場全体が大家族というか」
大家族。
「人間関係がすごく濃くて。家で採れた野菜なんかも、『食べきれんから、好きに持って帰っていいよ』みたいな。町民ともすごく近いところで仕事ができたし、楽しかったですね」
小さい規模だからこそ、アイデアから行動まで素早く動ける。そして町民との距離も近いので、自分が行動した反応もすぐにわかる。
そこでの経験を地元の若桜町でも活かしたいと思い、2年前から若桜町長を務めている。
現在、まちの人口は2700人程度。
このまま人口減少が進むと、経済が回らなくなって事業者が撤退する可能性も。町民に対して十分なサービスを提供することがむずかしくなってしまう。
「人口減少をどうにかするためにも、やっぱり産業振興が大事。林業や観光など、具体的に力を入れていきたいことがいくつかあります」
「ただ、新しいことをやるには役場だけではできないと思っていて。民間企業だったり、研究機関だったり。外の人たちと一緒に仕事することが必要だと思うんです」
観光政策では、カシオ計算機とともにまち歩きを推進するデジタルスタンプラリーを始めたり、県内大学と協定を結んで、地域医療の課題に取り組んだり。
また、職員の政策立案理能力を高めるために、東京のコンサルティング会社を招いて独自の研修も始めている。
まわりを巻き込みながら柔軟に考え実行している若桜町役場。
今年の4月からは、経済産業課観光商工係の拠点を駅前のビルにお引っ越し。商工会や観光協会がある駅前で、関係機関とのつながりを深めようとしている。
続けて観光商工係の津村さんに話を聞いた。
現在は、商工会と協力して事業者に対する補助金の支援をしたり、イベントを企画したりしてまちを盛り上げる役割を担っている。
「役場から駅前に移ってみると、前よりもまちのことがよく見えるというか。最近は、若桜鉄道を見にインバウンドも増えている感覚があります」
「ただ、若桜鉄道だけ見て帰ってしまう方が多いので、デジタルスタンプラリーなどを活用して、ほかのところにもお金を落とす工夫が必要なのかなって」
町長と同じく、若桜町でずっと過ごしてきたという津村さん。大学では、植物生態学を専攻していた。
「若桜町から鳥取市内までも通えるし、就職活動のときも、まちに住み続けられたらいいなって思っていました。とくにやりたい仕事があったわけでもなかったので、安定して働けるような会社をいろいろと受けて。そのひとつが若桜町役場でした」
入ってみていかがですか?
「自分に合っているなって。町民の方とのつながりが、私にとっては大切なんだって気づきました。自分の仕事の良いところも悪いところも、ダイレクトに返ってくるんですよね」
「たとえば、花火大会のようなイベントの後に、『ありがとう』とか、『よかったよ』とか。そう言った声をもらえると、準備が大変でもやってよかったなって」
ほかにも、以前配属されていた企画政策課で国勢調査を担当したときのことも印象に残っているそう。
「行政主体ではなくて、20名ぐらいの町民の方に調査員をお願いして、調査票の回収などをやっていただくんですね。お願いできそうな方に一人ずつ連絡していくんですけど」
関係性がないと断られてしまいそうですね。
「そうなんです。まったく知らない役場の人から急に電話がかかってきて、よくわからない仕事を頼まれても、断ると思うんです」
「つながりのある人だと、『任せて』とか、『都合が合わなくて難しいけど、あの人に声かけてみたらどうだ』とか言ってもらえる。町民の方に助けられている部分はすごく大きいと思います」
津村さんと同じく、町民の方とのつながりを大切にして働いているのが、経済産業課農業振興係の志水さん。
後ろにかかっている消防団のアポロキャップは、以前いた部署で志水さんが手がけたもの。さわやかでいて、熱い想いを持っている方。
「若桜町の魅力の一つは、この伝統的な町家だと思います」
「町家は入り口が狭くて、奥に長いようなつくりなんですね。使われていない空き家を安く借りることもできるので、昔ながらの暮らしを体験したい人には刺さると思います」
鳥取市内までは、列車で50分ほど。スーパーや病院などは町内にあるので、普段生活に必要なものは揃えやすいと思う。
また、全国的にも早い時期からの保育料無償化や、町内の小中一貫校での給食費無償化、町外の高等学校へ通う生徒の通学費補助など、子育てのサポートは手厚い。
前職は都内の人材紹介会社で営業の仕事をしていた志水さん。
もともと大学で地域づくりについて学んでいたこと、利益よりも目の前の人ために仕事がしたいと思い、地元の若桜町に帰ってきた。
「はじめは企画政策課に配属されて、ふるさと納税や国際交流などの業務に関わって。そのあとは広報の仕事や公共交通の担当もしました」
新しく入る人は、どんな人がいいと思いますか。
「学歴とかは本当に関係なくて。若桜にゆかりがなくても、挑戦してもらえたらうれししいなって」
「すごく自信を持って提供できるのは、リアリティのある仕事ができることなんです」
リアリティ?
「たとえば若桜町では、担い手の減少によって、農家さんだけで田んぼを管理することが難しくなってきているんですね。草刈りなど、最低限の管理だけしているところも多いんです」
田んぼを維持管理するための補助金制度もあるけれど、若桜町では十分に活用できている農家さんは少ないという。
資金を調達できれば、草刈りを手伝ってくれた人に日当も出せるようになり、地域外からも気軽に参加してもらえるようになる。
そんな仕組みづくりを各集落の農家さん一人ひとりに提案しながら進めているところ。
「やったからと言って、個人に利益があるわけでもないけれど、自分が動いたことによって、農地として価値を生み出し続けられるかもしれない。最近はSDGsで持続可能な社会って言いますけど、よりリアリティをもってその言葉を使うことができる」
「まちが変わっていく様子をダイレクトに感じることができるのは、やっぱり醍醐味というか。すごく楽しいなって。新しく入る人も、いきなり政策の立案は難しいと思うので、まずは地域の人との関係づくりから一緒に進められたらと思っています」
津村さんの国勢調査の話も、志水さんの農地管理についての話も、町民との関係づくりを大切にしてきたからこそ、具体的に進んでいったと思う。
志水さんは、「役場での仕事は、住民さんの協力があって初めてできる」とも話していました。
何か特別なスキルや経験がなくても。人との関わりを大切にしながら働き暮らしたい人にとって、若桜町は挑戦しやすいまちだと思います。
(2024/10/29 取材 杉本丞)