求人 NEW

日本一の農業のまちで
何気ない風景を伝える
いい相乗効果を生み出す

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

3,710人。

昨年度、宮崎県都城市(みやこのじょうし)に移住した人数です。

農業産出額が全国の市町村で第一位、ふるさと納税にも力を入れているため、名前を聞いたことがある人もいるかもしれません。

鹿児島県との県境に位置する人口16万人のこのまちでは、九州内でのアクセスのしやすさに加え、子育て支援の拡充や移住支援金の増額など、住みたくなるようなまちづくりがおこなわれています。

市の面積の9割を中山間地域が占めている一方、人のにぎわいは市街地に集中。

その現状を打開するために、地域おこし協力隊として中山間地域の魅力発信を担う人を募集します。

主なミッションは、地域内で開催されているイベントの推進。フットパス事業というまち歩きを楽しむイベントのコース開拓やチラシ作成、SNSでの発信など、さまざまな方法で取り組みを広めていきます。

関わっているのは地域住民、行政、フットパス事業に携わる学生たちなど。

暮らす人にも訪れる人にもいい相乗効果が生まれるように、パイプ役となって橋渡しをしていきます。

 

羽田空港を出発して宮崎空港へ。そこから高速バスで南へ進み、1時間半で西都城駅に到着。

すぐ近くにはアーケードの続く商店街が。個人経営の喫茶店やチェーンの飲食店、大きな市立図書館などが並ぶ。思っていたより交通量も多い。

まず向かったのは、西都城駅から歩いて10分ほどの場所にある都城市役所。

地域振興課の内村さんが迎えてくれた。住まい探しの相談や協力隊の任期中の困りごとなど、活動を身近で支えてくれる存在だ。

「朝早く目が覚めてしまいました」と少し緊張気味。諸県弁(もろかたべん)が柔らかく、親しみを感じる。

農畜産業がさかんな都城市。その豊富な資源が返礼品となるふるさと納税の寄付金額は、9年連続で全国トップ10入りしている。

暮らす人たちには何か影響があるのでしょうか。

「ふるさと納税の寄付金で、子育て支援やまちづくり支援などさまざまに活用されていますよ」

子ども支援として、保育料や中学生以下の医療費を無償化したり、道の駅をリニューアルオープンしたりなど。住みよいまちづくりが推し進められている。

それと並行して、全国の自治体が抱える課題のひとつ、人口減少対策にも取り組んでいる。

昨年度は、移住支援金として最大500万円を給付することを発表。これまで年間数百人ほどだった移住者が、昨年は3千人を超えた。

「移住する方も増えている一方、住む場所として選ばれるのは市街地に集中していて。その要因として、中山間地域には空き家が多いんですが、すぐに住めるような状態の家が少ないんですよね」

「都城市は食べものがおいしいし、霧島の景色も綺麗。そんな豊富な資源は都城市の中山間地域に多く集まっている。いずれは農畜産業の担い手が増えることを目指して、まずは関係人口を増やすことから取り組んでいます」

その取り組みのひとつが、「フットパス事業」。

地域に昔からあるまち並みや、自然の風景といった中山間地域ならではの魅力を、まち歩きをしながら楽しむもの。

福岡県にある北九州市立大学の地域創生のゼミ活動の一環から始まり、3年経った今も取り組みが続いている。

「都城市には中山間等地域と呼ばれるエリアが8つあって。現在は、高崎(たかざき)エリアに6コース、庄内(しょうない)エリアに1コース、合計7つのコースが完成しています。実際に学生さんが年3、4回ほど現地調査に来て、地域を歩いてコースをつくっていくんです」

完成したコースはマップになり、図書館等の市内の施設に置かれ、訪れた人が自由に手に取りスポットを巡る。

どんなコースなんだろう。

たとえば、と紹介してもらったのは高崎エリアの「東霧島(つまきりしま)神話の里コース」。2〜3時間ほどでゴールできる距離みたい。

マップを開いてみると、ぐるりとしたコース上におすすめの撮影スポットが。「緑の隙間からの風景」、「高速下のトンネル」など、視点がおもしろい。

ほかにも見どころとして自治公民館がピックアップされていたり、「住民の苗字はほぼ3種類。隣にあるお墓で確認してみて」と書かれていたり。

地元の人にとっては日常の風景かもしれない。でもGoogleマップには載っていない地域の細部を巡るのは、ゲーム感覚のようで楽しい。

「となり町からフットパスの視察に来る関係者さんや、市内の福祉施設のイベントで団体さんが来られることも増えてきました。今後はもっと市内外の方にも知ってもらえるようにしたいと思っています」

「今完成しているのは高崎地区と庄内地区。残りのエリアにも横展開していこうと考えていて。新しく来てくれる方には、庄内地区の新たなコース作成から携わって、学生さんと一緒に歩いたり、まちづくり協議会のみなさんと話し合ったりして、コースづくりも手伝っていただきたいと思っています。新鮮な視点で発信していってほしいですね」

 

次は、活動の拠点となる庄内地区へ。車を走らせ20分ほどで到着したのは、「Meet-on(ミートン)」とよばれるイベント・コワーキングスペース。

もともと精肉店だった建物。地域に増える空き家を活用するために、県と市が協力し、4年前にリノベーション。構想から完成まで、都城高専の学生が中心となり、地域住民とつくりあげた。

「いつも開けておきたいんだけれど、子どもたちが散らかしちゃうので(笑)。今は、コワーキングスペースの利用があるときとイベントの開催時などにオープンしています」

あたたかな雰囲気で迎えてくれたのは、庄内地区まちづくり協議会の事務局長、朝倉さん。

コミュニティバスの運営や、地区内の小中学校で地域の魅力を伝える授業をするなど、庄内地区のまちづくりには欠かせない存在。

「ちょうど2024年の4月、庄内地区の関之尾(せきのお)公園内にアウトドアブランドのスノーピークさんが指定管理に入って、キャンプ場やショップができたんです。宿泊される方が増えるから、フットパスを取り入れたらいいんじゃないかって、学生さんと協力して1コース完成しました」

そうして完成したのが「関之尾(せっのお)しぶきコース」。関之尾の滝という日本の滝100選に選ばれた名所がある場所を舞台にしている。地元では「せっのお」と呼ぶらしい。

「完成したあとにモニターツアーを開催しようと応募をかけたんです。広報用のチラシも協力隊の方がつくってくれて助かりました。定員20名の予定が、それ以上に応募が集まって。当日は悪天候で開催できなかったんですが、いい流れができている気がします」

これから加わる人は、まずはすでに完成しているコースを観光客の1人として歩いてみて発信してみるのもいいと思う。

庄内地区でのフットパス事業は、2024年度と2025年度にそれぞれ2コース増やす予定。ゆくゆくはコースを集約したガイドマップもつくれるかもしれない。

「フットパス事業の先進地が熊本県の美里町。そこではガイドブックを有料化していて。それでも県外から人が来ているんですよね。いずれはそんなふうにしていきたいと思っています」

「事業が地域に広がっていくと、相乗効果が出てくるみたいで。庄内地区内でも、住民が庭やコース沿いの路面の花壇に花植えをする、みたいなことを聞きました」

暮らす人にとっては、これまで見かけなかった地域外の人が来ることに不安もあると思う。けれど、自分が住む地域の良さを知ってもらえるのはうれしいこと。

新しく協力隊となる人も、地域の人へフットパスの魅力も周知できると、よりよい相乗効果が生まれると思う。

 

最後に話を聞いたのは寺岡さん。2年前に大阪から移住し、今年度で協力隊を卒業する予定だ。今回加わる人は寺岡さんの後任となる。

サーフィンが趣味で、小麦色の肌がよく似合う方。

「今は協力隊の任務のほかに、移住者のコミュニティづくりもしていて。卒業後は、都城市へ移住される方のコミュニティをもっと広げる機会をつくったり、地域にお金が落とせるような仕組みをつくったりできたらいいなと考えています」

インテリアデザインの専門学校を卒業後、リノベーション会社で店舗運営や広報担当をしていた寺岡さん。

祖母が都城出身ということもあり、幼いころから馴染みのある場所だった。

「休日はほぼサーフィンで潰れるくらい好きで。大阪だと海に行くまでが遠いし、働いている場所もビルが多くて、環境が窮屈に感じていたんです」

「引越しを考えていたときに海の近い都城が思いついて。お試しで農業体験をしたり、市役所で移住相談をしたりしていました。タイミングよく協力隊の募集を知って。前職の経験も活かせると思ったので移住を決めたんです」

中山間支援の協力隊は寺岡さんがはじめて。高崎地区や庄内地区のフットパス事業の発信をしながら、地域住民へのヒヤリングや空き家の掘り起こしなどもおこなっていた。

新しく協力隊となる人も、フットパス事業に携わるなかで地域内の空き家について気になることがあれば、市役所の担当課へどんどん情報共有してほしい。

「話を聞いてまわっていると、住民のみなさんから『高齢化が進んでいるから地域の催し物の継続も発信も難しくなっている』という話を聞くこともありました」

地域が少しでも盛り上がるよう、市役所の高崎地域生活課と協力して企画・開催したのが「もじゲッチュ!」というイベント。

フットパスのコース内に一つずつ文字盤が立てられ、コースをまわりながら文字を集めると文章が完成する。

景品は地区内にあるお店の商品の詰め合わせを準備するなど、運営は地元の人たちにも協力してもらい地区全体が一丸となって開催した。

「6月から12月にかけて長期的に開催して。合計で200名ほどの方に来ていただけました。イベント後のアンケート内のおまけで、感想を俳句で書ける欄をつけていたんです。想像以上にみなさん書いてくださってうれしかったですね」

これから加わる人も、活動するなかで思いついたアイデアをイベントとして積極的に企画してもいい。

「フットパスの存在が地区内で浸透してきて、地域の人みずから子どもたちに地域の良さを伝えたいって、コースを一緒に歩くこともありました。その姿はすごく豊かだなって」

 

霧島や高千穂峰、お肉や焼酎など。

それらがつくられているのは、山でもまちなかでもない“間”の地域。

その風景を発信して、守っていく存在を待っています。

(2024/11/21 取材 大津恵理子)

この企業の再募集通知を受ける

おすすめの記事