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武器がないと思っている人へ
「字幕」の扉を
たたいてみませんか?

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

オペラや演劇、ミュージカルなどで、外国語のセリフや歌詞、補足が必要な情報が出てきたときに、鑑賞を陰で支えてくれる「舞台字幕」。

舞台が好きな方なら、一度は目にしたことがあるかもしれません。

今回募集するのは、そんな舞台字幕のオペレーター。作者さんが書いた原稿を整えて、専用ソフトに読み込ませ、現場では電光掲示板など機材の設営撤収から、演出家さんとの調整、本番の場面に応じて字幕を映し出していく、という仕事です。

テレビのリアルタイム字幕などとは違って、その場で書くわけではなく、あくまでも書かれた原稿を送り出していくというオペレーション業務です。

楽譜が読めなくても、外国語がわからなくても、オペラの内容に詳しくなくても大丈夫。

音楽や舞台の仕事に携わりたい人、裏方の仕事に興味がある人におすすめです。

 

東京都墨田区。スカイツリーのすぐ近くに、Zimakuプラスのオフィスはある。コロナ禍をきっかけにオフィスを集約させ、コワーキングスペースの一角を倉庫兼事務所にしている。

迎えてくれたのは、代表の奥出さん。

「リモートにしたのは、リスクヘッジが大きな理由です。合計4人の会社で、みんな1人で現場に行くので、社内で風邪が移ったら、仕事が回らなくなってしまう。出張先では生モノを食べないなど、体調管理には常に気を遣っていますね」

リモートで定期的に社内ミーティングをしながら、事務作業は各自自宅で。そして本番に合わせてオフィスで機材を準備し、劇場入りするという流れ。機材の運搬は信頼できる業者さんにお任せしているので、運転などの心配は不要。

基本的には都内を中心に、全国各地の劇場で過ごすことが多くなる。

「もちろん研修期間はしっかり対面で仕事を教えるので安心してください」

Zimakuプラスは、もともと前職で字幕電光掲示板の開発に携わっていた奥出さんが、2008年に立ち上げた会社。今使っている機材も、町工場の職人さんと一から開発した。

「最初は一文字がどれくらいのサイズなら見やすいのかもわからなくて、駅にある電光掲示板を観察しました。歩数で距離を測ったり、じっくり見上げたり。でも駅員さんから見ると明らかに怪しいでしょ(笑)。こんな仕事をしているんです、って必死に説明しましたよ」

機材が劇場に常設されていることはほとんどないため、分割された電光掲示板を現場で組み合わせて設置していく。近年はフルカラーにも対応。

多彩なフォントや、絵文字、動画まで、表示できるものの幅は広がっているものの、あくまでもシンプルな白一色が基本になっている。

「僕らにとっての褒め言葉は『今日の舞台楽しかったよね』。悪目立ちせず、意識しなくてもスッと物語が入ってくる。それがいい字幕だと思います。『今日の字幕良かったよね』ではいけないんです」

「舞台の最後に『ブラボー!』と拍手が起きることがありますが、『少なくとも何%かの人は、僕らが出している字幕があったから感動してくれたんだろうな』って。自分で自分を励まして、達成感を味わっています」

お客さんの反応が目の前で見えるのは、きっと大きなやりがいなのだろうな。

 

続いて話を聞いたのは、音大でコンサートの企画運営を勉強していた、スタッフの藤原さん。音楽は好きだけど人前に立つのが苦手ということで、裏方の仕事にたどり着いた。

「新卒で入社してから丸7年になります。慣れてきましたが、いまだに初めての経験も多いですし、まだまだ成長段階ですね」

1枚の字幕に表示できるのは32文字。パッと見たときに意味がすぐわかるよう、ときには作者さんに相談しながら原稿を調整することもある。

「以前、登場人物の名前を間違えた字幕を出してしまったことがありました。公演初日に気付いたのですが、そのときは申し訳ない気持ちとショックでいっぱいになって。でも始まれば終わるのが舞台。きちんと反省したら、気持ちを切り替えていくのも大切なポイントなんですよね」

オペラの場合、現場では「キュー出しさん」と呼ばれるスタッフと二人三脚で字幕を出していく。

「ピアノや声楽の専門の方が、楽譜やキャストさん、指揮者の状況を見ながら、次、次、とタイミングを測ってくれます。それに合わせて字幕を送っていくんです。私は楽譜が読めますが、読めなくても大丈夫ですよ」

人間がその場で演じ、演奏する「生モノ」の舞台だからこそ、予想できないことも多い。

「キャストさんのコンディションは毎公演違いますし、初日と千秋楽は特にテンションも上がる。意図的に間を空けたり、ときにはセリフを飛ばしてしまうこともあります。過去には、すごくチャーミングなキャストさんが、突然セリフに日本語を混ぜてきたこともありました」

そんなときでも惑わされず、状況を見極めて正しく字幕を出せたときは、オペレーター冥利に尽きるそう。

 

続いては、2019年に入社した塩谷(しおや)さんに話を聞く。

「外国語大学でポルトガル語を勉強したあと、空港や大型客船のスタッフを経験しました。寝て起きたら違う国にいるということもザラだったので、30歳になるタイミングでそろそろ腰を落ち着けようかなと。旅行は大好きなので、出張があるとうれしいですね」

主に都内で働きながら、地方での公演があればそれに合わせて、日帰りから1週間、1ヶ月と長期で出張に行くことも。「この日は休みを取りたい」という希望があるときは、事前に伝えておけば調整してくれるそう。

もともとミュージカルが好きだった塩谷さん。偶然見かけた求人広告を見て入社した。

「よく観に行っていた舞台の字幕も、Zimakuプラスが担当していたと知ってびっくりしました。その後、私が字幕を担当することになったときには『こんな日が来るとは』ってドキドキしましたよ」

字幕の仕事は一人でできるものではない。劇場に入れば、キャストやオーケストラのメンバーはもちろん、演出、制作、照明、劇場スタッフ、大道具、小道具、衣装、ヘアメイクなど。さまざまなプロフェッショナルと対峙する。

「私は楽譜も読めないし、そこまで詳しくないのですが、世界的に評価されている方の指揮はやっぱり違いましたね。気遣いがすごくて、オケの一人ひとりをしっかりと見ている。振り方ひとつで音が変わるのが本当に不思議で。なんだか魔法使いのようでした」

「大道具さんは、昔ながらの職人さんという方も多くて、危ないときにはちゃんと大きい声を出されます。裏で話しているときにはボケるのが大好きなおじいちゃんだったりするんですけどね」

電光掲示板を立てるときには人手がいるので、協力を求める必要があるし、その場にいる「字幕」のプロは自分だけ。各所とコミュニケーションをとりながら、柔軟に進めていく力が大切だ。

 

新国立劇場でやっているオペラ「夢遊病の女」にご招待いただき、実際の現場も見せてもらった。

案内してくれたのは、この公演の字幕オペレーターを担当している山口さん。高校、大学とバンド活動をしていて、音楽に関連した仕事をしたいと入社した。

「手元にあるコントローラーのボタンで字幕を送り出すんですよ。右を押すと次のセリフに進み、左を押すと字幕が消える。パソコンの画面では、文字が出るときのスピードや明るさなどを設定しています」

たとえば「出るときはパッと切り替わって、歌い終わったらゆっくりと消える。明るさは中くらい」など。

照明や演出に合わせてかなり細かく変えられるうえに、1公演400枚〜2000枚ほどある字幕1枚ずつに設定をしているというから驚き。

「リハーサルの段階で照明がだいたい確定するので、それに合わせています。こだわりの強い演出家さんだと『これとこれの中間はないの?』なんて言われる場合もあって」

数値に迷ったときはどうしているのでしょうか?

「読みやすいほうを取ります。たとえばゆっくり消えると、その間は文字が読めないんですよね。だったら、しっかり読んでもらえるように、シュッと消えるほうがいいかな、って。あくまでも総合的に判断する要素の一つではあるけれど『何秒読めるか』は特に意識していますね」

機械的に字幕を出すほうが好みの演出家もいるので、オーダーに合わせて調整している。

「字幕って意味がわかるから『あそこの言葉変じゃない?』とか、関係者の方々でも口を出したくなっちゃうんですよね。でも、僕らが筋を立てるべきなのはクライアント」

「みんなの言うことを全部聞くのではなく、一度持ち帰って『こう言われたけどどうですか?』と、演出家さんや制作さん、舞台監督さんに判断を仰いでいます」

どんな人と一緒に働きたいですか?

「まずは自立していることですね。一人で現場に行くので、これができている、できていないって、誰も見てはくれません。そんななかで成長し続けるには、ある程度謙虚に自分を客観視する姿勢が大切だと思うんですよね」

ある程度謙虚に?

「変にネガティブになりすぎても困るけれど、かといって何でもできます!というのも困ってしまう。『字幕をかっこよく出してやろう』なんてタイプは、あまり歓迎されないかもしれませんね(笑)。字幕は主張しちゃいけない存在なので、自己顕示欲は低い方が合っていると思います」

もう一つは「平均点を取れるバランスのよさ」だといいます。

「この仕事って、オールマイティを求められるんです。文章を扱うという点では文系の仕事ですが、パソコンで作業したり、頭の中で図面を引いたりするときには理系。搬入搬出するときには体を動かすし、現場での上下関係もあるので体育会系の要素も。そして、扱っている題材は間違いなく芸術系です」

だからこそ、何か不得意なことがある人はどこかで挫折してしまう。突出した能力はなくても、平均点を取れることが大切なのだとか。

「僕自身、そこが悩みだった時期もありましたが、今となっては武器になっています。自分には何もないなと思っている人にこそ、ぜひトライしてもらいたいです。些細なところにやりがいを見出せると、仕事が楽しくなって続けていけると思います」

音楽が好き、演劇やオペラが好き。舞台を裏からサポートしたい。

そんな方はぜひ、舞台字幕の扉を叩いてみてください。

きっと新しい世界が見えてきますよ。

(2024/10/09 取材 今井夕華)

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